学級のトラブルは成功の基 今村信哉
学級のトラブル(難所)は成功の基である。
私は2学期から小学6年生を担任したことがある。その学級は1学期後半には授業が成立していなかった。
「どんな教師が来たのか」と子どもたちはこちらを見るかと思ったが、目線はバラバラで宙をさまよっていた。
私は、必死になって目線に方向性をつけようとした。
それには学級の目標を決めるしかない。
数日は授業らしい授業もせずどのような学級にしたいのかを話し合った。
初めは口の重かった子どもたちであったが、徐々に口を開き始めた。
そして、最終的にできあがったのは「チャーハンクラス」という学級のニックネームと「集まろう、一粒一粒おいしいクラス」というキャッチフレーズであった。
学級のニックネームについては「ミックスジュースクラス」が対抗馬として最後まで残った。
しかし、女の子のAさんの、
「ミックスジュースは混ざってしまうと元がなんの素材なのかが分からなくなってしまう。だけど、チャーハンなら何が混ざっているかはよく分かる。だからチャーハンクラスの方がいいと思う」
の言葉で「チャーハンクラス」に決定した。
私は長い間、教師をやってきたがあれほど説得力があり、影響力のあった発言は聞いたことがなかった。
ガチャガチャと話し合っていた子どもたちの目線を方向付けた大きな発言だったのである。
数ある学級の目標で10年以上経っても空で言うことのできるのはこの目標をおいて他はない。
その後は堰を切ったように様々な活動が展開された。
学級づくりの大きな難所を攻略できたのは、「学級の目標づくり」が第1弾の難所。
そして目標に沿って活動を開始したのが第2弾。
その後も、次から次へと多くの難所に遭遇した。
しかし、急造の担任であったということもあり、保護者や管理職を含む学校全体から全面的なバックアップがあった。
そのために大きな難所を乗り越えることができたのである。
この「チャーハンクラス」のクラス会が先日あった。子どもたちは22歳になっていた。
そこで話題になったのは卒業してからのことだった。
順風満帆というわけではなかったが、そこから確実に立ち直ることができていた。
口をそろえて言ったことは全員が一丸となって取り組んだ「チャーハンクラスが原点になった」ということである。
「集まろう、一粒一粒おいしいクラス」に戻ったのだ。
そこには真剣になった自分、励ましあった友だちがいたのである。
生身の子どもたちが何十人も集まる学級である。
何事もなく1年が過ぎるはずがない。
難所はあって当然なのである。
要はその難所とどう向き合い、どう対処するかである。
難所は子どもたちにとっては、
「最も踏ん張らなくてはならないところ」
「最も教師を必要としているところ」
なのだ。そこを学級経営に生かさぬ手はない。
(今村信哉:埼玉県さいたま市指導主事、小学校長、共立大学客員教授を歴任)
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