カテゴリー「いじめの指導」の記事

いじめを絶対にゆるさない生徒指導 堀川真理

 いじめを絶対にゆるさない生徒指導について堀川真理はつぎのように述べています。
 いじめがあった場合、どんな小さなことでもよいので、第三者から事実を確認します。
 このとき「この先生なら本当のことを言っても安心。言ったことがわからないように対処してくれる。よい方向に進めてくれる」と感じたとき、生徒は重い口を開きます。
 次にいじめられている生徒に事実確認をします。
 これも教師を信頼しているかどうかにかかっています。
「いじめがひどくなることは絶対にない。いじめに立ち向かってくれる」という気持ちになったとき、屈辱的な事実を語ってくれます。
 その次に、いじめの核になっている生徒に、まず事実をぶつけます。
 そのときの殺し文句が「みんな見ている」です。
 実際、みんなが見ている中で行われているわけですから、
「だれがチクッたんだ」という態度を見せたら、
「みんなです。みんな見ていました。みんなあんたのしていることを、イヤだと思っているのです」
 とクギを刺します。
 いじめをしていた生徒が事実を認めたら、指導に入る前に理由をたずねることも重要です。
 いじめをした気持ちをていねいに聞き、なぞる必要があります。
 自分に迷惑をかけられたといった理由があるのなら、そのイヤな気持ちを十分に聞き共感します。
 しかし、解決の方法が間違っていることを伝えます。
 もし、具体的な理由がない場合(例:好きなタイプじゃないから、オドオドしている等)など、加害者に迷惑になっていないときは、教師が本物の怒りの感情を表すことが大変重要です。
 生徒指導に共通することですが、生徒に許されない行為をしたときの怒り、大切な生徒が間違った選択をした怒り。
 その怒りは、裏を返せば愛情とも言えると思います。
 愛情がなければ怒りもわいてこないということです。
 いじめの核になった生徒に、何がいけなかったかをいじめられた生徒本人に伝えさせ、心から謝罪させます。
 そして、今後どうしていくかを約束させます。
 そのためにも事前の指導をしっかりとていねいに行い、その内容をしっかりといじめられた生徒に伝えさせ、本人たちが納得することが大切です。
 このような経験を通して、謝ることや許すことも人として大事であることを当事者たちは学びます。
 暴力や差別が長い期間続いたりする場合は、保護者を交えての指導会が必要です。
 一番重要なのが傍観者への指導です。
 まず、学級指導。内容は事実の確認。なぜそうなったのかの見とり、傍観者が止めなかった、笑って見ていたなら、同罪であることを話します。
 本当はイヤな気持ちだったことに気づかせ、そんなときどうすればよかったか、これからどうするのかを考えさせます。
 また、いじめられた本人に対して、全員で謝罪します。全員でというのが重要なのです。
 とにかく、傍観者への指導は、いじめの事実はだれもが知っていることなので、いじめの事実を白日のもとにさらすことが不可欠です。
 消毒を徹底しなければ、いじめの温床を残すことになります。
(
堀川真理:1963年生まれ、新潟市公立中学校教師、学校心理士、カウンセラー)

 

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いじめを解決をするには何が重要でどうすればよいか   平塚俊樹

