カテゴリー「教師と子どもの関係づくり」の記事

教師と子どもをつなぐにはどのようにすればよいか 椙田崇晴

 教師と子どもの人間関係をつくるということは、信頼関係を築くということです。
 演出と誠実さがポイントです。
1 演出
 演出はつぎのようなことが考えられます。
(1)
語りの場を設ける
 「語り」とは、教師と子どもとの距離を縮めるために必要なものです。
 子どもを指導するために演出した「語り」が必要になります。
 例えば、朝の会で、教師自身の考えや思いを一つだけ語るようにします。
(2)
場の設定
 教師と子どもをつなぐ場の設定とは、子どもと信頼関係をつくることです。
 子どもたちは、教師から信頼されていると感じたときに、教師に信頼感を抱きます。
 そのために、子どもと話し相談にのる場を設定します。
 子どもと話をすることで、その子にどういう問題があり、どういう思いをもっているのかがわかります。
 そして、教師はその思いに真剣に応えようとします。
(3)
教育的な関係を築く
 教師と子どもは同じ立場ではありません。
 教師は、一種のカリスマ性も必要なのです。
 子どもたちに「さすが、先生だ」と思わせることが信頼につながります。
 教科の指導や趣味でもよいでしょう。
2 誠実さ
 教師の誠実さとは、つぎのように本気で子どもと向き合うことです。
(1)
響き合う対話をする
 子どもの、関心や気持ちの動揺、求めていることをきめ細かに受けとめ、交流が深まるよう、明るく肯定的に話し合う。
(2)
存在感を尊重する
 子どもの学習の小さな成果や、子どもが役割を果たしたときは、見逃さずほめる。
 子どもを信頼して、できそうな仕事や問題をまかせてやらせる。
(3)
子どもへの関心をよせる
 ふだんから、子どもに気軽に励ましの声をかける。
 健康や学習の悩みに気づかって声をかける。
 おもしろい話題や楽しい話題に耳を傾けて喜び合う。
 私は、このような対応を心がけてきました。
 すると、子どもとの距離がぐっと近づいていくのが感じられました。
 教師と子どもをつなぐときに、大切にしたいものがあります。
 それは、教師が「自分を開く」ということです。
 教師が心を開くと、子どもたちも心を開いてくれるようになります。
 私は、
「子どもたちに夢や失敗談を語る」
「いつも笑顔やユーモアをもって接する」
「子どもたちと元気に遊ぶ」
 ことによって、自分を開くようにしてきました。
(
椙田崇晴:1959年福岡県生まれ、山口県公立小学校長。福岡県・山口県で小学校教師、特別活動の実践に取り組む。「学級活動ネットワーク」実行委員、「中国学級活動ネットワーク」・「山口学級活動ネットワーク」を設立)

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教師は子どもたちと信頼感のある人間関係を築き自己変革を求め続ける生き方を   近藤昭一

 子どもの変容を図るには、まずもって教師は自ら子どもとの関係を、深い相互理解に支えられた互いに認め合う信頼感に満ちたものにしていく必要があります。
 教師と子どもとの間に信頼関係ができると、子どもに自信を与え、友人関係など他の人間関係に対しても有益な作用力をもたらします。
 こうした信頼感のある人間関係を教師と子どもの間に少しずつつくりあげ、積み重ねることによって、子どもは自己の尊さを再認識して、自分づくりを始める力を得ていくのです。
 まさに、この自分づくりこそ、生徒指導の目的なのです。
 しかし、教師と子どもの間の深い相互理解に支えられた信頼関係は、そう簡単に築けるものではないことはよくおわかりのことと思います。
 教師はそのためには、どうあるべきなのか。
 そのためには教師は人格の完成を求めて、常に自己変革をし続ける必要があります。
 問題行動を起こす子どもたちを内心で嫌い避け、良くない子どもと評価することは教育ではありません。
 子どもたちの問題行動が発生して学級が混乱に陥るような場面こそ、大きな教育チャンスのはずです。
 これまで教師が子どもたちと築いてきた人間関係を試され、その人間性が問われることにほかなりません。
 教師という職業は、自己の不適応を自覚できず、他人の状況が理解できず、他人の気持ちや考えを受け入れられない傾向が見られます。
 そして、自分の得意な範囲に子どもを合わせさせて、自己の有能感を感じようとする傾向が見られます。
 こうした傾向は、自分で殻をつくり、その殻を固くして閉じこもり、狭い範囲を完全と思い込んでしまう、いびつな姿といえます。
 このような姿は、教師が人格の完成を求め、常に自己変革をし続ける存在からかけ離れてしまっています。
 教師は、子どもたちの葛藤や悩みをむしろ歓迎する姿勢が必要です。それを貴重な教育機会として生かすことが重要です。
 今の時代は、関係性の希薄さ、コミュニケーションの乏しさ、客観的な自己認識が形成されにくい状況が広く見られます。
 教師は子どもたちとの関係性が子どもの人格の形成を支えていることを自覚して、日々、子どもとの関係性や社会とのかかわりにおいて、自己の人間性を鍛え、自己変革を求め続ける生き方を貫いてほしいと私は考えています。
(近藤昭一:1951年生まれ、22年間横浜市立中学校教師、同校長、教育委員会部長、横浜市教育センター所長、玉川大学客員教授を経て神奈川大学特任教授)





