国語科:「わにのおじいさんのたからもの」を先輩教師から学ぶ 松崎正治
私(注)は小学校の校内研修の講師として長年通い、そこでA教師がB先輩教師の授業(小学2年「わにのおじいさんのたからもの」鬼の子が、わにのおじいさんに聞いた宝物のありかを訪ねていく話)からつぎのように学び成長していく過程に立ち会うことができた。
A教師はB教師に授業の構想を尋ねたときに、その内容に圧倒された。
1 周到に教材研究をし、構造図を作っていた。
全文を「人物を表す語句」と「叙述する語句」に分けて、指導すべき語句が抽出されていた。
2 他の教科と関連させ、興味関心を盛り上げた。
生活科で節分(鬼は外の意味を考える)などの冬の行事を取り上げる。
図工科で鬼の面を作る。
読書活動で鬼に関する本を読む。
朝の会で「私の宝物」のスピーチをする。
3 子どもの最初の感想をもとに、読みの実態を把握して授業を進める。
そこから生まれた問いを
「なぜ、おにの子は帽子をかぶっているのか」
「なぜ、そんなすごい宝物をおにの子にあげたのか」
等のようにまとめた。
A教師は子どもの感想に基づいて授業を構想していく方法をB教師から学んでいった。
子どもたち自身がどんどん授業を進めていく学習の仕方を学ぶためにA教師は、子どもたちの話し合いの輪の中に入れてもらった。
子どもたちは発言を譲り合ったり促したり、まるでそこに教師がいるような感じで進めていた。
実際に授業を子どもの立場で体験して、B教師に教えてもらっていた。
さらに、放課後にA教師がB教師に尋ねる「反省会」もやった。
話し合いの練習のためのグループの作り方とか、リーダーを育てる話が語られた。
B教師は、話し合う子どもの様子を表情や仕草、何気ないつぶやきから読み取り、授業の進行や、次の単元でさらに深化させるべき話し合い課題などについて考えている。
その子どもの様子の読み取りの時に、A教師は子どもの中に入り子どもの側から、どのように見え感じられるか、授業を見てみたのである。
「B教師の授業の技法はB教師の人間性が絡まって、初めて成り立つと思う」
「だから、真似をしても自分のものにはできない」
「そこに自分なりの切り込みとかを何回か試行錯誤したら、ちょっと自分なりのものができたりっていう感じですね」と、
A教師は語っている。
(注) 松崎正治:1958年生まれ、同志社女子大学教授。専門は国語教育における授業研究。教師の人生体験が授業にどう影響を与えるのか。学習記録の分析や実際の授業の参与観察を通した授業研究。教育現場で実践に携わる教育者や、研究者による共同研究。
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