 いじめを解決をするには何が重要でどうすればよいか平塚俊樹はつぎのように述べています。
 いじめが発覚したとき、普通に考えれば、最初に相談に行くべきところは、担任だろう。
 ダメだったら校長、教育委員会、警察、法務局の人権擁護委員へというのが順序としては正しいのかもしれない。
 しかし、学校に相談せずに、教育委員会へ行ったり、それを飛び越えて警察や人権擁護委員へ駈け込めば正しかったという場合もありうる。
 これはもう千差万別で絶対的なルールはない。そのときのいじめの程度と内容による。
 いじめは一気に加害者を仕留めないと事態がさらに悪化する。
 裁判は半年から1年と時間がかかり、弁護士はあてにできない。
 場面によっては限定的に活用するなら弁護士は強い味方になる。
 いじめでやっかいなのは、親に相談できず、発覚しないことにある。
 多くのいじめ事件を見てきて、痛切に感じるのは、親子のコミュニケーションがいかに重要であるかということだ。
 ふだんから親子の関係を密に積み重ねていないと、急に迫られても子どもはドン引きするだけだ。
 私が実際にいじめの相談を受けた中から象徴的ないじめはつぎのようなケースがある。
 結論からいえば、いじめの解決に必要なのは証拠集めである。
 証拠は写真や動画、録音、関係者からの聞き取りの記録などを時系列で集めたものである。
 関係者を動かす原動力になる。
 証拠集めに必要なのは「絶対この子を守る」という意思が何よりも重要なのだ。
 子どもの心を開かせるために必要なのだ。この覚悟がない親が多い。
 中学2年の女生徒Aさんが5年間いじめられていて「死にたい」と親戚のBさんに告げた。
 Bさんは「守ってあげる」「学校に行く必要はない、引っ越して転校していい」と言った。
 担任に相談すると「うちのクラスにいじめはない」という返事だった。
 教育委員会に駆け込むと「学校からは、いじめがないと聞いている」と冷たい反応であった。
 学校を休ませ、AさんをBさんの家に引き取った。1週間すると「学校に行きたい」と言い出したので、再び登校させた。
 ここからAさんに内緒で私たちの証拠集めがはじまった。
 Aさんを尾行し、下校時に暴力行為を受けるところを遠隔操作のビデオカメラで撮影した。
 そのときのアザも写真に撮った。
 お守りだよと Aさんに渡した袋の中に録音機をしのばせ、張り込みをしている人間が無線の電波をキャッチして録音した。
 生徒の溜り場に行って雑談し証言を得た。
 また、神経内科医に診てもらい、自殺寸前まで追い込まれた精神的な原因がいじめであるとの診断書を出してもらった。
 証拠集めが終われば、いじめで最も重要な告発である。
 より復讐されることを恐れ、告発を嫌がるからだ。
 Aさんは大人が本気で守ってくれると知り、心を開き了解してくれた。
 警察に被害届(暴力行為、金銭・持ち物を奪う)を出すという方法がある。
 しかし、証拠不十分で受理してくれない恐れもあり、学校に警察の捜査が入れば、視線が被害者の生徒に集中し、学校に通えるかという問題が残る。
 私たちは、これまで集めた証拠を法務局の人権擁護委員に申告した。
 法務局はただちに学校と教育委員会に聞き取り調査を開始した。
 学校は全生徒への聞き取り調査を行い、いじめグループが特定された。
 学校はクラスごとに厳しい監視体制を敷き、謹慎処分やカウンセリングなどの措置がなされた。
 いじめで大事なのは「絶対に救ってやる」という保護者の決意と証拠をひとつでも多く集めること。
 つまるところ、いじめの解決には、保護者の強い覚悟、愛が何よりも重要だということである。
(
平塚俊樹:1968年生まれ、証拠調査士。武蔵野学院大学客員教授。大手会社で顧客からのクレーム処理担当を経て、危機管理専門コンサルタントとして独立、平塚総合研究所設立した)





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いじめ解決を子どもの学びにするにはどのようにすればよいか   宮下 聡

 いじめ解決を子どもの学びにするにはどのようにすればよいか、実践をもとに宮下 聡はつぎのように述べています。
 発展途上の子どもが共同生活を送る学校は、対人トラブルが起きるのは自然なことで、だれかが苦痛を感じるようなことが生じる。
 それはむしろ対人関係を学ぶ生きた学習教材でもあります。
 だから、いじめは当然起きるものと考え、それを解決する体験を通して人とかかわる力を子どもたちが獲得する学習の機会ととらえることが必要だと思うのです。
 いじめを深刻ないじめに深化させないよう、子どもを主体者としていじめと向き合い、解決する活動を通して子どもたちに学びを体験させるようにします。
 いじめが発覚したとき、被害者の苦痛を軽くすることが急務です。
 まず、なすべきことは、いじめの標的になって子どもをクラスの中で孤立させないような支援体制をつくることです。
 いじめを止めなくてもいい。支えたり、いじめの状況を担任に訴えたりできる仲間を被害者と話し合って数名つくります。
 被害者は共感し支援する仲間がいることを実感して表情は少しずつ明るくなっていきます。
「やめろと注意できなくてもいい。同調しないことが大切。そして苦しんでいる人を精神的に支えて」
 私はそう子どもたちに呼びかけました。
 次に、多くの子どもが感じている「いじめノー」の思いを解決の力にしようと考えました。
 これまでクラスで起きていたことをどう感じているか、クラスがどうなっていくことを願っているのか、みんなの意見を書いて全員で読み合うことにしました。
 個人が特定できないようにしました。
 安心して本音が言えるようにするための配慮です。
 そして読み終わったあと、さらに賛同や反対の意見を書き、読み合いました。
 意見集は、クラスのみんなの意識を傍観者でなく当事者に変え、解決に向かう流れをつくります。
 さらに家庭でも読んでもらい、保護者からの意見も求め、それを掲載しました。
 保護者の意見は、子どもたちにとって、大人たちがいまクラスで起きていることをどう見ているかを知るいい機会になりました。
 保護者も一緒に考えていくことがいま必要になっていると思います。
 みんなの意見は、解決に向けた明るい希望があふれていました。
 明るいクラスにするためには目に見える行動を起こして思いを形にすることが必要です。
 行事はその希望に向けて舵を切るチャンスとなります。
 クラスの雰囲気を変え、前に進ませる挑戦となります。
 いじめと向き合う実践は、トラブル解決の活動を子どもたちと共にすすめることを通して、思いやりと活力のある学級をめざす攻めの実践なのです。
(宮下 聡:都留文科大学教職支援センター特任教授、元公立中学校教師)

