カテゴリー「授業のさまざまな方法」の記事

子どもたちが聴き合い、つながり、学び合う学習は、具体的にどうすればできるか

 子どもたちが、学び合う学びとは、子どもたちが「聴き合い」、子どもたちと子どもたちや教師を「つなぐ」ことができる学習である。どのようにすれば、それが可能になるのでしょうか。
1 聴き合う
 聴くというのは,学ぶことの基本です。
「聴く」ことができるためには、学ぶことを、子どもたち一人ひとりが「自分の学び」として意識しているということが大切である。
「自分の学び」だから,人の話を聴こうとするのである。
2 何をつなぐのか
 具体的には,何と何をつなぐのか。
(1)子どもたちの「考え」と「考え」をつなぐ。
(2)子どもたちの「考え」と,教材をつなぐ。
  教材のねらいや,追求しているものを軸にしていく。
(3)子どもと子どもをつなぐ
  子どもの考えだけでなく,体験などもつなぐ。
  子どもたちの生活の中で、子どもと子どもをつなぐ。
(4)子どもたちと教師のつながり
  子ども同士をつなぐ前に,子どもたちと教師とつながる。
3 つなぎを可能にする条件
(1)教材解釈
  教材解釈を深めれば、子どもたち一人ひとりの学び,読みを聴きとることができる。
  教材解釈をすればするほど,教えたいと思うが、教師の教えたいことと,子どもの学びにずれが生じ、教室の空気が重くなる。
  そうならないように、教材解釈をしっかりした上で,教師はそれを出さずに,子どもの学びに反応できるようにする。
(2)子どもの考えから出発する学びに転換する
  高度な解釈のできるすごい授業からの脱却し、教師が教えないで,子ども任せにしているのではなく、子どもたち一人ひとりの理解に対応するようにする。
  子どもの読みが,どこから来ているのかを認識して,子どもたちにかえしてやる。
(3)個人学習で、子どもたち一人ひとりの考えを引き出す
  子どもたち一人ひとり、個別対応することが大切である。書くことを重視する。
  子どもたちに、いきなり一人でやれと言っても,やれない。教師が個人学習のやり方を丁寧に指導してあげる。
(4)子どもたちに連続発言への意欲をもたせる
 話せる雰囲気作りが大事である。抵抗感が薄れ、子どもたちが仲間意識が持てるようにする。
(5)聴き合える子どもたちを育てる
  受動的に聞くのではない。反応を返したり,自分の意見と似ている,似ていないなどを考える。
 聴くということが学ぶことだと実感させる。
(6)教師が子どもの発言をよく聴く
  教師が,子どもたちの聴き方の見本になる。
  子どもの発言を,教科書,仲間,自己の関係から認識する。
(7)教師がつながりを感じ取れる
  子どもたちを意識していると,つながりが見えてくる。
4 学び合う教室での子どもたちの様子
  子どもの学びから出発し,子ども同士の考え方を丁寧につなぐことで,子どもたちは次のような考えを持つ。
(1)共感「ああ,そうなんだ」
(2)比較「へぇ~。そういう考え方もあるのか」
(3)疑問「それじゃあ,これはどうなんだ?」
(4)結びつけ「ぼくの考えと,つながるな~」
(5)葛藤「じゃあ,これとこれは。どっちもいいな~。どうしよう」
(6)追求「わからない。もっと調べたい」
(7)発見(感動)「そーだったのか! わかった!」
5 学び合いの段階
 学び合いを進めるためには、つぎのような段階がある。
第一段階 
1 子どもたちに、聴く意欲を作る
(1)教師が、魅力的な語りをする
  子どもたちが,聴くことは楽しいと実感する。
(2)教師が、聴く態度を手本で示す
  教師がまず,聴き方の見本を示し、子どもたちの聴く態度を育成する。
(3)子どもたちの聴く態度で、よいところを褒める。
(4)しっかりと聴くことで、子どもたちが伸びることを実感させる。
2 安心して話せる雰囲気作り
(1)発問を子どもたちが答えやすいものにする
  目の前の子どもたちにあった発問をする。
 子どもたちの育ちに合わせた発問をする。
  答えやすい発問に、子どもたちが答えることで,話そうとする気持ちがわいてくる。
(2)話せる子と、話せない子を教師が把握する
第二段階 
1 聴き方を磨く
(1)何かを発見する聴き方
 自分の考えと似ていると共感したり、自分の考えと違うと比較したりするようにする。
(2)顔の見える机の並び方
コの字型に机を並べる。
  なぜコの字型にするのか,子どもたちと話し合って考える。
前向き,班の形など、状況によって使い分ける。
(3)反応しながら話を聴く
  まずは,教師が「うなずく」などの見本を見せる。
反応しながら聴いている子どもをほめる。
2 話す意欲と話し方を高める
(1)どの子どもも話す
思ったことや感想の発表など,どの子も話せる内容で話をする。
(2)不必要な学習話型は使わない
「いいですか」「どうですか」など,最初は使ってもだんだんと減らしていく。
(3)自分の言葉で相手に分かる話し方をする
一言発言や,オウム返しから始めて,自分の言葉で語れるようにする。
第3段階 子どもの考えから出発する授業
1 聴き手に向かって話をする話し方に
(1)誰に向かって語るのかを考える
(2)教師の机を子ども用の机にして,子どもと一緒の目線に降りる。
2 個人学習の取り組みをする
(1)自分の力で読めるように,学び方を教える。
(2)自分の読みを,ノートに書けるようにする。
(3)書いたことの発表会にならないようにする。
3 連続発言
(1)子ども同士で発言をつなぐ意識をもたせる。
(2)教師が話すのではなく,子どもたちが話すことを重視する。
(3)子どもたちが話せることを,教師も,子どもも実感する。
(4)前の人の話につなげて発言する意識を持つ。
第4段階 話題からそれない話し合いと、かかわり合って発言できる
(1)仲間発言
共感する。
(2)対立発言
  比較する。小さな違いから学ぶ。
(3)応援発言
付け足し。手助け。
(石井順治:1943年生まれ、「国語教育を学ぶ会」の事務局長・会長を歴任、三重県の小中学校の校長を努め、退職後は、各地の学校を訪問し佐藤学氏と授業の共同研究を行うとともに、「東海国語教育を学ぶ会」の顧問を務めている)

