いじめが起きたとき、担任は子どもたちや保護者にどう対応すればよいか
つぎのようないじめがあったとき、担任は子どもたちや保護者にどう対応すればよいでしょうか。
「中学一年生の男子生徒が数人の生徒からからかわれたり、シューズで頭をたたかれたりされるなどのいじめを受けていました」
「気づいたときには、かなりの時間が経過していて、わが子からの訴えをしばしば聞いていた保護者は、学校やいじめた生徒の保護者に対して不信感を強くしていました」
このような数人でひとりの生徒をいじめた場合、罪の意識が弱く、反省を求められても「自分だけではない」と言い逃れをすることがあります。
いじめた子どもを強く叱責し、いじめられた子どもを単にかばうやり方だけでは、一時的な抑止にはなっても本当の解決にはなりません。いじめが陰湿さを増す結果さえまねきません。
緊急にとるべき措置と、長期的な取り組みが考えられます。
1 緊急の対応
まず、子どもたちへの指導を通して、保護者への働きかけを考えなければなりません。
(1)学級の子どもたち全員に対する指導
「いじめは人間として許されない行為であり、絶対にあってはならないこと」ということを理解させます。
これはじっくりと理解させる以外にありません。
そのなかで、自分はどうだったのか、を十分に考えさせます。
いじめていた子ども、見ていた子ども、それぞれに本音が出せるように、教師がしっかりと共感的に受けとめていくことが大切です。
(2)いじめていた子どもたちへの指導
「先生はいじめは絶対に許さない」という毅然とした態度が必要です。
いじめの行為は厳しく指導しても、人間性まで否定してはなりません。
いじめられた子どもの苦しい気持ちを伝えながら、教師の素直な気持ちを示します。
(3)いじめられた子どもへの対応
いじめられた子どもは身も心も傷ついています。その心身の保護に努めます。
「全校の教師で必ず守る」と約束し実行します。
注意深く見守り、話を聞くなどして、かかわりを持ち続けることが大切です。
(4)保護者への対応
いじめられた子と保護者は、いじめた子と傍観者、気づいてくれなかった教師に不信感をつのらせています。
教師はいじめを早く発見できなかったことを素直にわび、学校の指導体制と学級の子どもと保護者への働きかけの様子をしっかりと伝えます。
傍観者もふくめ、いじめていた子どもの保護者に、いじめの全容と、どこがいけなかったのかをよく話し、いじめの本質をよく理解してもらいます。
「保護者の方々も教師の気持ちも、子どもたちみんなが健全に育ってほしいということで一致しています」
「いじめは悪いことです」
「間違ったことをしたとき力になってやるのが大人の責任ではないでしょうか」
と、いじめられた子どもの苦しみ、痛みを教師の気持ちを交えて説きます。
2 長期的な取り組み
(1)いじめられた子どもに対して
家庭との連絡を密にしながら、本人にいろいろな活動の場をあたえ、そのなかの努力を認めることによって、自立への援助を行います。
支え続けることによって、本人の意欲を引き出し、周囲の子どもたちが認める場へと導いていきます。
(2)いじめをとりまく子どもたちに対して
教師は子どもたちの人間関係をよくしていく努力を一層重ねていく必要があります。
教師が子どもたちに思いやりのある接し方をすることによって、子どもたちの心のなかにも自然と思いやりの気持ちが生まれてきます。
多くの活動の場を与えることによって、ストレスを発散させ、明るい雰囲気をつくり出すことに教師は努めます。
(3)保護者に対して
保護者とよく連携しながら、子どもたちの家庭での存在感や家族への貢献度を認めていく努力を続けてもらいます。
学級懇談会など様々な機会に、教師から実例話を聞いたり、他の保護者と意見交換をしたりするなかで、子どもの成長段階に適した子どもたちへの接し方や、認める、ほめる、叱るなどを理解してもらうようにします。
(松田素行:千葉県公立中学校校長,千葉県教育庁主幹,昭和学院短期大学教授を経て,文教大学教授)
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