カテゴリー「問題行動の指導」の記事

問題行動が起きたとき、どう指導すればよいか   戸田正敏

 問題が起きたときほど教師は「しめた!」と思うべきである。
 問題が起きたときは、指導のチャンスであり、子どもたちを変えられるチャンスである。
 それが、子どもたちの心の成長や、学級集団の成熟につながる。
 問題が起こったときほど教師は「心の余裕」を持ちつづける必要がある。
 事実の確認を怠らず、素早く、しかし、じっくりと指導にあたる。
 一回の指導ですべてを解決しようと無理をせず、じっくりと指導にあたるようにする。
 学級内で問題が生じたときは、話し合って、学級のルールをつくるチャンスである。
 しかし、必要以上にルールの数は増やさないようにする。
 最終的には、ルールがなくても子どもたちがよりよく行動できるようにすることである。
 学級で問題が起こったとき、教師の「落差のある言動」によって、子どもたちへの指導が入りやすくなる。
 つまり、いつもの「明るく、楽しい雰囲気」から一変して、「これはヤバイぞ、いつもと違うぞ」と思わせるような言動によって指導が入りやすくなるのである。
 落差のある言動とは、「声のトーンを落とす」「毅然とした態度をとる」ことである。
 声のトーンを落とすことによって、子どもたちに「おや、いつもとは違うぞ」と暗黙のサインを送ることができる。
 その暗黙のサインによって、教師の指導に耳を傾ける雰囲気づくりができます。
 「声のトーンを落とす」ことにより、教師が感情的にならなくなり、必要以上のことも言わなくなる。
 教師が大きな声を出せば出すほど、子どもたちは反省するのではなく、教師の声が頭の上を通り過ぎていくのをがまんして待っているだけである。
「声のトーンを落とす」のは、問題行動の指導の基本的な技術である。
 指導を行うとき、子どもたちがざわついて話を聞いていなかったりした場合は、あえて何もしゃべらず、しばらくの間、黙っているようにする。
 注意する子が現われてクラス全体が静かになった段階で声のトーンを落として指導を行うと、さらに効果的になる。
 この「静かになるまで教師が黙り、その後で声のトーンを落として指導する」という方法を何回が続けることにより、暗黙の指導となり、問題行動に対する指導の習慣化が図れる。
 このような指導は、ふだんの「明るく、楽しい雰囲気」があってこそ得られるものであり、いつも大きな声でガミガミと指導を行っているようでは、効果がない。その点を理解し、心に留めておく必要がある。
 問題行動に対する指導は「短く、ズバリと行う」ことが鉄則である。
 問題行動が生じたときの指導は「何が問題か」、「これからどうすればよいか」という二点をズバリひと言で子どもたちに伝えるだけでよい。
 お説教は、長くなりやすく、子どもの悪さを指摘し「だから、ダメなんだ」という精神論的訓話になりやすい。
 教師の声のトーンが高くなりがちで、このような状態になると、子どもたちは教師の話を聞く耳を持たなくなる。
 これが続くと、どんなことについても教師の指導が入らなくなり、学級は確実に荒れてくる。
 そして学級崩壊への道を歩むこととなる。
 問題児を指導する場合は、問題行動の事実確認を最優先に行う。
 問題行動を起こした子が複数いる場合は、一人ひとり個別に呼んで事情を聞く。
 事実確認を終えたら、一つ一つの事実の矛盾や違いを追求する。これができれば八割は成功。
 その後、一人ひとり呼んで穏やかな調子で「なぜ、そのようなことをしたのか」理由を言わせる。
 教師は子どもに、その問題行動の「悪さの意味」をズバリひと言で指摘する。
 これが最も重要なポイントで声のトーンを落としながら、毅然とした態度で指摘する。
 指導する場合は、子どもの表情や態度をよく見ながら、子どもとの応答式の指導を繰り返していく。
 このとき、穏やかな中にも毅然とした教師の態度が必要である。
 きつく叱る場面と、情に訴えるような場面、両方を入れるようにする。
 どちらかだけの指導では効果は薄い。
(
戸田正敏:1957年生まれ、千葉県公立小学校教頭)

