カテゴリー「授業づくり」の記事

授業を楽しく安心できる場にするには、どうすればよいでしょうか

 推測し想像しながら、みんなで発見していくような授業は、子どもたちも大好きです。いっけん、学習意欲に欠けているかのように感じられる子どもたちが、目を輝かせて学習する事実に、私たちは着目していかねばなりません。人間はそもそも深く考えることを好む動物なんだ、とあらためて思います。
 子どもたちは、学習を拒否しているのではないのです。知的好奇心が高まり、未知の世界との出会いがあるような学習には、むしろ飢えているのです。
 学ぶ意味や価値がわからないような、機械的な練習や、苦役だけが要求されるような学習を拒否しているのにすぎません。
 学級の友だちと対話・討論し共同で学ぶことで、一時間前には想像もできなかった世界と出会うことができる。自分も賢く人間として豊かになってきている。この実感の積み重ねこそが「何のために学校に通って学ぶのか」という問いにこたえる、道ではないかと思っています。
 共同の学びを豊かにしていくには、教室になんでも言える自由な雰囲気が不可欠です。そのためには「失敗」や「間違い」に対する教師や子どもたちの態度が問われることになります。教師だけでなく、子どもたちが豊かな「間違い観」を育てていくことは、学習にとって不可欠です。
 
「間違い」が、物事の本質をとらえていく上で、どんなに重要かを体験する必要があります。なぜなら、多くの子どもたちは「間違い」は恥ずかしいことであり、無意味なものだと考えているからです。
 
「間違い」が事実の断片であるならば、それをつなぎ合わせ関連づけていけば、物事の全体像が浮かび上がってくる。例えば、縄文土器のかけらをつなぎ合わせていくと、ほぼどんな土器だったかは推定できるようになるのと似ています。
 そういう意味では「間違い」は、物事の本質にたどりつくための「入口」であり、認識を深めていくうえでなくてはならないものです。共同の学習の中での「間違い」は、物事の本質をとらえていくうえで重要な役割を担うものです。こう考えてくると、子どものどんな発言も貴重なものになります。無駄なものはひとつもないのです。
 教師が一人ひとりの子どもの発言に心底耳を傾け「間違い」を大事にすることで、学習はプロセスのあるものに転換していきます。
 何でも自由に発言できるようになれば、自分の思いや考えを率直に語ることができるようになります。すると、当然のことながら、対立・討論も起こります。学習はいっそう深まっていきます。
 
「正答主義」の学習では、正しいかどうかを判断するのは教師です。共同の学びでは、そうはいきません。子どもたちが集団で思考し、共感や批判、納得を通して本質や真実に迫っていきます。
 教室に自由な雰囲気をつくるためには「間違い観」とともに、子どもたちがリラックスすることが重要です。過度の緊張を強いることなく、子どもたちが安心して学習できるようにするということです。授業中、教師が思っている以上に、子どもたちは不安をもって学習しているのです。
 
「急に当てられたらどうしよう」ということも授業中の心配の一つです。私自身も高校の頃、化学や数学の教師がよく急に当てるので嫌でした。当てられそうなときは、当てられないように、先生と目をあわせないようにしていたものでした。
 そんな体験もあり、私は子どもが自分で手をあげない限り、当てないようにしています。子どもたちは、突如当てられるというような不安もなくなり、安心して学習に励むことができます。
 教師が子どもの思いを無視してどんどん当てていた場合と比べて、個性的な発言が確実に増えてきます。子どもたちはじっくり考え、自分が発言したくなったときに発言できるからです。
 発言を強要しない、発言するかしないかは本人が決めることにしただけでも、学習における子どもたちの安心は広がっていきます。
 そういう自由が保障されたときに、子どもたちは自分の力を発揮して学習するようになるものです。「待つ」ということが、子どもたちに真の自由を保障することになるのだと思います。
 授業において「安心」と「人間的な自由」をどう拡大していくかが、重要な課題だと思っています。
(
今泉 博:1949年生まれ、元東京都公立小学校教師、前北海道教育大学副学長、「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行った)

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授業のスピードを加速すると学習が楽しくなり、高度なことに挑戦すると能力が向上する

