カテゴリー「さまざまな子どもの指導」の記事

嫌いな子どもを好きになるには、どうすればよいか

 人間には誰しも好き嫌いがある。最初から相性があわず嫌ってしまう相手がいるものである。しかし、私は教師であるからには好き嫌いは決して許されないと思っている。
 子どもたちのなかには、虫の好かない子が必ずといっていいほどいるものだ。だからといって、その子に対して嫌いだという態度を示したなら、きっとその子も教師を嫌いだと思うに違いない。
 教師が毛嫌いしているという感情を持つだけで、子どもから見抜かれ、子どもの鋭さにヒヤリとさせられた経験が教師であればあると思う。
 本当に子どもを好きにならなくては、心をひらかせ、指導することはできない。教師が教育のプロである以上、どんな子どもでも教育できる技術が教師に要求されている。どうすればよいか。
 教育をするに当たっては、一面的に考えるのではなく、ものごとの表裏を見ようとする態度が必要である。ナスマイとプラスが背中合わせになっているからである。
 教師が心の底から子どもを愛し、この子どものためと真剣に考え指導すると、子どもは鋭く教師の心を読み取り親近感をもって反応してくる。こんな関係が理想である。
 教師が子どもを叱って、子どもが反発しているうちは、まだ教師の方で子どもを愛しきっておらず、教師と子どもの間で意思の疎通が完全でない、と思わなくてはならないだろう。
 どうしても好きになれない子どもがいたとき、私はこう考えるようにしている。この子にも親がある。その親はこの子を誰よりも愛しているに違いない。親が愛するその良さを、この子はどこかにもっているのだ。私は未熟だから、その良さを、子どもの親のように見抜けないのだ。こう自らを戒め、反省することにしている。
 そして、自分がその子の親になったつもりで、その良さを探してみると、必ずどこかに良いところが見えるはずなのである。良さが分かってくれば、しめたものである。次には、それをうんと誇張してほめてみるのである。
 最初は、子どもに「ふん、何を言ってやがるんだい」と無視するような態度をとられる。教師が「何でこんなに無視されるような思いをしなければならないんだ」と、頭にきたりするものだが、それはそれ「私は教師なんだ、あいつより一枚上手のはずだぞ」と、思い直して、二度、三度と繰り返してみると、次第にあまり強い反発が来なくなり、だんだんと打ち解けてくる。そして、ほめられるのを喜ぶ態度を示す頃には、教師の方も、その子どもを心底、好きになっているものである。
 好きになるとは、相手に対して関心を持つことかも知れない。そうならば、嫌いな子に関心を持ち続ければ、好きになれる、とも言えそうである。一度試してみるがいい。その証拠に、ある教師と仲良くなり、見事に立ち直った生徒が、こう言っている。「嫌だと思っていた教師からほめられると、嬉しい顔なんかできないよ。ふん、シラジラしいという態度になってしまう。でも、腹の中は違うよ。この教師、俺のことそんな目で見ていてくれたのか、と見直す気になっているんだ。何度もそんなことがあると、嫌な教師と思わなくなって、むしろ自分を理解してくれる教師、好きな教師というような気持ちになっているんだ」と。やはり、教師のほうが上手だったのである。最初の頃に、頭にきて投げ出していたら、教師は生徒と同程度か、それ以下であろう。
 番長と言われ、暴力事件をたびたび起こし、私の指導に託された子がいた。ツッパリで世渡りすることがいかに愚かしいことであるかを彼に知らせなければならない、と思った。
 そのとき私は「教育とは何だろう」と考えた。このままでは、彼の人生がダメになる。それを救うのが教育なのだ。今の私は、彼を幸福にさせるか、それとも惨めな人生へ追い込むかの鍵を握っている。自分の身より彼の人生を考えるのが先決だ、と思った。そんな思考が瞬間的に私の頭のなかを駆けめぐった。それは教育の原点に立った思考である。
 私はいつも、処置に困ったり、方策を模索するとときには、教育の原点に立ち、誤りのない道を探し求めるようにしている。
 このようにして私は嫌いな生徒も好きになるよう努力を続けながら三十数年を経た。その間、私の前を通り過ぎていった生徒は、数千人を越えるであろう。だが、今、回想してみると、嫌いな子は思い出せない。一人もいなかったのではないか、と思えるくらいだ。
 先ごろ、三十五年前に教えた生徒たちの同窓会に招待された。会って話し合っているうちに、その一人ひとりが鮮明によみがえり、名前まで指摘することができた。教え子たちは「先生、よく覚えていますね」と感心していた。どの子も指導のために、一人ひとり方法を考え、好きになろうと努力してきた子どもであれば、忘れようとしても、忘れられるはずがない。
 いつまでも記憶に残るだけの情熱をかたむけて、一人ひとりを好きになることである。私は「教育は子どもを好きになることから始まる」と言っても過言ではないと確信している。愛情は原動力である。これがあれば、どんな子どもも教育できるのである。
(若林繁太 :19252007年、私立篠ノ井旭高校(現・長野俊英高)教諭・校長、読売教育賞受賞、「落ちこぼれを出さない教育」をめざし非行歴のある生徒や中退者を積極的に受け入れる。著書『教育は死なず―どこまでも子どもを信じて (1978)』がベストセラーとなり、映画化もされた)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ボスがいる学級は、どのようにして学級づくりをすればよいか

