小さな器物破損が見つかったとき、どう指導すればよいか
小さな器物破損は、たとえば、教室の掃除道具の破損、トイレットペーパーのいたずら、机や壁などへの落書き、ガラスの破損、スイッチの破損などいろいろあるものだ。
いずれも、一つひとつはそれほど悪意がなかったり、イタズラという場合もある。
しかし、こういうことが積み重なると、間違いなく退廃的雰囲気が蔓延し、やがて堂々と不正が通るようになってしまう。
気付いたときには手遅れということも少なくない。続いてきたなと判断したら、即刻手を打とう。
ついうっかりは、誰にでもあるので、いっさい叱らないし、弁償も必要ない。
例えば、遊んでいてボールが蛍光灯に当たって割れたとき、正直に名乗り出てきたら、
「えらい! よく言ってくれた」
「ボール遊びの場所を今後からは考えるのだよ」
「弁償しなくても良い。以上、終了」
これを学級全員の前で一度やればよい。
だから、名乗り出ないのは、意図的な破損行為と考えればよいのだ。
誰がやったかわからない破損行為は、学級全員に隠す必要はない。
誰かが見ていて、生徒間には誰がやったか知れわたっていることが多い。
犯人捜しは適当に打ち切って、「修理隊」を大募集するとよい。
こういうことは大好きという男子はどこのクラスにもいる。
ときには壊した本人が何食わぬ顔をして修理隊に入っていたこともあった。
修理隊は結構、楽しそうに修理する。
多分、やった子は複雑な心境で見ているはずだ。
「誰だよ、壊したりするのは」などという批判の声も聞こえてくるだろう。
破損現場を生徒に見せたくない教師の心境は、理解できなくもない。
しかし、ひそかに直して何事もなかったようにしてしまったら、生徒全体を育てることはできない。
寝た子を起こしてでも全体に訴えることだ。
放課後、修理隊が生徒のいる中で直すのが得策だ。
その間は、そこを通りかかった教師が、わざと生徒たちに聞こえるように、
「とんでもないなあ。迷惑だよ。許せないなあ」などと嘆くことだ。
(吉田 順:1950年北海道生まれ、37年間橫浜市公立小・中学校で勤務した。生徒指導部長16年、学年主任13年などを兼任。「生徒指導」ネットワークを主宰。生徒指導コンサルタント、全国各地で講演、著述などの活動をしている)
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