 授業のスピードを加速すると学習が楽しくなります。
 速く、テキパキと、パッとできることって気持ちいいことです。それなのに、授業の最初に「きりーつ、れいー」と、ノロノロするのではなく、「起立、礼、着席!」までを2秒以内でできるまで指導しましょう。授業の始まりの集中力が見違えるように変わります。
 授業の導入に、スピードを重視したさまざまな基礎練習を毎日、反復しています。たとえば、10マス計算(1ケタの計算問題が10問ずつ記載されているプリントを使った反復学習)です。たとえば「10問を5秒で解きます」と言ったら「えー、無理」と言いだす子がいます。
 そんなときは「じゃあ10秒」と言って始めます。タイムを競わせることもあります。タイムを競ううちに「速くできた!」と、速さの気持ちよさも実感できるようになるのです。
 あいさつも10マス計算も音読も、常にスピードを意識させます。最初は優しく接して雰囲気づくりをします。信頼関係ができあがったら、高速で基礎固め、反復学習を始めます。
 すべてをスピードアップすることで、他のクラスが1時間で教えることを5分で終わることもできるようになります。その分、発展的な内容を、深く教える余裕も生まれるのです。
 最初からスピードアップして始めれば、最後までスピードが保てます。速いのは楽しいと思えば学習が楽しくなります。
 高度なことに挑戦させることが能力向上につながります。
 高度なことをやらせて、次々にレベルの高いことをやらせる理由は、いくつかあります。
(1)
小学生のうちに
 漢字プリントにしても10マス計算にしても、超高速でやることで小学生は盛り上がります。そして効果が出てきます。しかし、中学生になったら「何でこんなことをやらなきゃいけないの」と、真面目に取り組もうとしないでしょう。
(2)
現代の情報化の時代の問題
 インターネットがあり、情報は簡単に手に入ります。交通機関も発達し、いろいろな場所に行けます。携帯電話の進化もものすごい速さです。こういう環境になると「便利=ラク」と思うようになってもしかたがありません。
 だからこそ、自分で汗をかいて獲得した能力に感動するのです。そして「もっと伸びたい」と、さらに汗をかくでしょう。
 自分が苦労して手に入れた技術、能力は一生ものです。イチロー選手だって、毎日同じトレーニングをして、自分で能力を高め続けてきたからこそ、大きな記録を生み出すことができたのです。
 たとえば、漢字プリントや10マス計算、そして百人一首で札を取る速さもそうですが、高度なことをやらせるとき、私がよく言うのは「できなくて当然だよ」です。
 トップレベルのスピードを私が見せることで、子どもたちは挑戦したいと思います。トップレベルになるための練習ですから、夢中になってやります。
 しかも、そのトップレベルをクリアしても「やった! できた!」と、安心させません。「これで終わりじゃないよ。次のレベルのスタートだよ」と言って、次々に与えます。
 漢字ができた、つぎは熟語、つぎは意味を覚えろと、必ず「つぎ」があります。「漢字を一通りできた? じゃあ漢字検定の勉強だ」と、これで実際に合格した子どももいます。
 なぜ、子どもを安心させないのか。学習能力を鍛える効果があるからです。一回やって、わかったつもりになるのが、今の小学生のよくないところです。それでは、内容がわからず授業から落ちこぼれていく子どもが出てしまいます。
 私は毎日、少しずつ繰り返し教えます。一人ひとりの子に対して、どこがわからないか、その部分を補強し、高度なことに挑戦させるのです。
 次々に高度なことをやる楽しさがわかった子、自分が伸びるおもしろさを知った子は、他の子には見えない世界が見えてきます。
 有名なスポーツ選手や科学者だって「人生はつねに学び。これで終わりということはない」という意味のことを言っているでしょう。小学生がこの境地に立てるのです。
(
杉渕鉄良:1959年東京生まれ、東京都の小学校教師。「教育の鉄人」と呼ばれる実践家、子どもを伸ばす為に命をかける熱血教師。ユニット授業研究会代表。その実践スタイルは全国の教師、保護者から支持を受ける。2003年夏、日経スペシャル「ガイアの夜明け」に出演。PHP「VOICE」や、経済誌「プレジデント」での教育シリーズに取り上げられ、各方面からの注目も高い。ユニット授業、10マス計算、表現読み、指名なし発言など、子どもの可能性を引き出すため、さまざまな工夫を凝らした教育実践を行っている) 