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なめられる教師となめられない教師はどこが違うか、教師が心がけたいこととは    桶谷 守

 なめられる教師となめられない教師はどこが違うか、桶谷 守はつぎのように述べています。
 教師は子どもになめられたら、指導が入らないし、授業も好きかってな子どもの言動が横行し、崩壊状態になるという話をよく聞く。
 私が学生に「なめられる教師って、どんな人?」と聞くと
「指導力がない。毅然とした態度で叱らない」
「叱ったとしても、あまり怒っている感じがしない」
「説得力がない」
「悪いことをしてもあまり叱らない」
「自分本位で授業を進める」
「間違いを指摘されても自分の非をなかなか認めない」
「シャイでオドオドしている」
「威厳がない」
「堂々と発言できない」
「子どもに優しくしすぎる」
 つまり、なめられる教師は、信頼されない教師と考えたほうがいいと思います。
 よくあることですが、子どもから嫌われることを恐れて、子どもに迎合し、かえって信頼を失うことがあります。
 そこで、再び私は学生に「信頼できる教師って、どんな人?」と聞くと、
「問題が起きたとき、頭から否定せず、言い分を聞いてくれる」
「子どもが悪いときには、厳しく叱ってくれる」
「相談したとき、親身に熱心に真剣に話を聞いてくれる」
「わかりやすい授業をしてくれる」
「落ちこぼれや、やんちゃな子どもも切り捨てず、公平に扱ってくれる」
「権力を振りかざさず、知ったかぶりをしない」
「子どもと共に、泣いたり、笑ったりできる人間性が豊かである」
 子どもは教師が自分たちのことを本気で考えてくれているかは、すぐに見ぬきます。
 だから、子どもから良く見られたいと思ってやさしくしている教師や、子どもたちに対する恐怖の裏返しとして厳しく振る舞っている教師も、ともに支持されることはないのです。
 それでは、子どもたちから信頼され、人間関係をよくするために教師が心がけたいことは
1 朝は早めに教室に行き、笑顔で子どもを迎える。
2 朝の会や帰りの会、給食や休み時間に、子どもたちと話し遊ぶことを大切にする。
3 掃除は必ず子どもたちと一緒にする。
4 絶えず集団と個人とを考えながら指導する。
5 ダメなことはダメと毅然と指導する姿勢を示す。
6 教えることに最大の喜びと情熱を持つ。
(桶谷 守:中学校教師、京都市教育委員会生徒指導課長、教育相談総合センター所長、京都教育大学教授を経て京都教育大学名誉教授、大津市教育委員会教育長)

 

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子どもや親とのコミュニケーションのポイントはメンツや自尊心をつぶさない  田中和美

 子どもや親とのコミュニケーションについて田中和美はつぎのように述べています。
 経験が浅い教師にとって、十人十色の子どもたちやその親ときちんとコミュニケーションをとることは容易なことではありません。
 これまで、うまくいったコミュニケーションの経験を自分のひとつの「型」にして、相手の反応が予想と違ったら、軌道修正していくことが考えられます。「型」を意識してみるのです。
 ここでポイントにしたいのは相手のメンツや自尊心をつぶさないということです。
 たとえば、親への電話で、つぎのようなサンドイッチの型にしてコミュニケーションをとります。
「お伺いしたいことがあります」+「要件」+「お伺いしてよかったです」と、肯定的にコミュニケーションすることを意識します。
 子どもの指導は、まず、子どものいいところをしっかりと認める。これがとても大切です。
 たとえば、机間巡視でつぎのように声かけします。
「ここまでは、出来ているよ」+「指導」+「こうやってごらん。あと少し」
 体育の時間は体操服に着替えるのがルールなのに、着替えないで出て、サッカーをしていたとします。
「こら、ルール違反だぞ!」と言っても、ルール違反をわかっていてやっているのでだめです。そこで、
「おっ、サッカーやる気あるな。でも、ルールがある。着替えて来い!」と言えばどうでしょう。
 指導するときに、認めるなど一言を入れるようにします。
 コミュニケーションする順番は、まず、いいことを言ってから、課題を続けると相手は聞きやすくなるものです。
 相手の自尊感情に敏感であれば、教師の思いは通じるものです。
(
田中和美:元大阪府公立中学校教師、教育委員会相談員)

