子どもや保護者が満足する、プロの教師をめざすにはどのようにすればよいか
子どもを学校に通わせている親のいちばんの関心事は何でしょうか?
成績を別にすれば、「子どもが教わる先生はどんな人か」という、教師の人格と実力に一番の興味と関心を持っています。
子どもを、易しく伸びやかで、公平に扱ってくれるような教師を求めています。親から見れば、授業の実力もさることながら、わが子を大事に扱ってくれるかどうかが重大な関心事となります。したがって、教師はこの親の気持ちを理解することから、始めなければいけません。
どのように、やるべきことをやるかという方法に教師の個性と実力が表れ、そこにプロとしての力量が問われるのです。
自分なりのやり方が確立していない試行錯誤の状態であれば、同僚や先輩の教師の技を盗むことも必要です。他の教師の教室内の指導の実態はわかりにくいので、盗めなければ教わるより仕方がないのです。
私の経験からいうと、生徒指導はやり方の問題です。子どもと保護者を大切にするという気持ちを根底におき、生徒指導の具体的なやり方にどのように反映するかです。
おかれた状況により違うので、画一的に「このようにするというノウハウ」は必要ありません。むしろ、有害無益です。
ただ、どのような場合でも、保護者にしっかりと説明する必要があります。明確な説明をしてくれないと保護者は不安になり、教師に文句を言うのは当然です。
しかし、小学校も高学年になるにつれ、教師の「人柄」だけではダメです。教師としての「指導力」と「学力」が問題となってきます。
教師が指導力を発揮して、子どもたちが安全で安心して過ごすことができるかを親は気にしています。
さらに、学校は学ぶための場所です。教師が教える内容と技術について豊富な知識と経験があるかどうかが大切です。
特に小学校では算数と国語が主要教科であるから、この二教科とりわけ算数は教え方によって上達度が違います。好き嫌いにも影響します。
教師には親ではできないことをやる使命と役割が与えられているのです。愛情があればあるほど親子間では距離が取りにくい。
アカの他人であればこそ、ある種の冷淡さが子どもたちから甘えを取り去り、自立心や独立心を育む作用をするのです。つまり教師は他人としての適度の冷たさが必要だということです。
学校で一番大事な授業は情熱だけではできません。必要なのは知性と教養です。問題解決の方法を考え出す経験や専門的な知識に支えられた知性のほうが、役立つことは言うまでもないことです。
学校教育は、言うことと行うことを、なるべく一致させることが望ましい。異なると不信感を保護者が持ちます。
教師に「忙しい」が口癖みたいな人がいます。しかし、プロといわれる教師は、子どもが担任ところへ行っても「今、忙しいから後で」とは言いません。教師にとって最大の仕事は子どもとその親を相手にすることだということがわかっているからです。
教師はプロとしてやるべきことを粛々とやり、何ごとについても言い分けせずに結果を見てくれという姿勢を持って臨んで欲しいものです。
学校の教師は自分流でいける職業です。しかし、プロ意識が欠如していると、問題が生じるのです。教師は教育のプロです。プロとは自分の知識や技能を売って給料をもらっているのです。
学校教育のプロとしての基本の仕事である「授業」と「生徒指導」がきちんとできないのなら、給料ドロボーと言われても仕方がありません。大事なことは問題解決から逃げないことです。
授業が成立しない、学級経営がうまくいかない、そういう場合は、本人が同僚に相談するにしろ、最後は自分で解決するしか方法はないから、何がなんでも解決のすじ道を見つけなければなりません。
一番のカギは授業です。良い授業をしている教師に「学級崩壊」などということはあり得ません。ダメな教師の授業は子どもが相手にしないから、授業が成り立たないで「学級崩壊」するのは、昔も今も変わりがないことがよくわかります。
よい授業とは、子どもたちに「素晴らしい授業」と評価される授業が「よい授業」なのです。
授業を改善するには、子どもたちから率直な意見をきく、同僚の授業を見せてもらい参考にするなど、あらゆる方法で、日々、授業の改善工夫を凝らす以外に道はないのです。これが教師の仕事のキーポイントです。
学級経営では子どもが安心して勉強に専念できる雰囲気をつくることが肝要です。学級をワルのボスに仕切られたのでは、子どもは学校へ行くのが嫌になります。いじめを防止することも最重要課題です。
それでは子どもに理解され、受け入れられる「よい授業」と何でしょうか。
まずは、子どもの「興味を引く」、「おもしろい」という要素が大事です。さらに、子どもにとって「役に立つ」「ためになる」という要素も大事です。
教える内容をいかにわかりやすく、興味深く教えるためには、教師自身にかなりの学識がないとできません。
日々、自分自身に投資して、せめて最低、年間100冊を超える本を読まなければ、子どもたちを満足させる授業を行うことは難しいのではないかと思います。
また、塾が子どもたちに評価されているのだから、教師もその技を盗むような努力をしてもらいたい。
塾は子どものニーズに即して、授業内容をどんどん改変します。飽きさせないように、さまざまな工夫を凝らします。
塾は授業者自身のキャラクターも商品なので、おもしろ系、ハッタリ系、アカデミー系のキャラを作り、子どもの方に顔を向け、必死に自分の授業をアピールします。根本に成果主義があるから、結果を出すためのパフォーマンスが必要なのです。
教師が、いつまでも「先生」という権威に安住していると、自分の能力は劣化してしまいます。だからこそ、塾の切実感を学校の教師も学んでほしいのです。
(戸田忠雄:1937年生まれ、長野県の私立、公立学校の教師、公立高校長、信学会長野予備学校長などを歴任し、政策研究大学院大学政策研究科客員教授。XYサタデースクールネットワーク代表。専門は教育政策・学校論など。政府の審議会専門委員も務めた)
| 固定リンク
「教師に必要とされる能力」カテゴリの記事
- 教師として必要な資質(1)(2021.03.06)
- 教師に向かない人、向く人とは、教師に必要な人間としての資質とは何か(2020.12.22)
- 教師に求められる資質とは何か(2020.12.20)
- 教師、教頭、校長はどのような人がよいか(2020.12.18)
- 国語教師に必要とされる能力とは何か(2020.10.20)
「保護者にどう対応するか」カテゴリの記事
- 保護者に「校長に会わせろ」といわれたらどうすべきか 星 幸広(2021.05.05)
- 担任が保護者に最も好かれることとは何か(2021.04.21)
- モンスターペアレントが病的であるか見極め、個人で対応せず、相手のペースに乗らないことが非常に重要(2020.07.27)
- 授業や子どもの生活の一部をエピソードとして蓄積し、発信すれば教室を楽しくし、保護者の苦情も少ない(2020.05.22)
- 教師をギャフンといわせたいクレーマーには、どう対応すればよいか(2020.03.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント