カテゴリー「さまざまな子どもの指導」の記事

授業中、騒がしい子に注意をしたが無視された、どうすればよいか

 授業中、騒がしくなったので、教師が騒がしくしている子に注意をしたが、子どもは無視をした。
 無視という子どもの挑発的な態度に、教師が感情的になり「ちゃんと聞きなさい。悪いということがわからないの」といった感情的な言葉で叱るのは禁句である。
 教師が感情的になると、まわりで見ている子どもたちには、子どもと教師が対等に言い合っているように見える。
 そうなると、反発する子どもに加わる子どもたちが出てきて、収拾がつかなくなる。このままにしておくと、学級崩壊になりかねない。
 どうすればよいのでしょうか。
 教師自身が自分の何が問題かを考えるとよい。
 教師の言動に、子どもが反発していると考え、教師自身の何が問題なのかを、振り返ることが大切である。
 教師の言動や授業の進め方が引きがねになり、子どもたちが反発することがある。
 授業後に、その子と個別に話し
「〇〇ちゃん、先生に何か思っていることがあるんじゃないかな? 先生は思いつかないの。だから、教えてくれないかなあ」
と、無視している原因を探った。
 また、まわりにいる子どもたちにも個別に話をしたり、クラスの子どもたちから、先生に関するアンケートを取ったりして情報を得た。
 情報をつかんだので、無視した子どもともう一度話をした。
「この前、先生があなたのことを注意したことに腹を立てていたんだね」
「先生は、勘違いしていたようだね。それで、先生の言うことを聞けなかったんだね」
「本当に悪かったね。ごめんよ」
「今度から、ちゃんと、あなたや、みんなのことを見ていたいと思っているよ。これからも教えてね」
と伝えた。
 その他の解決の方法として、無視した子どもも参加したくなるようなゲームすることが考えられる。
 授業を中断しゲームをします。例えば
「今から楽しい『20の扉』のゲームをします」
「では始まり。それは動物です。さあ、20回、質問してください。それに『はい』『いいえ』で答えます。答えを当ててください」
子ども「大きいですか?」、教師「はい」
子ども「色は灰色ですか?」、教師「はい」
子ども「鼻が長いですか?」、教師「はい」
子ども「わかった。象ですか」、教師「そうです。象です」
当てた子どもは大喜びです。
教師「3問で当たったね。この調子で後2題します」
と進めて授業に戻った。
(
松本順子:高知市子ども科学図書館
)

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切れたりする子どもの特徴とその指導について教師の声とは

 切れたりする子どもについて、どのように起こるのか、またその子どもの特徴や指導について、小学校・中学校の教師に自由に書いてもらった結果がつぎの通りです。
 自分の思い通りにならないとき、がまんできない子どもが切れる。自己中心的に物事をとらえがちな子どもに多いと思う。
 友だちに自分の欠点を言われたり、みんなの前で注意されると切れる。
 子どもの気持ちを読めない教師が多い。つきあう子どもは日々変化している。合わせてあげてほしい。
 家庭での愛情不足があるように思う。親がわが子のことをわかっていない。小さな信号を見すごして、大きくなってから気づいているのだと思う。
 本当に病的で、精神的な鑑定が必要と思う子どももいる。
 ある程度、障害が原因となって切れる子もいます。話をゆっくり聞いてやり、ダメな点は叱り、程度の軽い怒りのときは、気分をそらします。けんかの後は必要ならばクラス全体の中でその子の話をします。
 自分の気持ちをうまく相手に伝える術が順序よく身についていないからだ。小さい頃から自己表現力をつけていく学級運営や家庭のあり方が大事なのではないか。
 切れる子どもに、教師が落ち着いて聞く余裕があると、子どもも和らいでくることがある。
 日頃のうっ積された気分のときに、注意されることが引き金になって爆発するのではないかと思う。自分の悩みを相談できる人がいないので、ゆっくりと話を聞いてやることが大切だと思う。
 何度も話しあったり、みんなで一緒に遊ぶと楽しいということを体験させたりした。
 帰りの会で、その日「すまないな、悪いな」と思った言動を友だちにした場合、友だちに謝り「すっきりして帰る」言葉がけをしています。
 追い込まれた状況で、切れているわけだから,教師が逃げ道をふさぐような叱り方をするのは適切ではない。
 教師が腹をたてずに、ゆっくりと話を聞き、不満を吐き出させるように心がけている。
 話を聞いてばかりいると、甘やかしになることがあるので、その辺のかねあいが難しい。
 子どもを追いつめる状態にしないように注意したいと思っている。
(
授業研究所: 主に阪神間の学校の先生を対象に、授業や学級づくり、そしてもっと大きな視点で、子育て・子ども論・教育論も含めて、教育講座を開催)