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反抗的な子どもの指導に日々悩んだが、クラス全体で指導する方法に切り替えると、よくなっていった

 私も、何度か反抗的な子どもを担任した経験があります。
 反抗的な子どもは、集団のきまりを守らず、友だちに迷惑をかけたり、周りの子どもたちを率いて悪さをしたりと、とにかく問題行動が目立ちました。
 そのつど、反抗的な子どもを指導するのですが、なかなか指導を聞き入れようとはしません。
 その場をはなれたり「うるさい」「だまれ」と、暴言をはいたりしました。
 指導すればするだけ、反抗的になるので、どのように指導してよいのか悩む日々が続いたものです。
 ところが、こういった子どもをよく観察していると、クラスの友だちが離れていくことに、とても敏感になっていることに気づきました。
 そこで、本人に直接注意するという方法をやめ、クラス全体に指導するという方法に切り替えることにしました。
 例えば、その子が数人の友だちと掃除をさぼっていれば、
「掃除の態度はどうあるべきか」
「なぜ大切なのか」
といったことを、クラス全体で考えさせ、意見を述べさせるといった具合です。
 クラスを正当な方向に導くことで、反抗的な子どもも、それに従わざるを得なくなります。
 また、直接、自分が指導されるわけではないので、素直に受け入れることができるのでしょう。
 徐々に、反抗的な子どもの問題行動は影を潜め、そのうち、私との関係も良好になっていきました。
(
中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校校長。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる)

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授業を妨害する子どもにどう対応すればよいか

 テンポの良い授業は子どもの妨害が入り込む余地がきわめて少ない。
 リズムとテンポの良い授業にするというのも一つのポイントである。
 福山憲市は授業を妨害する子どもに、つぎのように対応している。
1 おしゃべりで授業妨害する子ども
(1)直接的に注意する
 はっきり「今はしゃべるときではありません」などと、言うことだ。
 はっきり言うことを恐れてはいけない。
 うるさく騒いで授業ができない状態になる前であれば、優しく言うことができる。
 もちろん、誉めることを忘れてはいけない。「さすがですね。一度言われて、すっと止める人は、すごい人です。ありがとう」
(2)話をはぐらかし、かわす
 しゃべっている子は、しゃべりたいのだ。
 そこで、授業に生かすように子どもにしゃべらせるのである。
 こちらの路線に乗せればいいのだ。そして、うんと誉める。
「○○くん、いいおしゃべりしているなあ。それじゃ、もっとつっこんで聞くよ」と子どもに質問する。
 子どもが答えると「やっぱり、いいこと言うなあ。またいい考えが浮かんだら頼むよ」
 しゃべることで誉めてもられる。これが続くことで態度が少しずつ変わっていくのである。
2 妨害行動する子ども
 勝手に席を離れたり、机にある物を触って遊ぶような子どもにどう対応するか。
(1)他の子どもを巻き込みながら、はっきり注意する
教師「みんな、いま立っていい時かなあ?」
子ども「いけませーん」
教師「いまは、何をする時ですか?」
子ども「メモする時です」
教師「いま、立っていなかった人? えらいなあ。それじゃあ、立っていた人?」
 子どもが数名立つ。ここで、はっきり言う。
教師「つぎ、絶対に気をつけるという人だけ、座りなさい」子どもが座る。
 それを教師が気合いをいれて誉めるのである。
 その後、子どもが立たずに頑張っている姿を見たら、うんと誉める。ほとんどの子どもはこれで変わる。
(2)妨害行動を記録しておき、他の教職員に相談する
 あまりにも乱暴な子どもがいたら、様子を細かく記録しておく。
 ADHDの可能性もあるので技術があっても対応できないことがある。
 他の教職員の目を通して、対応策を考えることも大切だ。
(福山憲市:1960年山口県生まれ、山口県下関市立小学校教師。特別支援学級担任、教務主任・算数専科・初任研指導教諭など多くの立場を経験。学力向上推進教員・教育力向上教員として、授業力・学級経営力の向上指導にあたる。サークル「ミスを活かす子ども達を育てる研究会」「教師の勉強の場・ふくの会」を組織し、全国の仲間と実践の交流をし続けている)