 

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いじめをする子どもの指導をどうすればよいか

 いじめをする子どもは、最初は遊び半分で相手をからかうようなことから始めることがある。
 日常が何となく面白くなく不満をもっている場合は、エスカレートしていく。
 仲間を誘い、複数でいじめをするようになると気が大きくなり、集団でいじめをするようになる。
 いじめをする子どもの多くは、学業不振のはけ口として、弱い者をいじめる。
 そのうえ、基本的な倫理観を身につけていないことが多いため、無理難題を押し付け、金品を要求し、恐喝まがいのことも行うようになる。
 いじめをする子どもには、みんなの前ではなく、個別に話をする方がよい。
 いじめをする子どもは取り繕ったり、自分の正当性を述べることが多い。
 そのときは、相手の子どもの心の痛みについて、丁寧に話をする必要がある。
 叱る調子ではなく、いじめをする子どもの心に寄り添いながら指導することも必要になる。
 しかし、いじめが悪質で反抗的な態度をとり続けるときには、「社会の規範に外れること」であると、毅然と真剣な気持ちで語ってやらなければならない。
 いじめをする子どもは、自信をなくしていることが多い。
 そのため、その子どものよい面をとらえ、期待していることを話すなどして、自尊感情を高める必要がある。
「先生は自分の味方だ」と感じるようにし、自信を持たせ、プラス思考に方向づけていきたい。
「先生は本気で気にかけてくれている」
「自分を信じてくれている」
 といった気持ちが子どもに芽生えるよう、教師は真剣にその子どもの気持ちを分かろうと努めなければならない。
 そのためには、子どもの心に響くように語って聞かせる力がなければならないし、子どもが心から信頼する温かい人間性を持ちあわせた教師でなければならない。
(
伊藤三平:元西宮市立小学校長)




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いじめは学校で社会を学び、自己の社会化をどう形成するのかという問題である   宮川俊彦

 いじめは人間と人間との関係の現象として起きていると宮川俊彦はつぎのように述べています。
 私はいじめ問題は社会化の問題であると考えている。
 学級は同年齢の子どもたちが集まって疑似社会が形成されている。
 学級は自己の社会的な面を本人が自覚し、他者をも客観的に理解し、社会的関係を形成していくことを目的としている。
 自分自身の役割や能力の発揚の仕方、その手法を学ぶことを本義としている。
 いじめられたら、「なぜ私はいじめられるか」ということを分析し、解明していこうという探求がなければ、どうしようもない。
 以前、私のところに学校でボコボコにいじめられている子どもがきたことがある。
 なぜいじめられるか何回聞いても、みじめな気持ちがいっぱいで、冷静に自分を客観化し分析することはできなかった。
 そこで、私の取り巻きの子どもたちと力を合わせて分析をはじめた。
 共に考えてくれる仲間がいたりすると、冷静に自分を客観化する目はつちかわれていくものだ。
 よく聞くと、彼は「なぜいじめられているか」の認識はほとんど欠落していた。
 また、学級にどんな子がいるか、それがどういうタイプか、いじめる子はどういう傾向を持っているか、ほとんど知ろうとすらしなかった。
 いじめられて、いたたまれない。学校に行きたくない。
 いじめている連中に仕返ししたい。
 そのような反応が先行していて、自分を分析しつつ、自分を再編成するか、演出するか、構築するかに向けての認識も手法もほとんど欠落していた。
 さまざまなケースはあるとしても、私はこの傾向が多いのではないかと考えている。
 いじめられる子には、いじめやすい、いじめたくなる要素があることを疑ってはならない。
 きちんと分析し、とらえなければならない。
 そのままの素の自分でいたら、社会の中では立ち往生することもある。
 としたら、どういう自分を形成していけば現状でいじめられなくなるのか。
 この局面において、どういう自己演出、自己表現、ときには仮面化、あるいはある種の人格をまとうこと、自分自身の是正が必要か、これが具体的なテーマとしてのぼってくる。
 少なくとも人が社会で生きていくにはありのままではいられないという認識が必要である。
 多種多様な人間が相集う社会においては、臨機応変性や、自己のあり方、表現の仕方は必然として考えていかざるを得ないのは自明である。
 勉強しに学校へ行っているなどという程度の認識で学校をとらえる人はまだ多い。
 学校で社会を学ぶのだとか、社会化の自己をどう形成するのかという問題は枠外におかれてきた。
 私がこういうことをいくつかの現場で語ったときに、目から鱗だとか、さして考えたこともなかったという教師や親や子どもの声は多かった。
(宮川俊彦:1954-2014年、国語作文教育研究所所長、教育評論家。約40年におよぶ青少年の作文・表現教育活動を実践し、指導対象は二百万人を越える。表層指導だけではなく内面に分け入り、思考法や視点・読解などの表現に着目し、人間の存在から表現に到るプロセスを教育の対象にしていた)

