カテゴリー「保護者の実態」の記事

責任を他人のせいにする母親が増えてきています、よい父親になるにはどうすればよいか

 自分の子が具合の悪いことをしたとき、その責任を他人のせいにするのを他罰主義と言います。このところ他罰主義的傾向の母親が相当増えてきています。
 他罰主義的な傾向の強い母親は、たいていのことは自己中心的に物事を処理します。授業参観で授業中だというのに、顔見知りの親同士で、まったく授業とは無関係な話を平気で交わしています。
 他罰主義的な言動を親が示していると、子どもは自分の行いのよしあしをきめる指標を持たなくなっていきます。
 そのため、子どもは自己中心的な考えの子になってきています。自分が悪いのではなく、教師とか、友だちが悪いために、自分がその犠牲になっているのだというとらえ方は、子どもの心を貧しく、手前勝手な人柄にしてしまいます。
 他罰主義は、子ども心に「ぼくの言うとおりにしなかったから、殴ったり蹴とばしたのだ。悪いのはあいつだ」と、すべて自己中心的な見方や感じ方を助長することに手を貸すことになります。
 友だちをいじめたりしても、自分の不都合さは棚上げにして、すべて相手のせいにしたりします。成績が悪いのも、教師の教え方が拙いためだとし、自分が勉強を怠っていることに原因があると思わないようになります。
 そして、自分から努力していくことこそ、もっとも大切なことだということを知らないままで過ごすことになります。これでは、子どもの成長がひどく歪みます。
 よい父親になるにはどうすればよいのでしょうか。子どもにとって快いお父さんになるのは、かんたんです。
 ひとつは、わが子が大好きということです。もうひとつは、わが子のすてきな面や、すぐれたところを実感として知っていることです。
 そうすれば、わが子を尊敬するようになります。いつのまにか、ものの言い方も変わってきます。おのずとていねいな話し方をするようになります。
 そして、お父さんの得意技を伝授したり、幼少のころの遊びや風景や行事などを語って聞かせるようになります。
 悪い成績でも「いまは、あまり勉強していないからだよ。だから30点しか取れないのだよ。でも、これから百点まで伸びていく楽しみがあるじゃないか。こんどは50点ぐらいの点を取っておいでよ」と、プラス思考でわが子を認めていくようになります。子どもから見て、安心できることが、良きお父さんなのです。
 子どものよいところを知っているというお父さんは、愛情面だけでなく、理性面においても成熟した父親だといえます。
 大人の世界でもそうですが、相手のすぐれた点や、長所が分かるようになってくると、相手の人も自分を信頼してくれるようになってきます。そして、仕事もはかどり、職場の雰囲気ものびのびとしてきます。
 また、母親に対しても、
 
「しつけは、愛情と根気がいるよ。どなりつけたりしないことだ。微笑と優しさを通じてしつけるべきだ。うちで欠けているのは慈しみじゃないかな」と、少し機嫌のよい時を見計らかって、おだやかに妻に言うべきでしょう。
(
岸本裕史元:19302006年、神戸市生まれ、小学校教師。百ます計算の生みの親。1985年 「学力の基礎を鍛え落ちこぼれをなくす研究会(落ち研)(現「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会」)結成し、代表委員)

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教師から見た「困った親」のタイプと、その共通していることとはなにか

