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求められる優れた英語教師とは、教材準備など、どのように工夫すればよいか

 英語の教師は、他の教科と比べて、自分の教科の専門性に対する自信が低いと言われている。
 特に、英語の資格試験の成績などを具体的にあげて、望ましい教師像について語られることも多い。
 もちろん、そのような資質が備わっていることが望ましいが、誰もが皆、最初からその備えができているわけではない。
 まだ英語力に自信が持てないままの教師も多いであろう。
 大事なことは、現在、自分の資質向上に向けて努力をしているかどうかである。
 ラジオの英会話番組を聞いたり、英字新聞を読んだり、インターネットで英語にふれるという意識的な努力を継続しているなら、積極的にその英語を教室で使えばよい。
 遠からず、自分の英語力が伸びていることを実感するであろう。
 また、どんなに自信がなくとも、授業の前の日までに、教科書付属のCDを何回も聞いて声を出し、スムーズにまたCDに似た音声が出せるように努力する姿勢があれば、十分授業に臨むことができるであろうし、このような取り組みの姿勢こそが一番大きな資質と言える。
 指導する単元にあわせて、その文化的背景を調べたり、言語材料を学習者に説明するために自分自身がより深い次元で理解しようとする試みを続けることは不可欠である。
 例えばpleaseを使った表現は日本人が最も間違いを犯しやすいものである。
「聞き手の利益になることを提示する場合にはpleaseは用いない」ということを理解し、道を聞いてきた相手に対して、「Turn right at the next signal」と答えるのはよいが、これにpleaseをつけると不自然になる、と説明できればよいのである。
 このように教師の深い理解こそが、学習者への説明をより簡潔でわかりやすいものにする。
 また言語習得理論など日々の授業に直接関連しないようなものも、長期休業等を利用して学んでいくことが望まれる。
 教師は「授業者」としてよりも、むしろ「促進者」(facilitator)あるいは「媒介者」(mediator)としての役割が重視されてきている。
 これは、教師が知識を学習者に一方的に伝達するということからの変化を示している。
 教師が与える英語のインプットは別として、教室では学習者の方が教師よりも発話量が多いことが望ましい。
 そのためには、教師が授業の前に入念に準備をし、指示が明確で、学習者が実際に動きやすいようなタスク(課せられた仕事)を豊富に取り入れることである。
 そのうえで、教師は教室内をまわりながら側面から手助けをすることで可能になる。
 教師の役割としてはさらに、学習の良き「パートナー」(partner)であり、また学習を導く「指導者」(coach/trainer)であり、実際に英語を用いて見せるという点ではときに「演技者」(actor/performer)ともなる。
 よい英語教師とは、上記の役割をときと場に応じて柔軟に使いわけることのできる教師といえる。そして具体的には
(1)生徒に常に共感的態度で接し、誰をも受け入れることのできる「懐の深さ」
(2)生徒の実態や要求に常に耳を傾ける「反省的態度」
(3)授業改善を怠らず、的確な指導・助言をめざす「プロとしての自覚」
(4)言語を教える者として、積極的に人とコミュニケーションをとったり、英語があふれ出てくる「コミュニケーターとしての適性」
 を兼ね備えていることが求められる。
 しかし、この要件をすべて持ち合わせていなくても、これをめざし努力している教師はすべてよい教師と言える。
 また、誰もが同じ紋切り型の「よい英語教師」となる必要はなく、一人ひとり、人間としての魅力を生かすことができればよいのである。
 授業では「やさしいことを英語で、難しいことを日本語で」話せばよいのであるから、教師が自分自身の英語力を過度に心配する必要はない。
 しかしながら、この「やさしいことを、簡単な英語で説明する」ということほど難しいことはない。
 まずは、授業の冒頭に英語の挨拶と、今日の出来事などを英語で話し、本文の前にはオーラル・イントロダクションを入れる。
 そして、プリントを列ごとに提出させる際は、“Pass the papers forward”、ペア活動のためにお互い向き合って起立させる際は“Stand face to face with your partner(s)”などの教室英語を積極的にとりいれたい。
 このような表現は身振りとともに用いれば十分に推測ができ、活動のたびに用いれば次第に慣れてくる。
 そして、このような表現を英語で散りばめるだけで、予想以上に授業の大部分が英語で行われることになる。
 また、これらの決まり文句から、いつでも新たな英語が飛び出せる雰囲気が生じるのである。
 相手に話しかけるときには、常に伝わりやすいように工夫する配慮が必要である。
 これは、教師にとっても学習者にとっても外国語である英語を用いるとなれば、なおさらである。
