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子どもを注意できない教師が、注意できるようにするにはどうすればよいか

 子どもを注意することが難しくなり、できない教師も増えている。
 その場で注意できない教師、注意しても徹底できない教師、注意しても生徒に反抗される教師は、教師としての自らの適格性に疑問を抱いて苦しみ、悩み、心身症におちいる例も増えている。
 だが「できません」と言っているだけでは、けじめはつけられない。
 それぞれの教師が「その場で注意」できる教師に成長することが必要だ。
 そのためには、職場の教師が組織的に援助するようにする。それぞれの教師が個性に応じた指導法を発見できるように研修するとよい。
 生徒に怖がられている教師とそうでない教師とが、同じ言葉と態度で注意することはできない。
 それでは、どのようにすれば注意できるようになるのでしょうか。
1「その場で注意」できない教師は
(1)後で子どもを呼んで注意する。なるべく人目のないところに呼んで注意する。
(2)職員室へ戻ってきて、関係教師に通報する。
(3)一般的注意や掲示などによる注意など工夫する。
2 注意することについて学習会を開く
(1)「注意」について学習する。
(2)「その場での注意」の仕方を学習する。
(3)「注意の指導方法を出し合い」自分に適した指導方法を発見する
 ワークショップで「私ならこう注意する」といった指導方法を出し合い、実演しあって学習する。
 他の教師の指導を見ながら、それぞれの教師が自分に適した指導法を発見する。
 具体的に例をあげると、例えば、
 教師が、私語をする子どもに「何しゃべっているんですか。おしゃべりやめなさい」と注意したら、その子どもに「うっせーな」と反抗された。
 この場合、どう指導すればよかったのでしょうか。
 教師がそれぞれ自分の考えた方法をつぎのように演じて見せ合った。
1 新卒の教師は「すみません。おしゃべり、やめてくれますか」
2 ベテランの家庭科の教師は「楽しそうだね、その話、あとで先生に教えてね」
3 社会科の教師は「仲良くていいね。さて、話の続きは休み時間にしたら」
4 国語の教師は「そこ」と注目させ、ニコッと笑って唇に指を立て「しーっ」という静粛の合図を送った。
5 怖そうな体育の教師は「うるさい。おしゃべりやめろ」と怒鳴った。
6 理科の教師は「なに話し合っている。大事なことらしいな。みんなにレポートしてもらおうかな」
7 音楽の教師は、近づいて行って「どうしたの。緊急事態発生したのかな」と聞いた。
8 保健の教師は「何か先生の授業がおもしろくないのかな。おもしろくなかったら要求してください。どうぞ発表して。ここでいやなら、あとで教えてね。保健室で待っているからね」
 と、いろいろな指導方法のあることがわかる。どれも正しいと家本芳郎はいう。
 こういう指導の研究で大切なことは、一つの方法に統一しないことだ。
 みんながみんな体育の教師のように、みるからに怖そうな教師でないからだ。
 指導方法は「各自の自由」である。
 このように、それぞれの指導方法をだしあって、つぎの順序で自分流の指導方法を編みだせばよい。
1 いろいろな教師のいろんな指導方法を学ぶ。
2 そのなかから、自分にもっともふさわしい指導方法をさぐり、発見する。
3 発見した指導方法をそっくり真似してみる。
4 真似した指導方法を自分に適するように修正してみる。
5 さらに、発展させ、自分流の指導方法を編みだす。
 指導方法は自分流を編みだせれば、いうことはない。そこにいたるまでは、先人に学ぶことである。
 もう一つ例をあげる。
 教師の「やめろ」のひと声で子どもたちをやめさせるにはどうすればよいでしょうか。
 教師である以上、注意することからは逃げられない。教師は「やめろ」と注意したとき、その一声で制止できたら言うことはない。
 やめないのは、教師が子どもになめられていて、こわくないからだという説がある。そう思っている教師が多い。
 だが、そんなことはない。もし、それが事実なら、教師全員がこわい教師になる必要がある。
 おっかない教師が見ているところではやらないが、見ていないところではやるかもしれない。
 どうせ「やめろ」と言うなら「それから後もずっとやめる」ようにしたいものである。
 子どもが教師の「やめろ」の一声で、その行為をやめるには、つぎの条件を満たせば、こわくない教師も、やめさせることができる。
1 子どもを追い詰めて、逃げ場を失ったネズミにしない
 どんな場面で叱られるかが子どもにとっては大問題である。
 子どもにもメンツがある。みんなの前、好きな女の子前で「やめろ」と言われたりすると、すなおにやめない。
 したがって、やめさせる場合、その子どもの立場も考えながら注意し、その後で、きっちり指導する。
2 教師の言葉の力
 教師の「やめろ」と言う声に、すぐにその行為をやめさせる強い響きがあることだ。
「これはよくないことなんだ。すぐにやめなくては」と思わせる響きがある場合、子どもはハッとわれに返ってやめる。
 教師は「やめなさい」を13通りに表現できなくてはならないという人がいる。
 いろんなニュアンスで「やめなさい」が言えなくてはならないという意味だろう。
 ところが、教師はそういう訓練をほとんどしていないから、「断固として叱りなさい」と言うと、威嚇的な大声でしか発声できない。
 昔はそれでよかったが、今日では、その中にやさしい響きと、怒りや悲しみや、嘆きや痛ましさの表情をともなわなくては、強い抑止力を発揮できなくなった。
 制止や禁止の言語能力を高めることが求められている。
3 モラルに反する行為
 やめさせる行為がモラルに反している場合である。
 例えば「人を殺傷する」「人のものを盗む」「人の権利をふみにじる」「弱い者をいじめる」といったことなどである。
 「きまり」は日頃から取り上げ、子どもたちにもよく理解させておかなければならない。
 教師の「やめろ」に呼応するモラルを子どもの内部に育てておくためでもある。
 この「きまり」に反する行為にたいしては、即座の有無を言わせぬ禁止を求める。
 ところが「髪の毛を染めてはいけない」という校則は「規則」であって、人類普遍のモラルではないから「有無を言わせぬ禁止」項目にはならない。
 ここをよく間違えるので区別をしなければならない。
 これを同じレベルで指導しようとするから、無理がおこり、破綻する。
4 教師が好かれている
 「やめろ」と言った教師が好かれている場合である。
 好かれている教師が言うと子どもはやめる。嫌いな教師はなかなかやめない。
 教師は子どもに好かれ、信頼され、尊敬されるようにつとめなくてはならない。
5 納得できる指導を受けた経験がある
 今までに子どもが納得できる指導を受けた経験があるということである。
 「先生が『やめろ』と言ったので、自分はやめた。その後、先生は自分の気持ちも聞いてくれるし、慰めてくれて、納得のいくように説明してくれた」という信頼感である。
 そういう姿勢をもった教師であれば、子どもはやめる。
 学校現場では、指導に苦手な教師のレベルからものごとを発想していくべきである。
 注意できない教師の発言を大切にとりあげることで、そこから教育の思想や技術を深めていくことができる。
 たてまえで動く職場はかならず破綻するものである。
(家本芳郎、1930-2006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)

 

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