 

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子どもたちのトラブルを予防するために、子どもたちにどのように学習させればよいか

 学校教育では、これまで子どもたちに「トラブル」に対応する力をどのようにつけていくか、といった学習領域はなかった。
 子どもたちがトラブルを解決する力は、自然に身につくものとされてきた。
 教師の目に触れるトラブルが発生したときだけに対応してきた。
 日本より早くから深刻な状況に陥っていた米国では、対症療法ではない、予防教育(情動・社会性学習)が推進されてきています。
 笹口浩子は不快なことが偶然起きたとき、どのようにすればよいかを小学校低学年の子どもたちに、つぎのように学習させている。
1 子どもたちに、偶然の出来事の具体的な例を見せる
(1) 偶然の出来事を実際に行って見せる
(2) DVDで観察する
 相手の様子、顔の表情、事前事後の行動、周りの様子などさまざまな観点からくり返し観察する。
(3) 判断基準を養う視点を育てる
 さまざまな事例を知ることにより、「わざと」か「たまたま」かの判断基準を高める。
2 対応について練習をする
(1) 偶然の出来事を起こす
 ロール・プレイングで偶然、相手に不快な思いをさせるようなことをする。
(ロール・プレイングとは、実際の場面を想定し、複数の人がそれぞれ役を演じ、適切に対応できるようにする学習方法)
(2) 気持ちを発表させる
 双方の子どもたちの気持ちを話させる。
 双方の子どもたちの気持ちが高まってトラブルが起こりうることも理解させる。
3 対応のやり方を練習する
(1)どのような言葉や態度がよいのか具体的に行って見せる。
(2)感情が高ぶっているときは、気持ちを落ち着かせる方法を学習する。
(3)双方の役を入れ替わって練習を重ねる。
 いろいろな立場の気持ちを理解することができる。
(笹口浩子:福岡県公立小学校教師)

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問題行動を起こす生徒に「知らないふり」や「ものわかりの良い態度」はしない方がよい

 生徒は、心に何かが起きると問題行動を起こす。
 熱がでると薬を飲んで治すが、問題行動に対しても「知らないふり」や、なまじ「ものわかりの良い態度」や「理解のあるふり」はしない方がよい。
 授業中のドアを蹴る。教師にふてくされた態度をとる。
 わざと、「オレはこんな悪さをしているのだ。さあ、先公たちどうする」と試しているようなものだ。
 そんなとき、知らないふりをしたり、不問にするなどということをしてはいけない。
 私なら「ばか者! 何やってるんだ!」と、思いきり叱るだろう。
 もちろん、叱ったからといって反省するわけではない。
 暴言が返ってくるかも知れない。
 いったん、生徒との人間関係は悪化するだろうが、叱ることは生徒への「先生たちは見捨てていないぞ」という強力なメッセージなのだ。
 叱ったら反抗してくるが、叱らなければさらに見捨てられたと思って、問題行動は拡大するだろう。
 問題行動は「思春期のつまずき」のようなものである。
 大人になったら犯罪者になるわけではない。
 多くは一過性で終わる。
 問題行動をくり返す生徒は、心からの反省などは、簡単にできないから、問題行動をくり返しているのだ。
 叱るたびに、心からの反省という見返りを期待しない。
 今、目の前にいる生徒の「オレを見捨てないでくれ」という無言のサインに応えてやることだ。
(吉田 順:1950年北海道生まれ、元横浜市公立小中学校教師(37年間)。生徒指導部長、学年主任を歴任。「生徒指導ネットワーク」を主宰。生徒指導コンサルタントとして全国の「荒れる学校」を訪問し指導方針づくりに参画。講演、著述、相談などの活動をしている)

