教師が親にクレームをつけられないためにはどうすればよいか
親にクレームをつけられないようにするにはどうすればよいか、多賀幹子はつぎのように述べています。
クレームの集中砲火を浴びせるモンスターペアレントと呼ばれる親がいる。
東京都内の小学校のある教師は、かすり傷を負った子どもの親から「絆創膏をはるほどのケガなのに、なぜ親にしらせないのか」と電話でどなりつけられた。
親はさらに学校を訪れ、教師を数時間にわたり叱責した。
教師はその夜から眠れなくなり、うつ病と診断された。
教師の真摯な取り組みや地道な努力を踏みにじるモンスターペアレントには心から憤りを感じる。
誠実な教師ほど苦しんでしまうのだろう。
小・中学校で親の対応が増えて神経を痛め、休職や退職に追い込まれる教師が増えている。
授業の準備時間が足りないという教師も7割を上回る。
クレームで最も多いのは、「うちの子をいじめた子を転校させて」といった、自分の子どもを最優先させるタイプである。
こうした親に共通しているのは、孤立と孤独だろうと思う。
楽しく充実した毎日とはほど遠い生活を送り、欲求不満を募らせている。
善意の集団である学校は、苦情を持ちこむにはうってつけの場所なのだ。
これに対して、各教育委員会などが、支援制度や支援チームを組んで、対応に乗り出し、ある程度の抑止力になっている。
「しっかりした制度」は親のモンスター化を防止するかもしれない。忙しい教師にとって願ってもないことだ。
岩手県の苦情対応マニュアルでは、身構えることなく、事実をもとに冷静に対処する。
言い分を十分聞いたうえで正しい情報を伝える。
プライドの高い親には、発言を無視されると攻撃的になるので丁重なあいさつなどに留意する。
愉快犯型の親は、苦情などにとまどう様子を見て快感を得ようとするので、決して一人では対応しない。
金品を要求してくる親に対しては、毅然とした姿勢を貫き、警察と連携を密にとる。
といった対応が示されている。
かつては、「子どもが好き」で教師の仕事を選んだ人が多いが、クレーム社会となった今は、子どものことをやっていればよい時代ではなくなった。
「子どもや親と関わることが好き」でなくてはいけない時代になっている。
教師は、子どもにとってプラスになることを親とともに考える、という姿勢を持つことが大切になってきた。
教師と親の対立でもっとも損害を被るのは子どもたちである。
子どもたちのためなら教師と親は協働できるはず。
教師は親からのクレームにたじろがないでほしい。
むしろ、ふだんから親とのコミュニケーションを積極的に取ってほしい。
子どものプラス情報を、ここぞというときに親に伝えてほしい。
「先生はちゃんと見ていてくれたんだ」
「気がついていてくれるんだ」
と感じることほど、親に信頼感を持たせることはない。
「うちの子は大事にされている」と感じ取れば、クレームをつける親などいないだろう。
(多賀幹子:広告会社の編集者を経て、フリージャーナリスト。女性・教育・異文化を取り上げる)
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