 いま、親たちがあきらかに変化してきています。端的にいうと、質的に劣化してきつつあるのです。
 私が多くの学校現場の教師の悩みをお聞きして、うつ状態に陥る教師の8割がそのきっかけとしてあげるのが、保護者からのクレームや教師攻撃です。しかも、そのクレームや攻撃の内容たるや、あきれるほどひどいものばかりなのです。
 もちろん、非常識なひどい親はほんの一部ですが、あまりにもひどいので、それによって学校現場は混乱し、教師は大きな心の傷を負わされているのです。
 困った親に共通しているのは、親が子どもとしっかりと向き合い、子どもと対話するのを避けている。面倒くささからか、そこから逃げているということです。
 子どもは勝手なことを言ってくるので、きちんと向き合うのは大変なエネルギーを必要とします。子育てで一番大切なのは「手間暇かける」ことかもしれません。
 教師から見た「困った親」には次の4タイプがあるように私は思います。
(1)
不平不満型
 ストレスのはけ口として教師を利用する親がこれに当てはまります。このタイプは子どもには熱心ではないことです。教育に熱心ではないのに、クレームだけはつけにくるのです。
(2)
放任型
 親が子どもを放ったらかしにしている親です。とにかく、子どもの面倒を見たくない、面倒くさい。放任というより放置です。
 非行型の子どもが多い。端的に親の愛情に飢えているのです。さみしさを埋めるために道を踏み外してしまう。非行少年少女になりやすい。
(3)
家来型
 文字どおり、親が子どもの家来になって、ふだんから親が子どもの言いなりなのです。子どもに嫌われたくないので、ついつい子どものわがままな要求に従ってしまうのです。子どもに言われるままになんでも買い与えてしまう親も、ここにはいります。
 大人をなめきった態度をとりがちです。この子どもたちは「私がワガママを言えば、大人は言うことを聞いてくれる」と思い込んでいます。教師を振り回す子どもになりやすい。
(4)
支配型
 子どもをきちんと教育しよう、正しくしつけようという姿勢が強すぎる親です。
 いい親であらねばという思いの強い親は、知らず知らずのうちに子どもにプレッシャーをかけてしまいやすい。電車の中でキレて子どもを大声で叱りまくる母親も支配型にあたります。
 挫折しらずで生きてきた優等生タイプの親が、親としても優等生であろうと、子どもを見守ることができずに、余計な口出しをしまう。過剰に支配的になってしまいやすいのです。
 
「自分の子どもは絶対にこういう子どもにする」という気持ちがとても強いので、当然、教師や学校に対する目も厳しくなります。かなりシビアなクレームをつけてきます。
 教師をあたかも自分の服従すべき雇用人のようにコントロールしようとし、指令に従わないと、それが許せない。「能力がないなら、やめてしまえ」「校長を出せ」と責め立てる。
 
「いい子」でなければという重圧に耐えかねた子どもは、心が破裂するようにして問題行動を起こしてしまうのです。
 中学生にもなると、自分がないと苦しくて仕方がない。反抗期には、子どもの自立に必要な「自分づくり」という意味があるのです。子どもは不登校やリストカット、拒食・過食などになりやすい。
 子どもをいい子のフレッシャから解放するには、まず両親が「いい親」から降りる必要があります。夫婦で一日一回は、子どもの前でぐちを聞きあうなどして「弱音を吐ける家庭」を築く必要があるでしょう。
 以上、4つのタイプに共通しているのは、きわめて利己的、個人主義的で、自分の子どもの立場からしか、ものを考えられないことです。
 クラス全員の子どもを大切にしなくてはならない教師の立場など、まったくおかまいなしです。
 なかには、子どもとの関係をうまく保つためのネタとして、教師の悪口を家で、日常的に口にしている親も少なくありません。教師という共通のターゲットを持つことで、はじめて親と子どもが仲よくできるという歪んだ関係にあるのです。
(
諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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クレームを適切に対処するには、クレーマーの特徴をよく知っておくことが大切である