 

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いじめが起きたとき、担任は子どもたちや保護者にどう対応すればよいか

 つぎのようないじめがあったとき、担任は子どもたちや保護者にどう対応すればよいでしょうか。
 
「中学一年生の男子生徒が数人の生徒からからかわれたり、シューズで頭をたたかれたりされるなどのいじめを受けていました」

「気づいたときには、かなりの時間が経過していて、わが子からの訴えをしばしば聞いていた保護者は、学校やいじめた生徒の保護者に対して不信感を強くしていました」
 このような数人でひとりの生徒をいじめた場合、罪の意識が弱く、反省を求められても「自分だけではない」と言い逃れをすることがあります。
 いじめた子どもを強く叱責し、いじめられた子どもを単にかばうやり方だけでは、一時的な抑止にはなっても本当の解決にはなりません。いじめが陰湿さを増す結果さえまねきません。
 緊急にとるべき措置と、長期的な取り組みが考えられます。
1 緊急の対応
 まず、子どもたちへの指導を通して、保護者への働きかけを考えなければなりません。
(1)
学級の子どもたち全員に対する指導
 
「いじめは人間として許されない行為であり、絶対にあってはならないこと」ということを理解させます。

 これはじっくりと理解させる以外にありません。
 そのなかで、自分はどうだったのか、を十分に考えさせます。

 いじめていた子ども、見ていた子ども、それぞれに本音が出せるように、教師がしっかりと共感的に受けとめていくことが大切です。
(2)
いじめていた子どもたちへの指導
 
「先生はいじめは絶対に許さない」という毅然とした態度が必要です。

 いじめの行為は厳しく指導しても、人間性まで否定してはなりません。
 いじめられた子どもの苦しい気持ちを伝えながら、教師の素直な気持ちを示します。
(3)
いじめられた子どもへの対応
 いじめられた子どもは身も心も傷ついています。その心身の保護に努めます。

「全校の教師で必ず守る」と約束し実行します。
 注意深く見守り、話を聞くなどして、かかわりを持ち続けることが大切です。
(4)
保護者への対応
 いじめられた子と保護者は、いじめた子と傍観者、気づいてくれなかった教師に不信感をつのらせています。

 教師はいじめを早く発見できなかったことを素直にわび、学校の指導体制と学級の子どもと保護者への働きかけの様子をしっかりと伝えます。
 傍観者もふくめ、いじめていた子どもの保護者に、いじめの全容と、どこがいけなかったのかをよく話し、いじめの本質をよく理解してもらいます。
「保護者の方々も教師の気持ちも、子どもたちみんなが健全に育ってほしいということで一致しています」

「いじめは悪いことです」
「間違ったことをしたとき力になってやるのが大人の責任ではないでしょうか」
 と、いじめられた子どもの苦しみ、痛みを教師の気持ちを交えて説きます。
2 長期的な取り組み
(1)
いじめられた子どもに対して
 家庭との連絡を密にしながら、本人にいろいろな活動の場をあたえ、そのなかの努力を認めることによって、自立への援助を行います。

 支え続けることによって、本人の意欲を引き出し、周囲の子どもたちが認める場へと導いていきます。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
(2)
いじめをとりまく子どもたちに対して
 教師は子どもたちの人間関係をよくしていく努力を一層重ねていく必要があります。

