カテゴリー「学級崩壊」の記事

授業が楽しいと子どもに感じさせれば、学級崩壊など起こるはずがない

「学校がつまらない、休みたい」と子どもが思うようになったら、赤信号です。休み時間や給食だけを楽しみにしているという子どもがいるなら、黄信号です。
 しかし、授業が楽しみだ、という子どもが多ければ、その学級は青信号です。ですから、子どもたちに授業に充実感や達成感を感じられるようになれば、学級崩壊など起こるはずがないのです。
絶対にしてはいけない、駄目な授業の典型は
(1)
講義型授業
 一方的に教師が講義する授業です。小学生にこれを行うと致命傷になります。
 教師が知っている知識や情報をただダラダラと話しまくる。子どもの反応などお構いなしに自己満足にふける。子どもたちの空気が読めなくなると危険。
(2)
板書型授業
 板書した文字を子どもにひたすら写させ、穴埋め問題を子どもたちに答えを求めさせる。プリントを配布して穴埋めさせる方法も同様である。
 一見、静かで集中しているようにみえても、頻繁に行うことは絶対にさけなければなりません。このような授業では、子どもが学ぶ意欲も起きませんし、本当の力はつかないからです。
(3)
硬直型授業
 教師が無理やり導きたい方向に子どもたちを持って行こうとするあまり、教師も子どもも表情が硬く、学習のめりはりや盛り上がりが感じられません。
 子どもの実態に寄り添った教材研究が必要でしょう。
(4)
放漫型授業
 教材研究もせず、経験だけで何とか乗り切ろうという、場当たり的な授業をいいます。教師の情熱と迫力が伝わらないため、子どもたちも満足感が感じられず、退屈しのぎに学習以外の楽しいことを探そうとします。人前でも平気になった途端に授業妨害まで一気にエスカレートします。
(5)
放任型授業
 授業の妨げになる子にばかり注意していると先に進まないので、無視して学習を進めるようになります。これを繰り返していると、まじめに学びたいという子の集中力が減退し、逸脱行為がいたるところで出現し、授業が成立しない状態に陥ります。
 
「楽しくなければ授業じゃない」胸に響く言葉だと思います。
 教師は余裕たっぷりに冗談などを織り交ぜながら、笑いの中から集中力を高める。そんな授業を子どもたちはきっと心待ちにしています。
 子どもたちの意欲や集中力が高まるのは、教師の余裕の表れからの、遊び心や授業への万全な準備があって初めて可能となります。
 
「授業が楽しい、うれしい、気持ちいい」と子どもに感じさせられるようになれば、学級崩壊の危機に怯えることはなくなるでしょう。
 授業が不成立となるのは、教師の子ども掌握技術が貧弱であること。教材研究が不十分なことに起因するものであることは明白です。
 どんな腕利きの寿司職人であってもネタが悪ければ、うまい寿司にはなりません。教材研究はどのようにすればよいのでしょうか。
1 一教科15分間の教材研究を実践しよう
 毎日、寝る前の一時間程度に、翌日の教材研究を行うものです。一教科15分と時間を決める。
(1)
学習の中身(既習事項や関連教材・学年の系統性についても)をつかむ(約3分)
(2)
学習のねらいを整理し、めあて(学習問題)を設定する(約2分)
(3)
主発問を吟味し、誘導発問を精選する(約3分)
(4)
板書計画をたてる(約2分)
(5)
子どもたちの反応を予想し、指名・巡視計画をたてる(約2分)
(6)
インパクトのある導入方法について検討する(約3分)
なかでも、(5)(6)に時間をかけられるようになってくれば、自分でも驚くほど、授業はよどみなく流れるようになります。短時間でも毎日継続することで本当に必要な教材研究の中身がみえてきます。
2 こだわりの教科の教材研究を
 力量を磨くためには、こだわりの教科をつくることです。長期休業や休日までも利用してたっぷりと教材研究したいものです。
 時間を忘れて教材開発をし、授業で子どもたちの目が輝いた瞬間、それまでの苦労はいっぺんに飛んでいきました。
 こだわりの教科を持つことができれば、子どもは授業を心待ちにするようになります。たとえ一教科でも、子どもたちが学習の中で自己実現を図れれば、学級崩壊の危機は未然に防ぐことができるでしょう。
 私は、自分の授業を録音・録画して授業改善に役立てることができました。自分では感じていなくても、ダラダラと同じ話を繰り返していたり、耳障りな悪い口癖を連発していました。
 若い教師は授業のチェックを試みてはいかがでしょうか。
(1)
しゃべり過ぎていませんか
(2)
同じことを何度もくり返して言っていませんか
(3)
耳障りな口癖はありませんか
(4)
声のボリュムや抑揚にめりはりはありますか
(5)
表情や動作は豊かでしたか
(6)
視線は特定の子どもなどに偏りはありませんか
(7)
発問は的確でタイミングをとらえていましたか
(8)
指名は特定の子どもに偏りはありませんか
(9)
ほめ言葉は何度使いましたか
 教師ほど人前で話をすることの多い職業はないでしょう。私は落語や漫才の話術の魅力にとりつかれ寄席のリピーターとして何度も足を運んだものです。
 卓越した話芸に触れることで、しゃべることを生業とする教師は、もっと話術を磨かなければならないと強く感じさせられたものです。
 子どもたちが教師の話にのめり込み、集中して学習することができれば、おのずと授業改善は図られるのですから。彼らの達人芸を見習うことも私たち教師には必要なことではないでしょうか。
(
小谷川元一:1959年千葉県生まれ、千葉県松戸市公立小学校教師、松戸市指導主事等を経て東京福祉大学准教授。子育て・教育支援スペース「こたにがわ学園」理事長)

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学級崩壊に陥ると回復が難しい、どのようにすれば予防し回復するようになるか