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教師の遊び心が子どもとの距離を縮める   斎藤 修・篠崎純子

 教師の遊び心が子どもとの距離を縮めると斎藤 修・篠崎純子はつぎのように述べています。
 子どもたちは、いろんなことで傷ついています。
 だからリハビリ期間が必要なんだと思うんです。
 そして、こんなに傷ついていたんだというのが分かれば、教師にも余裕が出てきて、遊べます。
 例えば「タイムぴたり賞」などと名前をつけて、どのグループが決められた時間にピッタリ来るか、作戦を立てて競わせる。あるいは、何歩で歩いて来るか、誰が一番少ない歩数で来るかとか。
 あるいは三分で終わるゲームを用意する。
 早く終わってしまうので、遅れて来た子には「ああ、惜しかったね、三分で終わっちゃった!」
 そういうふうに、ありとあらゆる方法を試す。
 ピッタリうまくいくのは少ないのですが、だけど何かは出てくる。
 掃除が早く終わったら「五分で読める怖い話」を読んであげたり。
 教師というのは、日々子どもと接しているので、遊び心をどれだけ持っているかというのもすごく大事だと思います。
 例えば教室に入るのもどうやって入るとか。
 でもその遊びって、自分が楽しいことをやる。
 なんといっても、相手は子どもだから、言葉だってボケてくれる。
 そこに突っ込む楽しさだとか、教師の遊び心が子どもとの距離を縮めてくれるんですよね。
 また管理的な学校に風穴を開けることにもなるんですね。
(斎藤 修:千葉県公立小学校教師、篠崎純子:神奈川県公立小学校教師 ともに全国生活指導研究協議会常任委員)

 

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子どもたちと人間関係が築けない教師の要因とその改善方法   山口菜穂子

 子どもたちと人間関係が築けない教師の要因とその改善方法について山口菜穂子はつぎのように述べています。
1 子どもたちと人間関係が築けない教師の要因
 私の今までの経験から、子どもたちと人間関係が築けない教師には、つぎのような要因が考えられます。
(1)授業力の不足
(2)使命感の不足
(3)約束を守れない
(4)信頼できない
(5)子どもと遊ばない
(6)子どもが好きでない
(7)言葉遣いがきつく近寄りがたい
(8)厳しすぎる
(9)自己開示できない
 などがあります。
2 子どもたちと人間関係が築けない教師の改善方法
 改善する方法としては二通り考えられます。
(1) 教師としての技能不十分な場合
 良い授業を参観し学ぶ。
 授業規律を徹底するコツや話すときの間の取り方、テンポなど、自分との違いを認識し改善するよう努力します。
 また、自分の授業の記録し授業分析します。
 自分の授業を客観的に観ることで、改善点に気づき授業改善に取り組むようにします。
 子どもたちが「分かった、できた」と笑顔になる授業をめざします。
(2)教師としての意欲や態度に課題がある場合
 遊んでくれる教師を子どもたちは好きです。
 子どもと遊んで、子どもの気持ちを理解するようにします。
 脅しの教育はしない。
 叱ったあと、叱った意味があったかを、子どもの言動がどう変化したかで判断すること。
 課題のある子どもほど好きになること。
 本気で子どもたちにぶつかってくれる教師を子どもたちは本能的に見極めています。
 自信をもって体当たりしてみよう。
(山口菜穂子:東京都公立小学校長)

 

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雰囲気のよい教室にするにはどうすればよいか   俵原正仁

