いじめを解決をするには何が重要でどうすればよいか 平塚俊樹
いじめを解決をするには何が重要でどうすればよいか平塚俊樹はつぎのように述べています。
いじめが発覚したとき、普通に考えれば、最初に相談に行くべきところは、担任だろう。
ダメだったら校長、教育委員会、警察、法務局の人権擁護委員へというのが順序としては正しいのかもしれない。
しかし、学校に相談せずに、教育委員会へ行ったり、それを飛び越えて警察や人権擁護委員へ駈け込めば正しかったという場合もありうる。
これはもう千差万別で絶対的なルールはない。そのときのいじめの程度と内容による。
いじめは一気に加害者を仕留めないと事態がさらに悪化する。
裁判は半年から1年と時間がかかり、弁護士はあてにできない。
場面によっては限定的に活用するなら弁護士は強い味方になる。
いじめでやっかいなのは、親に相談できず、発覚しないことにある。
多くのいじめ事件を見てきて、痛切に感じるのは、親子のコミュニケーションがいかに重要であるかということだ。
ふだんから親子の関係を密に積み重ねていないと、急に迫られても子どもはドン引きするだけだ。
私が実際にいじめの相談を受けた中から象徴的ないじめはつぎのようなケースがある。
結論からいえば、いじめの解決に必要なのは証拠集めである。
証拠は写真や動画、録音、関係者からの聞き取りの記録などを時系列で集めたものである。
関係者を動かす原動力になる。
証拠集めに必要なのは「絶対この子を守る」という意思が何よりも重要なのだ。
子どもの心を開かせるために必要なのだ。この覚悟がない親が多い。
中学2年の女生徒Aさんが5年間いじめられていて「死にたい」と親戚のBさんに告げた。
Bさんは「守ってあげる」「学校に行く必要はない、引っ越して転校していい」と言った。
担任に相談すると「うちのクラスにいじめはない」という返事だった。
教育委員会に駆け込むと「学校からは、いじめがないと聞いている」と冷たい反応であった。
学校を休ませ、AさんをBさんの家に引き取った。1週間すると「学校に行きたい」と言い出したので、再び登校させた。
ここからAさんに内緒で私たちの証拠集めがはじまった。
Aさんを尾行し、下校時に暴力行為を受けるところを遠隔操作のビデオカメラで撮影した。
そのときのアザも写真に撮った。
お守りだよと Aさんに渡した袋の中に録音機をしのばせ、張り込みをしている人間が無線の電波をキャッチして録音した。
生徒の溜り場に行って雑談し証言を得た。
また、神経内科医に診てもらい、自殺寸前まで追い込まれた精神的な原因がいじめであるとの診断書を出してもらった。
証拠集めが終われば、いじめで最も重要な告発である。
より復讐されることを恐れ、告発を嫌がるからだ。
Aさんは大人が本気で守ってくれると知り、心を開き了解してくれた。
警察に被害届(暴力行為、金銭・持ち物を奪う)を出すという方法がある。
しかし、証拠不十分で受理してくれない恐れもあり、学校に警察の捜査が入れば、視線が被害者の生徒に集中し、学校に通えるかという問題が残る。
私たちは、これまで集めた証拠を法務局の人権擁護委員に申告した。
法務局はただちに学校と教育委員会に聞き取り調査を開始した。
学校は全生徒への聞き取り調査を行い、いじめグループが特定された。
学校はクラスごとに厳しい監視体制を敷き、謹慎処分やカウンセリングなどの措置がなされた。
いじめで大事なのは「絶対に救ってやる」という保護者の決意と証拠をひとつでも多く集めること。
つまるところ、いじめの解決には、保護者の強い覚悟、愛が何よりも重要だということである。
(平塚俊樹:1968年生まれ、証拠調査士。武蔵野学院大学客員教授。大手会社で顧客からのクレーム処理担当を経て、危機管理専門コンサルタントとして独立、平塚総合研究所設立した)
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