 学級がうまく機能しない状況になると、ある調査によれば、約半数の学級は回復せず継続する。
 学級がうまく機能しない状況を予防するための、各学校の取り組みを、多い順でみてみると、
1 学校としての取り組み
(1)
組織的対応ができる体制づくりをした
(2)
TTや担任以外の教師による授業を多くした
(3)
教育相談体制の一層の充実を図った
(4)
学年内の指導体制の充実を図った
(5)
職員会議や校内研修会で取り上げた
2 地域及び家庭との連携
(1)
校内の情報を積極的に家庭に知らせるように努めた
(2)
校外指導者や地域のボランティアの導入を図った
 学級がうまく機能しない状況を回復するためにとった学校の取り組みを多い順でみると、
1 TTなど複数教師による指導の実施
2 臨時職員会議等の開催
3 臨時保護者会等の開催
4 他の教師による授業の実施
4 非常勤講師の配置を要請
6 臨時公開授業の実施
7 児童相談所・医療機関等関係機関との連携
8 担任の交代
 学級がうまく機能しない状況に陥ったが、回復するようになった事例を幾つかみてみると
1 教師の指導観の転換により回復した
 学級が全体として落ち着かず、いじめや暴力がはびこっていた。3,4年生の時は50歳代の男性教師が力でおさえて持ちこたえていた。
 しかし、5年生の時の担任はやさしい教師で、丁寧に接する教師であったが、授業は不成立となり、いじめや暴力が出始めて、これを苦に不登校になる子どもも現われた。
 6年生になり、子どもは教師の話は聞かない、自分たちで勝手に話し、整列もしない状態に陥った。
 6年生の担任になった教師Aは
(1)
子どもたちが癒されたり、自己肯定感を味わえるような授業
(2)
誤った答えを大事にする
(3)
授業を工夫し、楽しく学習できるようにする
(4)
良い学級にするための話し合いをする
このように考えて指導するようにした。
 楽しい授業にするよう、推理や想像を働かせる楽しさを体験させた。そして、子ども同士をつなげるコミュニケーションを増やし、話し合いや討論をするようにした。子どもたちが互いに主張できるようになり効果があった。
 一人ひとりを大切にする。自尊感情を回復させる。一人ひとりに自信をもたせる。といった、一人ひとりが楽しくなるような具体的な指導方法を考え実践することこそ、授業困難から回復させることになるのではないか。
2 学年合同授業、相互支援で回復した
 30歳代の女性教師Bが3年生の担任になった。5月頃からR男が授業を妨害しはじめた。物かくしなどのいじめが現われ、男子3名がこれに加わって授業困難状態となる。
 この学校には生徒指導会議がある。担任Bは指導力が弱く、学級が前年も落ち着いていなかったこともあり、全校の支援を受け入れるようにした。B担任の要請により、全校で支援体制がとられて回復した。
 担任BはR男を否定的に認識し、接していた。しかし、算数を指導する教師や、他の教師がR男の別のよい面を認め、評価したことでR男の気持ちが変わり、回復に向かわせたようだ。
 問題児はとかく、すべての教師に否定されかねない。良さを発見し、認めることの大切さを示した事例である。
3 担任が交代して改善された
 転任してきた男性教師Cが6年生を担任した。子どもたちは落ち着きがなく、話を聞かず、悪口を言ったりしていた。
 教師Cは高圧的な指導で解決しようとした。勉強が苦手な子どもを多く指導したが、平等に教えてほしいと言われた。教師は厳しい指導を続けた結果、授業がボイコット状態となった。教師は6月末で休職した。
 9月に新担任の40歳代の女性教師Dと交代する。教師Dは「子どもが怒られ、自尊心が傷つけられている」と考えて
「一方的に叱らない。子どもたちの気持ちを聴くように努める。放課後の教室で雑談などをする。子どもといっしょに遊び、ふざけ合う。授業を楽しくする。勉強の大切さを伝わるように話す」
といった方針で子どもたちと接した。
 こうして11月頃には落ち着いた学級となった。これらは、子ども理解や子どもと教師の相互理解・信頼こそが教育の基本であることを示している。
 学校を安心できるところ、楽しいところだと子どもが感じることが、回復への道でもある。授業が困難であっても、子どもが変わったことを示しているといえる。
(
金子 保:1936年埼玉県生まれ、大宮市公立小学校教師、埼玉県立教育研究所・埼玉県立北教育センター指導相談部長、国際学院埼玉短期大学教授を経て、さいたま市教育相談センター所長)

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学級の崩れのサインには何があるのか、学級の崩れにはどのように対応すればよいか

 学級の崩れには、子どものサイン(予兆)があり「サインを見逃すな」と言われています。では、どのようなことがサインなのでしょうか。例えば
1 生活習慣・規律
 忘れ物や遅刻の増加。給食や清掃時間の規律の低下。教室・机・ロッカー等が乱雑。学級通信が家に届かない。友だちの学用品・靴などをかくす。盗難。
2 授業
 授業の始めに着席しない。私語の増加。発表する子を冷笑する。漫画をかいている。やたらと便所に行く。
3 生活態度
 話し言葉の変化。髪型や服装の変化。やたらとはしゃぐ子がいる。おどおどした表情でいる子がいる。女子が小グループに分かれる。暴言を口にする。指導妨害の同調者の増加。指導や指示の無視。
 教師には、このような事態の変化を察知する力が求められます。
 学級の崩れのサインに気づいたら、担任はただちに教頭や校長に報告します。対処は、担任にだけ任せるのではなく、学校として組織的に行うことが大事です。
 学級の崩れの対処は初動が大事です。時間の経過とともに厄介な事態となることが多いからです。担任が一人で対応に苦慮していても、学級の安定は困難と考えた方がいいのです。
 まず、教頭(校長)が学級の現状を把握します。学級の様子を何回も視察しないと、崩れの程度も把握できません。
 一般に低学年の学級の崩れは、基本的生活習慣の未完成な子どもたちが群れていて、学級が成立しないために起きやすい。
 また、高学年の崩れは、教師の指導や学級経営の不満など、学校生活に起因することを無視することはできません。教師の指導を妨害する子や、無規律な行動に多くの子どもが同調して、騒ぎ出すことがあるからです。
 学級の崩れの対処の仕方としては、一部の教科の教科担任制を実施し、複数の教師が入る。学年で授業を展開する。ティーム・ティーチングなどが考えられます。
 また、保護者会を開いて、事態を率直に報告して、現状打開のための協力を要請します。学校はこうした事態を隠してはいけないのです。
 いくつもの手を打っても、事態が改善されないなら、担任の交代を考えます。冷たい言い方かと思われますが、担任をかばうより、子どもの学びの場を保障することの方が学校として大事です。
(飯田 稔:1933年生まれ。千葉大学附属小学校に28年勤務、同校副校長を経て、千葉県浦安市立浦安小学校校長。千葉経済大学短期大学部名誉教授。学校現場の実践に根ざしたアドバイスには説得力がある)