 教師がクレームに適切に対処するには、クレーマーの特徴をよく知っておくことが大切です。クレーマーは、クレームの内容・方法・頻度等、クレームそのものと、訴える人物の2つの視点から分類できます。
1 溺愛型
 わが子かわいさゆえのクレームです。あまりにも自分の子どものことだけを考え、無理難題を押し通そうとする姿勢は問題です。
 このタイプの親に対しては、十分に耳を傾けて聴き、溺愛の弊害について具体的な場面で、機を見て助言するようにしたいものです。
 例えば「先日の運動会で、うちの子が1位だったのに2位にさせられた。校長に1位にするよう教育委員会から言ってください」と、いったタイプの親のクレームは、子どもかわいさゆえのものです。
 その点さえしっかり押さえておけば、問題がこじれることはほとんどありません。親心の受容に始まり、親心の受容に終わる。これがポイントです。
「お母さんの気持ち、よくわかりますよ。お子さんも悲しかったでしょうね」と、母親の気持ちを受け入れたうえで、子どもの気持ちに焦点を当てます。
教師「お母さんの要求で事態が変わったら、お子さんはどう感じるでしょうか?」
母親「もちろん喜びますよ」ときたら
教師「そのことで、まわりの子に迷惑がかかることを考えても喜ぶでしょうか。私には、お母さんがそういう子に育てているとは思えないのですが」と、二の矢を放ちます。
2 放任型
 ふだんは子どもへの関心が低く、あまりかまってやれない分、教師へのクレームを通して、その「埋め合わせ」をするかのように、子どもを守る保護者の役割を果そうとするのです。
 子どもを「ほったらかし」にしている親が、子どものことでクレームをつける場合は、親の子育てが、放任なのを責められそうになったとき。責められるのを避けるために、子どものことを真に思う親を演じるときが考えられます。
 いつもは放任されているのに、突然、愛情深い保護者のように振る舞われて、子どもは混乱するばかりです。
 そんな態度の保護者のクレームに対するには、教師の側にも強靭な精神力が求められます。  
3 欲求不満解消型
 保護者自身が抱えている不平・不満を学校にぶつけることで、欲求不満を解消しようするタイプです。このような人にとって学校は格好の対象となります。クレームの内容はそう重いものではありませんが、教師のろうばいや学校の混乱を目のあたりにすると、攻撃型に転じる可能性は否定できません。
4 攻撃(愉快犯)
 クレームに戸惑う教師や学校を見て満足感を得ます。学校や教師に対して明らかな敵がい心や嫌悪感をもっていることが多い。
 教師や学校に不安感を与えて楽しむというところから、保護者の「心の問題」も疑われます。
5 利益追求型
 クレームをつけることで、金品の要求を突きつけることがあります。直接的な要求は脅迫や恐喝に当たるので、手を替え品を換え、巧妙に金品の提供を迫ります。
 学校事故で子どもがケガをしたり、教師の不用意な発言や不適切な指導のため、子どもが不登校になった場合などに起こりがちです。
 学校のミスに関しては、誠意をもって対応しなければならないのは当然ですが、これ幸いとばかり過剰なクレームに対しては毅然とした姿勢が求められます。
6 理解不能(混乱)
 クレーム内容が突然変わったりするなど、混乱が見られるタイプです。クレームが終わるまでに多くの時間と人間が費やされます。
 このタイプの保護者は、多くの人間を巻き込む術にたけているうえ、心理的に不安定な状態に置かれているなどの問題がからんでいます。
 大勢の人を使って要求を通そうとする。一つの要求をのむと、もっと高い別の要求をしてくる。感情の起伏が激しく、まわりの者が巻き込まれていく。感情を逆なでにすると非常に攻撃的になる。といった例があり、教師を精神的に追いつめることがまれにあります。
7 敏感・依存型
 何かひと言いわずには気がすまない人で、チャイムの音や庭木の落ち葉などに敏感に反応し、学校に不平・不満をもち込みます。クレームが学校と人間関係を結ぶ役割を果たします。
 ささいな出来事を大げさに訴え、たびたび学校を訪れたりします。学校にとって貴重な情報を提供してくれることが多いので軽視するわけにはいきません。
 ただ、少々度が過ぎる振る舞いが目立つようになると、教師がへきえきする場面が増えていきます。
8 善意の問題指摘型
 登下校の子どもの迷惑行為、教職員の不適切な指導、施設・設備の問題など善処を求めるタイプです。不登校の子どもをもつ保護者が学級だよりの配布を求めたりするなど、保護者として当然の「要望」で、これをクレームに入れることさえはばかられます。
 学校や教師が気づかなかった問題点を指摘してくれるわけですから、学校にとっては「厳しくも温かな、ありがたい存在」です。教師に、保護者の思いをきちんと受け止める力があれば、クレーマーとは映りません。
 ただし、教師の力量が乏しいと、当たり前な要求を不当な苦情と受けとめてしまうことがあります。
(
嶋﨑政男:1951年生まれ、東京都立中学校教師・教育研究所指導主事・中学校長等を経て神田外語大学教授)