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授業を成功させる授業技術の原則とはなにか

 教師は教えるのが仕事である。授業の目的は、子どもに知識や技能を習得させることであったり、学習意欲を高めるためだったりする。授業技術とは目標を達成するための手段である。
 授業技術は先人たちの知恵である。より効果的な技術があるなら、それを使えばいいのである。
 授業の技術が優れているとは、何をもって判断すればよいのか。それは、授業後の「子どもの事実」で判断できる。すなわち、教師が意図した目的が、より効果的になされる方が、よい授業技術なのである。
 授業の教え方の技術の原則とはどのようなものがあるのでしょうか。
1「見本を示し、やり方を説明し、させてみて、助言する」
 子どもは授業で知識と技能を学んでいく。学ぶうえで大切なのは「真似をすること」である。まず、教師がお手本を見せる。次にやり方を説明する。そして、教師が教えた通りに、子どもに真似をさせる。最後に、子どもの出来を見て、助言していく。
 助言は、できるだけ個別に行うのが望ましい。
 子どもに創造力を発揮させたいなら、教える内容は、真似させて教える。そして創造力を発揮させる内容は、子どもに任せるようにする。
2 一つずつ教える
 コメニュウスは大教授学で「いちどきには一つしか教えない」と述べている。「一度に複数のことをさせない」ことは、昔から伝わる大切な原則である。
3 教える内容を絞り込む
 あれもこれもと授業で扱うと、子どもは混乱する。混乱して、指導内容が理解されないことになる。大切な内容に限定して教え、活動させるのである。
 教える価値がある、その教材のポイントに絞り込んで授業するようにすると、子どもの意識がその内容に集中し、理解が深まっていく。
 例えば、4年生の理科で「人の全身の骨格」を教える学習がある。「全身の骨格図を予想して描かせる活動」がよく行われている。これを、あえて「腕だけ」に限定して「腕を触ってごらん。骨がありますね、腕の骨を予想して描いてごらん」
 骨が一本と考える子もいる。関節で分かれて、骨は二本だと考える子もいる。腕だけに限定されるから、違いが明確になり盛り上がるというわけである。話し合いをさせた後に、答えを示す。関節で骨がわかれていることを教える。そして、全身の骨格図に進めばいい。限定するから子どもの頭が働くのである。
4 指導内容を細かく分けて、簡単なものから難しい内容へと教える
 知識と技能は易しい内容から、「だんだん」難しい内容へ、少しずつレベルを上げて教えるのがよい。指導内容を細かく分け、簡単なものと難しいものを判断し、一つずつ段階をふんで教えていけばよい。
 例えば、ダンスを習得させるとしよう。いきなり複雑な動きをおしえると、子どもはバラバラの動きになってしまう。子どものやる気もなくなる。まずは、簡単な動きから練習させる。例えば、足のステップだけを練習させる。足だけなら簡単にできる。できたところで、すかさずほめる。すると、子どものやる気が出てくる。
 調子が出てきたところで、難しい手の動きを教える。やる気になっているので、その勢いのまま習得できるのである。
5 反復して学習する
 知識を確実に習得するために、反復して学習するようにする。
 子どもたちは学習しても、しばらくすると忘れてしまう。事あるごとに繰り返し教えることが必要なのである。
 例えば、算数では、授業の最初に、必ず復習から入るようにする。時間は5分。短いが、かなりの効果を発揮する。単元の最後に必ず復習問題を出す。教科書のまとめの問題を解くだけでいい。
 反復するときに、「少し変化をつけて反復する」と飽きがこないで楽しく学習できる。
6 最終的なゴール(目標)を示してから活動させる
 授業では、様々な活動を子どもにさせていく。活動には目標があるはずである。その目標(ゴール)を示してから活動に入るのが原則である。
 そうしないと、子どもたちは、不安に感じるし、見通しももてない。その結果、やる気がなくなっていく。
 例えば、写真資料を読み取らせる際、「前の写真と比べて、3つの違いを見つけられたら、合格です」と言う。「3つの違いがある」というゴールを示されるだけで、子どもたちの集中力が増す。ゴールが明確になるから、やる気が出てくるのである。
7 学習者に合った課題を選択する
 教室には、一人ひとり違う子どもが集まっている。学習者に合った課題を設定するためには、子どもの実態をつかまなくてはならない。学習に対する準備が整っているかをつかむ必要がある。
 実態をつかんだうえで、子どもに少し難しい課題を与え、成長を促していく。課題の与え方は
(1)
習熟度別に別の課題を用意する。
 例えば、水泳指導で、25mを泳げる子には、フォームを整える練習メニューを与える。息つぎなどの基本ができている子は、25mをめざすメニューを与える。そして、息つぎなどの基本ができていない子は、顔付け、伏し浮きなどの基本メニューで練習させる。
(2)
全員にとって発展した課題を与える。
 例えば、算数で基礎を教えた後で、応用問題や発展問題を考えさせてもいいだろう。全員にとって発展した問題を解かせると、学力差があまり影響しなくなる。ひらめきが必要だからである。できる子もできない子も頭を悩ます課題を設定できれば、全員にとって成長できる課題となる。
(
大前暁政:1977年生まれ、岡山市立小学校教師を経て、京都文教大学の准教授(理科教育)。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞)