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教師が原因で起きる学級崩壊とは、崩壊したとき保護者ができることはなにか

 学級崩壊は、多くの場合、教師と子どもとの関係づくりの失敗が原因です。
 その原因の一つは、教師が子どもをひきつける魅力を持っていないことです。なんでもいいから、子どもたちが尊敬できるものがあると、子どもたちは教師に一目置いて見ます。
 私は、サッカーの得意な教師には「子どもたちとサッカーして、技を見せつけてやりなさい」と言います。そういうものなしで、教師が子どもたちの前に立って、指示を出しても、子どもたちには響いてきません。「なめられ」軽く見られます。なめられたら、子どもは言うことを聞かなくなります。
 また、子どもとのコミュニケーションがとれない教師も、学級を崩壊させてしまいやすいですね。授業中や日常のありとあらゆる機会に、きちんと子どもたちと言葉を交わせないのです。
 それができないと、子どもたちのために行っているすべてのことが「先生が勝手にやっていること」になってしまうのです。
 学級崩壊が起きたら、保護者はとても心配です。授業が成立しないのですから、当然です。だから「担任を代えてください」という要求が出てきます。
 しかし、担任が交代したらどうなるかを考えてみましょう。まず、一度崩壊したクラスは、誰が入ってもいい状態に戻すことは不可能に近いものです。交代するとしたら、誰がいるのかということも考えましょう。
 学校の中に担任を持たないで自由にしている優秀な教師なんて絶対にないですよね。それで、非常勤講師を探すことになります。優秀な人は引く手あまたで、フリーでいることは、まずないのです。要するに、担任を代えてくれと言っても、代えるための人手がないということです。
 たとえ、一度崩壊した学級に新しく教師が入っても、再び崩壊して休職してしまうということは当たり前のようにあることです。担任の代行をしながらがんばった教頭が倒れた例を私はいくつか知っています。交代してもうまくいく可能性はかなり低いと言っていいでしょう。
 がんがん担任を責めるより、どうしたら担任に協力できるのか、どういう補い方ができるのかを考えたほうか、現実的だと思いませんか。
 間違えてはいけません。学級崩壊のときに学級を荒らしているのは、担任ではなくて、子どもたちなのですよ。だったら、教師と相談して少しでも協力できる道を探すことが良いではありませんか。
 学級崩壊しているとき、保護者はどうすればよいのでしょうか。教師と一緒に話し合って少しでもわが子へのダメージが少ないように考えていくしかありません。頼りなく感じても、学級でわが子を見てくれているのは担任なのです。
 ともかく、親子が学級の現状についてじっくりと話しましょう。学級崩壊をわが子がどう感じているのか。困っていることはないのか。教師のことをどう思っているのか。そういうことについて話をするべきです。
 学級が崩壊しているとき、子どもたちは「イヤだ、楽しくない」と感じています。そういうマイナスの感情を吐き出させましょう。
 学校での精神的なダメージを「お疲れさま。今日はどんな感じだった」と、家に帰ったら癒してあげることを考えましょう。学校のことを会話できるようになると、子どもも楽だし、親にもいろいろなことが伝わってきます。
 直接、学校の様子を見に行ったうえで、管理職や担任とも話をしましょう。
 学習面でのフォローは、しっかり考えましょう。教師の力を借りましょう。教師を糾弾したり攻撃したりせずに協力していく姿勢でいたら、教師は出来る限りのことをしてくれます。
 学級が崩壊していても、教師と個別のやりとりはできます。個別に力を借りればいいのです。学校の教師って善良な人なのですからね。
(
多賀一郎:1955年生まれ、神戸大学附属小学校を経て私立小学校教師。退職後は追手門学院小学校講師、専門は国語教育。在職中に日本私立小学校連盟国語部全国委員長歴任。親塾・教師塾等で保護者・教師教育の手助けをし、全国で講演)

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学級崩壊しないよう、学級をふれあいとルールで集団として成立させるにはどのようにすればよいか

