この世の中はまさに不条理で、幸福も不幸も、なぜか訪れるときは群れをなしてくる 瀬戸内寂聴
私は80年以上生きてきて、たくさんの人の人生を見てきました。
この世の中はまさに不条理です。
心優しい人が苦しみを味わい、ひどい目に遭うかと思えば、世間から悪党呼ばわりされる、欲深い人間がこの世の栄華を一身に集めて長生きする。
そんな理屈に合わないことばかりが起きるのが人の世のならいです。
私たちは、こうしたことを見聞きするにつけ「神も仏もないものか」と思ってしまいがちです。
しかし、お釈迦さまは人の世は「無常」であるとおっしゃいました。
誰からうらやむような幸せな生活を送っていても、その幸福がずっと続くわけではありません。
人間にはそれぞれ定まった寿命(定命)があって、どんなに幸せでもその日の夕方には死んでいるかもしれません。
今が不幸のどん底のように思えても、ずっと続くわけではありません。
人の運命は図りがたいものなのです。
どうか「しょせん世の中は無常」と、心を強く持って生きつづけてください。
長く生きてきた私の経験と実感ですが、この世の中は幸福も不幸も、なぜか訪れるときは群れをなしてくるものです。
つまり、いいことも悪いことも一つずつではなく、いくつも集まって押し寄せてくるものなのです。
ですから、運命を恨まず、これも人生修業のいい機会だと思って過ごしてください。
辛抱することです。どうか辛抱する心を忘れずに生きてください。
私たちに与えられている使命は自分自身を幸せにすることです。
身の不幸を嘆いたり、愚痴をこぼしたり、我慢したりするのではなく、まず他人に対して微笑むことのできる心のゆとりを持つことです。
困っている人たちの悩みや苦しみを聞いてあげたり、にっこりと笑顔で周囲の人たちに接すると、人の心はいくらか楽になります。
ただし、これを行うためには、まずあなた自身が幸せに、心豊かにならなくてはいけません。
あなたが心のうちに幸せを持っていなければ、周囲の人に幸せを分け与えられません。
(瀬戸内寂聴:1922年生まれ、26歳のときに家族を捨てて出奔、小説家を志す。『夏の終わり』で女流文学賞受賞。73年に得度し、法名・寂聴となる。『花に問え』で谷崎潤一郎賞、『白道』で芸術選奨文部大臣賞。『源氏物語』の現代語訳を完成させる。『場所』で野間 文芸賞。文化勲章受章。現在は執筆活動のかたわら、寂庵(京都市嵯峨野)などで法話を行なっている)
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