子どもが授業中に立ち歩きし、改善しないときどうすればよいか
ブリーフセラピー(注)を学んだ教師が問題解決に取り組む例をパロディ風に示します。
日頃の事例のエッセンスを凝縮したものです。
事例「A君(小学校2年生)は毎日授業中歩き回り、座ったかと思えば隣の子にちょっかいをだしています」
中堅のB女教師は最初は根気強くA君を叱り諭していました。
しかし、根気が持続したのは一学期まで。なにしろ毎日毎日、くり返し、くり返しで、もううんざり。
他の教師に「親との連携を心がけよ」と言われました。
毎日「親と連携」するため、一日のA君の悪事をすべて母親に電話で「報告」しました。
しかしA君は、報告を受けた母親から毎日叱られ、ますます落ち着きが無くなっていくのです・・・・・・。
学校現場において問題への対処がなかなか改善しないケースに対して、うまくいってない問題のパターンが定着することがあります。
うまくいかないのにどうして、パターンとして定着するのでしょうか?
それはその方法がほとんどの場合「常識的」で「無難」であり「誰からも責められることはない」ことが多いからです。
A君が、自分の気持ちをコントロールしたり、友だちとのトラブルを少なくしていくために、どのようにそのパターンを崩していったらよいでしょうか。
ブリーフセラピーを学んだC教師に相談してみました。
すると、「連絡帳でよかったことだけ報告してみたらどうですか」とのこと。
電話ではなく、連絡ノートにして「見ちゃダメだよ」といってA君のランドセルのポケットに入れるのです。
A君がこっそり見るのは想定内。これなら電話より簡単。
連絡帳をランドセルに入れ始めて3日目。
なんだか不思議。A君の表情が心なしか変わってきたような。
これまでは、いつも私をさけているような様子だったのが、近づいてきてにっこり笑いかけてくるように。
そういえば、良いところを探すと結構あったのです。
朝、隣の席の子が落とした筆箱を拾ってあげたとか。
それに、いつのまにか授業中にうろうろすることも少なくなってきたような気がします。
もぞもぞし始めたときに、目を合わせてにっこりすれば大丈夫。
まだまだA君、ガタガタうるさいのですが、大きく変わったのはB教師の気持ち。前のようにうんざりすることはなくなりました。
このブリーフセラピーの「理論と技法」とは
くり返し起こっている問題には、必ず「悪循環パターン」が存在します。
それはその方法がほとんどの場合「常識的」で「無難」であり「誰からもせめられることはない」ことが多いのです。
これを「偽解決」と呼びます。
この事例では「連絡の方法」を変え、「?」という対応であってもそれでうまくいっているのなら、続ける。
常識的で無難な方法であっても、フィットしないなら止めるということなのです。
この事例で使った技法は「悪循環の切断」でした。
一言で言うと、ブリーフセラピーを発達障害の対応に用いるポイントとは、問題を「マクロ」にとらえ、その上で「柔軟な対応」をすることなのかもしれません。
(注)ブリーフセラピーは,アメリカの精神科医ミルトン・H・エリクソンが行った治療に関する考え方や技法から発展した心理療法です。「ブリーフ」とは,「短期の」「簡潔な」という意味で,効率的・効果的な援助の在り方を探求するカウンセリングと言えます。
いくつかのモデルがあります。「解決志向アプローチ」という面接法の主な考え方は,
(1)原因や背景を追及しない
(2)どうすれば解決するかに焦点を当てる
(3)行動(変化)を起こすことで解決につなげる
(若島孔文 :1972年生まれ、東北大学教授。ブリーフセラピー、家族療法、行動療法の専門的トレーニングを受ており、臨床ではそれらを専門として行う)
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