学級を集団として成立させるための骨子は、
(1)
集団内にふれあいのある人間関係を確立する
 一番のモデルは教師です。ふれあいのある人間関係を望んでいる姿勢を見せることが大切です。
 まず、教師と子どもの間に親しみのある関係を形成することが必要です。希薄な人間関係は、相手の心を察する力を弱めます。
 例えば、教師のほうから気さくに「おはよう」「ありがとう」という言葉をかけるのが第一歩です。「Aくん、昨日のケガしたところはどうだい」と、名前を入れながら教師のほうから投げかけていくことが必要なのです。
 つぎに、子どもに対して、問題に「気づかせる」「整理させる」「意味づけさせる」「励ます」という言葉がけの技術が有効です。
 例えば、その子が気づかずに他の子どもたちに迷惑をかけているとき「○○すると、いい面と悪い面もあると思うだけど、どう思う」と質問を投げかけることで、問題に気づかせたりします。
 教師は意識しないと、どうしても自分の指導を素直に受け入れる子どもに肩入れをしてしまうのです。すべての子どもを尊重しなければなりません。
 教師が一人の人間として、自分のことや考え、思ったことを率直に語ることです。子どもたちは親近感を覚えます。ただし、お説教や自慢話にならないように気をつけます。
 教師は自分の経験したこと、考えや日々の思いを、必要なとき、子どもたちに語れるようにしておくことが必要です。
 いつも子どもを評価するような教師面ばかりをしていると、学級内によそよそしい雰囲気が生まれてきます。
(2)
子どもたちの行動の基盤となる共通のルールを確立する
 子どもが学級で不安なく生活できるようなルール、子ども同士が傷つけ合わないようなルールを確立することが必要です。
 やはり、話の仕方や聞き方が重要です。これを最初にしっかりと説明し、子ども同士で練習させるのです。自分も相手も気分のよくなる伝え方を工夫させるようにするのです。
 例えば、人の話は最後まで聞く。考え方が異なる場合は、その人を否定しないで「自分は○○と思う」と自分のことを述べるなどです。
 このようなルールに守られて、子どもたちは自分の本音を表現し、対人関係を形成しようとし始めるのです。
 子どもたちに、対人関係の形成や学習に取り組もうという意欲を高めるようにするには、指導の意味や内容を初めにしっかりと子どもたちに説明します。おもしろそうだ、やってみようと、イメージ化できるくらいに具体的に説明します。
 以上の、(1)集団内にふれあいのある人間関係を確立する、(2)子どもたちの行動の基盤となる共通のルールを確立するという、二点が互いに矛盾することなく成立することが大切です。
 指導重視型の教師は、学習指導と生徒指導にルールを定め、子どもたちの行動を統制しようとします。そのようにして作られたルールは、子どもたちへの援助とうまく溶け合わず、子どもたちに不満が蓄積され、学級内にふれあいのある人間関係が形成されないのです。
 自己確立重視型(子ども同士がつながること、その過程で学級がまとまるのを援助する)の教師は、子どもの自己の確立が促進される形でルールを形成しようとします。
 例えば、話の聞き方や話し方、互いの人権を尊重することなど、人が社会生活を送るうえで必要な基本的なマナーです。
 このマナーがあって初めて、子どもたちは自分の話を聞いてもらえる、人からバカにされないと感じ、自ら他の子どもたちと関わろうとするようになるのです。
 つまり、学級のルールが学級内のふれあいのある人間関係の形成を支えているわけです。そして、このルールも子どもたちの考え方が取り入れられて成立していることが多いのです。
 このルールをもとに学習指導と生徒指導も行っていくわけですから、指導と援助のバランスがよいのです。子どもたちも教師にやらされているという感じがなく、主体的に学級生活をおくるようになるのです。
 集団の形成も、始めは親しい二人組の形成をめざし、学級内に孤立する子どもがでないように努めます。
 それが達成されたとき、二人組の相手をいろいろと変えていき、学級が子どもたちの人間関係で網の目のように結ばれているようにしていくのです。
 そのうえで、小集団での活動を実施し、それがうまくいくようになったら、中集団、そして学級全体集団へと徐々に拡大していくわけです。
 傷つくことを恐れる子どもたちの心情に無理のない展開です。学級集団は子どもたちの個々のつながりを通して、一つにまとまっていくのです。
(河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育学部教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)

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学級が荒れたり崩壊しないように、注意や叱責するにはどうすればよいか

 教師は子どもの行動が著しく集団の規範を逸脱したとき、他の子どもを傷つけているときは、毅然と注意や叱責をすることが必要不可欠です。
 注意や叱責をした結果、子どもが自分の考え方や行動の問題に気づき、自らそれを改めようとしたかということが大事なのです。
 したがって、注意や叱るときの前提は、
(1)
子どもや学級集団のプライドを傷つけない
(2)
注意する場面や時期、時間を工夫する
(3)
問題となる点を十分に説明し理解させる
(4)
結果ではなく、その問題がおこった過程に注目させる
(5)
自ら変えることができる行動や態度を具体的に確認する
(6)
この失敗を次にどう生かすのかという問題解決型にする
 そして、教師の注意や叱責が大きな効果をあげるためには、教師と子どもとの信頼関係が必要です。信頼関係があれば、自分たちのために先生は注意してくれているんだと感じ、教師の注意から新たな行動や考え方を学んでいくのです。
1 学級集団全体に対して注意する・叱る
 子どもたち一人ひとりが自分の問題ととらえられるようにすることが大事です。 
(1)
注意や叱責で子どもを動かそうとしない
 注意や叱責で子どもを動かそうとしている教師は意外と多くいます。
 最初は教師の注意が怖くて、注意されたことに従うことが多いでしょう。しかし、それは新たな行動や考え方を獲得したのではなくて、教師の怒りを収める対応にすぎないので、子どもは同じような行動を繰り返します。
 そして、子どもは教師の注意や叱責にだんだんとなれてきます。したがって、注意で子どもを動かしている教師は、だんだんと自分の指示が通らなくなってくるのです。これは学級崩壊で苦しむ8割近くの教師が陥る盲点です。
(2)
子どもの不安の強さに応じた注意をする
 注意はすべての子どもに同じように受け取られるわけではありません。平気に子どももいれば、委縮する子どももいるわけです。したがって、不安な子どもがその内容を理解できるレベルがいいのです。
(3)
あらたまった態度や場合を設定して注意する
 子どもは教師の注意や叱責には徐々になれてきます。子どもたちは教師の注意を聞かなくなります。あらたまった場面設定や注意の仕方が必要です。
(4)
注意や叱責は短く簡潔にする
 注意されるのは嫌なものです。したがって、教師は注意する目的をしっかり定め、その方法を吟味し、簡潔に伝えることが効果的です。
(5)
気の緩みのミスは注意し、自主的な試行錯誤の失敗はその原因を分析させる
 怠慢やさぼりから起こったミスは、なあなあで済ませると、学級のルールが崩れてきますから、小さなことでもキチンと指摘し、注意することが大切です。
(6)
子どもたちが気づかない問題は、質問や例え話をして考えさせる
 学級内で、子どもたちが意識せずに行っていることがあります。例えば、特定の子を見下したような対応をほとんどの子がとっている雰囲気が学級のなかにできてしまっていることがあります。
 これをみんなの前で注意すると、その子が惨めになります。したがって、例え話や一般論としてみんなに考えさせるようにすることが大切です。
(7)
叱責の内容に教師の感情をつけ加える
 教師が冷静に叱責したあと「先生はとてもかなしかったな」と、自分の感情をサッとつけ加えることで、その内容が子どもたちの心に強く刻みつけられるのです。
(8)
いじめは、厳しく、長々と説教し、最後にポイントをまとめ復唱させる 
 弱い子をいじめているような現場を見たときは、教師はその場で強く注意し、一人の人間としての怒りを前面にだすことも時として必要です。厳しく長々と説教します。
 子どもたちは、最初は教師の剣幕に驚きますが、そのうちあきてしまう子もでてきます。このような場合は、教師が言いたかったこと、次の指導につながることを三つくらいにまとめ、子どもたちに復唱させて終わります。
 例えば「A組をいじめのないクラスにする」「いじめの場面をみたら必ず注意する」という具合です。これをしないと「先生がキレた」だけで終わってしまいます。
(9)
注意したあとは、単純作業をはさみ、作業後は気持ちを切り替えて対応する
 注意や叱責をしたあとは、教師も子どもも気まずいものです。このような場合は、お互いの気持ちを変に伺おうとすると、余計ぎくしゃくします。
 そこで、子どもが一人で作業ができるドリルなどを30分くらいやらせるのです。作業しながら、子どもは先ほどの教師の注意について考え、心に定着させていくのです。教師も落ち着きを取り戻すことができます。
 その後は、その問題に言及しないで、授業に取り組むようにするわけです。
2 個人の子どもに注意する
 教師の感情を逆なでするような発言をしたり、教師をバカにしたような態度とるような子どもが学級に何人かいます。このようなときは、事前に対応する言葉がけを身につけておけば、感情的になることを防ぎ、子どもに教師がまきこまれるのを防ぐことができます。
 こういった子どもには、少しずつ時間をかけ、関係の修復につとめることが必要です。その子が落ち着いているときに、日頃の不満を聞いてあげるなどの対応が求められるのです。
(1)
注意するタイミングと場所、時間を考える
 自分の行為を棚に上げ、教師に反発してしまうかもしれません。注意するときは、タイミングと場所、長さをその子どもに合わせることが必要なのです。
(2)
注意するときの子どもの抵抗を軽減する
 子どもが教師の言葉を素直に聞くよう、最初に子どもの反発を少なくする関わりが大切です。例えば「きみも気づいていると思うが・・・・」という具合に前置きし、いきなり叱責しない配慮が必要なのです。
(3)
注意する内容のは現在の行動や態度だけにする
 掃除をサボっているのを見つけて注意したとき、以前の問題をひっぱだして、追い打ちをかけるように叱ってしまう。これでは子どもは逃げ場のない状態に追い込み、人間性を否定された感情を子どもに持たせてしまう。
(4)
フォローの仕方も計画に入れて注意する
 注意のあとのフォローは、子どもたちの感情の高まりを静め、どう行動すべきか考え行動に移す意欲を喚起します。その子のプライドを高めるような言葉も効果があります。
(5)
注意するのは、あやまらせるためではなく、今後どうすればよいかを確認する
 注意して、あやまらせても、子どもは同じことを繰り返してしまいます。どのように取り組めばよいのかを考えさせ、確認することが必要なのです。
(6)
教師に反発する子どもへの対応方法を持つ
 教師に反発し感情をぶつけてくる子どもに対して、事前に対応する言葉がけを身につけておけば、教師が感情的になることを防ぎ、子どもに教師がまきこまれるのを防ぐことができます。
 まきこまれそうになったら、それを一旦切る言葉がけや対策を事前に決めておくことです。例えば「これ以上話していたら、先生も本気でキレちゃうから、あとは昼休みに相談室でじっくり話しましょう」という具合に、その場を一旦収めてしまうのです。
 間をおくことによって、お互いの感情の高まりを静めるわけです。時間をおいて、じっくり話すのです。こうすれば、教師も子どもも感情的になるのをおさえられます。
 相談室では、子どもに最初にどんどんしゃべらせます。その後、具体的な事実を提示し、そのことについて認めさせます。そして、対応策を教師がいくつか示して、そのなかから選ぶようにさせます。最後にその内容を復唱させて、終わりにします。
(7)
聞く耳を持たない子
 聞く耳を持たない子は、教師がそばに寄り、感情面を中心にトーンを落として淡々と語ってあげます。最後に「きみはどう思う」と質問します。返事がなかったら「先生の言ったことを考えてね」と伝えます。
 反応がないからといって、注意を怠ってしまうと「Aくんは、何も言われないじゃないか」と、問題を起こした子どもに注意しずらくなります。
(河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育学部教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)

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学級崩壊から生還した教師たちはどのようにして解決したのか

 子どもが荒れる一番の原因は授業であり学級崩壊は授業崩壊から始まる。また、荒れから生還する唯一の道も授業である、授業の再生が学級を再生することを肝にめいじて授業をしなければならない。授業がしっかりしていけば、学級経営もしっかりしていく。
 教師が勉強し、授業を変えていくことこそが、学級を良くしていく最善の方法である。授業がへたな教師は、教師優先の我流の授業スタイルが多い。教師が変わらなければ、子どもも変わらないし学級崩壊は解決しない。
 学級崩壊の大半の責任は教師にあると素直に認めることである。授業がへたでつまらなかったことであり、その点を反省することである。これまでの我流をすべてすてて、素直に多くの教師の実践の成果に学ぶことである。
 つまり、これまでの自分を否定し、新しい出発をする決意をすることである。そうすれば、未来は明るい。教師が変わり、授業が変わり、子どもが変わるのである。
 
「子どもの事実」こそが大切なのだ。「子どもの事実」が評価する唯一の基準だ。ごまかしがきかない。なぜ、失敗するのか。それは自分のやり方が未熟だからだ。自分の未熟さに目を向け、それを克服していくため日々、挑戦し続けなければならない。たとえ「ほんのちょっとの、子どもの変化」を生み出すにも、山のような反省と自己変革が必要だ。
 そして、つかんだ子どもの変化は、ずしーんと腹の底まで響く手応えがある。これこそが実践であり、教師の仕事なのだ。どれだけ困難な子どもでも、その可能性を伸ばすことに挑戦するのが教師の仕事だ。
 学級崩壊で大切なのは、学級崩壊から生還した事実なのである。悩んでいる多くの教師の福音になる。子どもや保護者は救われるだろう。学級崩壊から生還した教師たちが体験したことをみていくと、つぎのようなことがいえる。
(1)
現場で悩んだとき「どうしたらいいか」を研究会やサークルに参加して具体的に教えてもらう。子どもたちへの指示・発問のやり方や、楽しい授業、知的な授業など多くの情報に出あえることができる。
(2)
学級経営や授業について優れた本を読み、追試(すでに行われた研究成果をその通りに行って試すこと)し、優れた学級経営や授業を積み重ねる。そのとき、優れた実践の裏にある考え方を知ることが大切である。
(3)
学級を統率するのは自分だという、気概、気迫、責任感を持つ。
(4)
教師は時として「ダメなことはダメ」と毅然とした態度をとらなくてはいけない。
(5)
新年度、最初の「黄金の三日間」を大切にする。
(6)
一人では立ち直ることはできない。よき相談相手、理解者が必要である。
(7)
保護者との連絡(家庭訪問、学級通信など)を密にしてコミュニケーションをはかり、理解を得るようにする。
(8)
子どもたちへの見かたを変える。子どもを叱ることで動かすのではなく、子どもたちの良いところを見つけ、ほめる。楽しいゲームや遊びなどもふくめ、一人ひとりの子どもとの関係改善をはかる。
(
向山洋一:1943年生まれ、元東京都公立小学校教師、教育技術法則化運動代表を務めてきた。教師を退職後、TOSSインターネットランドの運営に力を注いでいる)

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新任で一番大変な学級の担任になり、崩壊の日々からどのようにして生還したか

 私自身、体がとても大きい。子どもが大好きで、大学四年の二月に産休補助講師として入ったクラスでも、子どもたちと仲良く楽しくやれた。
 大学を卒業してすぐに学校で一番大変なクラスと言われている小学校三年の担任になった。子どもたちが探りを入れた結果、「この先生ならいける」と、子どもたちは思ったのであろう。
 一番やんちゃなAくんは、私の話の途中で口をはさむようになる。私が注意をしても、聞こうとしない。逆に「うるさいな。いちいち注意するなよ」と、いうようなふてくされた態度をとる。
 見かねた子が「静かにしいや」と、注意したが「うるさいんじゃ」と罵声を浴びせた。でも、私は何もできなかった。「あ~、情けない」という雰囲気が子どもたちの間に流れた。
 学級の状態は、授業中のおしゃべり、私に対する暴言、批判。子どもたちのいじわる、いたずら、暴力がおき、教室から飛び出していく子もいる。
 女子たちは勝気な子が大勢いた。「この先生あかんわ」という雰囲気が子どものなかに蔓延していった。小さな町の小学校のことである。担任の様子は保護者の間にさっと広まる。
 五月の授業参観は悲惨であった。親が見ているにもかかわらず、私に向かって「デカ」「あほ」などと叫ぶ。親の前で叱るのもどうかと思い、そのままにしておく。授業のほうもうまくいくはずがなかった。
 参観後の懇談会では「先生のことをバカにしている」「まったくなめきっている」「もっとしっかりしてもらわないと」と、つるしあげの状態だった。管理職に抗議している親もいた。
 つらかった。本当につらかった。休み時間は職員室に逃げ込んだ。「死んだら、楽になれるな」と思ったこともあった。
 新任研修に出かける日は、ホッとできた。よき先輩のアドバイスを受けながら、少しずつ自分を変えていった。
 
「教師は統率者である」と言われる。当時の私は「統率者」という言葉さえも知らなかった。
 ある日、Aくんに厳しく注意すると、教室から飛び出していった。「途中で事故にでもあったらどうしよう」と、私はもう全身の力が抜けてしまった。
 そんな私に、ある先輩が「きみは、子どもに振り回されている。子どもを振り回すぐらいでないとダメだ」と言われた。そう言われたことで「私自身がクラス一のガキ大将になってやろう」と決意した。
 私はガキ大将ならだれにも負けない。小さい頃から、やんちゃ坊主の頭だった。
 
「先生の言っていることが正しいんだ。このクラスのルールなんだ」という気構えで、子どもたちと勝負していった。
 少々反抗されても「何を言っているんだ。オマエたちの言っていることは筋が通らない。俺の言っていることのほうが絶対に正しいんだ」と思えるようになってきた。
 今から考えると「何て無茶なことを」と思ってしまう。でも、こういう構えを持つことによって「このクラスを創っていくのは俺なんだ」という自覚を持てるようになった。
 もちろん、これだけではない。「ガキ大将」として、子どもとしっかり遊ぶようにした。Aくんも私と遊ぶようになった。
 子どもたちにも、私の指示、考えが、受け入れられるようになった。統率者としての自覚。そして、自分の得意なチャンネルでの勝負がとても大切なことであったと思う。
 当時の私には、子どもたちや保護者と強いパイプを作ることは無理だった。そこで、家庭訪問を頻繁に繰り返した。特に「クラスを引っかき回す中心人物、この子ならクラスを立て直す手助けをしてくれるだろう、俺の気持ちをわかってくれるだろう」と思える子どもの家には、しょっちゅう行かせてもらった。
 言いにくいことでも、しっかり伝えておかなければならないこともある。そのためには、話を受け入れてもらうのに、教師と保護者はいい関係でなければならない。
 そこで、問題を起こす子の家には、その子のがんばったこと、伸びたこと、友だちへの優しさなど、ほんの些細なことでも、ほめるみやげとして、子どもたちの家に足を運んだ。
 勉強が得意でない子には、夜遅くまで一緒に勉強した。家庭訪問のはしごをしたときもよくあった。
 子どもにとって、家に来てもらって、ほめられたり、一緒に勉強することは、とてもうれしいことらしく、次の日、学校で自慢する子がたくさんいた。私は「教師は刑事と一緒で、足で稼ぐんだ」と真剣に思っていた。
 
