「教えずに、考えさせる授業」では子どもたちに力はつかない
教え込み、詰め込み教育の反動として、知識を教えることは、もはや古いし悪いことであるような風潮が広まり、きちんと教えない授業が目につくようになった。
導入時にほとんど知識を与えないまま、考えたり討論したりする授業をときどき見かける。
「教えずに、考えさせる授業では、子どもに力がつかない」と感じていた教師は多い。
知識があってこそ人間はものを考えることができる。
学習は、与えられた情報を理解して取り入れ、それをもとに、推論したり発見したりしていくことである。
教えずに考えさせても、自ら学び、自ら考える子どもは育ちません。
「教えて、考えさせる授業」は、
(1)基本事項は教師が教え
(2)子どもどうしの説明や教え合い活動で理解を確認し
(3)理解を深める課題によって問題解決や討論などをして
(4)授業の最後に今日の授業でわかったこと、わからないことを自己評価して記述させる。
これが「教えて考えさせる授業」の基本的な流れです。
「教えて考えさせる授業は、あたりまえで、とっくにやっている」という教師の中にも、「教える場面」(教師が一方的な説明)と「考えさせる場面」(問題を与えて子どもに解かす)さえつくれば「教えて、考えさせる授業」になっていると思ってしまっている教師もいるようです。
「教えて考えさせる授業」のそれぞれの段階での注意点をまとめてみると、
1 教える
教材、教具などを工夫して、わかりやすい教え方を心がける。
また、教師主導で説明するときも、子どもたちと対話したり、ときおり発言や挙手を通じて理解状況をモニターしたりする姿勢をもつ。
2 考えさせる
(1)教科書や教師の説明したことが理解できているかを確認する
・子どもどうしの説明、教え合い活動を入れる。
・「授業でわかったこと、まだよくわからないこと」を記述させたり、質問カードで疑問を提出する。
(2)理解深化
多くの子どもが誤解してそうな問題や、教えられたことを使って考えさせる発展的な課題を用意する。
(3)参加意識を高める
小グループで、協同して問題を解決させて参加意識を高める。
(市川伸一:1953年東京都生まれ、東京大学教授。専門は認知心理学、学習過程の分析と教育方法を研究)
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