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「ムカつく」子どもを「ムカつかない」子どもにするには、どうすればよいか

 小学校五年生の担任です。遅刻や忘れ物が多く、学習に集中するのも苦手な子どもがいます。最近「ムカつく」という言葉を頻繁に口にするようになりました。
 「どうして、そんなことしなきゃいけないの」と言い「ムカつく」を連発します。どのように対応していったらよいのでしょうか。
 怒りの処理のしかたで大切なのは「怒るな」と怒りを抑制することではないのです。
 怒り終わるまでの時間を短くすること。怒りを周囲の人が了解できるかたちにして表現することなのです。
「ムカつく」子は、周囲の状況に不満を感じやすいことと、周囲の人が了解できるかたちで表現できないことが問題であるようです。
 教師として「子どもが怒りをコントロールする」ことを、子どもにどう教えればよいかを心得ておくとよい。どうすればよいのでしょうか。大切なことは、
(1)
怒りをおさめた瞬間を大切にする
 ムカついて、怒ることに注目せず、怒りをおさめた瞬間に注目するのです。
「素敵な顔に戻ったね」と、いう気持ちで、その瞬間に合った言葉をかけます。
「ムカつく」と言うのをおさめて、指示されたことに取り組もうとする瞬間に注目するのです。
 にっこりほほ笑むだけでもかまいません。
 このときに、時間に余裕があれば
教師:「自分でどう思ったから、やる気になれたのかなあ」「よかったら教えて」
と、声をかけます。
 ムカついていた子が、例えば
子ども:「いつまで怒っていてもしょうがないもの」「いやなことだけど、いやなことは早くすませなきゃと思った」
などの言葉が出てきたら
教師:「そうか、そう思えばできるんだよね」
と、認め応じます。
 その言葉が子どもから出てこないときは
教師:「今度、こんな感じになったときに、どう自分に言ったらムカつかなくなったのか、その秘密を教えて」
と、お願いをします。
 気持ちを切りかえるために、自分が「自分自身に向けている言葉」が重要な役割を果たしていることを意識化させるのです。
(2)
気持ちを切りかえるまでの時間に注目する
 気持ちが切り替わり、指示された作業に取り組むまでの時間に注目をします。
 その時間が短くなったことに注目し、評価します。
教師:「取りかかりが早くなったね」「気持ちの切り替えがうまくなったね」と評価するのです。
 教師は子どもに「あなたは、それができる子なのだ」という気持ちで声をかけます。
 これが、子どもに「自分で自分の感情をコントロールできる」という自信を培うのです。
 子どもが「自分は自分の感情をコントロールできる」という感覚が、ささいなことに怒り出さない、ということにまで、影響を及ぼします。
(3)
「子どもが、背伸びをせずに、自分らしくしている」瞬間に注目をする
 子どもは「注目してほしい」「目をかけてほしい」という欲求が強く持っています。
「ムカつく」という場面だけでなく、子どもが「背伸びをせずに、自分らしくしている」瞬間に注目をすることも一つの方法です。
 無理をせず「普通の姿でよいのだ」というメッセージを送ることが大事なように思います。
(
小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究)

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子どもの「死ね」といった教師に対する言葉の暴力に、どう対応すればよいか

