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国語科:「銀の匙(さじ)の授業」   橋本 武

 「銀の匙(さじ)の授業」について橋本 武はつぎのように述べています。
 「銀の匙」は作者である中勘助の自伝的小説で、たくましく成長していくさまを描いています。中学で三年かけて読み解きます。
 「銀の匙」の授業では、学習の手引「銀の匙研究ノート」を使います。
 このノートは楽しみながら学べるよう、読み込みのポイントが書かれた、書き込み式の副教材です。
 ここに語句の意味や、内容の要約を書き込んでいきます。
 ノートには、各章の終わりに参考として、本文で触れられていた風俗・習慣や、特別な言葉の解説をしいます。
 この解説を参考に寄り道をします。中学では国語を好きになってほしかったので、寄り道を大切にしました。
 寄り道で興味と好奇心を持って見聞したことは一生忘れることがありません。
 「銀の匙」前篇二の章を取り上げます。全文をつぎに掲げます。
「私の生まれる時には母は殊のほかの難産で、そのころ名うてのとりあげ婆さんにもみはなされて東桂さんという漢方の先生にきてもらったが、私は東桂さんの煎薬ぐらいではいっかな生まれるけしきがなかったのみか気の短い父が癇癪をおこして噛みつくようにいうもので、東桂さんはほとほと当惑して漢方の本をあっちこっち読んできかせては調剤のまちがいのないことを弁じながらひたすら潮時をまっていた。」
 本文中の難しそうな語句には一重傍線がついています。意味がわからなかった人は、語句の説明を読みます。(例:名うて=高名であること。評判がよいこと。癇癪=少しのことで怒りだすこと。潮時=ちょうどよい時期)
 「銀の匙」では、各章の冒頭には、四などと数字がふってあるだけです。
 まず、私は各章のタイトルを生徒たちに考えさせます。
 それを授業の中で発表していって、クラスでひとつの題を決めるのです。
 クラスで決めた題が正解というわけではありません。大事なのは自分で考えることです。
 本文中の二重傍線がついた言葉に関連する寄り道をしていきます。
(1)
「難産」の寄り道
 自分が生まれたときの様子を、聞いて文章にまとめてみましょう。母のこと。父のこと。できるだけ詳しく聞いてください。
(2)
「漢方」の寄り道
 漢方医学の歴史と、特徴の説明。大阪市の薬問屋街にある「神農さん」(少彦名神社)の「張り子の虎」由来やお祭り、それにともなう「コレラ」の話など。
 章の授業を終えると、その章の内容を正確に200字に要約します。文字数を限定することによって語彙力が向上します。
 この「銀の匙の授業」を通して身につけられる力は
(1)
語彙が増える(一つの言葉に注目して、似た言葉を集める「寄り道」で語彙が増える)
(2)
自分で考える力がつく(各章に題をつけるなど、随所に考える課題がある)
(3)
文章力が向上する(各章の内容を200字に要約することで、文章を綴る能力が高まる)
(4)
記憶力がアップする(知的な遊びを取り入れ、脳を活性化させる)
(5)
調べる力がつく(寿司屋の湯飲みなどを収集して魚偏の漢字を調べるなど)
(6)
言葉に敏感になる(思いがけない言葉から寄り道することで、言葉の意味に敏感になる)
(7)
読み解く力が強くなる(主人公の行動を追体験することで、物語の世界に没入できる)
(8)
好奇心が刺激され、学ぶことが楽しくなる(寄り道や追体験を通して学ぶことの楽しさを知るのが「銀の匙」授業のもっとも大きな効果だろう)
(
橋本 武:1912年-2013年、元灘高等学校教頭。旧制灘中学校に国語教師として赴任後同校で50年間教えた。伝説の灘校国語教師として2009NHKで放送され、本が2010年にベストセラーとなる)

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