 担任は、学級集団の長であることを自覚し、ガキ大将のような統率力を持っていないといけない。
 ボスがいる学級で学級づくりをするときに大事なことはボスとの闘いであるということだ。ボスとの闘いは、担任が負けてはいけない。小さな闘いを仕組み、必ず勝たなければならない。お説教は最悪の闘い方で、すればするほど反発される。
 闘いには、担任の側に正義と道理と子どもたちの味方がなくてはならない。小さいけれど、大切なことを取りあげ、闘いに勝つことだ。ここぞという場面で一気に攻め込む。
 闘いに必ず勝つためには、ボスと担任が一対一で闘ってはいけない。周りの子どもを味方につけないといけない。説教ばかりをしていると、味方になってくれる子はいない。まじめにやっている子、きちんとやっている子を日頃から認めて、ほめていれば、味方になってくれる。
 相手を少数派にして、こちらを多数派にする。これが闘いに勝つ原則だ。ボス側が三人いたら、その中のそそっかしい子がへまをやったら、それを見逃さずに闘う。へまをした1点だけを取りあげて闘うのだ。あれもこれも注意すると担任側にぼろが出る。ボスを孤立化させるのだ。ボスはクラスで孤立することを恐れる。
 どれだけ小さなことでも、担任が勝てば子どもは変わる。周りの子どもはもっと変わる。例えば「赤鉛筆を持ってくること」という、小さな闘いを仕組む。ボスは持ってこなし、何回も忘れるだろう。赤鉛筆を何回も忘れる子を叱るのは教師として正しいし、道理もある。子どもたちも親も支持してくれる。この小さな闘いで、ほとんど勝負がつく。
 見逃してしまうとどうなるか。指示が通らなくなり、一気にクラスは荒れてしまう。次から次へと事件が起こり、気がついたら、取り戻しがきかなくなっている。
 闘いが終わったら、担任は子どもたちと、からっと接する。子どもを憎んではいけない。これはとても大切なことだ。からっとする教師だったら、子どもたちは寄ってくる。
 闘いに勝っても授業が楽しくなければ、またクラスは荒れる。多くの教師がさまざまな工夫をした素晴らしい授業がたくさんある。それを学んで授業をすることだ。楽しい授業は子どもの心を解きほぐしていく。
(
石田博一:大阪府和泉市公立小学校教師。TOSS関西中央事務局)


| | コメント (0) | トラックバック (0)