 子どもたちは悪気もなく、容姿や体のことに関して、気にしていることをズバッと言うことがあります。私もずいぶん傷ついたことがあります。
 若いころ「先生は足が太いね」と言われた時に、すごく気にしていた私はスカートがはけなくなりました。
 私はプライドが高いというか、自分に自信がなかったからだと思います。
 子どもはそういうことを何気なく言うものだ、ということを認識していれば、ぎこちなく対応することもありません。たとえば、
「そうね、きみのようにすっきりした足だったらいいね」
「そうだよ。でも、失礼だね。あなたに関係ないでしょ」
と、高学年の生意気な子には言ったりして、おおらかに対応すればよかったのではないかと思っています。
 ある女性の新採用の先生は、すごく太っていました。三年生を受け持ったのですが
「先生はデブだ」「かっこ悪い」「体育なんかできないだろ」
とか、ありとあらゆる失礼なことを言われました。
 それで、その先生は家に引きこもり、学年主任の先生が話を聞きに行っても、もう学校には行けないと泣いたそうです。五月になって辞めてしまいました。
 子どもは、心ない言葉を口に出します。それも、弱点だと思っていることや、嫌だろうと思っていることなどを平気で言ってきます。
 そういうことを言うのが、子どもだと思ったほうがいいのです。子どもは天使ではありません。相手を思いやって、話してくれるなんてことはありません。
 大人が見て見ぬふりをしてきたことを、遠慮せず言うのです。そういう意味で、弱みを見せると、また、かさにかかって攻めてきます。
 負けてはいけません。心は動揺しても、口だけは
「そんなこと、あなたに言われる筋合いはない」
「あなたも私くらい太ってみなさい。いっぱいおいしいものを食べてきたから、こんなに大きくなったんだから」
「でぶはやさしいんだよ」
とか、勝手な理屈をこねて、子どもを煙に巻くことも必要です。
 ある校長先生は、低学年の男の子に「死ね」と言われたそうです。
 この子は誰にでも気に食わないことがあると、ひどい言葉を投げつける癖があったそうです。
「死ね」と言われた子や先生は、その子を怒鳴るか、怒ってたしなめるかしていました。「あいつは、何度言ってもわからないんだよ」と、もてあましていました。
 ところが、その校長先生は違いました。
「そうか。死んじゃえばいいんだね。死んでもいいけど、明日から君と話すこともできなくなっちゃうんだね」
「悲しいな。ごはんも食べられなくなっちゃうな」
と、悲しそうに言いました。それを聞いた子はびっくりして思わず
「校長先生、死んじゃだめだよ」
と言ったそうです。
 言葉の暴力に対するには、そういうことを言ってはいけないのだ、ということを教えることも大事ですが、それよりも感じ取らせることが、大切だと思います。
 対応の仕方によっては、こんなに穏やかにその子に気がつくようにさせることができるのです。
(
卯月啓子:1949年東京都生まれ、元公立小学校教師。NHK教育テレビ「わくわく授業 卯月啓子さんの国語」(2002)で好評を得る。「卯月啓子の楽しい国語の会」代表。現職教員のための国語教育研究会の常任講師を務め、後進の指導にあたっている)

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きれる子どもの心を理解し、感情が暴走しないようにするには、どうすればよいか

