授業中の「脱線話」が学びのきっかけになる
溝邊和成教授は小学校時代から、理科の授業中の「脱線話」が好きでした。
担任の先生が当時話題になっているサイエンスを熱く語ってくれたからです。
今思えば、好きだった理由は、自分で何となくしか理解できていないサイエンスのホットな話題について、わかりやすく解説してもらっていたからでしょう。
お話を聞いた後も、友だちと続きを話をしたり、家に帰って調べてみたりしたことがあります。
話を聞いていたとき、頭の中で想像がどんどん膨らみ、明るい未来が予見されるようで、とてもハッピーな気持ちになっていたことが思い出されます。
例えば、人類が月に到着した話を聞いたとき、とても刺激を受けました。深く心に刻み込まれています。
こうした経験は、その知識を単に受け入れるだけでなく、他の事象を見ても、そのちがいを探そうとしたり、新しく学んだ内容をその話に関連付けようとしたりすることにつながるようです。
「学びは、知識の組み替えである」とよく言われるように、教室での「お話」が契機となって、子どもの頭の中では、どんどん知識の組み替え作業が起きているのです。
さらに、新たな事物・現象を受け入れる準備もなされているようです。物を引っ掛けるフックのようなものが、いくつもできていく感じです。
科学に関する知識の理解や能力向上において「お話」をしたり「お話」を聞いたりする学びのきっかけがあってもいいのではないでしょうか。
たとえば、天気の話で「冬は西高東低って?」どういうことでしょうか。
冬の典型的な気圧配置は「西高東低」です。
どういう意味かというと、冬はシベリアに高気圧が発生し、太平洋に低気圧が発生するという意味です。なぜ、こうなるのでしょうか?
さて、皆さんは夏のプールで次のような経験はありませんか。
裸足でプールサイドを歩いたら、足の裏がやけどしそうになった。
そこであわててプールに飛び込んだら、水はヒンヤリしていて冷たかった。
まさにこの水とコンクリートのちがいが「西高東低」を生んでいるのです。
つまり、陸は暖まりやすく冷めやすい、海は暖まりにくく冷めにくいのです。
冬は海に比べて陸はどんどん冷えていきます。
陸の上の空気まで冷やされ、シベリアには凝縮した(=重たい)冷たい空気のかたまり(高気圧)ができます。
それに比べ、太平洋は海水があまり冷えず、海上の空気も温かいまま(低気圧)になっています。
暖かい空気は膨張し、軽いので、上昇気流になります。
シベリアから冷たい空気が日本に向かって流れ込んでくることになります。これが冬なのです。
テレビの天気予報などを見ていると、意味がわからないこともあると思います。
どういう意味だろうと考えることが、楽しさを増やすことにつながります。
「ほお、そうなんだ」と気づくことが楽しいのです。
レアメタルの話をします。
レアメタルは最近のニュースなどでよく耳にします。
レア=まれな、メタル=金属ということから、レアメタルは希少金属のことです。
たくさん使われている鉄や銅、アルミニュウムなどの金属はベースメタルあるいはコモンメタルと呼ばれています。
レアメタルは、ノートパソコンなどのIT関連や自動車部品など、私たちの身の回りにある電化製品には、これがよく使われています。
種類は、リチウム、チタン、クロム、コバルト、セシウム、ネオジムなど60種類以上になると言われています。
例えば、ノートパソコンの液晶ディスプレイには「透明電極」が使われています。
これには、酸化インジウムスズが使われていますが、インジウムはレアメタルです。
また、電源にリチウムを使った電池がよく使われています。それにハードディスクにネオジムが使用されたりします。
自動車の表面のコーティングにチタンが使われたり、排気ガスの浄化装置に白金、パラジウムなどが使われたりします。
その他、ニッケル(ステンレス鋼、メッキなど)、ゲルマニウム(光ファイバーなど)、ガリウム(発光ダイオードなど)、タングステン(超硬合金など)、セシウム(原子時計など)もよく使われています。
日本のレアメタル製造技術は世界トップといえますが、問題点は、これらの金属は存在量が少なく、採掘、精錬コストが高いことです。
さらに、産地が偏在しています。
例えば、タングステンは、中国だけで90%の埋蔵量があり、パラジウムは、南アフリカ、中国、ロシアで100%近くになります。
このような点から入手困難で、定供給やリサイクル技術の確保が課題だと言えます。
(溝邊和成:1957年生まれ 西宮市公立小学校教師、神戸大学附属明石小学校教師、広島大学講師、甲南女子大学教授を経て兵庫教育大学教授。専門は小学校理科・生活科・総合学習の実践論・カリキュラム論)
(内山裕之:1952年兵庫県生まれ、西宮市立中学校教師、神戸大学附属中学校教師などを経て近大姫路大学教授)
| 固定リンク
「授業のさまざまな方法」カテゴリの記事
- 創造的な学びで、社会に求められている自立型人間を育成する 伊藤邦人(2021.07.25)
- グループ学習の代表的な手法 町田守弘(2021.03.19)
- どのような子どもでも取り組めるワーク作りとは(2021.02.17)
- かならず成功する「本の読みきかせ」の方法とは(2021.02.07)
- 子どもとともにつくる授業をするために必要なこととその例(2021.01.28)
コメント