「クラスがこんなふうに良くなっているのですよ」と、いうことをクラス全体の保護者に知ってもらいたい。そんな思いで学級通信をたくさん出すことにした。楽しいこと、ほめたいこと、成長したことを掲載した。
 そして何よりも楽しい授業を作ろうと心がけた。跳び箱の本を読んで試してみた。クラスの泣き虫の女の子が初めて跳び箱を跳べた。本人も、周りの子も見る目が変わった。そして何よりも、子どもたちの私を見る目が変わった。
 このような実践で、自分で荒らしたクラスを、自分で立て直すことができた。三学期になると、毎日が楽しかった。持ち上がりできなく、悲しくて涙がこみ上げてきた。
(
辻 弘一:京都府公立小学校教師、優秀教職員表彰、教頭を経て宇治市教育委員会総括指導主事)

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崩壊した学級を担任して自信を失ったが、外部研修で考え方が変わり改善していった

 教師になって十年目、私は三度目の六年生担任となった。荒れている問題のクラスだった。自分の力でよいクラスにしてみせるという自負があった。
 
「悪い子」という先入観さえ持たなければ、子どもたちと心が通じ合えるはずだと、わりと軽い気持ちで教室に入っていった。
 しかし、私の安易な予想はみごとにくつがえされた。これほど教師を無視する子どもたちに出会ったことはなかった。私が教室に入っていって前に立っても、子どもたちは自分の席につかない。授業を始めても、子どもたちはしゃべりまくっている。10分でも20分でもしゃべり続けるのだ。
 私はあせった。しかし子どもたちは変わらない。これまでの経験から「詩」の授業なら集中すると思って、黒板に私の好きな詩を書き、発問してみたが、今度は全員黙りこんでしまう。こうしたシラけた授業が何日も続いていく。私は次第に、自分の指導力に自信を失っていった。
 子どもは自然の中で遊ぶのが好きだ。私が散歩に行こうと誘うと「めんどくさい」と言うのだ。それでも強引に連れ出すと、ノロノロついてくる。そのうち男子の数人はずっと遅れて、ほかの所へ行ってしまった。
 私は事態を冷静に受けとめることができなかった。私をばかにする行為と映り、腹を立てて叱った。
 もう一つ、びっくりしたことがある。A男がみんなから徹底的に嫌われていることだった。休み時間は一人きりで、廊下をうろうろしている。まわりの子はくさいとA男の机から自分の机を遠ざけていた。
 このような子どもたちを受け入れられずに、私は職員室で元気をなくし、教室ではイライラしていた。「担任が替わっても、全然子どもは変わらないね」という声が聞こえてきた。
 私は、あせって子どもを変えようとし、変わらない子どもたちを見て、またあせり、悪循環にはまりこんでしまった。
 四月、五月ころは、掃除をサボっていれば怒鳴り、大きい声で歌えと怒鳴っていた。授業で私と目が合うと聞いていないふりをする子、友だちになにか言われるのを気にして私をさける子もいる。
 そこで私は子どもたちに話した。
「みんな、自分をごまかしていたら、つまらないよ。自分が生きたことにならないよ。お墓に入るとき、さびしいよね。みんな、目立ちたがりになろうよ。先生は大学生のとき教授に怒られた。君はだれの人生を生きてるんだ!ってね」
といった経験談を話した。この話のあと、ボスのB男が運動会の応援団に立候補した。
 A男に対するいじめだけは許せない。どんなことがあってもやめさせたいと私は思った。私はまず、できるだけA男と話をする機会を多くし、よく話をした。掲示物をはがす手伝いをしてもらったりした。その様子を子どもたちは見ていたのである。
 私がクラスの子どもたちを徹底的に叱ったのは、五月の運動会の組み体操の練習していた時である。A男と二人組を組むことになったC男が練習中、A男のおなかを思いきりひじで突いたのである。
 私はかけつけて、思わずC男の胸ぐらをつかんだ。この出来事のあと、私は教室でみんなに話した。
「今日から、A男をバカにし、いじめる子がいたら絶対許さない。A男、イジメられたら、すぐ先生に言いなさい。私は言いつけは嫌いだけど、だれも味方がいないんだから」
この日からあからさまな暴力はなくなった。
 ある日、くじで席替えをした。私はみんなに話かけた。
「さっきC男がA男の席の近くになりそうだったので『あぶねぇ』と言った。私はそのC男の言葉はどうしても許せない。C男は自分がA男より強いと思っているかもしれない。でも本当にそうだろうか」
「A男は、これだけ毎日みんなにいじめられても泣かない。一日も休まない。がまんしている。これは、ものすごい強さじゃないか。このA男の強さが、みんなにわかっているだろうか」
子どもたちは、みんなシーンとして話を聞いてくれた。
 私は放課後、ボール使って子どもたちと遊ぶことにした。A男もみんなと遊ぶようになった。
 二学期が始まった。クラスの雰囲気も明るくなってきた。しかし、何度叱っても、どんな話をしても、子どもたちのイタズラやシラケがなおらないのだ。楽しいゲームを考えても、子どもたちはダラダラつきあうだけなのだ。
 私は疲れてきた。教室に行くのがおっくうになった。教師になって初めてやめたいと思った。そんな悩みをかかえたまま、ある日、セルフ・カウンセリング学会で渡辺先生の話を聞いて、やっと、次のことがわかった。
 私は四月から、私の「言葉、行動、態度」すべてが、子どもたちを変えなければという動機から生まれていたのだった。私のこだわりが、子どもたちの心を閉ざしていたのである。これがいけなかったのだ。
 このことがわかったとき、こだわりがなくなり、あせりがだんだんとれていった。落ち着いて、自分のなすべきことを見つけていこうと思った。子どもたちがどう対応しようが、私は明るく声をかけようと思った。
 私がそういう気持ちで「おはようございます」と声をかけると、子どもたちから、とても元気な返事が返ってきたのである。私に「さよなら」と声をかけて帰る子も増えてきた。もちろん私の返事の声もはずんでいる。私は毎日のあいさつが楽しくなってきた。
 A男をいじめていたC男を、私は好きになれなかった。ところが、私がよいクラスにしようとあせらなくなると、C男のあどけなさが目に入ってきた。私は自然と声をかけることも多くなった。
 子どもたちと気持ちが通い合ってくると、今度は授業も楽しくなってきた。気になることも待てるようになった。注意するときも、ユーモアが出るようになった。
 教材研究も、どう組み立てにしようかと、子どもたちと授業を楽しむための手段になった。失敗すれば、また次のプランを考えればいい。
 二学期も明日で終わる日、みんなで学校の近くの森林公園に遊びに行った。私の気持ちはゆったりしていた。「先生、何かしようよ」と男の子がさそいにくる。大縄跳びを始めた。私もいっしょになわとびをしながら、二学期を終えられる幸せを、しみじみ味わったのだった。
(
樫村 悌:1945年茨城県生まれ、元東京都公立小学校教師)