「きれる子」は、ちょっとした出来事をきっかけにして、突然きれて、怒り、衝動的に暴力をふるったり、暴言をはいたりします。
「きれる子」は、身体が安心できるという感覚に身をゆだねることが困難な中で育ってきている傾向があります。
「きれる子」は、周りは常に危険なものであるという感覚におそわれ、一人で自分の身を守ろうとして闘争状態に入ることが考えられるのです。どうればよいのでしょうか。
「きれる子」が、教師を「安全な人」だと認識できるような関係をつくることが、援助を進めていくための基盤になります。教師は叱る人であると感じるようではいけない。
「きれる子」が、きれなくなるためには、大事なことは何でしょうか。
「きれる子」の怒りなどを、身体の感覚のままで感じることができるようになることです。
 教師が「言葉で、きれることが、どんなに悪いことかを言ってきかせる」ことは、ほとんど効果がありません。
「きれる子」と教師が一緒に深呼吸をゆっくりして、身体の感覚として怒りのおさまりを感じさせることが、たいへん援助的です。
 教師が「きれる子」に「怒りをおさめることができたね」ということを、強調して伝えます。
「きれる子」の「怒りに支配されているときの身体感覚」と「落ち着いているときの身体感覚」の差を明確にし、「きれる子」が、身体感覚を感じることができるようになることを助けます。
 怒りをおさめることができたら「どこまで覚えている?」と聞くことで、怒りを引き出す刺激を把握することができます。
 多くの場合「Aくんが、ばかって言った」など、自分を否定するような刺激があったことを話してくれます。
 そのことが「あなたにとっては、とってもいやーなことだったんだね」と全面的に承認することが必要です。
 そのうえで「そのとき、身体のどこがいやーな感じになったのかな?」と、たずねます。
 たとえば「胃がむかむかした」と言えば
「そうか、すごく腹が立ったんだね」
「とってもくやしかったんだね」
「悲しかったんだね」
というように、子どもの身体感覚にあう感情をあらわす言葉を何度も強調します。そうすると感情は暴走しなくなります。
 感情を受け入れてもらえたと「きれる子」が感じたときに、ていねいに深呼吸を教師もともに行うことが、たいへん効果的です。
 身体を通過する深い呼吸は、落ち着いた身体感覚のここちよさを感じることを容易にします。
「きれる子」がよくなっていくためには、家庭のなかでも「安心」できる関係が絶対に必要です。
 家で弱音をはき、ぐずくずし、身体の感じるままの感情を出すことができる子は、学校という社会化の場では、年相応の社会性を学習することができるものです。
 親が子どもの甘えや、ぐずぐずを受け入れても大丈夫で、よい親子関係の証しなのだということを知ることが、ゆとりのある子育てをしていくための援助になります。
(
大河原美以:1958年東京都生まれ、東京学芸大学教授。臨床心理学者。臨床心理士。専門は、子どもの心理療法・家族療法)

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相性があわない子、教師を困らせてやろうする子には、どう対応すればよいか

