問題行動が起きたとき、どう指導すればよいか 戸田正敏
問題が起きたときほど教師は「しめた!」と思うべきである。
問題が起きたときは、指導のチャンスであり、子どもたちを変えられるチャンスである。
それが、子どもたちの心の成長や、学級集団の成熟につながる。
問題が起こったときほど教師は「心の余裕」を持ちつづける必要がある。
事実の確認を怠らず、素早く、しかし、じっくりと指導にあたる。
一回の指導ですべてを解決しようと無理をせず、じっくりと指導にあたるようにする。
学級内で問題が生じたときは、話し合って、学級のルールをつくるチャンスである。
しかし、必要以上にルールの数は増やさないようにする。
最終的には、ルールがなくても子どもたちがよりよく行動できるようにすることである。
学級で問題が起こったとき、教師の「落差のある言動」によって、子どもたちへの指導が入りやすくなる。
つまり、いつもの「明るく、楽しい雰囲気」から一変して、「これはヤバイぞ、いつもと違うぞ」と思わせるような言動によって指導が入りやすくなるのである。
落差のある言動とは、「声のトーンを落とす」「毅然とした態度をとる」ことである。
声のトーンを落とすことによって、子どもたちに「おや、いつもとは違うぞ」と暗黙のサインを送ることができる。
その暗黙のサインによって、教師の指導に耳を傾ける雰囲気づくりができます。
「声のトーンを落とす」ことにより、教師が感情的にならなくなり、必要以上のことも言わなくなる。
教師が大きな声を出せば出すほど、子どもたちは反省するのではなく、教師の声が頭の上を通り過ぎていくのをがまんして待っているだけである。
「声のトーンを落とす」のは、問題行動の指導の基本的な技術である。
指導を行うとき、子どもたちがざわついて話を聞いていなかったりした場合は、あえて何もしゃべらず、しばらくの間、黙っているようにする。
注意する子が現われてクラス全体が静かになった段階で声のトーンを落として指導を行うと、さらに効果的になる。
この「静かになるまで教師が黙り、その後で声のトーンを落として指導する」という方法を何回が続けることにより、暗黙の指導となり、問題行動に対する指導の習慣化が図れる。
このような指導は、ふだんの「明るく、楽しい雰囲気」があってこそ得られるものであり、いつも大きな声でガミガミと指導を行っているようでは、効果がない。その点を理解し、心に留めておく必要がある。
問題行動に対する指導は「短く、ズバリと行う」ことが鉄則である。
問題行動が生じたときの指導は「何が問題か」、「これからどうすればよいか」という二点をズバリひと言で子どもたちに伝えるだけでよい。
お説教は、長くなりやすく、子どもの悪さを指摘し「だから、ダメなんだ」という精神論的訓話になりやすい。
教師の声のトーンが高くなりがちで、このような状態になると、子どもたちは教師の話を聞く耳を持たなくなる。
これが続くと、どんなことについても教師の指導が入らなくなり、学級は確実に荒れてくる。
そして学級崩壊への道を歩むこととなる。
問題児を指導する場合は、問題行動の事実確認を最優先に行う。
問題行動を起こした子が複数いる場合は、一人ひとり個別に呼んで事情を聞く。
事実確認を終えたら、一つ一つの事実の矛盾や違いを追求する。これができれば八割は成功。
その後、一人ひとり呼んで穏やかな調子で「なぜ、そのようなことをしたのか」理由を言わせる。
教師は子どもに、その問題行動の「悪さの意味」をズバリひと言で指摘する。
これが最も重要なポイントで声のトーンを落としながら、毅然とした態度で指摘する。
指導する場合は、子どもの表情や態度をよく見ながら、子どもとの応答式の指導を繰り返していく。
このとき、穏やかな中にも毅然とした教師の態度が必要である。
きつく叱る場面と、情に訴えるような場面、両方を入れるようにする。
どちらかだけの指導では効果は薄い。
(戸田正敏:1957年生まれ、千葉県公立小学校教頭)
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