 

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校内で金品が盗まれたとき、どう指導すればよいのでしょうか

 あるとき、空いていた教室で、2千円の入ったサイフが盗まれた。
 このことを全体に指導する目的はあくまで予防のためだ。
 盗んだ生徒を捜してサイフを取り戻そうということではない。
 よほどの証拠がなければ無理な話だ。実際、ただの一度も盗んだ生徒が名乗り出た例は聞いたことがない。
 そこで、全体に次のような話をした。
「今回の事件は状況から、おそらく外部から入ってきた人が盗んだように思う」
「警察にも届けておき、今後は付近もパトロールしてもらうことにしました」
「先生たちも空き教室のパトロールをします」
「侵入者はこれで味をしめて、また来るに違いない」
「今度はとられる物がないように、お金は持ってきたら先生に預けなさい」
「盗みは病気になると、くり返すらしい」
「だから、テレビで窃盗歴が十数回というニュースを見たことがあるね」
「ところが、不思議なことに、一度だけやっても、反省して二度目はしないと、この病気は完治するらしい」
 こういった話は、もっともらしい話だ。これを聞いた盗んだ生徒は、大いに迷うだろう。
 盗みが多発する学校は、全体が荒れているか、同じ生徒が何度もやっているという盗癖のある生徒がいる場合かのどちらかである。
 それ以外の数ヶ月に一度くらいしか起きない盗みというのは、全体への指導でかなり防止はできる。
 学校全体が荒れている場合は、起きるのは盗みだけではないのだから、それだけなくそうとしても無理なことだ。
 盗癖のある生徒には。全体への指導では効果はまったくない。
 盗癖のある生徒を証拠もなしに指導してはいけない。
 身構えて真実は語らないだろう。
 盗みが起きていないときに、盗みとは関係のない話をして、家庭や、親、進学、趣味のことなどから、盗みのメッセージを読みとり、それを指導の対象にすることしか方法はない。
(吉田 順:1950年北海道生まれ、37年間橫浜市公立小・中学校で勤務した。生徒指導部長16年、学年主任13年などを兼任。「生徒指導」ネットワークを主宰。生徒指導コンサルタント、全国各地で講演、著述などの活動をしている)

 

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問題を起こす小中高校生や少年院の子どもたちと接してきてわかったこととは

