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読書指導で子どもは変わる   杉本直美

 今までの読書指導の多くは国語科の教材の読み、特に文学作品の読みに偏重し、自立した読み手をいかに育てるかという視点に欠けていた。
 読解指導のあと、主人公の気持ちを考えたり、主題を考えたりすれば読書指導であるという授業がいまだに見受けられる。
 読解力が向上すれば、読書行為に転移するものではない。
 何のために読むのか、それが自己形成にどのようにかかわるのか、そのことを子どもたち自身が実感しない限り、主体的に読むという行為は生まれない。
 そこで重要になるのが読書生活である。
 読書生活というのは、本や新聞、雑誌などを始めとした実生活における多様な媒体から情報を得て、必要に応じて選択し、組み替え、創り出し、将来へとつなげていく日々の生活である。
 読書という行為や読書生活そのものを取り上げて教材化し、子どもたちと共に考え、創り出していく。
 そうすることでこれまでとは違う読書指導の姿が見えてくるだろう。
 例えば、国語の授業のとき、教科書の物語を読み合うことの面白さは、互いの考えの交流による新たな発見や考えの交流にある。
 読書指導で、「クライマックスはどこか」という明確な課題意識をもって物語を読む。
 その上で、今までの読書生活の中で読んだ本の中から一冊を選び、クライマックスを中心に作品を紹介し合う。
 過去に読んだ作品を、授業で取り上げた作品と比較しながら紹介するという学習は、過去に読んだ本を再読することになる。
 目的をもって読むという活動が展開される。
 自分の読書生活の現状を意識させるとともに、今後の読書生活の広がりへの期待を込めての学習活動でもある。
 家で読書をしなかった中学生の子どもが読書指導をきっかけに、変化した感想を次のように述べています。
「読書をしてから、やっぱり生活は変わってきたと思います」
「テレビを見る時間は本を読む時間にかわりました」
「本屋に行っても新刊はチェクするようになりました」
「好きな作家も見つけ、本を読む時間と考える時間が増えたと思います」
「何か細かいことに目がいくようになりました」
「前はボーッと眺めていただけのものを『なんで?』『どうして?』と考えるようになりました」
「なぜかは分かりませんが、本を読み始めてから私の生活は変わりました」
 子どもたちは自ら自立した読み手として、自信をもって、これからの社会を力強く生きていくことができだろう。
(杉本直美:1966年生まれ、川崎市立中学校教師を経て、国立教育政策研究所 学力調査官・教育課程調査官)

 

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