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教師の学びの焦点を学級づくりから授業に戻すべきだ

 教師の学びの焦点を学級づくりから授業に戻すべきだ。
 最近、教師の興味関心の中心が授業づくりから学級づくりへと移ってきています。書店の教育書コーナーを見れば明らかです。
 しかし、子どもたちが学校にいる時間の八割は授業なのです。学級づくりや生徒指導、子どもたちが安心感をもてる人間関係づくりを授業外のみで考えることはおかしい。
 授業のなかでどのように教師が信頼されるような言動をとり続けるか、授業のなかでどのように子ども同士の人間関係をつないでいくか、こうした視点を抜きにして学級づくりも生徒指導もあり得ません。
 私は、教師の学びの焦点を授業に戻すべきだと考えています。授業のなかにある学級づくりや生徒指導の機能を再評価する視点を大切にすべきだと考えています。
 授業づくりには教師の仕事のすべてが凝縮されています。授業には教師の知識、仕事に対する構え、コミュニケーション・スキル、人間的魅力など、その教師の人間すべてが凝縮されているのです。その意味で、授業を五分も見れば、その教師の教師としての実力はだいたいわかるものです。
 学級経営がうまいのに授業が下手だという教師を見たことがありません。授業づくりにおいて多角的に広い視野で検討できる人は、学級も多角的に見えているのです。
 授業で深い洞察ができる人は学級経営でも深い洞察力を発揮しているのです。
 もう一度繰り返します。授業づくりには教師の仕事すべてが凝縮されているのです。
(
堀 裕嗣:1966年生まれ、札幌市公立中学校教師。「研究集団ことのは」「教師力BRUSH-UPセミナー」代表)

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全員の子どもが参加する授業にするためには、どのようにすればよいか

 どの子も発表し、説明できるようにしようとすると、発表したくても勇気の出ない子どももいる。どのように説明したらよいのかわからなくて手が挙がらない子どももいる。そんな子どもたちには、発表の仕方に慣れさせることも必要である。その方法は
(1)
友だちの説明をまねて復唱する
 一人の子が説明したとする。「友だちが説明したことを一人1回まねして言ってみましょう」と、それを他の子どもたちに復唱させるのである。これを繰り返して行うと、だんだんと説明の仕方が身に付いてくる。
 また、復唱するためには、子どもたちは、よく聞いていないといけないので、聞くことも身に付けさせることができる。
(2)
隣の子どもに説明してみる
 全員の前でいきなり説明するのは勇気のいることである。
 自分なりの考えができたら、「自分の考えを隣の人に説明してみましょう」と、隣の子に説明してみるということを取り入れるとよい。
全員が参加する授業にするために私が心がけることは
(1)子どもの思考を見極める
 教師の思う通りに授業を進めていくだけでは、いっこうに学級全員で考える楽しさを味わう授業に近づくことはできない。
 大切なのは、今、子どもがどのようなことを考えているのか、子どもの思考に合わせ、子どもの考えを生かす授業をしていくことである。教師は、常に子どもの思考を見極めながら、子どもの思考を整理していくことが必要になってくるのである。
(2)
子どもの話を最後まで心で聞く
 子どもの話を心で聞くということである。教師が、子どもの話を最後までしっかり聞いてあげようという態度で臨むと、周りの子どもたちも、自然と話を聞くようになる。教師と子どもの信頼関係、子どもと子どもの信頼関係を育てることができる。授業は信頼関係の上で成り立つのである。
(3)
子どものしぐさをよく見て、つぶやきをよく聞く
 授業中、めだたない子どもに目を向け、そのしぐさを見ていると、指を動かしたり、授業と関係のありそうなことをしていることがある。すかさず言葉をかけるようにする。
 また、子どもたちは自信がない時は手があがらない。しかし、子どもがふとつぶやいた言葉には、意味のあるものが多い。その言葉を拾って取り上げるのである。このようなことを繰り返すと、だんだんと話をすることにものおじしなくなる。
(4)
手をあげるまで、ちょっと待つ
 教師は、手をあげている子どもだけで授業を進めてはいけない。「ここは、みんなに手をあげてもらいたいな」と思う時は、ちょっと待ってみることも大切である。
 時には、手があがっていない子どもと目を合わせるとよい。そんな子どもに「頑張って手をあげてごらん」と目で語りかけてあげると、少しずつ手があがってくる。
 その時「勇気をだしてよく手をあげたね」とほめてあげる。ここで、注意したいのは、ふだん手をあげない子どもが手をあげた時、つい当ててしまいたくなるが、子どもにとってはたまらない。手をあげると必ず当たってしまうのだから。ときどき当てるぐらいがちょうどいい。
(5)
発表したい子に発表させる
 発表させる子どもをあらかじめ決めておくと、教師の考えで授業を進めてしまいがちになる。発表したい子どもの発表には、教師の思いもよらなかった考えがでてくることもある。
(6)
間違えてしまった子どもの気持ちを考える
 大人も子どもも間違えることはたくさんある。間違えるから次に成長することができる。間違えた子どもががっかりしないように、特に配慮をして「○○ちゃんのおかげて、また一つみんなもかしこくなったね」と言葉をかける。そして、間違いでおわらせるのではなく、どのように修正したらいいかみんなで考えさせるようにしている。
(7)
「ここまでしかわからない」を大切にする
 机間指導では、できかたを見る、どのように考えているかを見るなどの意味がある。子どもとふれあって、安心させてあげるという大きな意味もある。
 私が、子どもたちによく言うのは「途中まででもいいんだよ」「ここまでならわかるということを言ってね」ということである。その後は、その子どもの途中の考えの続きをみんなで考えていく。
(8)
授業はしつけから始まるのではない
 始めにしつけをしてから授業をする教師が多い。中には「いすに座る時は、おへそと机の間をげんこつ一つ分あけて座ります」と話している場合もある。
 私は、これには疑問を持っている。いくらお行儀よく座っていても、子どもたちの目がいきいきしていなければいい授業とは言えない。子どもの姿勢を注意するだけの教師ではなく、子どもの反応を見て、自分の授業をふり返ることのできる教師でありたいものである。
(永田美奈子:青森県公立小学校教師を経て、平成19年度より雙葉学園雙葉小学校勤務。NHK教育番組「わかる算数」出演。全国算数授業研究会幹事、基幹学力研究会幹事等)

