創造的な学びで、社会に求められている自立型人間を育成する 伊藤邦人
創造的な学びで社会に求められている自立型人間を育成すると伊藤邦人はつぎのように述べています。
いくら上手な授業をしたところで、教師の作った道筋の上でしか子どもたちが学べない授業(マニュアル授業)であれば、指示されたことしかできない指示待ち人間しか育てられません。
これに対して、「授業のめあて」(これだけは子どもたちに理解させたいポイント)までの道筋をかくした授業(クリエイティブ授業)は、子どもが自ら考え、判断し、行動できるような創造的な学びにつながり、自ら新たなことを創り出そうとする自立型人間が育成されます。
マニュアル授業とクリエイティブ授業とでは、子どもたちの目の輝きが全く違ってきます。人は本来、創造的に学ぶことを好む生き物だからです。
クリエイティブ授業をつくるためには「仕掛けと演出」が不可欠だと私は考えています。
常に「仕掛けと演出」を念頭に置いて授業を組み立てれば、常にクリエイティブ授業ができます。
クリエイティブ授業をつくる上で、大前提となるのが「かくす」という仕掛けです。
授業づくりは、「めあて」をかくすところから始まります。
「めあて」をかくし、子どもたちが創造的に考えていく中で、その「めあて」を発見していく流れを考えるわけです。
イメージとしては、授業のゴール「めあて」から、スタートへ逆算して授業をつくるような感じです。
大枠の流れをつくった後、子どもたちの意見を整理したり、子どもたちを惹きつける工夫をしたり、いろいろな方法で指名をしたりと、細部の演出を組み込んで授業づくりは完成です。
それは、推理小説に似ています。
犯人がわからず、先が読めないからこそ、どのような展開になるのかわくわくするのです。
例えば、算数の「四角形の性質」を学ぶ授業を考えます。
マニュアル授業では、初めから「辺に関する四角形の性質」を見せてしまっているので、後はそれに沿って答えを出すだけです。
子どもたちは、教師から尋ねられたことに答えるだけなので、思考が揺さぶられることはありません。
それに対して、クリエイティブ授業の場合「四角形の性質」をかくしているので、子どもたちは、角・辺・対角線など、さまざまな観点から図形を見ようとするわけです。学びが多角的になります。
例えば「次の四角形(グループ1:長方形・台形・平行四辺形、グループ2:ひし形・正方形)は、どのように仲間分けされていますか?」
子どもは
「角の大きさは関係ないのかなあ?」
「2グループのひし形と正方形は、全ての辺の長さが等しいです」
「ひし形と正方形は、対角線が垂直に交わることも共通しています」
「なるほど!」
社会で求められている自立型人間を育成するためには、子どもたちの発想があふれ出し、創造的な学びにつながるクリエイティブ授業が必要とされています。
(伊藤邦人:1980年大阪府生まれ、学習塾勤務を経て、立命館小学校教師。学習塾にて、The Teachers of the Year大賞を受賞。学習塾のよさと小学校のよさを融合させた新しい教育システムを構築。「クリエイティブ」を教育の柱とし、子どもを最大限伸ばす学級づくり・授業づくりの研究を進めている)