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問題を起こす子どもの親とは

 私は子どもの問題を持つ家庭へ出向き、35年にわたって子どもの問題解決に体当たりで取り組んできました。子どもの問題は家庭で生々しく起こっているからです。子どもが社会や学校に戻るまで付き合って2000組以上の問題を解決しました。
 子育ては「手をかけ過ぎないで、目をかけよ」が理想ですが、問題を持った家庭の子育ては「手をかけ過ぎて肝心なところを見落とした」という大きな特徴を持っています。
 子どもの問題は問題のある親のもとで間違いなく起こっています。親が子育てに信念を持たず、子どもを腫れ物のように扱っている状態の家庭で起こっているのです。その結果、怖い人がいない子どもたちは協調性を失い、社会のルールや大人たちをナメて問題を引き起こしているのです。
 親が子どもなんかにナメられていてはダメ。もっと親らしく、自信をもって、子どものためにしっかりしてほしい。「お前に文句を言われる筋合いなんか、ひとつもない」と言える、堂々として頼もしい親を子どもは待っているんです。びくびくしながら子どものご機嫌をとる情けない親なんか見たくもないんです。
 子どもは次の世代を担っていく大切な人だからこそ、大人は善悪のけじめを毅然とした態度で教えなくてはならない。
 子どもが問題を持っている親は、肝心なときに熱意ある速やかな行動ができなかったり、妙に冷めた行動をとったりします。
 子どもにだけ変われと言って、親が一向に変わらないのはずうずうしい。親が変わらないかぎり、同じ問題が繰り返されていくだけです。
 子どもは、苦しい時に分かってほしいからこそ親に当たり散らします。それをただ受けとめるだけでなく、どうやったら楽になるのかを共に動いて探してあげること。それが今の大人たちに欠けているのではないでしょうか。口先だけではいけません。前へ前へと動くのです。
 親がわが子をさけていると「見捨てられた」と子どもは落ち込みます。親が世間体を大事にしているうちは、子どもを大事にできません。親が本音で子どもに体ごとぶつからないうちは、本音で生きる子どもを助けることはできません。親の体当たりでぶつかってくる激しいまでの愛情によって、子どもは変わることができるのです。
 親は自分の幸せを削って差し出さないうちは、苦しむ子どもを助けることはできません。私は難しいことは全くわかりませんが、母親として考えると、子どもの心にきく最高の薬は、母親の温かい心に他ならないと固く信じています。
(
長田百合子:1954年岐阜県生まれ、ノンフィクション作家。愛知県の塾教育学院代表。問題の子どもを抱える家庭に自ら出向き解決に努めた。親や子を罵倒する手法が民事裁判で敗訴したこともある。日本家庭教育再生機構理事長)

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なぜ保護者からの苦情や要求が増え、モンスター化するのか

 現代の大人たちは心身共に非常に疲れている。疲れた体と心を引きずりながら、毎日頑張り続けている。けれど頑張っても、満たされない思いが消えない。
 満たされない思いにより、精神的な疲労が蓄積する。疲れきった心には「他の人も大変なんだ」という思える余裕など持てない。そして自分だけが不幸であるような気持ちになってくる。
 どうして自分だけがという思いで一杯になる。常にイライラして来る。そして、自分以外の人間を羨ましく思い嫉妬する。しだいに怒りに転化していく。口にする言葉の多くが文句になる。
 そして、自分と接した相手に対しては要求が増える。誰もが自分よりも楽をしているのだから、「これくらい、やってくれて当然だ」という思いになるからである。常に自分以外の人間に対する怒りが心の中にくすぶっているから、相手が要求に応えないと激しい怒りがわいてくる。そして怒りが爆発するのである。
 自分が満たされない、人生がうまくいかないことに対する怒りなのだから、ぶつける相手は誰でもいい。だから、ちょっとしたきっかけで、ぶっつけやすい相手を見つければ、苦情を言い、それがエスカレートするのである。
 大人たちの未来への悲観も苦情をより強いものにしている。「このまま頑張り続けても、この先、幸せになれるはずがない」という絶望が、怒りを強めてしまっているのだ。
 そして、未来を悲観しているからこそ、「うちの子だけは絶対に人生を失敗させたくない」という思いが強くなる。
 だから、教師に対する要求が増える。「うちの子だけは特別扱いしろ」という思いが募る。教師が要求に応えないと、わが子の人生の邪魔をしている、と感じてしまう。
 自分だけが不幸だ、という思いと、将来悪いことが怒るという思いに心を支配されているので、被害者意識が強くなってしまうのだ。わけの分からない苦情が発生するのは、この被害者意識によるのである。
 これがモンスターの正体である。大人たちの心身の疲労、自分が不幸であるという嘆き、そして未来への悲観、そして被害者意識がモンスターを生みだしているのである。
 それと、教師と保護者のコミュニケーションの減少が増加に大きく関係している。 
(山脇由貴子: 1969年東京生まれ、東京都の福祉園勤務を経て、都内児童相談所にて児童心理司として19年間勤務。年間200家族以上の相談や治療を行う。全国で講演会や研修の講師)

