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非行少年の心の中や立ち直りのために必要なこと   紀 恵理子

 私は少年鑑別所でさまざまな問題を抱かえてきた少年たちと関わってきました。
 非行という行動は社会から見れば被害者を出す、人に迷惑をかける不適応な行動です。
 彼らの心の中から社会を見ると、彼らは非行行動を取ることで自分の心を守っていると言えます。
 彼らは気弱さ、孤独、自信の乏しさという弱さを抱かえていて、そんな自分と向き合えず悩むことをやめ、非行によって自分を守っていると言えます。ですから、少年一人ひとりが取る非行行動にはそれぞれ意味があります。
 例えば、16歳の男の子がコンビニで大量の整髪料とかを盗み、仲間に配っていました。彼は家庭に居場所がなく、唯一一緒に過ごしてくれるのが数人の遊び仲間だった。友だちの関心を物で買おうとしていました。
 同じく、16歳の女の子が、コンビニで大量の化粧品を盗んで、素顔が分からないほど化粧していました。「お化粧を落とすと、自分が消えてなくなってしまう気がする」と言いました。彼女は自己イメージが非常に悪く、厚化粧して素顔を隠すことは、自分自身を守るよろいを身に着けることで、生きるためには必要なことだったのです。
 このように同じ盗みでも、非行の意味は違い、それによって働きかけのポイントも違ってきます。こうしたことから、立ち直りの支援というのは、少年一人ひとりの心に焦点を当て、能力や性格、非行の意味など、少年を理解するところから始まるのではないかと思います。
 少年と鑑別のために面接していると、ときどき、少年が親の悪口を言うことがあります。子どもが親の悪口を言っても、「本当だね、あなたのお父さんって最低ね」と同意してはいけません。彼らは他人から親の悪口を言われることは大嫌いです。子どもの前で親への批判を口にすることは禁句です。
 少年鑑別所に親が面会に来てくれると、多くの少年が日記に親が来てくれたことの喜びと感謝の気持ちを記します。親とろくに口も利かず、家出をしたりしていた少年たちですが、みんな親が面会に来てくれることを心待ちにしています。彼らにとって家庭がとても大事なものだという、考えてみればごく当たり前のことに気づかされることが多いです。
 また、職員に対して「自分だけを見てほしい」という一対一の関わりを求める様子もよく見られます。少年鑑別所を退所するときに、多くの少年が「自分の話をよく聞いてくれた」「困ったときには相談に乗って一緒に考えてくれた」「頑張ったらほめてくれた」と感想を書きます。
 職員は決して甘やかしたりはしません。規律違反をすれば厳しく説諭します。でも、それは一人ひとりの様子をきめ細かく見たうえでのことです。彼らは大人から自分に目を向けてもらうことを非常に強く求めていると感じます。職員が自分をよく見ていてくれると分かれば、叱られても、納得して従うことができるのです。
 無関心と無視が何より怖いのです。彼らが求めている居場所は社会的な絆であり、身近でサポートしてくれる大人ではないかと思います。
 問題を起こしたその子の行動には何か意味があるのではないかという視点を持って一人ひとりを見て、毅然としつつも愛情と優しさを持って、その子の性格や能力に適した丁寧な働きかけを行うことが大切だと思います。
 親も迷い苦悩していることはよく分かりますので、保護者ヘのサポートはとても大事だと思います。親にもプライドがあります。よかれと思って「こうなさったほうがよろしいんじゃないですか」と言うと、親は自分の子育ての能力、ひいては自分の人間性まで否定されたと受け取ることが私の経験上、多いのです。
 私は最初に「大変でしたね。ご苦労されましたね。おつらかったですね」という、ねぎらいの言葉をかけるように心がけています。責める言葉には絶対ならないように気をつけています。
(
紀 恵理子:長野少年鑑別所長。専門は犯罪・非行の臨床心理学)

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