すばらしい実践家は思いも、言っていることも、実践もすばらしい
意識することによって、今まで見えなかったものが見えてきます。
子どもも、教師も同様ですね。
例えば、学級の力量を測るには、次の点を見てみましょう。
あなたは、すぐに答えることができますか。
(1)休み時間、子どもたちが出ていったあとの教室を見てみましょう。
「いすはどうなっていますか?」「机の上はどうなっていますか?」
(2)体育、着替え終わったときの机の上、洋服はどうなっていますか
(3)給食後の片づけ、子どもたちの食器はどうなっていますか。
(4)廊下歩行のときはどうですか。
明確に答えられた人は、かなり意識して見ていますね。
たいていの場合、答えられません。
これらのことの重要性がわかっていないので、見ようともしないからです。
「そんなことはどうでもいい」と思う人もいるでしょう。
「細かいですね」
「もっと大切なことがあるんじゃないですか」
「心を育てることが大切じゃないんですか?」と、以前よく言われました。
私が「心を育てるって、具体的にいってくださいませんか」と、問うと「…・・・」答が返ってこない。
行動が伴わない限り、きれいごとで終わってしまいます。
具体的にいえない人は、意識していないのです。
森信三先生は次のように言っています。
「知っていて実行しないとしたら、その知はいまだ『真知』でないと深省を要する」
その通りだと思います。
「心を育てる」と、スローガンで止まっていませんか。
口でいうのは簡単です。実践するとなると、そう簡単にはいきません。
具体的なレベルまでおろさないと意味がありませんから。
例えば、給食の後かたづけ。
「洗い物をする人の立場に立つ」とは、どういうことでしょうか。
(例)「食べかす」をきれいに取って返す。
そのために、
(1)ティッシュなどで「食べかす」を拭き取る。
(2)パンを小さくちぎり、最後にソースを集めて食べる。
(3)きちんとそろえて返す。
(4)音を立てないで食器を重ねる。
(5ご飯のときは、入れ物に水を一杯入れて返す。
(6)しゃもじは洗って返す。
大切なことは、具体的に考え、実行することだと思います。
具体的行動です。思いが行動を生みます。
立派な思いを持っている人の行動は、例外なく立派です。
逆にいえば、行動しない人の思いは、たいしたことがないのです。
芸道で、一挙手、一投足がうるさく言われるわけは、心を養うためでしょう。
教育についても同じだと思います。
子どもたちの心を育てるために、行動から入ることも大切です。
礼の仕方、歩き方、姿勢、かたづけ、整理整頓など。
この文章を読んでいる方は、少なくとも、
「子どもの力を伸ばす、価値ある教師になりたい」
と思っている人でしょう。
だからこそ、すばらしい学級を見ると悩みます。
あまりの違いに愕然とします。
私も悩みました。
「この違いは何か」と、ずっと考えてきました。
あるとき、わかったのです。
決定的な違いは、意識だと。
昔からいわれる身口意(しんくい)です。
「身」…行為、行動
「口」…言葉
「意」…思い
これらが一体になったとき、ものすごいエネルギーが生まれると言われています。
すばらしい実践家は「思い」がすばらしい、「言っていること」もすばらしい、「実践」もすばらしいです。
これら3つのことが、一致しています。
逆の場合が多いですね。口(言葉)と身(行為)のギャップが激しい人が多いです。
(杉渕鉄良:1959年東京生まれ、東京都公立小学校教師。「教育の鉄人」と呼ばれる実践家、子どもを伸ばす為に命をかける熱血教師。ユニット授業研究会代表。その実践スタイルは全国の教師、保護者から支持を受ける。2003年夏、日経スペシャル「ガイアの夜明け」に出演。PHP「VOICE」や、経済誌「プレジデント」での教育シリーズに取り上げられ、各方面からの注目も高い。ユニット授業、10マス計算、表現読み、指名なし発言など、子どもの可能性を引き出すため、さまざまな工夫を凝らした教育実践を行っている)