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気づかなかった自分に出会い発見することが何よりも面白い

 演劇についての思いを世界的に有名な演出家である蜷川幸雄はつぎのように述べています。
 いまの若い世代は、テレビや映像の感覚で育っているため、ものごとを論理的な構造に置き換えてみるということをしません。
 セリフも、平板な言い方でなく、言葉の頭の部分と語尾が明確に相手に届き、人間として自己主張するような表現をしてほしい。
 俳優の仕事は、人間を表現するから面白いのです。
 若い俳優が、うれしいことや悲しい出来事について人生でいろいろな体験を積み、老いたり体が衰えたりすれば、深い喜びや悲しみの経験と認識が体に宿り、俳優の演技に反映されます。
 その俳優の人生の軌跡が、演技に表われる演劇を組織するのが、僕の演出でありたい。
 何か新しいことをするときは自分を追い込んでいきます。
 家で何日か寝ないで本を読んだり、遊んだり、うろうろしていると、新しい感覚が生まれイメージが湧いて出てくる。
 また、稽古中に胃腸薬をポリポリ噛みながら、稽古をしていると目の前を虫が飛ぶんです。
 幻覚ですが、そういうふうに自分を追いつめていくと、確かに頭やイメージが動き出しますが、体を痛め続けているから、胃潰瘍とか、体はズタズタになります。
 総合芸術である演劇では、人間関係が大事で、コミュニケーションが難しいんです。
 演出家という仕事は、嫌なことも人に言わなければならない。
 演出家は観客の目を代表しています。俳優に対して演技をジャッジして、指図したり、否定したりする立場です。
 僕も昔のようにがむしゃらでなく、声高に主張しなくても、みんなに対して説得力を持つ人であたい。
 もっと多義的な解釈ができるようになりたいと思う。
 自意識過剰な僕は、そういうことが苦手だった。
 だけど、納得さえできれば、相手を受け入れて付き合うことが、素直にできるようになってきた気がする。
 演劇は、人と人との出会いに尽きると思うんです。
 演出のイメージも必ずしも絶対的なものではない。
 失敗したり、やり直したいと思ったり、もっと違う選択があり得たとか、自分が見落としていたものがあるなとか。
 人生でも演劇でも、気づかなかった自分に出会い発見することが、何よりも面白いんです。
 そしてチームワークこそ、演劇で最も大事なものなんですね。
 僕は、日本的なものわかりのいい、物静かな老人にはなりたくないですね。
 自己主張が強くて、自分の仕事を容認しないで否定しながら、最後まで、創造的な仕事に対して冒険家でありたい。
 そう、僕はあのピカソのような人になりたい。
(蜷川幸雄:1935-2016年、世界的に有名な演出家。元桐朋学園大学短期大学部学長。「王女メディア」「NINAGAWAマクベス」などの斬新な演出が話題となる。ベルリンでオペラ演出をおこなうなど国際的に活躍。歌舞伎座公演「NINAGAWA十二夜」の演出で菊池寛賞。朝日舞台芸術賞特別大賞,読売演劇大賞・最優秀演出家賞。22年文化勲章)

 

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