「キレやすい」子どもを「キレにくい」子にするにはどのようにすればよいか

 キレやすい子どもには、コミュニケーション能力が未発達であったり、気持ちをうまく表現できないために問題行動を起す子どもや、ADHDやLDなど特定の傾向をもった子どももいます。
 そこで、感情の発達過程で、自分の怒りに対する理解を深め、適切な表現の方法を教えていくことによって、暴力やいじめ等を減少させようという、「キレにくい子に成長させる」予防教育の動きがでてきたのです。
 米国では、校内暴力、いじめが犯罪へと発展し、危機的な状況にあった学校を、学ぶ場としての学校へと再建するために「ゼロトレランス」(暴力廃絶)の方針が出されました。
 米国はすでに暴力予防の教育が年間のカリキュラムに組み込まれています。小学校から高校に、さまざまな「アンガーマネージメント(怒りに正しく対処し、健全な人間関係をつくり上げる知識と技術)・プログラム」が展開されています。
 日本においても、心の教育が重視され、道徳や総合学習の中で、いじめや暴力を予防する教育が展開され始めています。 
 キレにくい子どもを育てるためには、怒りのメカニズムを子どもに伝え、「暴力・暴言・いじめ」などの誤った怒りの表現を予防することが大切です。同時に、健全な「怒りの表現方法」も教えていく必要があります。
 予防(啓発)教育の内容は、感情教育、客観的思考、問題解決能力を育成することです。年間の授業計画に組み込まれて、国語・道徳・総合学習・HR等を用いて展開することができます。展開方法は、自己理解から始めて、他者理解、相互理解へと進めます。グループで体験的に行うと特に効果的です。
 グループで体験的に行うと効果があがりやすいのは、グループの力が働くからです。自分の苦手なところを他の生徒が補ってくれたり、活動に参加せずに見ているだけでも多くの体験を学ぶことができます。自己理解、他者理解が促進されやすくなり、共感性も生じやすくなります。
 また、具体的な体験でイメージや理解がしやすくなり、相互理解が促進され、活動中に「行動のお手本」が見られるため、活動の途中で自分の行動変容が促されることもあります。
 キレにくい子どもを育てる授業は、段階をふんで行う必要があります。たとえば、「共感すること」を学習する活動であれば、まず、子どもが「自分の感情が何か」を理解できて、「相手の感情が何か」を感じられる力を備えていなくてはなりません。
キレにくい子どもを育てる授業の学習計画の立案は、
(1)
自分のクラスの問題を明確化する
(2)
そのために必要な活動の目的を明確にして、活動を選択し、活動を導入します
(3)
活動後にフィードバックを行い「今日の活動を日常生活でどのように応用できるか」を考える活動を行う
 どのワークを使って始めたらよいか、それぞれの目標をクラスの状況に照らし合わせてプランを立ててみてください。また、一つを行った後でまだ難しいようであれば、一つ前の活動に戻ってみてください。
 キレにくい子どもを育てるグループ活動の目的は、子どもが自分でコントロールすることができるようにすることです。ですから、活動の主役はあくまで子どもです。指導者は安全に活動ができるための環境を保障すること、および活動が順調に進むための援助をします。
 したがって、導入部分は楽しく活動を進めやすい雰囲気づくりを行いますが、子どもたちが自発的に活動を始めたら、基本的には子どもにまかせます。
 このとき、グループを支配しようとしている子どもがいれば、仲介して適切なリーダーシップを示し、乗り遅れている子どもがいれば、いっしょに活動に参加して励ましてください。
 「自分が何を感じているのか」を認識するためには、自分の感情の質と量を表す「感情を表すことば」や、その概念を理解することから始めます。
 朝の会・終わりの会でも、道徳や総合の時間を活用することもできます。また、状況や気持ちを理解する力を育成するために、国語や英語の時間を当てることもできます。
 実施するときは、子どもの発達状況によって、以下のように手法を変えると、理解されやすくなります。
(1)
幼児から小学校低学年
 目の前で具体的に体験(見る)する。ビデオや場面の写真、絵などで視覚的・具体的に示す。
(2)
小学校中学年から高学年
 最近の自分の体験を思い出す
(3)
中学生
 ことばや場面に対するイメージや概念を用いる
(4)
高校生
 論理的に定義づけたり意味づけたりする
自分の感情理解のためのワークの例としては
(1)
お顔の体操
 朝の会・終わりの会で、朝の体操気分で、快・不快の一つひとつの表情を皆でやってみます。教師が「はい、これと同じ表情をしてみましょう。どんな気持ちですか?」と表情と感情のネーミングを促します。
(2)
3分間スピーチ
 話し手が前にでて、ある感情を表す表情をしてみせる。それがどんな感情を表しているかを当ててもらう。そして、その感情になったときの、エピソードを話してもらう。
(本田恵子:早稲田大学教授。元中学高等学校教諭、コロンビア大学で博士号取得後、ニューヨーク市でガイダンス・クライシスカウンセラーとして勤務。包括的スクールカウンセリング研究会代表。危機介入・ADHD、LD児への対応、アンガーマネージメントを学校と連携して実践。臨床心理士・学校心理士・特別教育支援士SV

| | コメント (0) | トラックバック (0)