 まだ十分に目標言語を使うことのできない学習者を対象とする場合は、次のような工夫が必要である。
(1)複文よりも単文でつなげるなど、できるだけ負担の少ない文構造を用いる。
例えば、What do you think of the watch he bought yesterday? を He bought a watch yesterday. What do you think of it? にするなど。
(2)未知語が入らないようにするなど、学習者の語彙量も考慮する。
(3)ときおり、身振りや手振り、あるいはYes、Noなどで答えさせ、学習者の反応をみる。
(4)学習者の表情をみながら、理解に合わせてゆったりとした速度で話す。
(5)口を大きくあけ、はっきりと話し、大事な情報が入っている部分などは強くゆっくり発音したり、イントネーションを変える。
(6)一度話しただけで学習者が理解したと考えず、パラフレーズするなど、落ちこぼれないような工夫をこらす。
 例えば、She didn’t allow him to buy the toy. She didn’t let him buy the toy.など。
(7)学習者が母語で既に知っているようなことがらも話の中に織り込み、背景知識を活用する。
 英語のような積み重ねが必要な教科においては、前の時間までに指導した内容を学習者が把握しているかどうかが問題となる。
 教師はえてして、学習者の能力が直線的に伸びることを期待するが、もちろん実態はそうではない。
 我々は学習した内容を時間の経過とともに、徐々に忘れていくのである。
 忘却曲線によれば、学習した直後の記憶量が最も大きく、その後短時間の間に記憶量は急降下し、その後は徐々にゆるやかに降下線を描いていく。
 したがって教師は、学習者が内容を完全に忘れる前に、常に復習の機会をもうけ、短時間の学習で高い記憶を維持できるように努めなければならない。
 さらに、グループにまとめて学習する体制化(organization)や、イメージとともに覚える精緻化(elaboration)など、学習内容を長く記憶にとどめるような方策を常に考えることが肝心である。
 また、学習の結果を生徒に知らせることは有効であり、常に励ましとともにティードバックを与えることが大切である。
 特に英語の指導においては、意思伝達をより重視し、細かい誤りに目をつぶる場合があるが、一通り会話が終わった後で、その指導の機会を逸しないことが大事である。
 教室での指導は、一対一で接する場合とは異なる配慮が必要となる。
 子ども一人とやりとりする場合、まだ指導に慣れない教師の場合、机の前まで近づいていって話をしているのをみかけることがある。自信がなく声を出せない子どもに対するときは、有効な場合もあろう。
 しかし、残りの多くの子どもたちはどうであろうか。自分と関係のない活動と気がゆるんでしまわないだろうか。
 常に子どもたち一人ひとりに適度な緊張感を持たせるためには、次のような工夫が求められる。
(1)発問のあと、指名するまで質問をくり返すなどして、全員に考えさせる。
(2)一人が発した質問や意見を教師が自分の言葉でまとめ、教室全体に投げかける。
(3)英語のやりとりの際は、一人が答えた正解や英文をクラス全体で復唱する。
(4)ペアワークやグループワークを活用して、個々の発話量を多くする。
(5)人数が多いことを利用して、条件に当てはまる人を捜すなどのタスクを用いる。
(6)座席表をコピーしたものを用意して指名した子どもをチェックするなど、発言する子どもが偏らないように心がける。
 授業前の準備として教科書の言語材料をチェックし、分からないところがなくなっても、それで教材研究が終わったことにはならない。
 教える側の準備はそこから始まる。どのような例文を用い、どんな言葉で説明をしたら分かりやすいのか、また、どこで生徒がつまずきやすいのかなどを事前に予測し、その解決策なども考えることが求められる。
 また、研究会や公開授業には積極的に参加し、英語教育雑誌やインターネットの関連ウェブサイトにも目を通す日々の研鑽が求められる。
 しかしながら一番望ましいのは、同じ学年を指導している教師集団がいる場合は、お互いに授業を見せ合ったり、共同で教材を作成したり、指導法について意見を交わすことである。
 さらに、最低でも学期毎に一度は、自分の授業に対する評価を生徒に求める必要がある。その際、それが単なる教師へのお世辞や中傷にならないように、
(1)評価する項目を細かく分け
(2)必ず「よい面を3つ、改善して欲しい面を3つ」あげるようにする
(3)授業の共同作成者として、生徒に具体的な改善方法を書かせる
(4)率直な感想を書けるように無記名にする
(5)その評価をただ自分の机にしまわずに、それに対する自分のフィードバックなども率直に交えてプリントして生徒に返す
(卯城祐司:1958年北海道旭川市出身、北海道公立高校教師、北海道教育大学助教授を経て筑波大学教授。全国英語教育学会会長,小学校英語教育学会会長)

 

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