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私は新人のとき国語の授業の教え方がわからなかったが、努力して楽しくて力のつく学習法にいきついた

 私は新採用のとき、小学校2年生を担任しました。
 今のような指導教師がついた懇切丁寧な指導は一切ありませんでした。
 何とか1日の授業が終わるとほっとしたものでした。余裕など全くありません。
 放課後になると、同じ学年の教室をのぞいて、どんな掲示物をどのように貼ったらいいのか真似をしていました。
 そして、子どもたちと休み時間ごとに外に出て遊んで、子どもたちの気持ちをつかもうとしました。
 毎日の授業を、どうやって教えたらよいか本当に困っていました。
 同じ学年の先生に聞いたり、学年主任の先生に聞いたりしていましたが、間に合いませんので、教科書の指導書を頼りにし、それをみながら進めました。
 一番困ったのは国語の授業です。国語の教科書を見て、何を教えたらよいのか本当に困りました。読めばわかるお話ばかりでした。
 こんな簡単な物語文や説明文は、一回読めばわかるじゃないかと本当に思いました。
 ですから、国語の授業が退屈で仕方ありませんでした。10時間扱いと書いてあっても、すぐ終わってしまうのです。
 きっと、わかる子やできる子どもだけを相手に、進めていたのでしょう。
 校内の研究授業の機会に、40歳代の先生の説明文の授業を参観したのですが、私の国語の授業とは雲泥での差でびっくりしました。
 授業は発問応答方式で進めていたのですが、そのあまりにも鮮やかな展開に、すっかり魅了されていました。
 一字一句を大事にする国語の授業ってこういうのかと、初めてわかったような気になりました。とてもすてきな国語の授業でした。
 その先生の国語の授業は、全員の子どもに、今日勉強する教科書の範囲を読ませ、読めない子どもには一人ひとり教えていました。
 そして、発問応答方式で、教えなければならない内容と言語事項について、きちんとわからせていったのです。
 黒板に書く文字も美しく、見とれました。
 中でも圧巻だったのは、授業時間の最後の方で
「〇〇は・・・・・・です」
と黒板に書いたのです。
 教科書の文章と違うので、私はその先生が間違えたと思い、はっとしました。
 すると、子どもが
「先生、そこは『〇〇も』と書いてあります」
と指摘したのです。
 すると、先生は
「そう、よく読んでいましたね」
「ここは『も』ですね。『は』とは違います」
「どういう違いがあるからしらね」
と進めたのです。
 すると、子どもたちが何人も手を挙げて、要点に触れる答えを言っていたのです。
 一字の扱いで、文章の意味を的確につかみ、イメージが広がったのです。
 この先生は、この「も」を意識させるために、わざと「は」と書いたのです。
 授業は退屈するどころか、後ろで見ていた私も、その先生の発問ごとに、はらはらどきどきしたり、うなずいたり、納得しながら過ごしました。
 あっという間の授業時間でした。これなら子どもも、学習に満足感をもつだろうと思いました。
 そうだ、こういう授業を私もしたいと痛切に思いました。
 こういうすごい授業を毎日受けている子どもと、私のお粗末な授業を受けている子どもでは、1年間ですごい差がつくなと、その申し訳なさに身震いしました。
 それから、私は一念発起して国語の研究会に参加し、教えてくれる師を求めて勉強を続けました。
 そして、楽しくて力のつく国語学習法として、翻作法にいきついたのでした。
(注記)
 翻作とは、なんらかの作品をもとにして、それをなぞったり変えたりしながら、自分なりの表現をすることです。
 翻作法とは、翻作表現活動を取り入れた学習支援の方法です。
 翻作法の第一の利点は、学習活動を意欲的で積極的なものにする点です。
 翻作法では、原作にした作品の理解を確かなものにしたり、その作品の内容や表現方法を学んだり、自分自身の表現力を高めたりすることができます。
 それは、より広い視野から見ると、文化の継承と創造に参加することになります。
 翻作法には「表現活動を通した精読の方法」という特徴もあります。翻作法は、言葉の力を豊かにする、楽しくて実りある学習方法です。
(卯月啓子:1949年東京都生まれ、元公立小学校教師。NHK教育テレビ「わくわく授業 卯月啓子さんの国語」(2002年)で好評を得る。「卯月啓子の楽しい国語の会」代表。現職教員のための国語教育研究会の常任講師を務め、後進の指導にあたっている)