発達障害の子どもを、どのように理解し、対応すればよいか

 ADHD(注意欠陥多動性障害)や学習障害、高機能自閉症やアスペルガー症候群など、発達障害が軽度であれば、多少集中力がないとか、忘れ物が多いという程度ですが、なかには授業を妨害したり、乱暴したりする子もいます。
 障害については、その子の保護者の了解がないと公にはできない。公にしようとしない保護者はけっして少なくはありません。障害をもつ親は非常に大きな葛藤を抱えています。障害を受け入れられない、認めたくない親がたくさんいるのです。私は講演で「その子をありのままに受け入れてあげてください」と言うと、目頭を押さえる方がたくさんいらっしゃる。そのつらさを周囲の人たちは理解してあげられるといいですね。
 もっとも心配すべきは、障害のある子の気持ちです。学校で十分理解されていない場合、目に見えないところで深く傷ついてしまうのです。無理解な環境に長くいると、子どもは「理解されていない、適応できない」という思いが強くなり、思春期にさまざまな問題を抱え込むことになります。
 そうならないためにも、保護者は適切なアドバイザーを見つけられるといいですね。保護者が児童相談所に出向くと、適切な施設や病院を紹介してもらえるでしょう。専門家と話し合ったうえで、その子に最適な環境をつくってあげたいものです。
 発達障害の専門的な知識と指導力がないと「ほかの子と同じ行動ができるように」と、押さえつけるような指導やしつけをしてしまうことも考えられます。このような子は能力に偏りがあるのです。この偏りをなくそうとしてはいけません。子どもの心が壊れてしまいます。そうではなく、偏りのあるまま、いま持っている能力をいきいきと伸ばせる環境を用意してあげることが大事なのです。
 そのためには、教師にも専門性が必要になってきます。たとえば「視覚に訴える、具体的に示す、規則や法則をはっきりさせる、一対一で対応する」ことに力を入れると、教えた内容が意味のあるものになり定着します。逆に「耳で聴き取って何かをさせる、抽象的な指示をする、個別的な対応をしない」というようなことは、非常にわかりにくいため、意味がつかみにくいので、子どもを傷つけて自信を失わせてしまいます。
 泣く、どなる、乱暴するといった感情のコントロールする力が弱いADHDの傾向のある子どもは、混乱してから落ち着くまで時間がかかります。時間をかけて待ってあげましょう。大事なことは、けっして怒らないこと。怒ったり、しかったりして反省させるのは、かえって逆効果なのです。子どもが自信をなくせば、ますます衝動をコントロールする力は弱くなります。否定的な言葉は極力避けて肯定的に。「こうしてはいけない」と言わず、「こうするのがいいんですよ」と、短い言葉でこちらが期待していること、してほしいことを具体的に言うのです。
 いっしょに遊ぶ時間を増やし、話しをたくさん聞いてあげてください。楽しくあそぶためにはルールを守る必要があります。みんなが決めたルールは絶対です。遊びには役割の分担もあります。あそびの中で達成感と感動を分かち合うことができます。あそびで子どもたちは道徳性と倫理観を学びます。
 学級に発達障害の子がいる場合、子どもたちは「何か違う子だな」と感じているものです。「△△ちゃんは、絵がじょうず」「○○ちゃんは、突然叫んだりする子」といったように、子どもたち一人ひとりには個性があるのだと、子どもなりにちゃんと理解して健全に受けとめられる子どもたちであってほしい。
(
佐々木正美:1935年群馬県生まれ、児童精神科医。様々な大学や機関を経て、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与。子どもの発達について幼稚園等と勉強会を重ねている)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