 教師が子どもたちに思いやりのある接し方をすることによって、子どもたちの心のなかにも自然と思いやりの気持ちが生まれてきます。
 多くの活動の場を与えることによって、ストレスを発散させ、明るい雰囲気をつくり出すことに教師は努めます。
(3)
保護者に対して
 保護者とよく連携しながら、子どもたちの家庭での存在感や家族への貢献度を認めていく努力を続けてもらいます。

 学級懇談会など様々な機会に、教師から実例話を聞いたり、他の保護者と意見交換をしたりするなかで、子どもの成長段階に適した子どもたちへの接し方や、認める、ほめる、叱るなどを理解してもらうようにします。
(
松田素行:千葉県公立中学校校長,千葉県教育庁主幹,昭和学院短期大学教授を経て,文教大学教授
)



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いじめが起きてしまったとき、担任はどのように対処すればよいのでしょうか

 いじめが起きてしまったとき担任はどうすればよいか滝井 章はつぎのように述べています。
 いじめで多いのは、冷やかし、からかい、仲間はずれ(無視)、脅しです。
 いじめが起きたらつぎのような対応をしていきます。
1 情報収集は迅速に
(1)いじめられた子どもから話を聞きます。
 いじめられた子どもを絶対に守る姿勢で親身になって話を聞きます。
 そして、いっしょにいじめを解決していくことを伝え、安心させることが大切です。
(2)いじめにかかわった子どもから話を聞きます。
 いじめにかかわった子どもたちが情報交換をして話す内容を変えたりしてしまわないよう、他の教師にも協力してもらい、迅速に正確に聞き出せるよう場所や時間の設定をすることが大切です。
「○日のことを先生に話してくれない?」というかたちで一人ひとりに詳しく聞いていきます。
2 管理職に相談し、学校全体にオープンにする
 いじめは大きな問題になりやすいので、すぐに管理職に報告します。
 担任の目の届かないところでいじめが行われるので、学校全体の教職員で子どもたちを見守れるようにします。
 子どもや保護者への対応は、その都度、管理職に示唆を仰いで慎重に対応することが大切です。
 保護者との話し合いや子どもの指導についても管理職に協力してもらうとよいでしょう。
3 いじめの中心になった子どもに対する指導
 いじめの中心になった子どもに、いじめの原因や時期、相手についてどう思うか尋ねます。どうしてそうなったか考えさせます。
 やった行為とそこまでに至った原因をはっきり分け、善悪を判断していくことが大切です。
 自分が嫌だと思うことを人にやってはいけない人間として恥ずべき行為であること。
 いじめは保護者も巻き込む大問題に発展することを伝えること。
4 いじめを取り巻く子どもたちに対する指導
 いじめを見ていた子どもたちは、
「いじめはやってないよ。ただ見ていただけ」
 と、悪びれた様子もなく言います。
 取り巻く子どもたちの言葉や態度が、いじめをつくるということをわからせます。
 「なぜ、一人にしてしまったのか」
「だれにでも同じ態度や言動ができるのか」
 を尋ね、だれにでも平等な態度と言動をとるよう厳しく指導します。
5 事実を保護者に知らせる
 いじめられた子どもと、いじめた子どもの保護者には、誠意をもってきちんと事実を報告する必要があります。
 紙面にはのこさず、電話か直接会って話すとよいでしょう。
 注意が必要なのは、自分の子どもがいじめられたことを知った保護者が、直接いじめた子どもの保護者に連絡を取り、もめてしまうことです。
 担任がきちんといじめにかかわった子どもや保護者に対応していることを話し、解決を任せてもらうようにしましょう。
(滝井 章:東京都公立小学校教師を経て國學院大学教授、都留文科大学特任教授)

 