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保護者のイチャモン(無理難題要求)が増えている、その背景にあるものは何か

 アンケート調査(2005年、関西地区、回答数507)で、保護者のイチャモン(無理難題要求)が増えていると思うと回答した学校管理職が8割に達しました。
 小学校などでは、子どもが帰宅した後、担任が保護者宅に電話をかけて「ひざのすり傷は、休憩中に運動場で転んでついたものです。すぐに保健室で手当てしてあります」と、報告している姿があちこちで見受けられます。報告をしなかったために「連絡がないのはどういうことだ!」と苦情を言われ、トラブルに発展したりすることが往々にしてあるからです。
 クレームは、ある日突然、校長や教育委員会に伝えられたり、議員や弁護士がいきなり出てくることさえあります。
 「ちゃんと注意を払っていたのか?」といった質問に説明できるように、学校では、ふだんからあらゆることを記録にとり、対応策を講じ、細心の注意をはらうようになっています。
 こうしたイチャモンの背景には、
(1)
社会全体が閉塞し、不満と不安が急速に高まっていることがあります。見えてくるのはうっぷんばらしの「弱い者いじめ」の構造です。
 企業であれば、苦情は「お客様相談室」などを設けていますが、学校は直接持ち込まれます。
(2)
学校は子どもの生活指導や部活動など守備範囲がきわめて広範囲にひろがっていると理解されやすい。しかも、学校に言えば逆襲することはないため実害を受けることはない。
(3)
マスコミが教育問題を取り上げるとき、ていねいな背景事情や学校の努力の経過がきちんと伝えられることなく「だから学校が・・・・・」「教師というものは・・・・・」という一面的な批判が強く全面にだされます。そうしたなかで、保護者たちに実際とは異なる学校の実像が伝えられている。
(
小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)

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非行の解決には家庭の「抱かえる力、柔軟に対応する力、問題に向き合う力」で随分変わってしまう

 私は警視庁の少年センターで子どものことで悩んでいる親や少年、教師などからの相談を受け、一緒に考える仕事をしてきました。非行関係の相談が多いのですが、内容はケース・バイ・ケースです。家庭の状況は千差万別で、さまざまな事情や背景があります。まず、相談者の話を聞くことからスタートし、問題をだんだんと浮き彫りにして、解決を模索するという作業の繰り返しです。
 相談は、なるべく早い解決を目指してお話を聴くことになります。短時間でみるみる良くなるケースと、なかなか解決の糸口が見えなくて時間がかかってしまうケースに分けられます。早期発見、早期対応が功を奏するというのは、非行問題にも当てはまると思います。
 早い段階で家族が子どもの様子の変化に気づいて、心配して自発的に相談に来てくれる場合は一般的に予後が良いのですが、事態が深刻化してから周りの勧めで相談に来た場合は、なかなか時間がかかりそうだ感じたりします。
 家族や家庭が持っている力の差で解決までの道筋や要する時間も随分変わってしまうことが数多くありました。家族の力とは、抱かえる力とか、柔軟に対応する力、問題に向き合う力といったものになるかと思います。こういった子どもの問題をうまく抱えられない家庭が確実に増えてきたと感じます。
 こうした家庭の力の乏しい極端な例が虐待のある家庭だと思います。おなかをすかせて冷蔵庫にあるものを勝手に食べたら怒られて殴られたとか、本当に切ない話を聞きます。子どもは弱者なのだと痛感します。荒くれた非行少年も例外ではありません。いろいろなことをして親にアピールしているわけです。このアピールを上手にキャッチしてもらえばいいのですが、そうでないと、どんどんエスカレートしてしまいます。
 相談は基本的には秘密厳守です。でも相談者に了解をもらって、学校の先生に連絡をして今後の対策について考えたりします。こうしたつながりは、すべてのケースで支えになり予後はいいと思います。
 立ち直りは、やはり早ければ早いに越したことはないと思います。洞察できる力をもった家族や家庭はいいのですが、それが難しいときに頼りになるのが、身内以外の人とのつながり、地域のつながりだと思います。
(
青木 修:警視庁少年育成課少年センター副主査。少年非行などの問題の相談を受けている 臨床心理士)