子どもに知的障害や精神障害が疑われるときどうすればよいか

 まず、子どもに知的障害が疑われるときどうすればよいか
 学級に軽度の知的障害、アスペルガー障害や高機能自閉症、LDが疑われる子どもがいることが少なくありません。「非常に多動である」「落ち着きがない」「注意集中に問題がある」「衝動的である」などの行動上の問題や「学力や読み書きに問題がある」「努力しても定着しない」「図工や体育ができない」など特定の領域で能力に偏りが見られる特徴があります。
 知的障害が疑われた場合、子どもに合った指導や援助を考えるために、保護者に伝え、専門機関と繋げる必要が出てきます。このとき、一番避けたいことは「○○障害」と「この子はこういう子なんだ」とレッテルをはって、それで終わりにしてしまうことです。
 「お子さんのために、個性にあった指導・援助を学校としてやっていきたいと考えていますので、一緒に考えていただけませんか」と、その子の特徴を診断・査定することについて保護者に話をもち出すことが大切です。専門相談機関を紹介する場合には、専門家と学校との連携を取りやすい相談機関の人を紹介すると、保護者は安心するでしょう。
 「子どもがどういう特徴をもっていて、能力を最大限に伸ばすには、また苦手な能力をカバーするには、どう教えたら良いのか」という視点に立って指導・援助し、保護者と一緒に協力、援助してく姿勢を示すのが重要なのです。
 つぎに、子どもに精神障害や神経症と疑われたときはどうすればよいか。
 子どもに統合失調症、うつ病等の精神障害がみられることがあります。子どものうつ病は、ただ「やる気がない」としか見えないこともあります。「どうせ僕なんか」「さびしい」という言葉が増えます。成績が下がる、外出したがらなくなる、イライラや怒りっぽくなるなど、攻撃的になる子もいます。
 子どもによく見られる神経症としては、わけもなく不安感が感じられる不安神経症、過食や拒食といった摂食障害、抑うつ神経症などがあります。
 精神障害や神経症が疑われる場合は、保護者には「問題」としてではなく「心配」として伝えます。受診を勧める必要もあるでしょうが、最初から精神科というと保護者に抵抗があります。病院の紹介が難しい場合には、教育相談室など心理相談の場を紹介し、そこから医療機関に橋渡しをしてもらう方法もあるでしょう。
 こうした子どものなかには、刺激の多い学校では問題行動を示しても、家庭ではそれほど問題行動を起こさない子もいます。保護者に理解してもらうのが難しいことも少なくありません。ですが、思春期ごろから起きやすい統合失調症()は治療が遅れると、治りにくく悪化してしまいます。精神障害の薬を投薬しなければ治らない症状もあり、自殺未遂が起きることもあり、普通と異なる奇妙な様子に気づいたときは緊急に専門家対応が必要になります。
 また、専門機関にかかった後でも、教師の接し方は重要になります。病気は苦しいものです。病気のため意欲が低下したり、薬の服用で行動に偏りや眠くなったりします。「良くやっているね」などの温かい言葉がけが、子どもには嬉しいし、病気の回復を助けることにもなります。教師が具体的にどのように対応したら良いかは、保護者を通して専門医師等からの助言を受けるとよいでしょう。保護者と綿密に連絡を取り合い、家庭・学校・専門機関の三者で、その子どもの援助をしていくのです。
(
)統合失調症:突然の不登校や引きこもりの原因にもなります。幻想や妄想(陽性)、逆に感情が平板になる・意欲や能動性が低下する(陰性)、といったすぐには病気とわかりにくい症状もあります。 
(
青山洋子:東京都港区立教育センター教育相談員、筑波大学学校教育部技官、駿河台大学講師等を経て中央大学講師。専門は臨床心理学・学校心理学。子どもの攻撃性、社会性、セルフ・コントロール、カウンセリング技法の教授法などを研究)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