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学級崩壊を回復するために、学級崩壊した担任をどうサポートすればよいか 

 学級崩壊に直面したら、だれでも気が動転し傷つきます。それを癒さなければ学級崩壊に対応できません。
 私は学級崩壊した担任から相談を受けたとき、学級回復を援助するためのアドバイスのポイントは「受容し心を安定させる」「自分自身を否定するのを防ぐ」「対応を計画しリハーサルする」です。
 相談にのるとき、具体的には次のようにしています。
1 まずは、学級崩壊した担任のつらい気持ちに十分、耳を傾けます。最初、担任は自分の正当性を主張し、周りを強く攻撃しますが、それほどつらいのだと受容します。
2 次に、担任は「学級を崩壊させた私はダメ教師である」と自分を厳しく責めてしまいます。これをうまく乗り越えないと、自信をなくし退職を選んでしまう場合があります。「私はダメ教師である」という考え方は論理的ではありません。問題を冷静に見て論理的な思考にもどすようにします。
「今まで学級経営がうまくいっていたのは、今までの子どもに合っていたからだ」
「今うまくいかないのは、今の子どもたちに、従来うまくいっていた方針で対応しているからだ」
「今の子どもたちに必要な対応方法を考え、従来のやり方を修正して学級経営すればよい」
「コツがわかれば対応できるはずだ」と。
3 担任が自分を責めることから、行動を修正しようという方向に視点を向ける
 落ち着きを担任がとりもどしたら、具体的な対応に入る計画を立てます。まず、学級の状態を客観的に把握(学級満足度尺度Q-Uなどを利用するとよい)し、それをもとに自分の学級経営のあり方を検討します。
4 具体的な目標に向け、やればできそうだという見通しを担任にもたせる
 学級崩壊の段階や残りの日数、担任の力量などから、どこまでできるかを検討します。また、学級の目的地のイメージを確認します。
 すると、月ごと週ごとにやる量の目標が見えてきます。現状がスタートです。どれくらい向上したかを定期的に検討します。
5 具体的な対応の計画を立て、実行できるように練習をする
 教師の仕事は、子どもたちに知識技能、社会性を身につけさせる「指導的」側面と、一人ひとりの子どもの自己の確立や人間関係の育成を「援助」する側面があります。
 この二つの側面を子どもたちの実態に合わせて統合し、学級経営を行っています。
 学級崩壊は、担任がふだんからどんな学級経営方針をもっているか、どう子どもに対応しているかと関係があります。学級崩壊までのパターンと教師のタイプは
(1)
「反抗型」学級崩壊-指導的なタイプの教師
 知識技能、生活態度をしっかり身につけさせようとする指導に、子どもたちが息苦しさを感じ、集団で教師に反抗する。
(2)
「なれあい型」学級崩壊-援助的なタイプの教師
 教師と子どもが仲がいいだけ、子ども同士は他人のままなので、トラブルが積み重なって学級がバラバラになってしまう。
 まず、担任の対応が、指導と援助のどちらに偏って子どもたちに伝わっているのかを理解するようにします。
 次に、いい点、修正すべき点を分類し整理します。観点は
(1)
子どもたちとの関係のとり方
(2)
学級全体への指示の出し方
(3)
話し方
(4)
注意のしかた
(5)
規則の定着のさせ方
などです。
 いい点は、今後も意識して実行します。一方、修正すべき点については、修正した後の具体的な方法まで考えます。
 そして、必要度の高い順番に整理し直し、担任の対応できる力量を考慮しながら、全体計画の中に位置づけていきます。
 なかでも、(2)(3)(4)などは、授業や学級の活動に直接影響を与えます。これらは特に、一つ一つセリフでマニュアルをつくり、ロールプレイ方式で練習するようにします。
6 筋目ごとに成果を確認して力ずけ、4と5を繰り返せるように援助する
 全体計画の中の区切りごとに、その効果を確認します。学級満足度尺度Q-Uなどを利用すると便利です。結果を確認することで、担任は不安を解消できます。
 一つでも良くなっている点があれば、次への意欲につながります。
 あまり変化がなかったとしても、担任は自分を責めずに原因を考え、次の期間から新たに修正して対応すればよいのです。
 いい結果がでなかったら、先生がダメだからではなく、採用した方法が合わなかったからなのです。
 私は、教師が心の安定を取り戻すまでカウンセリングしています。計画を立てて、具体的な対応ができるように励まし、そのための内容をアドバイスし、かつ、ロールプレイ方式で練習の相手になっています。
(
河村茂雄:1959年生まれ、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。15年間公立学校教諭を経験した。学級崩壊,学級経営など教育実践に生かせる研究成果を多数提供している)

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