 

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一斉授業で、一人ひとりの子どもを生かしていく方法がわからない、どうすれば意欲を高め、生かせるのか

 一人ひとりの子どもをよく知って、その能力を授業で最大限に伸ばすことが教師の責務である。
 実際には、一斉授業で教師が子どもたちに課題を投げかけたとたん、一人ひとりが、個性的に、理解程度に応じて自らの考えを働かせる。
 教師が、子どもたち一人ひとりの思考を、教師が確実に把握して、授業でどう生かすか、その方法を見通しておくことが大切である。
 一人ひとりを生かすポイント(視点)は、一人ひとりの子どもが
1 個性を生かして授業に参加する
 算数や理科の学習は、答えを一つに導き出す過程で、子どもたち一人ひとりのさまざまな見方や考え方を大切にする。
 お互いの考えを交換し合う場を設定すると、それぞれの考えが生かされて多様な解決の方法が発見できる。
 一つの見方にとらわれることなく、どの子どもの考えも大切にして、いろいろな角度からの考え方を授業で取り上げることが個性を生かすことになる。
(1)
一人ひとりの子どもが、自分の考えを素直に出し合える学習活動の場をもうける
(2)
子どもの考えを出させる場合、教師の意見に流されないように、まず、子どもから考えを出させる
2 子どもの能力を生かす
 それぞれの能力にあった学習の成果を上げるようにする。
(1)
子どもの把握
 子どもたち一人ひとりの
「理解・解決するまでの時間」
「既習の知識・経験」
「興味・関心の度合い」
の違いを把握していると、一斉授業の中で適切な機会をとらえて援助できる。
(2)
コース別による学習形態の工夫
 理解を主とした学習では「早く分かる」「まだ分からない」など、理解状態に応じた学習コースを構成しておく方法もある。
(3)
小集団活動の利用、能力別編成
 技術的な面では、能力別のグループ学習が有効である。
 学習内容に応じて柔軟に編成し、固定化しないように配慮する。
 子どもの意欲を高める授業をするには、
1 興味・関心を呼び起こし行動してみたくなる好奇心をそそる課題を与える
(1)
自分の能力で解決できる能力にあった課題
(2)
好奇心をかき立てる新しい課題
(3)
学習する手順、過程が見通せると自分でやれる自信が生まれる
(4)
直ちに努力の結果が知らされる喜び、成功感・成就感が味わえる
2 学習意欲を高める学級経営
 学習意欲は、学級の雰囲気によって左右されやすい。学級意欲を高める学級経営のポイントは、
(1)
認め合う学級
 全ての子どもを教師が認め、子ども同士が一人ひとりの活躍を喜び合えるようにする。
(2)
分かる授業をする学級
「分かった!」という満足感や成就感を与えられる授業をする。
(3)
安心感のある学級
 学習上の不安、友だち関係の不安、先生との問答への不安などのない学習活動にする。
3 学習指導の工夫
 学習意欲とかかわる欲求には例えば「好奇心」「活動」「探索」「達成」「承認」「自己実現」などがある。
 子どもの活動の様子をとらえて、あの子は、どのような欲求を刺激すると学習意欲が高まるのか判断するとよい。
(1)
適切な目標を与える
(2)
疑問や矛盾を感じさせる
(3)
「やった!」「できた!」の経験をさせる
(4)
子ども自身に資料を集めさせる
(
関口 寛:1931年生まれ、宮城県教育研修センター指導主事を経て元仙台市立小学校長)

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自分らしさを発揮でき、一人では考えつかなかった答えにたどり着く、対話のある授業は、どうすればできるか