 子どもも教師も人間ですから、相性があわないこともあるし、教師を困らせてやろうと思う子もいます。
 新年度の始業式から、お互いに、どんな先生か、どんな子どもかを探っていって、次第に折り合いをつけていくのです。
 不幸にして、教師が子どものいじめにあい、学級崩壊になったり、休職に追い込まれたりする場合もあります。教師も生きにくい時代になっているのだと思って、心が痛みます。
 ですが、最終的なところにいく前に、必ずサインは出ているはずです。小さなことでも見逃さず、叱るのではなく、よく話を聞くようにしていかなければならないと思うのです。
 何といっても教師は大人なのですから、余裕をもって大人の知恵を発揮してもらいたいものです。
 始業式で紹介されたら、新採用の若い教師なら、にこにこと笑顔で、簡単に自分の特技や好きなことなどを交えて挨拶するとよいと思います。子どもの心をぐっとつかめたら、しめたものです。
 子どもも、たいていの子は、出会いの一瞬だけは、新しい自分になろうと、期待に胸をふくらませていますから、教師の自己紹介のときがチャンスです。
 しっかり目を向けて、その子を受け止めていくという姿勢を見せていくようにします。
 子どもは教師を見ています。そして、試してきます。ある時の六年生の男の子は
「先生、かったるいから掃除やりたくねぇ。休んでていい」と、ふてくされて言ってきました。教師がどういう対応をとるか試しているのです。そこで、
「やりたくないんなら、やらなくていいよ。遊んで来なさい。あなたが掃除をしなくたって、先生はちっとも困らないんだよ」
「でも、なぜ掃除をしないのか、みんなが不思議に思うよ。全校集会で、なぜ掃除をしないのか、一年生から六年生まで、みんなに説明しなさい」
と、冷ややかに言いました。すると
「あ、そういうことですか。じゃあ、掃除やります」と言って、やりだした。この先生には通じないと思ったようです。
 掃除をしなかったらどうなるか、その子なりに考えたのでしょう。子どもに自分で考えるように仕向けたほうが、よっぽど効果があります。
 頭ごなしに叱られたほうが、子どもは楽です。教師を恨むか、拒否する口実ができ、掃除をしない正当性を持つからです。堂々と掃除をしなくなります。
 そして、叱ることを繰り返して、お互いのメンツがたたなくなるほどになってきて、クラスが荒れてきます。
 そのときは、掃除をするかどうかではなく、叱られることの理不尽さを問題にしてくるからです。
 掃除をやりたくないと言っていた子が少しでもやっていたのを見たら「えらいね。あなたが掃除すると、きれいになって気持ちがいいね」と言ってあげました。
 本当にそう思ったからです。すると、その子は、ちょっとうれしそうな顔をしていました。
 言うことを聞かない子に「どうして、言うことを聞かないの」と聞いても答えるはずがありません。私はそういうとき、部屋を変えて個人的に話すようにしています。
 あるときの六年生の男の子は、目つきと態度で冷ややかに反抗していたので
「あなたは先生を嫌っているかもしれないけど、私はあなたを嫌っていないよ」
「先生は教師だから、いけないことは怒るけど、わけもないのに怒ることはしないつもりだからね」
「いつ、あなたが先生を嫌いになったのか、話してくれると、先生も直しやすいんだけど」と言うと、たくさんの不満をぶちまけてきました。
 誤解している点は正し、私が直さなくてはいけないことは直すと約束し、その子も直すことは直すと約束して、話し合いは終わりました。
 その後も何回か話す機会がありました。目に見えて逆らうことはなくなりましたが、一年間、お互いに笑い合うというところまではいきませんでした。
 それでも、話し合ってよかったと思います。その子の思いも、私の思いもお互いにわかったからです。
 お互いの事情がわかったという経験だけでも、その子には大きいと思います。
 子どもは天使でも、悪魔でもありません。嫌なことはやりたがらない、自分が不幸だったら、人も不幸にするという、普通の人間です。
 教師は子どもの善なるものを導き出し、悪い心を浄化してあげなければなりません。
 教師は自分の感情に押し流されて、怒ったり叱ったりしてはならないのです。
 私は人間ができていないので、わかっていてもなかなか冷静になれませんが、慈愛の心をもって子どもたちに日々接していきたいと願っています。
 私は、少しでも自分が変わらなければ、子どもたちが変わることはないと思っています。
(
卯月啓子:1949年東京都生まれ、元公立小学校教師。NHK教育テレビ「わくわく授業 卯月啓子さんの国語」(2002)で好評を得る。「卯月啓子の楽しい国語の会」代表。現職教員のための国語教育研究会の常任講師を務め、後進の指導にあたっている)

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いくら注意しても教師の言うことをまったく聞かない子は、どうすればよいのでしょうか

 教師にとって「手のかかる子ども」は、実は教師に「目をかけてほしいと思っている子ども」です。先生に自分のことを気付いてほしい、わかってほしいと心の底では思っています。
 そこで、掃除や給食当番などの指導のときではなく、落ち着いた状態のときに「先手必勝」+「当たり前のことをほめる」を取り入れてみましょう。
 教師にしてみれば「どう言えば掃除をするだろうか」「もっと厳しく叱ったほうがいいのだろうか」と考えてしまいがちです。
 こういった子どもの場合、その方法では解決に時間がかかりそうです。
 先手必勝で、子どものよいところを言葉にして、ほめていくとよい。当たり前と思える行動を見つけて、その子にだけ聞こえる声でささやいてください。
 人は自分のことを言われるときは、小さなささやき声でもよく伝わるものです。そんな地道な取り組みによって子どもとの信頼関係が深まっていきます。たとえば
給食当番の仕事をしているとき「ごくろうさま、今日から給食当番なんだね」
係の仕事をしているとき「いつもありがとう。助かるわ」
体育の授業でドッジボールをしているとき「おーカッコイイ、上手に投げることができるね」
(
男子には行動面がカッコイイと伝えます)
休み時間に友だちと遊んでいるとき「たくさん遊べてすばらしいね」
(
子どもはたくさん遊べること自体に価値があります)
 こんなことまで認めると、子どもが図に乗ってしまうのではないか、と思われるでしょうか? 
 しかし、特別にほめることが見当たらないと思うような子こそ、「当たり前」と思われることを認めていく必要があります。
 もしかしたら、ほめたり認められたりという経験が少なかったのかもしれません。教師から認められた経験は、この子にとってみれば間違いなくうれしい経験になっていきます。
 その経験の積み重ねで「この先生は好きだな」と感じることが増え、次第に教師との信頼関係も深まっていくことでしょう。
 そこまで信頼関係ができると、掃除や給食当番などの具体的な指導もぐっとしやすくなります。
 まずは、子どもの様子を目を皿のようにして観察してみてください。そして、当たり前と思われることも、すかさず言葉にしてほめてみましょう。
 子どもの存在を認めることになります。教師がそんなやり方を意識し始めた段階で、不思議と子どもとの関係はよくなります。
「この子は手のかかる子」「また、あの子だわ」と思っていると、ますます手のかかる状態になります。
「この子の何を認めようかな」と目を皿のようにして様子を見ているときは、案外、子どものよい変化が早く見つけられます。
 教師のとらえかたひとつで、いくらでも子どもは変わっていきます。
(
東ちひろ:幼稚園・小学校教師、教育委員会を経て、「東ちひろマザーズセラピー」主宰。「子育て心理学.協会」代表理事。上級教育カウンセラー、生涯学習開発財団認定コーチ)