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授業づくりで大切なことは何か

 自分はどんなスタイルの授業をめざしたいのか、そのためにどのような学びをめざすのかを考えることが授業をつくるうえで、とても重要になると私は考えています。
 私は授業づくりにおいて楽しさが大切だと考えています。「楽しく」「自分から」「できる」の視点を大切にしています。楽しいことは「自分から」学ぶことにつながります。そして「できる」ことも大切です。子どもたちの「できた」「やった」という笑顔は教師として一番うれしいことです。そのために、授業のあり方や方法を常に模索していくことが教師にとって一番大切な仕事だと考えています。
 私は楽しい授業とは「学習内容そのものの楽しさ」「活動・体験の楽しさ」「関わり合いの楽しさ」だと思います。
 授業は、ほぼ一年間、同じ教師と子どもたちが関わり合わなければなりません。一緒に学んでよい気分だな、一緒に学ぶことが苦にならないという状況にしておくことがとても大切です。そのためには、「ルールをしっかりさせる」「信頼関係をつくる」「一緒に授業をつくる」といった教師と子どもの縦と横の関係つくることが重要です。その方法を私は今まで学んできました。子どもたちが教師のことが好きでいてくれれば、授業がうまくいかなくてもついてきてくれます。
 授業の方法を固執しないことが大切です。目の前の子どもたちに何が適しているのかと、考えることが重要だと言えます。そのために、たくさんのスタイルを持っておくことが必要です。例えば、音読の仕方や漢字の学習を工夫、学習クイズ・ゲームに挑戦、フラッシュカードやICTの活用、ミニネタづくり、演じる活動、イラストやランキング、ビンゴ、ディベート、ワークショップ型授業などさまざまな学習方法があります。授業スタイルをもう一度見直し、新しくチャレンジすることも大切だと思っています。
 私は初任者のころ、夜遅くまで教材研究をし指導案を書いてもいっこうに授業が改善されませんでした。ベテランの教師に自分のクラスに飛び入りで授業をしてもらうと、あっという間に、子どもたちが魅せられ夢中で授業に取り組む姿をあぜんとしてみることがありました。その差は、授業で子どもたちの思いをつかみ、学びに向かわせるスキルをベテラン教師がもっていたからです。子どもへの声のかけ方、子どものよさを見つけること、教科書の使い方、教材研究の仕方など、指導方法をより具現化するスキルを持っていました。
 ただし、気をつけなければいけないのは、授業がうまくいかないと嘆き、ミニネタや教材ばかり探し、スキルばかり求めていると、たしかに授業は楽しく力がつくかもしれせんが、うまくいかなかったりすると、とても苦しくなります。教師が成長するためには、理論と実践を積み上げる学びが必要です。
 授業がうまくいかない時ほどチャンスだととらえましょう。リラックスして教師自身も子どもと一緒に成長していくつもりで学んでいくことが大切です。「どうしてうまくいかなかったのだろう」「どうすればよくなるのだろう」と、振り返っていくと、新しい方法が見つかっていきます。授業の記録やメモを書いておくことをおすすめします。これが、その後の教師人生の財産になると思います。
 授業で一番大切な存在は学習者である子どもです。子どもを理解することが大切です。子どもから学ぶことを教師は忘れてはいけません。学習者の研究が足りないと授業はうまくできません。私は小学校のころは落ち着かず、よく教師に叱られていました。そんな私が、今のクラスにいたら、楽しいと思える授業にするにはどうしたらよいか考えながら私は授業をしています。子どもたちの好きな「スポーツ、タレント、ドラマなど」などを教師も好きになる努力をすると、子どもたちはなぜ好きなのかを知ることができ、授業づくりにも大きな影響を与えてくれます。
(長瀬拓也:1981年岐阜県生まれ、 横浜市公立小学校教師、岐阜県公立中学校教師を経て岐阜県公立小学校教師。授業づくりネットワーク理事、教育サークル「未来の扉」代表代行、クラス・マネジメント研究会代表)