 私の授業の最大の特徴は「対話・話し合いのある授業」だということです。
 授業の初めに「今日は、話し合いをします」と言うと、子どもたちは「ヤッター」と一斉に歓声を上げます。
 ある子が話し合いについて、つぎのように作文に書いています。
「話し合いが好きになりました。自分らしさを発揮できるからです。教室の中で、そんなことができるとは思っていませんでした」
「クラスのみんなで考え、考え合う。そして、一人では考えつかなかった答えにたどり着く。その瞬間が特に好きです」
 それに、じっと座って先生の話を聞くのではなく、お互いが、自分らしさを発揮し合える学び、が楽しいのでしょう。
 話し合いでは、答えが分裂するようなテーマを用意します。大きくわけて、次の2種類があります。
(1)
正解のないテーマ
 例えば「奈良の大仏は、もっと小さくてもよかった」といった、正解のない、話し合ってお互いが納得しあうテーマです。
(2)
正解のあるテーマ
「筆者のいちばん言いたい段落はどこか」といった、正解のあるテーマです。
 白熱した話し合いを生み出すために、次のような流れで話し合いをさせます。
(1)
テーマを理解させる
(2)
立場を決めさせる
(3)
理由を箇条書きで書かせる
(4)
同じ立場の者同士で話し合いをさせる
(5)
違う立場の者同士で話し合いをさせる
(6)
振り返りを行う
 話し合いの授業のスタイルは、次の4つがあります。
(1)
ペア学習
「よりよい話し方」や「聞き方」という対話の基本を指導し、実際に対話を体験させます。
 繰り返すことで、友だちとの人間関係もより良いものになっていきます。
(2)
グループ学習
 グループで協力することの良さを体験します。
 協力することの良さを実感した子どもたちは、話し合いにきちんと参加し、すすんで自分の考えを表現しようとします。
(3)
ディベート学習
 言い始めた人が立証する責任をもち、質問と反論をして判定します。各持ち時間は1分程度である。
 不満だけを言っていればよかった子どもの日常の生活から、一線を画した話し合いの世界が展開される。
 競い合いのある話し合いの中で、教えてもらったり、気付かせてもらったりします。
(4)
自由対話
 考え続ける楽しさやすばらしさを実感できるようにします。友だちの様々な考えに触れることにより、より良いものを考え続ける力が育っていきます。
 話し合うためには技術的なことももちろん必要ですが、友だちとの関係性が良くなっていくことが何よりも大切です。
 様々な機会で「ほめ合っている」「心が通じている」「相手の気持ちが想像できるようになっている」という土台があってこそ、安心して自分の意見を人前で堂々と言うことができるのです。
 何のために話し合うのか、どのような話し合いが望ましいのかということを、体験をとおして日常的に学んでいくのです。
 ただ意見を言えば良いのではありません。学級全員が一人残らず参加者となり、お互いの良さを引き出し合い、新しい考えや納得した意見を導き出し合うような話し合いができることが目標です。
(
菊池省三:1959年生まれ、 福岡県北九州市公立小学校教師、2015年に退職。コミュニケーション教育を長年実践した。「プロフェッショナル-仕事の流儀(NHK)」などに出演、「 菊池道場」(主宰)を中心に全国で講演活動をしている。 北九州市すぐれた教育実践教員表彰、福岡県市民教育賞受賞
)

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子どものやる気を最大限に引き出し自立を促す、バラエティ番組を参考にしたMC型授業とは

 最近のテレビのバラエティ番組の多くは、仕切ることがうまい芸人が司会者(MC)になり、ひな壇の芸人に話を振って、面白い話を聞き出す形で進行していきます。
 その原型を作った一人が明石家さんまです。
 さんまさんの番組を見ていると、MCは、出演者を順番に指名しながら、面白い話を大笑いしながら聞いているだけのように見えます。
 しかし、さんまさんは、話を広げたり、上手に話を引き取って別の人に振ったり、突っ込みを入れたり、だれてくると話題を大きく変えたりと、出演者を自在にコントロールしている。
 さんまさんの立つ位置は、話が盛り上がってくると発言者のすぐそばまで行って大きくうなずいたり、突然振り返って別の人に話を振ったり、せわしなく動きます。
 すると、出演者もどんどん乗ってきて、さんまさんの手のひらの上で踊らされて、話すつもりのなかった話まで披露してしまうのです。
 このMCとひな壇芸人の関係を授業に応用できないかと考えたのが、MC型授業の始まりです。
 MC授業で大切なのは、教師が「なんでもあり」という姿勢を見せて、子どもたちが、どんな意見でも出してみようという雰囲気を作ることです。
 子どもが何かを話す。それを受けて、私が「それって、どういうこと? 詳しく説明して」と興味を示す。
 その子が説明できなくても、別の子が引き取って「こういうことだと思う」と話し始める。
 詰まったら私が助け船を出す。そうやって話の輪を広げていく。
 途中で話が途切れそうになったら、クラスの中のしゃべり好きな子に振る。
 正解だけを求めているわけではないのです。
 私が考える教育とは、子どもが自分の頭で考えたことを、クラスの仲間と話し合って、自分たちで判断して正解に近づいていくことです。
 それが自立につながります。世の中に出れば、いやおうなく自分で正解を探すことになるからです。学校は社会で生きる力を身に付ける場所なのです。
 それなのに教師が「答えは?」と子どもに聞いて、違ったら、別の子どもを指す。正解が出なければ正解を教える。
 そのような受け身の姿勢で教師から知識を授けてもらうという授業の形が、正しい教育につながるとは思えません。
(
沼田晶弘:1975年東京都生まれ、アメリカのポールステイト大学職員を経て東京学芸大学附属小学校教師。教育関係のイベント企画を多数実施し、企業向け講演も行う
)

