授業例:理科(中学校・物理):弾性ってゴムにしかないの?
授業は学習課題方式で行います。
課題提示「物体に力が働くこと」
1 授業の目標
物体は、力を受ければ、速さや向きを変えるなど運動を変えるか、変形します。このことを「ゴムやバネにだけでなく、すべての固体に弾性がある」ことを獲得させます。
そして、後半には、分厚い実験机さえも変形することから、力と変形の視点を獲得させます。
2 導入の説明
教師:「それではワークシートを配ります」(列ごとに配布します)
教師:「今日は、力と変形について学習します。物体に力が働くと、物体にはどのような変化が起こるでしょうか」。教師が、実験机の上でバレーボールを転がしたり、押したりしてみせます。
生徒:「転がったり、へこんだりする」「物体が動く」「形が変わる」・・・・・
教師:運動の状態が変わる、変形、弾性、弾性限界など、力が加わることの結果と弾性について説明し、共通の認識を生徒に持たせます。
教師:「弾性を示すものを挙げてください」
生徒:「スポンジ、飛び箱の踏切板、空気入れ・・・・」
教師:「弾性を示さないものを挙げてください」
生徒:「ガラス、石、鉄、銅、アルミ缶、木、金属・・・・・」
教師:「いろいろ弾性を示さないものが挙げられましたね。それでは課題をだします」
(ワークシートに次の課題がある)
課題「鉄やガラスの棒は弾性を示すでしょうか?」
3 予想:
ア-鉄の棒は示すがガラスの棒は示さない
イ-ガラスの棒は示すが鉄の棒は示さない
ウ-両方とも示す
エ-両方示さない
オ-見当がつかない
4 予想と討論
教師:「課題を考えるにあたって質問のある人」
生徒:「ガラス棒はどのくらいの太さですか?。・・・・・」
質問を受けて、疑問をはっきりさせ全員に課題に取り組ませます。
教師:「予想を決めた人は理由を書いてください。前に勉強、実験、経験したこと。見たり聞いたりしたことなどを根拠の材料としてください」
3か月ほど続ければ、4分ほどで予想と理由を全員が書けるようになります。
予想を板書したあとに、それぞれ理由を発表させます。
ア-鉄の棒は示すがガラスの棒は示さない 5人
イ-ガラスの棒は示すが鉄の棒は示さない 2人
ウ-両方とも示す 6人
エ-両方示さない 13人
オ-見当がつかない 0人
討論が終わったら、予想の変更を認め、もう一度自分の考えを書かせます。そして、予想分布をもう一度板書します。
5 実験-課題解決
実験台の上に、生徒用のイスが2つ置かれ、そこに鉄棒が2本橋渡しされています。
1本には100gの重りがぶら下げられています。
教師:「もう少し重い、フックを使って1kgの力学台車をぶら下げてみましょう」
さらに、台車を1,2,3台とぶらさげ、鉄棒をしならせます。
重りを取り去ると、またまっすぐになっています。
今度は1m以上の長さのガラス棒2本を、先ほどの生徒用のイスにのせます。1本に100gの重りを1つずつ下げていきます。
600gほどで大きくしなります。重りを取り去ると、元に戻ることを見せます。
6 発展
生徒の思考を揺さぶるために、レーザー光線を用いた光てこで、実験用机が変形するかを問います。
分厚い実験机の上にレーザー装置をセットして、鏡を貼り付けた黒板に向けます。
レーザー光が天井に反射して見えます。
教師が机の上に乗ると、レーザー光が移動します。
実験机も弾性を持ち、力を受けて変形しているのがわかります。
「すべての物体は弾性を持つ」と納得してくれます。
(松本浩幸:1963年生まれ 北海道公立中学校教師)
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