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授業でより質の高い発問づくりをするにはどうすればよいか

 有田和正氏が「バスの運転手は、運転している時、どこを見て運転しているのですか」と問う、優れた発問があります。子どもたちはあらゆる対象に思考を巡らせます。前方の道路や車、バックやサイドミラー、お客、スピートメーター、次の停留所案内の音声ボタンなど多様な答えが出てきて、それらの役割が明確になります。バスの運転手の安全と通常の運行に対する本質的な役割が理解されるというすばらしい発問です。たった一つの発問で、授業のねらいまで到達できる素晴らしい思考発問と言うことができます。
 このような優れた発問は、偶然できるものではありません。周到に準備され、練りに練った研究の中で発せられた発問です。このような発問を我々がするのは決して不可能ではありません。日々の教材研究を重ね、発問が上達すると質が飛躍的に向上していきます。
 より高い発問を出す教師と、受け手の子どもとの関係を成立させるために重要なことは、受け手の子どもの反応も重要です。教師の発問に対して、子どもが的確な反応ができることは一朝一夕にできるものではありません。深い教材研究に裏打ちされた鋭い発問がなされても、その発問の意図がわかっていない、答えの発表の仕方や表現方法がわからない訓練されていない子どもたちだと、授業がうまく機能しないことがあります。
 若い経験の少ない教師の発問に子どもたちが答えると、教師が答えの分析が瞬時にできず、的確な応答ができない場合があります。子どもたちの意見に対してとっさに対応できる力は、どこまでその教材のことを深く分析しているか、という点にかかっています。聞き返すのはまだ良い方で、中には出た意見をそのまま板書するのに終始したり、聞き流すだけの教師も見られます。教材の字面だけを追う、安易な問答に終始していては授業が深まりません。
 経験豊かで優れた教師なら、授業のねらいに触れる発表や意見が出ると的確に反応し、事前に研究していた方向の意見を引き出すようにします。すると、子どもは、さらに教材を深く考えるようになります。
 子どもたちが行き詰まっている場合、教材のポイントとなる部分を示唆したり、今までの学習の助言をしたりして、違う角度からさらに追及して意見や考えを求めます。
 事前の教材研究で、この方向の意見が出た場合、こう問い質す(問い返し、切り返し)というパターンをしっかり把握していないと、思考させたり、理解させることができず、授業が形だけに流れてしまう結果になります。経験豊かで優れた教師ならば、子どもの代表的な意見はだいたい予測することができ、大きくはずれることはありません。ふだんから一人ひとりの子どもの学習に対する理解が深いからです。経験の少ない教師は発問に対する代表的な意見を予測する練習が必要です。
 日々の授業で、この時間で何を理解させるか、そのねらいにつながる発問には、必ず事前に応答の予測を立てておくことが重要です。ねらいのポイントが明確になっていると、とことんまで子どもたちの思考に迫ることができます。
(野口芳宏:1936年生まれ、元小学校校長、大学名誉教授、千葉県教育委員、授業道場野口塾等主宰)