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子どもたちの「学びからの逃走」や「学級崩壊」をどう克服していけばよいか

 私は、子どもたちの「学びからの逃走」をどのように克服していくか、「学級崩壊」の場に直面したとき、どう対処したらよいかを研究しながら教育実践に取り組んでいる。
 現代の子どもは「はい勉強です、静かにして」と言ってもだめです。集中させるには、あらゆるところで、子どもたちに推理・想像をはたらかせるように仕向けることが必要です。
 子どもたちに「どうしてだろう、なぜだろう」という内的な緊張がなければだめだ。
 例えば、地理の勉強でも黒板に少しだけ線を書いて「はい、これは何県ですか」聞くと、初めは「分からない」というが、そのうち「海はどっちですか」とか本質的な質問が出てくる。
 また質問が幾度かあって当てる。そうすると、子どもたちは主体的に勉強しようという姿勢になる。
「問いつつ学ぶのが学問ですが、みんなは問いながら分かったのだから学問ができてる」といってあげると、子どもたちは心底から喜ぶ。
 それを「はい、今日は〇〇県の勉強です。初めに地形は・・・・」なんてやってはだめ。授業の初めの10分間が面白くなかったら、今の子どもはだめ。授業は初めが全てとも言える。
 私は、学問は現実の自然から生まれてきていることを、子どもたちに分からせたい。例えば、理科は毎日の暮らしのなかから工夫が生まれることに気づく。
 算数もいろんなものを数えることから起こる。例えば、水の量を数えるために容器に入れて数えることが考え出された。大きな箱と小さな箱とを考えると小数の計算につながるとか、いちばん初めに自分の身の回りをよくみなさいというところから始めた。
 私は、荒れた学級を担任したが、暴力を振るう子がいたり、立ち歩きはふつう、一切発言なんかしない子とか大変だった。しかし、その子たちを一度も叱らなかった。
 クラスで議論したかったが成り立たない。そこで、みんなに紙に書いてもらい、この意見についてどうなんだという形で進めた。それを繰り返していくうちに、問題を起こした子も態度が変わっていった。
 この子たちが変わっていった根本の理由は「先生は、楽しくさせてくれたから」だと言った。
 教育の仕事は、できる・分かるだけでなく、楽しいということが実感できるような内容にしていかないと、学びから逃走している子を、教育の中に入れることはなかなかできない。
 私は、基礎基本的なことを、豊かに学べるようにすることに、一貫して関心を持ってきた。もう一つは対話とか推理・想像が重要だと考えている。
 授業は、子どもたちがただ静かに座って聞き、考えるのではなく、わくわくしながら子どもが身体を使って参加できるところに値打ちがあると思う。
 私は「教えたいことを、教えるのではだめだ」という考え方を持っている。
 例えば、山に登るのにロープウェーで登るように、やり方だけ教える。これでは子どもたちの成長にプラスにならない。汗水流して登っていき、ときには道を間違え、やっとたどり着くと、筋力も判断力も育っていく。
 歴史の授業では徹底的に推理・想像を働かせることにしている。
 例えば、奈良時代では、唐へ行った人たちは、いったいなんのために行ったのだろうと考えさせる。答えの根拠も聞いていく。すると食べ物を知るため、町のようすなど答える。
 そして教師がヒントを示す「実は行った人の中には貴族、坊さん、学生がいた」と。子どもたちは政治、仏教、文化と答える。
 私は「海をどうやって渡ったのかな」と聞く。つぎにルートを考えさせる。さらに「船にはどんな人たちが必要か」「どんな困難があっただろうか」など考えさせる。
 答えなんか間違っていてもかまわない。推理・想像が大切である。
 授業は対話形式が良い。小学校から大学までずっとこういう授業をやっていくと、第一線の科学者レベルに達するのではないか。
 学校では時間が限られているので、最も大事なこと、本質的なことが分かれば、あとははしょる。時間をかけることと捨てることを仕分ける必要がある。
 私も初めのころは、問いと答えみたいな展開をやっていた時期がある。それては子どもの意見を本当に大事にするような授業はできなくなる。
 教師の発想を超えた子どもの意見こそが授業を深めていく。その発言から展開すれば本質的なものが見えてくる。 
 授業で育てたい力は
(1)
勉強、学問の世界はどんなに面白い世界かということを子どもに体験させ、成功すれば「学びからの逃走」とか、いろんなことは解決していく。
(2)
推理・想像する楽しさを獲得した子どもは、人の話を聞くことが身につくようになる。文化に接し面白い世界に入っていける。
(3)
学習は、実際の生活、人間が見えてくる学習でないとだめだ。
 自然の法則が世界の中で貫かれていることを発見することによって、学習する意味も出てくる。もっといっぱい勉強したいという気をおこさせることだ。
 文化の担い手になりたい、自分も何か発明・発見をして世の中の役に立ちたいというような思いを持つことも大切である。
(4)
リアルにものをとらえること。ものを見るには必ず視点、焦点がある。点が大事。
 漠然と見るのではなく、針の穴みたいな点から入っていくほうが、よく分かっていく。こだわって見ていくと実態に迫ることができる。 
 ある時期まで日本の教育は、教師が子どもを従わせてきた。ところがそれではにっちもさっちもいかない。
 したがって、子どもは教師から独立した存在であるというところから出発しなければ教育は創れないということだ。納得とか合意とかを大事にしなければならない。
 授業そのものを変えていかなければならない。日本の教育が本当に再生する時期に入ってきていると思う。
(今泉 博:1949年生まれ、東京都公立小学校教師を経て北海道教育大副学長(釧路校担当)、「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う) 

