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「おにたのぼうし」の読みの教材研究はどうすればよいか

「おにたのぼうし」のあらすじは次のようです。
 節分の夜、黒おにの子ども‘おにた’は、住んでいた小屋を飛び出しました。「おには-そと」と豆をまかれたからです。
 ‘おにた’は気のいい鬼でした。にわか雨のときには、洗たく物を取り込んであげたりしました。
 でも、恥ずかしがり屋だったので、いつもこっそりと働いていました。
 雪の降る中、「いい家がないかなぁ」と探していると、女の子が雪をすくって、せんめんきに入れています。
 お母さんが病気で寝ているのです。
 おなかをすかせた女の子のために、‘おにた’は人間の男の子のかっこうをして、赤飯と煮豆を持ってきました。
 よろこんだ女の子は、ふと「豆まきしたいな」とつぶやきます。
 すると氷がとけたように、‘おにた’が急にいなくなってしまいました。
 あとには麦わらぼうしと黒い豆が残っていました。
 私は次のような4段階(1~4)で教材研究を進めています。
 教材研究は作品の構造を把握(1)した上で、2つの方向から行っていく。
 一つは導入部(2)であり、もう一つはクライマックス(3)である。
 そして、導入部で設定された人物像・仕掛けと、クライマックスの「性格」の、2つの視点から、展開部(4)の事件と人物相互の関係の変化をたどることによって作品の構造が浮き彫りになっていく。
1 全体の構造の把握
 作品の導入部、展開部、山場、終結部を押さえ、およその筋の流れをつかむ。
2 導入部(「節分の夜のことです」~「物おき小屋を出て行きました」)の読みとり
 主人公の人物像、仕掛けを読む。
(1)主人公
‘おにた’は鬼の子どもで一人ぼっち。
(2)人物像
 孤独なので人間に執着し、親切にして愛を求めている。
 しかし、節分の度に追い出されながら「人間っておかしいな」と人間に疑問を抱いている。
 麦わら帽子で角を被い鬼であることを隠している。
(3)仕掛け
 この人間に対する切実さと矛盾が‘おにた’の人物像に仕掛けられた重要な仕掛けである。
 この人物像が物語の進展やテーマにどのように関わっていくのか、そこを重点的に読むことによって教材研究を速く正確に行うことができる。
3 クライマックスの読みとり
 物語のクライマックスの大まかな性質・性格、つまり、破局・悲劇か和解・解決かというようなことを押さえる。
「おにたのぼうし」のクライマックスは、‘おにた’が女の子の前から姿を消し、黒い豆になるところである。
 貧しい家のお母さん思いの女の子のために、食べ物を持っていく。
 女の子は喜び、‘おにた’は幸せの絶頂を感じる。
 しかし、帽子で角が隠れ、鬼であることを知らない女の子は母の病気を治すため「豆まき」をしたいと言う。
 この瞬間、つかの間の至福の時は終わり、‘おにた’の愛は破綻する。
 これまで節分に何度も追い出されても人間界に執着し続けていたが、絶望し、麦わら帽子を残して消え、自らが「黒い豆」になる。
‘おにた’も女の子もやさしく健気に生きているのに、接点がなくすれ違っている。
 このすれ違いの悲劇がこの作品のクライマックスの「性格」である。
 これを読み取ることで、「出会い」と「関係の変化」と「破綻」が教材研究の急所であることが分かる。
 この箇所での事件、人物、相互の関係を読めばいいことが分かる。
4 展開部以降の事件と人物相互の関係の変化をたどり、作品の急所を明らかにする
 展開部の分析を行う。
 すると、つぎの箇所が丁寧に読まなければならないところとして浮かび上がってくる。
(1)「こりゃあ、豆のにおいがしないぞ、しめた。ひいらぎもかざっていない」の部分
 鬼である‘おにた’を受け入れてくれるのではないかと期待を抱いてこの家に入っていく。
(2)「女の子が出て来ました」の部分
‘おにた’の対役の女の子の登場である。
 したがって女の子の生活や人物の性格が分かるところを探して読まなければならない。
(3)「‘おにた’はなぜか、せなかがむずむずするようで、じっとしていられなくなりました」の部分
 おにたは本能的に何かを感じとった。
 おなかがすいているのに、うそをついて我慢をしている女の子、その悲しみと苦労に‘おにた’は自分の境遇が重なり、共感を感じとったに違いない。
(4)「おにたは、もうむちゅうで、台所のまどのやぶれた所から、寒い外へとび出していきました」の部分
 女の子のためにどんなことでもしてあげたい、という気持ちになったのだ。
‘おにた’の女の子への思いが決定的に変化したところである。
 このように、教材研究は、
1 導入部の人物像・仕掛けを読み
2 クライマックスの性格を押さえ
3 その両方から、事件、人物相互の関係に視点を当てて読むことによって、作品の急所が押さえられ効果的に行うことができる。
 この方法は、多くの物語・小説に応用することができる。
(小倉泰子:東京都公立中学校教師)

 

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