子どもが算数・数学好きになる秘訣とは
算数や数学の学習において、少なくとも同一の単元では「やっていくうちに理解する」という気持ちをもってもかまわないでしょう。
小学校での分数のかけ算や割算、中学校での因数分解、高校での微分や積分などもそうです。
トランプや将棋などを始めるときも、初めからルールをすべて覚えてから行う人はまれでしょう。
むしろほとんどの人たちは「やって行くうちに理解する」という気持ちでゲームを始めるのです。
数学でも、意味を完全に頭の中に叩き込まなくても、指導されるままにまねをして計算問題、そして応用問題を解いていくうちに根本的な意味も理解していくことが少なくないのです。
そもそも「3/4で割るということが、何で4/3を掛けることになるのか」などを真剣に考えて、その理由が分かってから初めて分数の割り算を行う子どもはまれでしょう。
実は「やっていくうちに理解する」どころか「正確には理解しないで使っている」ものも少なくないのです。
たとえば、2のx乗というものです。
2の2乗は4、2の3乗は8、2の4乗は16です。
それでは、2のπ(円周率)乗とはどのような数なのでしょうか。それに関しては、高校の数学では少しごまかしているのです。
「理解しないで使っている」ものも少なからずあることを知れば「やっていくうちに理解する」ことはむしろ立派であって、恥ずかしがることでも何でもないことがわかるでしょう。
算数や数学の学習では、覚えなくてはいけない内容や重要な公式など数えるほどしかありません。
たとえば、四則演算で×や÷を優先することを忘れる。
方程式で右辺にあるものを左辺にもって行くときにマイナスを付けるのを忘れてしまうことがある、等々。
そのように、算数や数学の学習では、覚えるべき内容や注意すべき点は少ないものの、どれもいろいろなところで幅広く適用されるものです。
したがって、それらのうちのたった一つに関して誤って覚えていたり誤って適用する癖を身につけたりしていると、英語の単語を一つ忘れるのとちがってダメージは大きいものになります。
それゆえ算数や数学の学習においては、重要な内容の覚え間違いをしないように心がけることが大切で、間違いに対するこだわりを大きく持った方が良いのです。
問題の解答を間違えた場合、どこで間違えたのかを覚えていれば、悔しさが残り、次回に生かすことができます。
これまで数多くの生徒の算数や数学の勉強をみた経験から、そのあたりが伸びるか否かの大きな分岐点だと考えます。
どうすればよいのでしょうか。
一つは、ノートに答えを書いていて解答が間違っていれば、間違った箇所を消しゴムで消さないということです。
間違いを繰り返す生徒に限って、書いた部分を消しゴムで消し、最初から解こうとする悪い癖をもっているのです。
もう一つは、テストで間違った場合は、間違った問題を正解に直すようにする習慣をつけることです。
(芳沢光雄 1953年東京都生まれ、慶應義塾大学助教授、城西大学教授、東京理科大学理学部教授、桜美林大学教授を経て桜美林大学学長特別補佐。数学の学力低下を危惧し、数学教育の重要性と充実を訴え、全国各地の小・中・高校への出前授業や教員研修会で講師を行った)
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