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いじめが起きないクラスづくりをするにはどうすればよいか

 いじめが起きないクラスづくりについて滝井 章はつぎのように述べています。
 子どもが送る小さなサインを見逃さないようにしましょう。
 子どもたちの水面下で何が起こっているのかをしっかりと把握することが重要です。
 新学期初めの指導方針を話すときや道徳、学級活動の時間に、「人とのつながり」や「人としてのルール」、「いじめに対する担任の考え」をきちんと子どもに伝えていくことが大切です。つまり、
1 一人ひとり違っているから素敵であること
 人は声や顔など一人ひとりが違うように、話し方も考え方も違うことに気づけるようにします。
 友だちのよいところを見つける活動を通して、友だちのすばらしさに気づかせていくことが大切です。
 担任が子どもたちを大切にする姿を見せること。
2 好き嫌いで行動することはよくないこと
 日ごろから、一人でしっかり行動できたことをほめ、友だちの目を気にせず行動できる自立した子どもを育てていくことが大切です。
3 言葉が人を大きく傷つけること
 心に負った傷は残るものです。
 言葉に気をつけて話すようにすること。
 人を幸せにできる言葉でありたい。
4 一人対多人数になったときいじめになること
 一対一のときはけんかで済んだものが、一人対多人数になったときは屈辱感を感じます。
 加勢したり、見て見ぬふりをすることがいじめである。
5 いじめは絶対に許せないことだという担任の姿勢を明確に
 いじめは人として断固として許せないことだということを真剣に話すことが大切です。
(滝井 章:東京都公立小学校教師を経て國學院大学教授、都留文科大学特任教授)

 

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いじめの「きっかけ」「理由」「加害者の特徴と被害者の対応」「いじめの発見者」など

1 いじめのきっかけ
 単純な動機が多い
(1) はらいせ(いい子ぶる、生意気)
(2) からかい(動作がにぶい、すぐ泣く、無抵抗、力が弱い)
(3) 違和感(転校生、交わろうとしない)
2 いじめる子どもの「いじめる理由」
(1) 性格が暗いから
(2)ウソをつくから
(3) かげひなたがあるから
(4) むかつくから
(5) 不潔だから
3 いじめる子どもの特徴
(1) 不満に対する耐性が弱い
(2) 攻撃性が強い
(3) 思いやりが薄い
(4) 劣等感をもつ
(5) 寂しい
4 被害者はいじめられたときどうしたか
 じっと我慢している子どもが多い。
(1) じっと我慢した
(2) 保護者に話した
(3) 教師に話した
5 いじめの発見者
 いじめは見つかりにくい
小学校
(1) 担任
(2) 本人の訴え
(3) 他の子ども
(4) 他の教師
中学校
(1) 本人の訴え
(2) 担任
(3) 他の教師
(4) 他の子ども
6 いじめだと訴えた者
 本人からの訴えは少ない
(1) 保護者から
(2) 教師から
(3) 本人から
(4) 近所のうわさから
(5) 他の子どもから
(石丸 淳:元中学校教師・小学校校長・愛媛県総合教育センター部長)

 

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いじめ防止の指導、いじめを生まない学級づくり

 人間は、まわりの人に認められ受けいれられて、安心して生活ができます。
「みんなの役立ち、みんなに受け入れられている」
「私を必要とする場があり、仲間がいる」
「自分も仲間を大事にし、受け入れている」
 という実感づくりが必要です。
 一人ひとりの違いを認め合い、一人ひとりの子どもが持ち味を発揮し、協力しあう学級生活を生み出していくことです。
 学級で一人ひとりが響き合ってはじめて、子どもたちは存在の意義を実感できます。
「人間は一人ひとり違う。違っているから値打ちがある」
「違っている人が集まっているから、素晴らしいものが生まれる」
 ということを常に語り、違っていることを恐れたり、排除しない学級を築きたい。
 弱い子どもに温かい視線をおくり、言葉をかける教師に子どもたちは学びます。
 担任は「あなたたちの味方だよ」と絶えず語り、実行しなければなりません。
 そうでないと、心を開いて相談にくるようにはなりません。
 子どもたちは、家庭の事情やさまざまなことで悩んだり、苦しんだりしています。
 こういう思いにそっと寄りそう、子どもたちの心に届く言葉が大きな力を生みます。
 いじめを生まない学級づくりをするには、
(1) 異なるよさを認め合う
 みんなが同じ必要はない。
 異なる人間の、異なるよさを認め合う学級づくりをめざす。
 異なっていることの価値を説明し、異質な意見を述べ合う中で、よい考えが生まれることを体験させる。
 そのためには、どんな意見や考えも、大事に受けとめる姿勢の確立に全力を注ぐ。
 そうすることによって、開放的な学級になります。
(2) 間違えることは大切
 間違えると笑われる。この恐怖をなくさないと、活発な学習活動はできません。
 学習はわからないことを学ぶのですから、間違えるのは当然です。
 間違えた考えや答えから正解が生まれ、新しいものが生まれてきます。
 間違うことがあたりまえになるようにします。
 こういう体験や学級づくりがいじめを生まないために大切です。
(石丸 淳:元中学校教師・小学校校長・愛媛県総合教育センター部長)

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