もしかして、うちの子が「発達障害?」と気になったときどうすればよいか

 ADHD(注意欠陥多動性障害)、アスペルガー症候群、LD(学習障害)という言葉を耳にする機会が増えました。調査(1)によると小中学生のうち6.5%に発達障害の可能性があるのだそうです。40人学級で「授業中に落ち着きのない行動をとることが多い」など、気になる子が23人いるということになります。ほかの子のようにできない、「もしかして」と思ったとき、親にできることは何か。
 「ほかの子ができるのに、なんであんたはできないの」と厳しく叱ることは控えたほうがいい。このような子どもにとって「みんなと同じように」というのは、なかなかキツイことなのです。視点を切り替えてください。いちばん困っているのは本人です。この子がどんなことで「困っているか」に目をむけてほしいと思います。
 「障害だから」という理由だけで授業中に立ち歩くわけではないのです。たくさんのこのような子どもたちを見てきた家近早苗は、子ども自身が困ったと感じているは「勉強がわからない」「先生の指示がわからない」ことだと言います。授業中に立ち歩くのも「内容がわからなくてつまらなくなった」ということが多いのです。興味しんしんのときに子どもは立ち歩いたりしません。
 家庭では、子どもの宿題の様子などを見てあげるといいそうです。「どうしてこうなるの?」と聞いてみて、何にひっかかっているかを見つけてあげるとよい。「30分を過ぎると疲れて集中力がなくなるようです」など、担任に伝えるといいと思います。
 親は叱りすぎやアドバイスのしすぎに注意が必要です。タイムリーに手を差し伸べることが最も重要なことです。「大目に見守る」ということも試みてください。例えば、テーブルに牛乳をこぼしたりしたとき、親は怒らず「大目に見る」と、ガミガミ言う機会がぐんと減るのです。こういう子どもたちは、ふだんから怒られていて「自分はダメだ」と思いがちです。大目に見るという行動を加えることで、子どもの自尊心の低下をふせぐことができます。
 そして、子どもを見るとき「良い」「悪い」という見方をやめ「おもしろいところを探すのがいいと思います。こういう子たちは、普通の人が思いつかない発想をします。それを「いいか悪いか」で判断する前に、おもしろがってあげてください。
 親が気になるのは「ちょっと気になる行動」をとるわが子が周囲から浮いてしまい、いじめられはしないか、ということです。わが子の特徴を知り理解しておくことが大事です。「相手の気持ちを考えて行動しなさい」と言っても、かんたんにできることではありません。「こういう特徴があるから、こんな部分をどうしてカバーしていこうか」と話してみるのもいいと思います。
 担任が困って、親に「あまりに落ち着きがないので、発達障害の傾向があるかもしれませんね」と言われたら、親は「どうしてADHDと考えたのですか」と担任に聞いてください。逆に親からも「家ではこんな感じです」と、担任の知りえないことを伝えましょう。より多くの情報を共有することで、子どもの「困ったこと」を少しでも少なくすることができるからです。
 学校と家庭でサポートしても「友だちとのトラブルが多い、授業中に騒いでほかの子に迷惑をかける」などの行動が減らない場合には、医療機関を受診するのもひとつの方法です。専門家も交えながら、困った状況を少なくできるのかを考えるためです。ただ、学校は学校のやり方があるので、あくまで病院の報告をし、共有する姿勢でいきましょう。
 また、現在の学校に籍を置きながら「通級指導教室」に定期的に通うという方法もあります。言語・情緒障害の軽い症状をもつ子が、特別支援教室をもつ学校などに定期的に通級するという方法です。課題のあるテーマについては通級学級で指導を受けることができるのです。
(
1)2012年文部科学省の公立普通学級の小中学生の全国調査(3県をのぞく)
(
石隈利紀:1950年山口県生まれ、筑波大学学生相談室カウンセラー(講師・助教授)、筑波大学教授を経て筑波大学副学長。専門は学校心理学)
(
家近早苗:聖徳大学 准教授を経て大阪教育大学教授) 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

注意されても屁理屈をこね、詭弁をろうする子どもをどう指導すればよいか

 Aくんは幼稚園の頃から落ち着きがなく、小学校でも授業中にじっと座っていない。高学年になり授業中に突然立ち上がり、注意されても素直に謝らない。「おもしろくない」と屁理屈をこねる。物を壊しても目撃されていないと非を認めない、見つかっても「置いておくのが悪い」と詭弁をろうする。
 中学校でもそのような言動はおさまることはない。班行動でも単独行動をする。トラブルとなり強い仲間に足を蹴られ、興奮はおさまらず「復讐してやる」とうそぶく。母親に連絡しても「いくら注意しても聞いてくれない」「どうすることもできません」と無力である。
 
 落ちつきのないAくんは、正しい対応をされないまま、学校でも家庭でも注意ばかりされてきた。ほめられることがなかったために、良い子になろうとする意志が歪められた。わざと目立つ否定的な行為をして関心を引こうとする。
 好ましくない行為を取ることによって自己主張しようとする。このような行動を指導する前に、否定的な自己主張に至った心の過程を理解しなければならない。
 注意欠陥/多動性障害からはじまり、反抗挑戦的障害、行為障害へと発展していく筋道は、子どもの「破壊的行動のマーチ」とも呼ばれる。これは子どもの自尊心が大切にされないばかりか、それが壊されていく過程でもある。
 マイナスの行動を指導する前に、まず日常生活のなかで普通にできていることを取りあげてプラスに評価することが大切である。このような子どもたちにとって普通に振る舞えることが、いかに大変なことかを理解しなければならない。
(人見一彦:1940年生まれ、元近畿大学医学部教授。専門は精神医学、精神療法、メンタルヘルス。特に学校現場における子どもの不適応問題。小学校から高校までの学校精神保健にコンサルタント・カウンセラーとして関わってきた)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