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子どもが楽しむ笑いのある授業にするには、どう演出すればよいか

 授業をしている教師は脚本家であり舞台監督であり、演出家でもあると私は思っています。
 授業のシナリオを書き、必要な環境を準備し、子どもの動きや反応に向き合いながら、子どもが夢中になってくれるよう演出していく。
 遊び心を持ってつくる授業にはその思いの分だけ熱のようなものがこもります。
 その熱が子どもに伝わるからこそ、子どもたちが夢中になる授業が実現できるのではないか。そう思って様々な演出を夢中で試行錯誤しています。
 作文の授業で、私が次の一文を板書します。「悲しくて(    )歩いていました」
 さて、この(  )の中にはどんな言葉が入るかな、と聞くと(トボトボ)と書いた子どもがいました。
 その子どもを指名して前に出てきてもらい「どんな感じなのか歩いてみてくれる?」と実際にみんなの前でやってもらうと、その子は肩を落として、下を向いて、歩いてくれました。
 すかさず私が「確かに悲しそうやなあ」とコメント、子どもたちから笑い声がおき、教室がわきました。
 動作やジェスチャーなどを子どもたちにさせることは、授業を盛り上げる一つの演出になるのです。
 授業中に子どもを指名して発表させるとき、私は状況によって次のように使い分けるようにしています。
(1)
賛成か反対か挙手させる
(2)
まず、意見をノートに書いて、それを読みながら発表させる
(3)
隣同士で話し合いを合をさせてから、どちらか一人に「ペアの意見」として発表させる
(4)
意見が分かれたら人数の少ないほうから発表させる
(5)
一つの列を選んで順番に発表させていく
(6)
言いたい子全員を立たせて発表させる
(7)
教師は指名せず、言いたい子どもに自分で起立して発表させる
 授業中、脱線気味の子どもを注意すれば教室の空気が壊れることがあります。
 同じ子どもに何度も注意していると、次第に空気が淀んできます。クラスの雰囲気を壊さないために、「さっぱりとしたユーモア」を交えて次のように注意するようにしたのです。
「○○ちゃん、もし次、後ろ振り向いたら、きみの真横に森川先生のパネルを立てるから」
「○○ちゃん、スイッチ押したら、穴があいて落ちていくよ」
 笑いの素材は「子どもの言葉」の中にあります。授業における「笑い」で大切なのは「子どもの言葉で笑わせる」ということです。
 笑いをつくるきっかけは教師のツッコミであっても、笑いの主役はあくまで「子ども」にしたいと思うのです。
 子どもがツッコミを入れるからおもしろいのです。例えば、赤ちゃんの話は私のクラスの子どもたちの大好物です。少し、いたずらを仕掛けてみましょう。
「高い高~い。かわいいよね。赤ちゃんは。○○くん、きみもこうやって大事に育ってきたんやで~」「ほ~ら、高い、高~~~い」天高く赤ちゃんを放り投げるジェスチャー。
 子どもたちは、間髪入れずに「あかんやん」クラス中が大爆笑です。
 ここでこの子なら「こう言ってくれるだろう」「こんなことをしてくれるはず」というようなことを想像できるのは担任だけです。
 そのために、授業中の空気をよみとり、その子がお笑い担当なのか、笑いの受け手側にいるのか。子どもの性格や、生活の調子がいいときか、悪いときか、細かな観察が必要です。
 言葉に温かく対応できるクラスをつくろうとする教師の思いが、教師のツッコミを生み、笑いにつながる「子どものひと言」を生むのです。
 子どもたちが一番聞きたいのは自分のことやクラスの友だちが出てくる話です。
 話の中に個人名を入れて、鮮度が高いうちに具体的なエピソードを話してみましょう。子どもたちの食いつきは明らかに変わってくるはずです。
 教師の話し方を磨いてくれるのが、子どもたちの反応です。大きな笑いが起こった。反応が薄かった。子どもたちの様子を見て、ウケた話は記録しておくようにして、次に生かします。
 子どもたちが話を聞くとき、教師が一方的に話をすると、途中で飽きてしまうことがあります。そうならないようにするには、どうすればよいでしょうか。
 例えば、教師が子どもに「わかる? わかるよね? どうなったか!」といった「話の中に共感できる」ことが出てくれば、子どもたちを話に巻き込むことができます。話すときは「共感」の飛び石を置きましょう。
 話力をつけるために大切なことは、日ごろから「ストーリー思考」でいることです。
 遭遇したおもしろい話を「いかに子どもたちにリアルに話すか」を念頭に置きながら頭の中で話すことをくり返します。
 子どもたちはここで笑ってと、冒頭からオチまでをまず考えます。私は毎日のように、どう話したら子どもたちが笑ってくれるだろう、ということを考えています。
 授業で、うわあ、これはうまい伝え方だなあ、子どもがノッているなあ、という場面では必ず「話し方」に工夫があります。
 教師がそれまで蓄積してきた技が凝縮されてその空気をつくりだしているのです。話がうまくいったときはメモをします。常に意識していなければ話し上手になることはありません。
(
森川正樹:兵庫県生まれ、兵庫県私立小学校教師。研究教科は国語科。教師塾「あまから」代表、教師の笑顔向上委員会代表、基幹学力研究会幹事、読書会「月の道」主宰)