 魚住絹代さんは、人の成長や人格形成に関心があって、子どもの成長や子育てに関わる支援をしてきました。
 最初は幼稚園の先生からの出発でした。
 「三つ子の魂百まで」という言葉から、幼児期が大事かと思ったのです。
 魚住さんは、子どもは大好きだし、幼児期は確かに重要なのですが、小さい頃に受けた教育や子育てが、その子の人格や人生にどう影響を与えるのかを追いたくて、その後少年院の教官になりました。
 1000人を超える非行少年・少女たちとの出会いは、大きな疑問からスタートします。
 「なぜ、こんな事件を起こしたんだろう」「なぜ、そんな風に振る舞うんだろう」と。
 生活を共にする中で、必ずそこに至るだけの道筋が見えてきます。
 当然のことですが、彼らは非行少年になろうと生まれてきたわけではないのです。
 立ち直りのプロセスの中で、どの子も、ただ愛されたかった、わかってもらいたかったという思いを強くもっていました。
 それがうまく伝えられず、周囲にもうまく受け止められず、すれ違いの中で分岐点を歪んだ方向に進んでしまっていたのでした。
 彼らの立ち直りは、まさしく育ち直しでもありました。
 ですが、普通に育っていくのと違い、いったん育ってからの育ち直しは、生まれ変わるほどの試練です。
 彼ら自身「小学4年に戻りたい」「幼稚園からやり直したい」という言葉がこぼれます。
 立ち直りに寄り添う中で、育った環境と周囲の対応がいかにその子の人生に影響を与えるのかを目の当たりにしてきました。
 もっと早い段階での発見と手当ての必要を感じ、2003年より小中高の学校に活動の場を移し、困難なケースを中心に、子どもや親、教師の支援を行いました。
 学校では、不登校やひきこもり、発達の課題などからくる集団不適応、学習面のつまずき、非行、対人関係のトラブル、学級崩壊、摂食障害、リストカットなど、さまざまな問題があります。
 ですが、丁寧にひも解いていくと、必ずそこに至るだけの背景が見えてきます。
 彼らの問題行動はある意味、安心できる居場所がない、自分らしく育てていないという悲痛な叫びなのです。
 その証拠に、周囲が行動の意味を理解すると、みるみる回復していきます。
 子どもの回復にとっての第一歩は、周囲の理解と適切な対応の仕方なのです。
 それが、彼らにとって安心できる居場所につながっていきます。
 育ちに、もうひとつ大事なことは、存在価値です。
 勉強がわかる、友だちとうまくつながれるということが、自分らしく振る舞える自信となり、さらには社会で自分を生かしていくための力になっていきます。
 そのためには、何につまずいているか、どこが弱いのかを知り、丁寧にフォローアップしてあげることが重要です。
 いたずらをする子、困ったことをする子は、どうつながったらいいかわからないでもがいています。
 思春期の子どもは、言葉で「困ってる」「かまってよ」「どうしたらいいの」「助けて」と言えない分、行動で訴えてくる。
 特に激しい言葉を使い、なぜそんなことをするのか理解できないことをやる子ほど、強く求めています。
 悪さをしながら、文句を言いながら、無視しながら、拒絶しながら「この大人はこの自分にどう出るか」と、大人の出方をじっと見ている。
 口で叱るだけの大人、見て見ぬフリの大人には、「フン、どうせ」とせせら笑いながらも、さびしさの鎧に身を固めていく。
 彼らが求めているのは、本気で自分に近づいてくれる大人です。
 いくら、「どうしたの」「話してごらん」「教えてよ」と口で歩み寄ろうとしても無駄です。
 それが本気かどうかは、彼らの感性で計られています。
 数々の試しの中でようやく彼らが納得できて、はじめてつながれます。それには、とても時間がかかります。
(魚住絹代:1964年生まれ、くずは心理教育センター長。福岡、東京、京都の少年院、医療少年院で、法務教官として非行少年・少女の立ち直りを支援。退官後、大阪府の小中学校で、訪問指導アドバイザーやスクールソーシャルワーカーとして活躍。その活動は、これまで、クローズアップ現代やNHKスペシャルでも取り上げられた)

 

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問題行動を起こす子どもを回復させるためにはどうすればよいか、そのプロセスとは