私はこのようにしてADHDの子どもを変えた

 ADHDの子どもは「教室を飛び出す・少しのことでキレる・人を攻撃する」といったことが起きやすい。私はAさんの担任となった。毎日ように事件がおきた。私は、Aさんが学級のみんなに認められ、頑張ろうとする場面をたくさん仕組んだ。
(1)
座席を一番前にする
 きちんと説明することが大事だ。Aさんには「勉強しやすく、賢くなる」他の子どもたちには、「Aさんも賢くなるし、みんなも勉強しやすくなる」と。
(2)
飽きないように変化を持たせて授業を組む
 授業を3分から5分のパーツで進めていく。全部させるのではなく、どれか一つでも参加できればほめることが大事だ。
(3)
評定する
 ノートを持ってこさせて大きな声でほめると、Aさんは三重丸を取ることに興味を持ち授業に熱中した。
(4)
リズムとテンポのいい授業をする
 フラッシュカード・暗唱などで、できるだけ短く提示し、授業に引き込む。指示・発問・説明は速く言うところ、ゆっくり言うところを意識していく。
(5)
できたか確認する
 一時に一事で話す。「できた人は手をあげなさい」「隣と確認し、二人ともできているときは手をあげなさい」とできたか確認する。使える指示を何通りも持っておく。
(6)
学習の見通しを持たせる
 算数の教科書で、どの問題が解けたか、解けなかったか、チェックさせた。漢字練習で全部丸になったページ番号に斜線を入れさせた。学習の見通しを持つことで投げやりになってしまうのを食いとめ、「ここまでできたから、後これだけ頑張ろうよ」と励ますことができた。
(7)
他の子も大事にする
 「姿勢がいい」「手の挙げ方がいい」と、他の子もどんどんほめ、みんなのことも見ているよ。みんなよく頑張っているね。そのようなメッセージを絶えず送り続けることが大事である。そうすると、まわりの子も育ち、ADHDの子も育てることができる。
(8)
あせらない
 どうしても、今の大変さばかりを見てしまう。落ち着いてくるであろうという希望を失わないことが大事だ。あとでやらせようというゆとりの部分も必要である。放課後にAさんと授業の残りや宿題をいっしょにやった。その時はよく家まで送った。
(9)
気持ちを受けとめ、叱る基準をはっきり決めておく
 「Aさんはいやだったんだ」とトラブルが起きた時、まず気持ちを受けとめた。許せない行動は止めさせ、減らしたい行動は無視した。何と言えば心にすっと入るか考えて言うようにした。
(10)
私自身を変える
 自分に足りないところがあるから、うまくいかないのだ。いい教師になるためにこの苦境が与えられたのだと思うようになった。私はノートを作り、教育本を読み心にとまった文章をノートに書き写した。こうして自分に足りないものを探っていった。
 すると、二学期から、Aさんをもっと優しくみることができるようになった。Aさんを励まし、ほめて行く中でだんだんAさんも、学習によく参加できるようになり、友だちとも外で遊べるようになっていった。
(
勇 和代:1965年大阪府生まれ、大阪府泉佐野市立小学校教師)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「キレやすい子」はどのように指導すればよいか

 キレやすい子は、直感的、自己中心的です。そして、状況判断が主観的で感情的な対応が限られています。感情の受け皿が少ないのは、発達過程で十分な快刺激を受けず弁別能力が発達せず、感情が未分化なままだからです。
 自分の感情を的確に理解するには、客観的な思考能力を発達させる必要があります。状況を的確に理解するには、「全体を見通す力」と、「状況を予測する力」が必要になります。特に全体を見通すさいには、相手の視点にたって状況を理解することも必要です。
 直感的な思考の子どもは、自分の具体的な体験を通してのみ理解しているため、体験していないことは理解できません。ですから、子どもが体験している事実を把握し、正しい現実理解を与える必要があります。
 他者の観点や立場を考えない考え方が自己中心的思考です。「キレにくい子」にするためには、多方面からのものの見方、考え方、感じ方を発達させる必要があるのです。
 そのためには、どんな受け取り方があるのか、例をあげてシュレーションしてみることから始めるとよいでしょう。
 また、他者の立場に立って考えるようにするには、役割交換をして相手の立場に立った「具体的な体験」(ロールプレイングなど)を行うことで理解を促すと効果的です。
(本田恵子:中学高等学校教師、ニューヨーク市でガイダンスカウンセラー、クライシスカウンセラーを経て早稲田大学教授。専門は学校心理学、軽度発達障害、矯正教育(アンガーマネジメント)。包括的スクールカウンセリング研究会代表)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