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多くの教師の授業が改善されないのはなぜか

 多くの教師の授業が改善されないのは、自分ではできていると思っていたり、授業を改善するための視点に気づいていなかったりするからなのです。まずは、自分の授業の弱点に気づくことです。気づくことから第一歩が始まります。
 私は若いころから、「なぜ授業がうまくいかないのだろうか」と、ずいぶん多くの授業を見てきました。授業がうまくいかないということは、必ずその原因があります。それらの原因の一つ一つを探り、どうしたら改善できるのかつぎの5つの視点から考えていきます。それぞれの項目について、自己評価を4段階で行ってみてください。そうすることによって、自分ではできていると思っていたことが実はできていなかったことに気づきます。 
(1)
学びたくなる教室環境をつくっていますか
 教室に入ると、教室内の様子が目に飛び込んできます。教室内のある物が乱れ、ゴミが散らかっているなかで、子どもたちは学びたいと思えるでしょうか。教室に入った瞬間、子どもたちは教師の心を感じているのです。それは、当然授業にもつながっています。すっきりした教室で授業を始めましょう。
(2)
学習習慣を身につけさせよう
 教室に入って子どもたちを見ていると、学習習慣が身についていないと感じることがあります。
 教師が「始めます」と声をかけると、子どもたちが起立した時の態度がたるんでいる。子どもたちの書く姿勢が悪い。挙手も手を曲げています。このような姿勢ではすぐ疲れ、集中力が長続きしませんし、よい授業ができるはずがありません。
 授業は教師と子どもが緊張感を持って真剣勝負する時間です。どんなことが学べ、どんな意見が飛び交い、どんな知的興奮が待ちうけているのか。こんな期待感を持って臨むのが授業です。
(3)
ていねいさを身につけよう
 質の高い仕事をするために欠かせないのは、ていねいさです。小さなことにもていねいに取り組む姿勢があって、はじめて仕事の質は高まっていくのです。
(4)
自分のクセを自覚しよう
 気をつけないと、知らず知らずのうちに口癖になっている言葉があります。姿勢や表情が気になる教師もいます。背筋がすっと伸びていない教師。無表情な教師も目立ちます。
 教師が笑い、驚く、うなずく、感心する。教師の表情一つで、子どもの学習意欲は喚起され、授業の雰囲気は一変します。豊かな表情は、授業づくりの大きな武器であることを認識すべきです。
 授業の最初から最後まで、大声でしゃべりっぱなしという教師がいます。これでは子どもはたまりません。
 自分の癖を知り、改善するためには、授業を録画し、動き・口癖・姿勢・表情などをチェックする。授業を見てもらい、気になった点を、どんな小さなことでも指摘してもらったりして、改善していくしかありません。
(5)
教師の言語力を高めよう
 教師の仕事は言葉を効果的に活用することができなければ成り立ちません。質の高い授業を実現するためには、高い言語力が必要です。
 発問や指示に言語力があらわれます。国語の「かさこじぞう」の授業を見ていると、教師が「ばあさまのやさしさがわかるところに線を引きなさい」と言っておきながら、すぐさま「ばあさまのやさしさが伝わる言葉に線を引きなさい」と言いました。「わかるところ」と「伝わる言葉」では全然ちがいます。教師の言葉が変わっていくと、子どもの頭は混乱します。
(
鈴木健二:宮崎県小学校教師、指導主事、校長を経て愛知教育大学 教育実践研究科 教授。道徳教育、学級経営を担当)

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授業をつくるには「これだけは何としても教えたい」という内容・教材を鮮明に持つこと