 問題行動や非行、不登校などを起こす子どもたちを回復させるためのプロセスは、次のように考えられる。ある子どもが金髪やピアスしたケースを例に取り上げてみる。
1 子どもの本人の存在を認める
 子どもが金髪やピアスにしても、本人を否定も許可もせず、受け入れた。
 本人は、学校がどう出るか、勝負しながら見ていた。これまでとは違う教師たちの対応に、少しずつ努力して馴染もうとし始めた。
 だが、こういった曖昧さを許容する指導は、学校側にとってはリスクの高い難しい指導である。
 他の子は認めないのに彼だけ認めるというふうに見られると収拾がつかなくなる恐れがある。そのためのフォローが重要だ。
 他のこどもたちから出てくる不満や意見を個別に聞きながら、その都度、「お前の言うこともよくわかるよ」「様子を見ているんだ」と説明する。
 そのうち、周囲の子どもたちも、試験観察中ということや、先生たちの苦慮している姿に、大変なんだな、まぁ、あいつは仕方ないかと受け入れ、大きな目で見守る方向に動いてくれた。
 その後、本人は、金髪の色がだんだんと落ち着きピアスも減っていった。最後は真っ黒い髪で卒業していった。
 このケースの場合、良いか悪いかという対応をしていれば、失敗していたであろう。中間の柔軟な対応ができるかどうかがカギになる。
 そして、もう一つ忘れてならないのは、非行のケースの立ち直りには、時間がかかるということだ。
 一進一退の局面を丁寧に乗り越えていくことが成否を左右する。じりじりと焦らないで見守るかが問われる。
 こういった指導は、教師側の足並みがそろわないとできない。日頃の意思統一と、何かあるとすぐに教師が集まって対応するというチームでの対応、支える体制があってこそできる指導である。
2 安心できる居場所の確保
 子どもたちが落ち着くために必要不可欠なものは、安心できる居場所である。
 家庭と学校に安心できる居場所があれば、たいてい、それだけで落ち着いていく。
 居場所をどう作っていくかということがポイントになる。
3 一対一の関係を作る
 一対一の関係をつくるためには、その子のいる世界をそのまま知るということである。
 さまざまな教師が日々、子どもによく声をかけ、勉強や友だち関係、家での様子など、話をする。
 相談室で私と話すのは、主に雑談だった。バイクが好きだということがわかってきた。 寂しさや不安がバイクを見ていると忘れられるのだ。
 不思議なもので、一対一の関係が安定してくると、それが他の子どもや教師、親ともつながり始める。
 他愛ないことを話せる友だちができ、教室がだんだんと居場所になっていき、クラスでの活動も広がっていく。
 安心が芽生え、対人不信から信頼関係ができていく大事なプロセスである。
4 トラブルを成長のきっかけに
 居場所ができ、友だちとの関係ができると、本音と本音のぶつかり合いも出てくる。
 キレたときこそ、学びのチャンスである。そのときは、いったんクールダウンするために切り離し、双方の思いを聞く。
 聞き手が丁寧に思いを言葉にして整理していく。いったん自分自身の思いを聞いてもらうと、子どもは相手の思いを聞き入れる余裕ができる。
 怒っていることがらを客観的に見られるようになり、相手の意図を知る中で、少しずつ、自分が自分の思いにとらわれすぎていたこと、相手は自分のことを思って叱ってくれたのだといったように、気づきが芽生える。
 さらに、それを伝え合う中で、受け入る、受け入れられるという経験を積んでいく。 
 それが、自分のキャパシティを広げ、生きやすくさせていく。
5 やればできるという達成感をもつ
 居場所がある中で、がんばったら「俺だって、やればできるんだ」という達成感が湧いてくる。
 さらに、トラブっても、話し合い、解決できることの経験も大きな自信になっていく。
 これが、自己否定から自己肯定へと切りかわっていく大事なステップである。
 周囲とつながり、自分ともつながると、子どもは自分の足で立って歩こうとし始める。
 自分とは何かと模索を始め、自分の将来像を夢見、それに向ってできる課題を模索し始める。
 思春期以降の子どもたちの課題は自立である。
 居場所と存在価値を身につける中で、自分らしく歩き始める。
 そのプロセスに身近な大人が寄り添えるか、私たちの対応こそが、回復を支える鍵なのである。
(魚住絹代:1964年生まれ、大阪府教育委員会スクールソーシャルワーカー。1982年法務教官となり、以後、福岡、東京、京都の少年院に12年間勤務。非行少女の立ち直りに携わる。2000年に退官後は京都医療少年院で音楽療法の講師となるかたわら、2002年から、大阪府の公立小・中学校に、スクールサポーター、家庭教育サポーターとして勤務。子ども、家庭、教師の相談支援をしている)

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問題行動をする子どもに注意しても聞かない、手に負えない子には、どう指導すれば変わるのでしょうか

