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教師になって感じ、悩むこととは何か

 山崎準二教授は20年間にわたり静岡大学教育学部の卒業生を対象に追跡調査に取り組みました。
 その調査により若い教師が感じ悩んでいることはつぎのようだと述べています。
 実際に教師になってみると、想像以上に多忙でさまざまな仕事をしなければいけない。
 教師は子どもと触れ合い、いっしょに活動することに何よりの喜びを感じるものです。
 ところが、現実には書類作成や校務分掌といった雑務が多く、そちらに取られる時間が増えています。若い教師は特にそのことを強く感じています。
 もう一つ感じることは、子どもの能力差、学力差が想像以上に大きいこと。
 きちんと教えればどの子どもも分かるし、伸びると思って教師になる。
 ところが現実には、小学校中学年くらいから学力格差が開き出し、中学生になるとかなり大きくなる。どう対応したらよいのか、戸惑っています。
 授業一つにしても、どの子どもに焦点を合わせてよいのか分からないし、きちんと教えていけばどの子どもも分かるというような甘い状況ではありません。
 軽度の障害のある子どもへの対処の仕方も含めて、生徒指導の面でも子どもの扱い方が多様化して難しい。
 子どもというのは想像していたほど単純な存在ではないというショックが新任教師にとっては大きくなってきているのです。
 そうした中でも懸命に子どもに向き合おうとエネルギーを注ぐのですが、さらに追い撃ちをかけるのは、保護者から厳しい批判にさらされることです。
 一生懸命にやっている自分を保護者は応援してくれるに違いない、という意識が粉々に打ち砕かれてしまうようなことがおきます。
 教師になって、こうした現状に対応するためには、授業方法や子どもとの接し方といった教育技術だけではないことに気付きます。
 それよりもむしろ、幅広い人生体験や教養から培われる人間性や人間力の方が問われていると感じます。
 それはすぐには身につかないことは十分承知していながらも、原点はそこにあると気付いているのです。
 教師が専門的な力を付けていく最大の要因は何かというと、子どもとの日常的な関わりの中での試行錯誤からの学びと、先輩教師からの助言、指導です。学校現場で鍛えられ、成長していくのです。
 相談相手は初任者研修で知り合った同期の教師や、女性教師の場合は友人や家族が多い。相談して助言を得るというよりも、悩みを打ち明けて聞いてもらえる相手なのです。
 職員室には、空き時間や放課後などでもなかなか気軽に話しかけられない雰囲気があります。
 みんなパソコンに向かって作業をしているからです。学校の中で日常的な教師同士の交流が薄れていく中、校内研修でしか相談できない状況は大きな問題です。
 しかも、研修では子どもの目線に立った指導をしましょう、などときれいにまとめられてしまう。
 研修で学びたいのは、現実に今悩んでいるこの子に対してはどうすればよいのかといったことなのに。それはやはり先輩教師に相談するしかありません。
 現実に実践するには、それなりの経験と力量がいるものなのです。
(山崎準二:1953年山梨県生まれ、静岡大学教授、東京学芸大学教授、東洋大学教授を経て学習院大学教授。専門は教育方法論・教師教育論)

 

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