保護者からの苦情をこじらせないようにするにはどのようにすればよいか
大阪大学(小野田正利教授)の調査(2005年)によれば、保護者対応のむずかしさを日頃から感じると答えた教師は全体の九割に達した。
「担任を替えろ」といった保護者の申し入れに「聞くことすら嫌だ」と思う教師は多い。
事なかれ主義の教師など、申し入れへの対応力が乏しい教師は、
保護者の言っていることが嫌だ、
どう対応すればよいか判断ができない、
他の教師や管理職に相談するのは恥ずかしい、
などと考え、保護者を態度や言葉による圧力で一方的に押し返そうとしてしまう。
こうした教師の初期対応は、保護者に対する思いやりがなく、保護者の逆鱗に触れ、自ら問題をこじらせてしまう。
保護者からの苦情によるトラブルを未然に防ぐためには、まず教師の姿勢を変えなければならない。
それによって多くの問題の解決が図れる。
トラブルを引き起こす原因のひとつに教師の高いプライドがある。
そのプライドのため、保護者から強い口調や強硬な態度に出られると、教師は形勢をばん回しようと、日ごろ子どもを相手にしている癖で、無意識のうちに保護者に教えたり叱ったりする立場に立ってしまい、それが態度と言葉に出てしまうのだ。
その結果、保護者は教師にバカにされたように感じ、さらに怒ってしまうことも多い。
せめて、保護者の申し入れを聴くときぐらいは、プライドという重い鎧を脱いだらいかがだろうか。対等の立場で話を聴いても窮地に陥ることはない。
保護者の申し入れがイチャモンなのかその判断がむつかしいこともある。
しかし、ひとまずすべて「苦情」として受けとめることができれば、対応の失敗は最小限となる。
保護者の申し入れは、その多くは簡単に採用できる内容ではないだろう。
その場での対応としては、即決せず「学校の検討課題としてご意見をいただく」と伝えるだけでよい。
ただ、その時に「きっとこの提案は実現できないだろう」とわかっていると、どうしても困惑が顔や会話に出てしまうだろう。
しかし、申し入れを「苦情」として対応すれば、そうはならない。
なぜなら、提案を採用するか、しないかよりも、言わずにいられない保護者の気持ちの「落としどころ」が見つかるかどうかがポイントになるからである。
管理職としては、保護者からの申し入れを最初に受ける担任に、対応の仕方を教えておくべきだ。
つまり、保護者の話が無理な相談だとわかっていても黙って聴くこと。
自分で判断せず「ご提案はお預かりして、校長や副校長に相談してみます」と、その場で伝えるようにする。
もちろん、実現は困難だとわかっているのだから、軽い予防線を張らせることも忘れてはならない。
たとえば、
「たいへん貴重なご提案をいただきありがとうございます」
「さっそく会議に諮れるよう提案してみます。少しお時間をください」
「しかし、その会議で検討しても実現できるかどうかという問題もあります。その点だけはご承知ください」
「でも貴重なご意見です。ありがとうございました」
というふうに。
一方、保護者の申し入れ内容が学校に非がある場合は学校が謝罪することになる。
謝罪しているのに許さないと、我を張る保護者がいる。
そのときは我を張らせない話術が必要となる。
謝罪しながらも、保護者に「仕方がない」と思わせる会話力が大事である。
会話で保護者の心を和ませようとするのだから、保護者の心理を読む冷静さと会話の間のよさが求められる。
苦情対応の世界では、一度提案してもお客から拒否されることはいくらでもある。
当然、つぎの手を考えて準備をしておく。
それが拒否されたとしても、さらに次の手まで考えておけばよいだけのことだ。
(関根眞一:1950年埼玉県生まれ、苦情・クレーム対応アドバイザー。百貨店に34年間在職し、お客様相談室長を経て、メデュケーション(株)代表取締役)
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