 私たち大人は、子どもたちの言葉や行動といった、見えていることにとらわれやすい。
 問題行動は、いけないことで、早く改善しようと、善悪を教えて対処しようとする。
 だが、教えても変わらない子どももいる。
 そういう子は「言ってもきかない子」「手に負えない子」と、とらえて、どんどん大人と子ども両者がすれ違って、問題行動が悪化していく。
 通常のやり方で変わらない子は、大人の見方、やり方が合っていない、間違っているということである。
 大人が、その子の問題の本質を見抜けず、やり方の方向性を見誤っているのだ。
 その子の問題行動の意味がわかれば、対応も180度変わってくる。対応が変わると、子どもは、みるみる落ち着いていく。
 次のような事例について考えてみよう。
「何度注意しても聞いてくれなくて。もう、授業が成り立たなくなっているんです」
 小学2年のAくんの問題行動に、担任の教師は頭をかかえていた。
 授業中、落ち着かず、声を出すだけでなく、近くの席の子にちょっかい出してはケンカになる。
 注意しても聞くどころか、大声になったり、物を壊したりして、もっとひどくなるばかり。
 休み時間も、通りすがりにクラスの子を叩いたり、いやなことを言ったり、毎日トラブル続きで、子どもたちもいやがっていた。
 本の読み聞かせの時間も、じっとしていられず、うろうろして、奇声を発する。
「家庭でも注意されているみたいなんですが、一向に変わらなくて。他の保護者からも苦情が出始めていて、どうしたらいいんでしょうか」と、担任は、あらゆる手を尽くしたのに変わらない現状に限界を感じていた。
 事態が悪化する一途で、サポーターの私に依頼が来たのである。
 母親に「家庭での様子は、どうなんでしょう」と私が尋ねると、
「私は宿題につきっきりで『ここが違う』と、やり直させ、汚い文字も書き直させ、つい『バカ、何べん言ったらわかるの』と言ってしまうことがある」
「それでも、一年生の頃は文句も言わずにやっていたが、最近では『バカ』『うるさい』『だまれ』と互いに怒鳴り合うようになり、『こんな難しい宿題を出す先生が悪い』と、先生への不満につながっている」
「最近は『どうせ俺はダメなんだよ。俺なんかいなくなってもいいんだよ』と言うようになって」
 そう言って、お母さんは涙を流された。 
 暴言はそのまま教室でも使われ、友だちや教師を困惑させていた。
 家庭と学校で何度も同じ注意が繰り返される中、悪循環ができていた。
 その一方で、スキンシップを求めてくることも、家庭、学校とも共通していることがわかった。
 これらのことから、Aくん本人が、周囲に自分を受けとめてもらいたいと思っているが、それがうまくいかず、ジレンマの中で問題行動を強めているということが浮かび上がってきた。
 自分は自分でいいという基本的な安心感が乏しいうえに、人つき合いの言葉やルールが育っていないため、周囲から煙たがられることをして注意され、ますます自己イメージが悪くなっているのだ。
 私は、先生方、お母さんに新たな視点を共有することを提案した。
 それは、基本的な安心感と信頼感を育み、本人の自信をつけるという目標である。
 そのための方法として、私が家庭、学校ともに一つお願いしたのは、
「できていることに注目し、できていないことへの指摘、注意は最小限にとどめる」ということだった。
 家庭では宿題の間違いばかりが指摘され、がんばってできたという達成感がなく、いやになるばかりだ。
 間違いにつついては「これは?」とやんわり指摘するだけで十分である。できていることをほめることが大切である。
 できないことがわかるようになることが勉強になるんだという意味づけを与えることで、安心して間違えられる。
 学校でも、注意は、自傷他害の危険がある場合だけにし、その他の問題行動は無視する。
 良い行いのときは、その場面をとらえて、すぐにほめるようにしていただいた。
 母親も先生方も、非常に熱意を持って、私のアドバイスを実践してくれた。
 それから1カ月後、Aくんは別人のように落ち着いていいた。
 担任は「教室で目立たなくなった」と、お母さんは「学校が楽しいと言っています」と顔もすっかり明るくなった。
 Aくんに改善に必要だったのは、安心感と自己肯定感を取り戻すことだった。
 そのためには、まず母親が元気と安心を取り戻し、Aくんを余裕を持って受け止められるようになることが必要だった。
 また、先生方にも、何が起きているかを理解してもらい、Aくんが安心感や自己肯定感を取り戻せるように心がけてもらう必要があった。
 その場合に、有効だったのが、否定的な指導は最小限にして、肯定的な評価を増やすということだった。
「発達障害」という見立てでいくと、発達特性がこうなので、それを踏まえた対応が伝々ということになるのだが、実際には、そうした介入だけでは十分ではない。
 特に問題がこじれたケースでは、安心感や自己肯定感という部分で、深く傷ついており、その部分を回復する手だてが必要なのである。
(魚住絹代:1964年生まれ、大阪府教育委員会スクールソーシャルワーカー。1982年法務教官となり、以後、福岡、東京、京都の少年院に12年間勤務。非行少女の立ち直りに携わる。2000年に退官後は京都医療少年院で音楽療法の講師となるかたわら、2002年から、大阪府の公立小・中学校に、スクールサポーター、家庭教育サポーターとして勤務。子ども、家庭、教師の相談支援をしている)