自尊感情や他尊感情が低い子どもはどのように支援すればよいか

 自尊感情とは、欠点も含めたありのままの自分を大切にし、尊重する気持ちのことです。自尊感情が低い子どもは、不登校や非行に結びつくことがあります。
 しかし、自尊感情の高い子どもは「自分より劣っている子は軽蔑してもいい」という考え方に結びつく可能性もあります。いくつもの研究で、自尊感情の高い子のほうが攻撃性が高いといわれています。
 最近では、他尊感情という言葉に注目が集まっています。他者への思いやりの気持ちです。他尊感情が低い子どもは、自分勝手で人の気持ちを考えないといえます。
 支援の心構えや方法は、相手の身になってみたらどうなるだろうと考える経験をしつつ、成功体験や失敗体験を適切に自己評価できるような活動があります。滝が提唱する日本のピア・サポート・プログラム(対人関係の未熟・未発達を解消しようとする実践)です。
 これは「お世話をする」活動を通して、「自分が役にたっている」という感覚を身につけるものです。小学校では、上の学年の子どもが下の学年の子どものお世話をする、という活動はすでになされている場合もあるでしょう。
 「お世話をする」ことは、相手が望むことは何なのかを想像しなくてはなりません。また、自分がよいと思ってやったことで相手が迷惑に思ったりというように「自分と相手は違うんだ」ということに気づかされる場面が出てきます。こうして、共感する体験が蓄積され、他尊感情が育まれていくというわけです。
 日本のピア・サポート・プログラムでは、活動の振り返りを大切にしています。振り返りの時間の中で、自分を冷静に見つめていくことができ、自己評価が蓄積していきます。その自己評価が第三者から見て適正かどうかをチェックし、できていることを十分に認めてあげることも、支援として大切なことだと思います。
 この活動は、準備としてのスキルトレーニングなど、実施するうえで知っておくべきことがあります。また、学校の状況に応じて取り組みやすい方法を見つけ、実りあるものにすることができます。
(
五十嵐哲也:1976年生まれ、国立精神・神経センター精神保健研究所研究員、北海道情報大学講師を経て、愛知教育大学准教授。専門は臨床心理学、教育心理学)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

いじめの指導 | さまざまな子どもの指導 | ものの見方・考え方 | カウンセリング | 不登校 | 人間の生きかた | 保護者との協力関係をつくる | 保護者にどう対応するか | 保護者の実態 | 優れた先生に学ぶ | 優れた授業とは | 優れた教科授業例 | 先生の実態 | 危機管理 | 叱る・ほめる・しつける | 各国の教育 | 各教科の授業 | 問題行動の指導 | 国語科の授業 | 地域 | 子どもから学ぶ | 子どもたちに対する思い | 子どもたちの関係づくり | 子どもと向き合う | 子どもの失敗 | 子どもの実態 | 子どもの成長をはかる | 子どもの指導の方法 | 子どもの見かた | 子どもへの話し方 | 子育て・家庭教育 | 学び合う学び | 学校の実態 | 学校経営と組織 | 学級づくり | 学級の組織と活動 | 学級の荒れ | 学級崩壊 | 学級通信 | 学習指導・学力 | 学習指導案 | 実践のための資料 | 家庭 | 授業づくり | 授業のさまざまな方法 | 授業の展開・演出 | 授業の技術 | 授業中の生活指導 | 教師との関係 | 教師と子どもの関係づくり | 教師に必要とされる能力 | 教師の人間としての生きかた・考えかた | 教師の仕事 | 教師の心の安定 | 教師の成長・研修 | 教師の話しかた | 教師の身体表現力 | 教材・指導案 | 教材研究 | 教育の技術 | 教育の方法 | 教育の理念や思い | 教育史(教育の歴史と変化) | 教育改革 | 教育法規 | 教育行政(国・地方の教育委員会) | 新学級づくり | 理科の授業 | 社会環境(社会・マスコミ・地域) | 社会科の授業 | 算数・数学科の授業 | 経営とは | 英語科の授業 | 評価 | 話の聞きかた