 雰囲気のよい教室にするにはどうすればよいか、俵原正仁はつぎのように述べています。
 私は放課後、他の教室をウロウロ見て回ったことがあります。

「この教室には、あまり長居したくないな」と感じた、居心地の悪い教室の共通点は、
 机がきれいに並んでいない。

 ゴミが落ちている。
 黒板がきれいに消されていない。
 ロッカーが雑然としている。
 はがれかけた古い掲示物などです。
 居心地の悪い教室に一日中いると、落ち着いて生活や勉強なんてできません。

 ますます教師との関係もうまくいかなくなります。
 私は、まず、すぐにでもできる教室環境から整えていこうと考えました。
 ディズニーランドは、ほんの小さな傷や汚れなども見逃さず、つぎの日までに修繕をしっかり行うことで、お客さんのマナーを向上させています。
 私は教室にゴミが落ちていたら、すぐに拾って捨てます。

 翌朝、きれいな教室で過ごすために、放課後にビシッと片付けます。
 教師のこの姿勢、気づく子は気づきます。
 子どもたちのマナーも向上していきます。
 暗い場所にいると気分まで沈んできます。

 逆に明るい場所だと気分も明るくなります。
 教室を明るい雰囲気にするために、私は蛍光灯を拭きました。
 教室が明るくなります。効果てきめんです。
 店員が無愛想なお店には、行きたくありませんよね。

 やはり、雰囲気をよくするためには、笑顔が一番なんです。教室でも同じです。
 クラスの雰囲気を良くしようと思うのなら、笑顔の教師が、笑顔の教室をつくります。
 これは、いいクラスをつくるための黄金律です。
 笑顔がベースにあると、たまに見せる厳しい顔が子どもの心に響いていくのです。
 特に教師が最も笑顔を意識して過ごさないといけないのが、授業中です。

 子どもたちが何といっても一番長く過ごすのが授業の時間だからです。
 にもかかわらず授業中、表情の硬い教師が本当に多い。
(
俵原正仁:1963年兵庫県生まれ、兵庫県公立小学校校長、笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる実践はマスコミにもとりあげられた。教材・授業開発研究所「笑育部会」代表)




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教師が子どもから信頼されるには、どのように接すればよいか  関根正明

 子どもと教師の心の交流が大切なのはゆうまでもありません。
 心の交流とは情緒的なものです。
 気持ちが通じ合ったというのは「自分の感じ」であり、相手との関わりの深さにつながります。
 子どもと教師が共に語り合い、遊び、共通体験を通してそれが成り立つのです。
 ある教師の実践です。
 放課後のだれもいなくなった教室に行き、その日の子どもと自分のやりとりを思い出します。
 子どもの氏名印が押してある一冊のノートをひろげ「今日、子どもと自分はどんな交流があったか」を書きます。
 何も思い出せない子どもにはチェックだけをしておきます。
 ひと月もたつとそのノートが自分の子どもを見る見方、傾向をわからせてくれます。
 マイナスの記録しか書いていない子には「よさを発見してそのよさにかかわっていこう」とか、子ども一人ひとりにかかわる、かかわり方を考えるのです。
「人を見る目」とは人の行動、言動からその人の性格とかを感じる能力といってもよいと思います。
 それはその人の精神的な成長によって変わります。
 教師の指示のとおり動かない子どもを「言うことを聞かない子」と、教師は思っています。
 教師の陥りやすい落とし穴だと考えられます。
 子どもを見る見方は教師自身の心のあり方です。
 親は子どもを自慢したい気持ちがあります。
 教師も親と同じで学級の子どもを信頼しなければなりません。
 子どもの信頼を裏切ることは、その子どもの願い裏切ることになります。
 当然その子の心に深い傷あとを残し、歪ませます。
 教師の心のありようが、子どもたちに大きな影響を及ぼすことを考えると、身の引きしまる思いがします。
 教師と子どもとの心理的な距離感が学級の人間関係を微妙なものにします。
 教師は子どもと自分のかかわり方を見つめ、考えることが大切です。
 それは当然、その場その時の自分の心のあり方も見ていくことになります。
「この世で一番難しいのは自分を見つめること、一番容易なのは他人を批判すること」と言われます。
 自分を見つめるとは、自分のよさも悪さも、まるごと見ていくことだから難しいのです。
 教師は平素、気持ちの穏やかなときに、自分が相手の立場になって考えてみたらいいと思います。
 教師は子どもに次のような態度で子どもに接したいと思います。
(1)自分がどう言ったかではなく、どう受け取られたかが、人間関係の基本であること。
(2)話し方には、自分の感情が出てしまう。自分の気持ち次第だということ。
(3)子どもを責めれば、自分が責められること。
 子どもを否定すれば、否定し返されること。
(4)子どもとの好ましい関係は受容を基盤にしていること。
(5)自分は素直であること。
 子どもを誤解したり、感情的に怒ってしまったら、素直にあやまること。
(6)子どもの自尊心を大切にすること。
(7)おだやかな笑顔と思いやりのある話し方で子どもに接すること。
 おだやかな顔つきでいられる心の状態であるから、自分の気持ちが素直に子どもに伝わる。
(関根正明:1931年生まれ、小・中学校教師、指導主事、東京都公立中学校校長、大学助教授を経て、山形大学講師を歴任。執筆活動をしながら、親や教師への相談、講演などにあたっている。アドバイスには定評がある)