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こだわりの強い子は、どのように支援すればよいのでしようか

 日常生活に支障が出るほどのこだわり行動をする子がいる。
こだわり行動のみに注目し「やっちゃダメだよ」と無理やり封じ込めようとしても、よけいに強いこだわりになったり、他の形で出るようになったりすることがある。
 
「禁止」することよりも、まずは、なぜそんな行動をしなくてはならないのか、その意味や意図を「理解」することから始めたい。こだわり行動の果している役割があるはずだから。
 こだわり行動を理解するには、どのような条件、状況、環境において出るのか、子どもを観察する必要がある。
 こだわりは、その子にとって「信念」「価値」「プライド」「人生を支えているもの」の場合もあるので、大事にしたい。
 こだわる理由や苦しさを理解し
「これをすると、すっきりして気持ちがいいんだね」
「安心するんだよね」
と声をかけて、その子の満足感をわかってあげるだけでも、悪化を防ぐことにつながる。
 効果的な支援をあげると
(1)
こだわり行動ができる時間と場所を保障する
 自閉症の小学六年生の子は「下品な言葉」にこだわりがあり、みんなが嫌がる表情をすればするほど、喜々として言い続けていた。
 そこで、通級での活動メニューの中に「下品な言葉タイム」を設定し
「今から思う存分、下品な言葉を言っていいよ」
と、聴くようにしていると
「何か、言う気持ちがなくなった」
と言うのをやめたのである。
 保障されたことで、執着がなくなったようだ。
(2)
見通しを持たせたり、練習したりする
 急な変更にどう対処してよいかわからず、パニックになる子もいる。
 よく変更があるのは水泳の授業であるが、晴れていても水温が低い場合は、プールに入れないこともある。
 そこで、未然に混乱を避けるために、水温計を示して「この水温より高かったらプール、低かったら体育館」と、ルールを明確にした。  
 伝えたいことは、写真や絵など、視覚的なものを提示するとわかりやすい。
(3)
こだわりを生かしたり、活用したりする
 ゲームやアニメが好きな子は、登場人物の名前を漢字で書く練習をしたり、主人公が登場する問題を作って解いたりした。
 一つのことにこだわれる、ということは、強みにもなり得て、その道の第一人者として活躍できる可能性も秘めている。
(4)
別の行動や物に替える(代替え)
 代替え行動は、本人にとって魅力的である必要がある。そうでなければ、また元の行動に戻ってしまう可能性が高い。
 その子の好きな他の行動に切り替えることも効果的である。
(5)
「○○でなければダメ」を「○○でも大丈夫」という言葉に変える
 こだわりの強い子は「○○でなければダメ」という思考パターンであることが多い。
 それを「○○できたらいいなぁ」「○○でも大丈夫」「まぁ、いいか」という言葉に変えていくだけでも、少し楽になれる。
 頑なに一つの方法にこだわっている子には、変化していくことは成長であるという価値観も教えてあげたい。
「自分でコントロールできるって大人だね」と声をかけていくのも、効果的である。
 大好きな人の言葉、信頼している人の言葉は、すっと入るものである。
 うまくいかなくても「失敗は成功のもとだよね」「失敗体験も役に立ったよね」と声をかけてあげたい。
 そうすることで、安心して新しいことにもチャレンジしていけるようになっていくのである。
 やはり、一番大切なのは「理解者」と、「安心して生活できる環境」なんだろうな、と私は感じている。
 これからも、子どもたちにとっての安心できる人、場所であり続けたい。
(
森 亜矢子:静岡県総合教育センター指導主事)