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授業でグループ学習を取り入れると子どもの学習意欲が増す、グループ学習の種類と留意点はなにか

 授業中にさまざまな学習方法をとることで、授業にめりはりが生まれる。子どもの活動が増え、学習意欲が増す。
 子どもを生かすことを考えて、小グループ学習を取り入れた授業を工夫してみたい。
1 小グループ学習の種類
(1)
小グループ学習
 4人ぐらいのグループで、助け合って共同で学習を進めていく。教師はグループのリーダーに学習課題をしっかり把握させ、メンバーが協力するように働きかける。
(2)
ペア学習
 となりの子と協力しながら学習を進める。例えば、答えを考える、音読し合う、話し合う。演奏をし合う、といった学習が容易に展開できる。
(3)
バズ学習
 6~8人ぐらいのグループにして、課題を討議し、意見を言い合いながら学習を進める。
 意見交換が中心となるので、話し合いのかじとりをしたり、まとめたり、意見の対立を調整したりする司会の子どもの役割が大切になる。
(4)
解決方法の類型に別れてグループ学習をする
(5)
テーマや課題が同一の子どもが集まってグループ学習をする
2 グループ学習を進めるときの留意点
(1)
役割を明確にしておく
 リーダー、まとめを発表する子、記録を取る子など必要な役割はあらかじめ決めておく。
 それぞれの役割の子どもが、どのような仕事をするかについても、事前に指導しておく。
(2)
活動の様子を把握する
 活動の際、グループに埋没してしまったり、リーダーに追従しているだけといった子どもが出ては、逆効果である。
 グループのメンバーが、それぞれ考えを述べて活動できているか、教師は指導に努める必要がある。
(3)
役割は交替で
 まとめを発表する役割などは交替させて、一人でも多くの子どもがいろいろな体験をすることができるように配慮する。
(
石塚清司:元埼玉県公立小学校校長)

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百ます計算などの陰山式学習法は、どのようなものだったのか

 陰山英男が兵庫県朝来町立(現在は合併により朝来市立)山口小学校在職当時、同僚教師や保護者なども巻き込んで基礎学力向上のためのメソッドの開発を進め、岸本裕史先生が提唱した百ます計算やインターネットの活用、科学実験、そして日常の生活を見直すチェックシートの活用など、さまざまな工夫を重ねて、成果を上げる。
 陰山学級の国語と算数の偏差値が全国平均を大きく上回った。山口小学校を卒業した陰山学級で学んだ50人ほどの子どもたちが、1999年高校を卒業し、その2割が国公立大学に合格した。NHKのクローズアップ現代に取り上げられた。
 百ます計算は足し算、引き算、かけ算、割り算の四種類があり、低学年用には、25ます計算や64ます計算もある。
 任意に記された縦・横10個の数字を、ます目にそって左から右へ、全部で100個の計算を解く。そして同じ数字が配列された問題を二週間、学校と家庭で行い、計算速度を記録する。
 目標タイムの基本は二週間で初日の半分に縮めること。もしくは、2分(割り算の場合は5分)にすること。できた子どもの所要時間を告げる。
 