 

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生徒と信頼関係をつくるうえで大事なことはなにか  杉田雄二

 生徒と信頼関係をつくるうえで大事なことはなにか杉田雄二はつぎのように述べています。
 小学校も中学校も教師として生きていくことが今ほどしんどいときはない。
 現場で教師一人ひとりが孤立し、悩んでいる人がいっぱいいます。
 そして、その苦しみを率直に表すことができず、途中で辞めていく教師もいる。
 生徒の立場に立とうとすればするほど学校現場で浮いたり、孤立したりというきつい状況に追い詰められていく。
 ツッパリの生徒たちは、群れてはいるが集団にはなれない。
 みんな仲がいいように見えてバラバラなんです。
 かれらが共通して求めているのは、自分のことを見てほしい、知ってほしい、聞いてほしいということなんです。
 そういう生徒たちと向き合ううえで大事なことは、生徒の話を聞くことと、教師が生徒に言ったことは実行することです。
 それが信頼関係をつくるうえでいちばん大事なことではないかと思っています。
 教師は生徒に対して「そんなことをすると親に言うぞ」といった脅しが非常に多いと思うんです。
 でも、実際は言わない。だから教師の言うことはどうせ脅しだと取ってしまう。
 生徒たちというのは、力で押さえつけるなどということをしなくても、きちんと対話を重ねる。
 生徒の言い分を聞き、そこで合意したことは、教師がきちんとやり抜く。
 ということをすれば、生徒はそれを守るし、生徒にまかせても少しもおかしいことにはならないんです。
(杉田雄二:元公立中学校教師・全国生活指導研究協議会の会員)

 

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子どもたちに結果を求めすぎない   新牧賢三郎

 若かりし教師のころ、新牧賢三郎は、
「このクラスを学校でいちばんいいクラスにしてやろう」
 と教材や問題を工夫し、プリントを作って、というようにものすごくがんばりました。
 ところが、私はこれだけやっているのに、なぜ子どもたちは応えてくれないのだろうと思うようになりました。
 隣のクラスと比べても、いろいろな点で負けているように感じていました。
 そして、だんだん子どもたちにつらくあたるようになりました。
 お説教の時間が長くなり、感情的な言葉を口にするようになりました。
 その結果、だんだん子どもたちは私の言うことを聞かなくなりました。
 おどしや罰で子どもたちに言うことを聞かせる方法しかなくなり、子どもたちとの信頼関係は崩れていきました。
 とてもつらい時期でした。
 このときの経験が私に多くのことを教えてくれました。
 一言で言うと、私は結果を求めすぎていたのです。
 結果を求めるとき「子どもに対する要求」という形になってしまうのです。
 教育で結果を求めるとき、それは子どもがどれだけ伸びたかということを問われるのです。
 主役は子どもなのです。
 教師がどれほどがんばっても、子どもが伸びていなければ意味がないということになるのです。
 私はつらいなかで、考えました。
 私は自分がいいと思う方へ、その子どもが向かうように働きかける。
 でも、変わるか変わらないかは、その子どもの在りようがあり、私の思うように変えることはできない。
 結果は自分の手の中にはない。
 自分にできることを精いっぱいやり、結果は天に任せる。51%の結果でよしとする。
 と私は考えました。
 すると、とても気持ちが楽になりました。
 そして、その苦しい一年が終わり、私は別の学校に転勤しました。
 新しい学校で心機一転、一から自分の仕事のやり方を見つめ直しました。
 このときが、私の教師としての仕切り直しでした。
(新牧賢三郎:1953年生まれ、元東京都公立小学校教師・月刊「教育トークライン」編集長)

 

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