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暴れる子どもに対して、どのように対処すればよいのでしょうか

 以前受け持った小学校三年生に、すごく暴れる男の子がいた。不登校ぎみで、学校に来ても気に入らないことがあると、授業中に突然、物を投げたり、教室を飛び出して廊下でひっくり返って動かない。
 前の担任は教務主任といっしょに力ずくで席に着かせていました。私は「こんなことを続けていても、らちがあかない」と思っていました。
 その子の担任になって最初に暴れ出したときは、両足でその子を挟んで押さえたまま授業をした。事前に母親には「押さえることくらいはいいですね」とお許しをもらっていた。
 
「放せー、放せー」って、その子が叫ぶ。「悪いけど放せないんだ。ケガしたり、教室から出ていったりしたら困るから」と、私は怒りもしない。
 私はクールに対応して授業を続けた。学級の子どもたちはびっくりした。そんなことする教師を見たことがないから。
 授業が終わって「おい、休み時間になったけど、どうする?」「トイレに行きたい」「教室にちゃんと戻ってくるか?」と聞くと「絶対に戻ってくる」というから、外してやった。
 その日は、ちゃんと教室に戻ってきた。翌日からは「おはようございます」と言って、登校してくる。今はまだ遅刻は多いけど、すっかりフツーの子になりました。
 それまでの教師は、子どもに対して淡々とつきあうことができなかったんでしょうね。「なんとかしてやろう」「話せばわかる」で、やってきたんじゃないかな。
 だけど「話せばわかる子」なら、問題は起こさんと思うわけ。口でいくらいってもダメなら、現実的にやっていかなきゃいけないこともあるんです。
 そういう子どもたちをいままで受け持ってきて思うのは「毎日いっしょに暮らしていれば、お互いにわかってくる」ということですね。
 
「こいつは、こういう子だ」「この先生は、こういう先生だ」と慣れてくる。生活の慣れって、大きいですよ。生活している時間が解決してくれることもあるんです。
 しばらく我慢して子どもとバトルしていると、子どもは変わっていくことがある。
 例えば「この子は忘れものが多いけど、どうしたらいいか」と、叱ったり、悩んだりしているうちに、いつのまにか忘れものをしなくなったりね。
 根本的な解決にはならないし、即効性もないけど、しんどい時間を共有することで、物事が進むことはある。子どもって、確実に育っていくものだから。
 もちろん、万事、それで解決できるわけじゃないですよ。子どもの生育歴や気質の違いもあるからね。
 
「こうすれば必ずうまくいく」なんてノウハウはない。教師たちには「マニュアルに頼るな」といいたいですね。
 自己中心的な教師はけっこういますよ。自分がどう評価されているか、常に気にしているからだと思うんですよ。
 学級崩壊の原因でよくあるのは「自分のクラスは、ヤバい」と思っていても、まわりに言わないことなんだよね。
 優等生の教師ほど言わない。ベテランほど言わない。プライドがあるから、失敗や間違いを認めたがらない。それで傷口がどんどん大きくなって、大変になるんです。
 そして「子どもが悪いから、しょうがないでしょう」と、すぐに言いわけをする。でも、その後、どうやって解決するか、見通しをまったく持ってないんですよ。
 教師の仕事柄、いちばん必要なことですけど、臨機応変に対応できない教師も多いです。他人事じゃないんですよ。私自身も。
 全部の教師が素晴らしいなんてあり得ないでしょう。未熟さをお互いに助け合っていくことを考えるべきですよ。
 私は保護者にも自分にも、よくいい聞かせているんだけどね「自分が幸せにならいかぎり、子どもも幸せにならない」って。
 教師が自分の生活を楽しんでなきゃ、子どもがおもしろがる授業は、できるわけないでしょ。だから「先生はいつも能天気でいいわねえ」と言われたら、正解なんですよ。
(岡崎 勝:1952年生まれ 元名古屋市小学校教師、フリープログラムスクール理事。子どもの居場所「アーレの樹」を運営。学校マガジン『おそい・はやい・ひくい・たかい』編集人、中日新聞『子どもってワケわからん』連載中)