「まだまだ君たちのタイムは伸びる」と子どもたちに言う。早くできた子どもは、プリントを裏返し、同じ数字を10回足したり、引いたりする「エレベータ計算」を始める。
 数字は百ます計算を始める前に黒板に書いておく。百ます計算で得られることは、計算力アップで子どもに自信をつけさせること。集中力をやしなうこと。
 特に勉強ができない、行動に問題のある子どもたちは元となる計算力が弱いぶん、成長するときは格段の伸び方を示す。百ます計算は、陰山は岸本裕史先生より学んだ。学年ごとに段階的に百ます計算を進展させる。
 新しいクラスを担任すると、陰山は子どもたちに
「これから、この百ます計算のプリント(同じ数字の並びを毎日やることが大事)を、時間を測ってやってもらいます。先生は予言します。2週間後にあなたたちのタイムは半分になっています」
と言うと、子どもたちは半信半疑で取り組みますが、陰山は経験的にそうなることを知っています。
 百ます計算の時間が短くなっていくと子どもたちをほめます。ほめると子どもたちはやる気になってまた伸びます。子どもたちは自信ができると、意欲的になり、飛躍的に成長します。百ます計算によって鍛えられた集中力によって思考力も伸び、文章題も解けるようになります。
 百ます計算を実践しても効果がでないのは、百ます計算の本質を知らないまま使っているからだと陰山は言います。
 学力をつけるには、まず子どもたちの生活習慣を健全(早寝・早起き・朝ごはんを食べる)にして、そのうえで基礎基本の学習と読み書き計算のトレーニングを行い、さらに多様な学習をするようにする。そのことをしっかり理解してほしいと述べています。
 百ます計算さえさせればよいと、早寝・早起き・朝ごはんの正しい生活習慣なしに、寝不足のまま、朝ごはんも食べないで百ます計算をさせたらキレる子どもがでてきても不思議ではありません。
 百ます計算を行うことで子どもが伸び始めると、それを見て保護者も変化し、学校の言うことを信じて子どもの生活習慣を正してみようと協力的になると陰山は言います。
(
陰山英男1958年生まれ、元兵庫県公立小学校教師、広島県公立小学校長を経て、立命館小学校副校長、立命館大学教育開発推進機構教授。元大阪府教育委員委員長)

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国語科:授業の時間の配分は子どもに決めさせ、読解は子ども同士と言葉をつなげよう

 教師はなるべく言葉を発しないで、進行は子どもたち自身がする。それが岸田流「子どもを育てる国語」だ。
 6年生の子どもたちは、教科書にある「海の命」(立松平作)を読んだ。魚のクエを捕ろうとして海で死んだ父と同じように漁師になった太一は、村一番の漁師と呼ばれるまでになった。
 ある日、海で父の命を奪ったであろうクエに出会い、捕るかどうか葛藤する物語だ。
 始業のチャイムと同時に、この日の課題「村一番なのに、なぜ太一はクエをうたなかったの?」が、黒板にはられた。
 子どもたち各自の机には全文がコピーされた紙が置かれている。課題を探る手がかりを青色で線や書き込みを紙にするのだ。
 岸田「何ページにもわたる教科書では、線と線をつなぎ、キーワードを結ぶことができません。だから、全体がひと目でわかるコピーを使います」
 岸田「大切な課題だね。では、『一人学び』から始めます」とひと言いった。
 この日の書き込みは全員が「青色」です。だが、単元の最初の授業はオレンジ色だった。最後は赤色にする。読み込めるようになる後の授業ほど、目立つ色になる。これは、子どもたち自身が考え、色の順番を決めた。
 10分後、指示もないのに数人ずつが机を寄せて「グループ学び」を始めた。
 黒板には、10分「一人学び」、5分「グループ学び」、25分「全体学び」、5分「振り返り」と書いた紙がはってある。
 45分授業の時間配分も、単元ごとに子どもが決めるのだ。
 岸田「学期の後半ほど全体学びの時間が増えます。グループも前回は生活班、今日は縦割り班、違う人の意見も聞きたいと子どもが決めました」
 教師は教室を回り、戸惑っている子どもに声をかける。
 全員がいすを持って黒板の前に出た。「全体学び」だ。
 男の子が前に出て、黒板に貼られた全文拡大コピーに太い青色ペンで線を引き「『大魚は、この海の命だと思えた』とある。太一は瀬の主であるクエを殺したら、自分も海で生きられなくなると思ったんじゃないか」と、説明する。
 今度は女の子が二つの言葉をペンで囲み、つなぐ。「私もそう思う。この『自由な世界』と『海の命』はつながっている」
 「そうかな。私はクエをおとうだと思って殺さなかったと思う」
 教師「でもクエはお父さんを殺したんだよ」教師も座っているときは、子どもと同等。立っている時だけ「先生」になる約束だ。
 「えー!」「でも!」「違う!」「海の命が太一を試したんだ」
 白熱する議論に、子どもたちの心拍数も上がっていく。
 25分でタイムアウト。みんな自主的に席に戻り、ノートに課題の答えと感想を書く。
 言語活動を通して読解を進める方法は、新学習指導要領のめざす内容だ。
 教師「読解に正解はない。考えを交流させる素晴らしさを感じてほしい」
 授業で「つなぐ」のは、子ども同士の議論だけではありません。今回の単元なら「命」や「漁師」という言葉もつないで広げたい。そこから連想する言葉をどんどん放射状につなげて書いていきます。出た言葉のうち関連のあるものを線でつないだり、さらに浮かぶ言葉を周囲に書いて、どんどん網の目のように広げていきます。
 それを授業で読み深めた後、再び「命」と「漁師」でつなぐ。そうすると、出てくる言葉や広がりがまったく違う。言葉がつながり、生きてくる。量だけでなく、質が高まります。
(
岸田 薫:横浜市立小学校教師を経て横浜市教育委員会指導主事)

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