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教師に思春期の理解がないと、生徒指導はできない

 教師は思春期というものを、自らの体験した範囲で理解しようとしても限界があります。
 多くの教師の小学校、中学校、高校時代は、勉強もでき、比較的恵まれた家庭環境の中で育ってきた人が大半である。
「荒れた生徒」によくある「家庭崩壊」や「貧困」は経験していません。
 私は定年退職後、複数の大学の教職課程で「生徒指導」を教えていました。
 最初の授業では必ず「自分の思春期を具体的に書き、感想を書きなさい」というテーマを与えてレポートさせました。
 学生のレポートの大半は、
「私には、一般的に言われている思春期はなかったと思う」
「思春期はあったが、あっという間に過ぎた」
「割と簡単に乗り越えたと思う」
 というものでした。
 つまり、大半の学生には自覚的な思春期はなく、あっても激しいものではなく、安易に乗り越えてきた思春期しか経験していません。
 今日の学校現場は、思春期に、援助もなく、苦しむ子どもたちがいます。
 その子どもたちの一部が「荒れた生徒」と言われる子どもたちです。
 激しい思春期を経験したことのない教師には、この「荒れた生徒」を理解するのが難しいのは、当然なのです。
 教師が思春期を自らの体験した範囲で理解しようとしても、限界があります。
「荒れた生徒」によくある「家庭崩壊」や「貧困」は経験していません。
「家庭崩壊」や「貧困」の中で育った「荒れた生徒」たちの中からこそ、思春期を通過する困難さと、何が思春期を乗り越える条件なのかを見てとれるのです。
 この荒れた子どもたちを排除したり、格闘するのを避けたりする生徒指導をしていれば、いつまでたっても思春期を理解できずに教師生活を続けることになります。
 たとえば、校則違反をするのは、単に「規範意識」が低いのでも、「道徳心」が育っていないのでもありません。
 そうせざるを得ないのは思春期特有の誰もが通過する
「目立ちたい」
「自分を発揮したい」
「認められたい」
 という、まっとうな欲求があるからです。
「校則違反」はこの欲求を満たそうとした結果でもあります。
 地味な努力を要する成績では目立つことができないから、安易な「茶髪」や「異服」にするのです。
 ですから、簡単には直してきません。欲求の充足の手段ですから、一朝一夕には克服できません。
 正しい充足の場がない限り、その問題行動は続きます。
 生徒指導がうまくいかないときには、このような視点で生徒指導のあり方を振り返ってみてください。
 いろいろな視点から振り返る必要がある。その一つが基本的欲求を満たしていくような生徒指導になっているかどうかである。
「思春期の理解」に努めることが、「荒れた生徒」への対応だけでなく、すべてのこの時期の子どもたちにどう対応するのか、どう育てるかという「考え方」の視点を与えてくれます。
(吉田 順:1950年生まれ 37年間横浜市立小・中学校に勤務した。担任32年、生徒指導部長16年、学年主任13年などを兼任した。生徒指導ネットワークを主宰。生徒指導コンサルタントとして全国の学校と関わる)

 

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