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発達障がいのある子の特徴と、その対応のポイントはなにか

 ひと口に発達障がいといっても、発達障がいとそうでない子との境目はありません。
 発達に遅れがあったり、かたよりがあったりして「うちの子、発達障がいかも」と悩む親が増えています。
 気になると、親としてわが子を何とか治してあげたい、周囲に適応するように修正してあげたいと思いがちです。 
 私は仕事上、たくさんの発達障がいの子どもや大人たちに会ってきました。
 私がいま考える、一番じょうずな育て方とは「発達障がいのまま生きていけばいい」と思って育てることです。
 そういう感覚を、親をはじめ、周囲がもったときに子どもは、いきいき、のびのびと力を発揮するようになるのです。
 そして、発達障がいのまま適応できる環境を、こちらが努力してつくってあげることです。その子がありのままで、学びやすく、働きやすい環境をじょうずにつくることが、もっとも重要なのです。
 発達障がいの子どもは、苦手なことを治そうとすればするほど、不幸な状態に陥ります。なぜかというと、発達障がいは治らないからです。
 治らないものを治そうとすると、子どもたちを苦しめることになる。そのことに早く気づかねばなりません。
 私がアメリカの大学で研究していたとき、自閉症は治療しても治るものではない。自閉症の人は能力が劣っているわけではなく、得意なことと苦手なことが一般の人に比べてはっきりしていること知り、衝撃を受けました。
 苦手なことを無理にでも克服させるような環境は、何のプラスにもならないのです。能力を発揮できないどころか、うまく適応できないストレスから二次的な情緒障がいを現すことが少なくないのです。
 発達障がいの子どもたちは、何か努力して克服し喜ぶといった回路がとても弱いのです。彼らが何か努力し、苦労して乗り越えたように見えたときは、喜びでなく、傷のほうが深く残ってしまうことが多いのです。
 たとえ善意と愛情によるものでも、彼らをがんばらせることが、本人を傷つけ、苦しめていることが多いということを理解してほしいのです。
 発達障がいのまま安心して適応できるようにしてあげれば、彼らは高い能力を発揮できるのです。
 発達障がいの人たちの特徴のひとつに、興味や関心の対象が狭くて深いというのがあります。そのため、一芸に秀でた能力を発揮する人が多く、専門家になっているケースも少なくありません。
 高い能力を発揮する理由のひとつは、興味・関心のあることに対しては、とことんのめり込んでいくことです。
 発達障がいの人は、相手の立場や気持ちがわからず、空気を読めないことが多い。そこで、さまざまな人間関係のトラブルが起きるのですが、本人は悪意はないのです。この子たちに「相手の気持ちをわかるように努力しろ」と言うのは残酷なことです。
 発達障がいの子どもには、できないことをできるようにがんばらせるのではなく、できることを最大限に伸ばしてあげる育て方が必要です。
 発達障がいの子は、落ち着きがなくて、驚くほどひらめきがある。人の気持ちはわかりにくくても、計算が抜群に早い、すばぬけた記憶力があるといったケースも多いのです。できることを伸ばすことで、彼らのもつ個性的な能力が開花します。
(
佐々木正美:1935年群馬県生まれ、児童精神科医。様々な大学や機関を経て、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与。子どもの発達について幼稚園等と勉強会を重ねている)

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