授業をつくるには、第一に「これだけは何としても教えたい」という内容・教材を鮮明に持つことである。
 教えるべき内容を鮮明につかんでいるかどうかは、指導案の「ねらい」をみれば一目でわかる。「表現力を育てる」なんてことを一言書いているだけのものがある。これなど、どの時間にもこのことがいえる。だから、本時のねらいとはいえない。「どんな教材」を使って、「どのような方法」で「どんな表現力」を育てるか書かなければ本時のねらいとはいえない。
 自分のクラスの実態があって、そのうえに立って「こんな子どもだから」「こんな内容を教えなくてはならない」ということになるのである。資料を読む力なども考えて、教えるべき内容を考えなければならない。
 指導案を見て驚くのは、ねらいがあいまいなものが多いということである。この点を改善するには、教材研究をしっかりするしか方法はない。
 これがわからない人は、「これは面白そうだ」という他人の実践例をとりあげ「追試」をやってみることだ。私自身「追試」と「ものまね」で力をつけてきたように思う。
「追試」をやっておれば、
(1)
どんな教材を使うと、授業が面白くできるか
(2)
どんな「発問・指示」をすると、子どもが動くか
(3)
どんな指導法を用いると、子どもが活動的になるか
といったことが、いつの間にかわかってくる。
 ものまねでよいから、しっかりやってみることだ。子どもの動きが違う、くいつき方が違う、目の色が違うことなどから「何がよいか」ということがつかめてくる。
 これさえやらない人が多い。もっとも、雑誌も本も読まなければ「追試」のしようがない。何を「追試」したらよいか、その例さえつかめないのだから。
 授業づくりの第二の条件は「発問・指示」を考えることである。
「これだけは何としても教えたい」ということが鮮明になれば、大てい「発問・指示」は浮かんでくる。
 例えば、郵便ポストで「手紙の大切さ」を引き出したいというねらいが決まれば、子どもたちにケント紙一枚提示して「この紙で、ポストを作りたいのだが、どうだろう?」という発問が決まる。
 子どもたちは「ダメ!」と言うに決まっている。このことを予測して「どうしてダメか。紙ならポストを作りやすいよ」とゆさぶりをかける。
「紙では、大切な手紙が、雨が降ったらダメになる」と子どもたちは言う。
「手紙がぬれたってかまわないじゃないか」と更にゆさぶる。
「母キトクなんて大事なことを書いたものがダメになったら大変じゃないか」というのである。
 結局、手紙の大切さがはっきりし、そのためには「鉄」のポストでなくてはダメということになる。
 発問によって、このようにねらいに迫っていくのである。つまり「子どもの反応を集約・焦点化」するのである。これをやらないため、何をやっているかわからない授業になる。
(
有田和正:19352014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた) 


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話し合いを重視した授業を成功させるための教師の心構えとは

 話し合いを重視した授業では、子どもたちの活動が中心になります。従来の「発問・指示・説明」中心の授業とは、ファシリテーター(中立的な立場から活動の支援を行うようにする)として教師の心構えも少し違ってきます。
 子どもたちを元気に活動させるためには、教師自身が明るく元気でなければいけません。その時のポイントは教師の「目線」と「声」だと私は考えています。
 沈んだ教室は教師の目線が下がり、下を向いてぼそぼそと話をしている感じです。声は教室全体に届いていません。子どもたちは「私たちに伝えようとしてくれていない」と感じて、活動意欲が小さくなっているのです。
 子どもが活発に活動している教室は、教師が目線を上げ、強い気持ちを持ちで子どもたちに話を伝えようし、教師は子どもたちを意識しています。表情にも明るい笑顔が出てきます。そうなると教師と子どもとの関係もよくなります。「キチンと聞こう」「よく聞いて理解しよう」という子どもが育っていきます。教師と子どもの間に程よい緊張感が生まれ、いきいきとした授業に変わっていきます。
 教室にはいろんな子どもたちがいます。教師の思い通りにいかないこともたくさんあります。話し合い学習では、教師が我慢しなければならない場面が多く出てきます。教師が深刻にらならいように「あせらないで待つ」ことの大切さを知っておきたいものです。また、意見が出ない時、「考え中・考えていない・教師の質問の意味が分からない」のかもしれません。子どもたちの沈黙の意味を知り、耐えることも覚悟しておく必要があります。
 話し合い活動を「うまくやろう」と考えてしまうと、必ず失敗します。どうしても「思いつき」(仕方がない。じゃあ○○しよう)・「思い込み」(今回も△△すればうまくいくだろう)・「思い上がり」(教師の自分が□□すればいいだろう)が出てくるからです。この思いが出てくると、子どもたち一人ひとりへの配慮や思いやりが弱くなって、話し合いが停滞してきます。
 このような状態にならないためには「うまくやろう」と考えず「キチンとやろう」と考えることです。そうすれば、子どもたち一人ひとりにできる限りの配慮をしようと教師は考え始めます。
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菊池省三:1959年生まれ 福岡県公立小学校教師 全国コミュニケーション教育研究会会長 全国教室ディベート連盟研究開発委員 NPO授業づくりネットワーク理事 実践教育研究21サークル代表 菊池道場主宰 北九州市すぐれた教育実践教員表彰 福岡県市民教育賞受賞)

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