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退職する教師の約八割がきっかけとなったのが親のクレームや攻撃です

 いま、親たちが質的に劣化してきつつある。読売新聞(2007.6.18)の記事に「親の身勝手な要求や問題行動に苦慮している」と多数の教育委員会が回答し、具体的な例では「ウチでは子どもに清掃させていないから、学校でもさせないでほしい」と言う親、子どもが自転車で事故を起こすと「学校の指導が悪い」と主張する親などが紹介されていました。
 私がこの問題に直面したのは、学校の教師の悩みを聴くことを通してでした。教師の窮状にショックを受け、教師の支援活動に力を入れるようになりました。教師がうつ病になって休職し「もう教師を続けることができない」と訴えて退職を余儀なくされる教師がいかに多いことか。その八割がきっかけとしてあげるのが保護者からのクレームや教師攻撃です。
 もっとも深刻なのは、特定の教師をこれでもかとばかり執拗に攻撃してくる親です。人格そのものを否定され、心をズタズタにされて、まるで人生の敗北者になったかのように学校を去っていく教師も少なからずいます。その内容はあきれるほどひどいものばかりなのです。
 例えば、一度、目をつけられたら「これでもか!」とばかりに、集中攻撃をくらいます。30人くらいの親に囲まれ、すごい目つきでにらまれ、「あんたなんか教師失格だ」と何時間も罵声を浴びせられ続けるのです。しまいには「教師を辞める確約書を書け!」とすごんでくるのです。親集団による教師いじめです。「教師に何を言ってもかまわない。教師に人権などない」と親たちは思っているようです。
 教師の相談を受けて怒りがこみ上げてきて「こんな親たちは許せない」と拳を震わせたことは一度や二度ではありません。もちろん非常識なひどい親は、ほんの一部ですが、あまりにもひどいので、それによって学校現場は混乱し、教師は大きな心の傷を負わされているのです。
 しかし、少し前までごくわずかだったのに、「困った親」は最近はどんどん増殖しているのです。「紫外線は健康に悪い。体育の授業を外でするのは即刻やめてほしい」といった理不尽な要求を次々と突きつけてこられたら、教師の神経もまいってしまいます。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授。専門は臨床心理学、カウンセリング心理学。現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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年々、子どもや親の質が悪くなってきている

 教師になって20年。この間に、私が感じている変化のひとつは、年々子どもの状態が悪くなっているということです。最近の子どもは、徐々につかみどころがなくなっているように感じます。態度を育てる教育も、きちんと子どもの内に根つくまで、以前よりも時間がかかります。
 年々、親の世代の質が悪くなっているのです。親の世代が悪くなれば子どもも変容してきます。
 私たち教師、大人が肝に銘じておかなければならないのは、私たちがいま教えている子どもはやがて日本を支えていく世代になるということです。教師は「明日の日本」を育てているのです。
 いま最も必要な改革は、子どもたちを正しく育てること。私の言葉でいえば子どもたちを「自立型人間」に育てていくことが、将来の日本をつくっていくことになるのです。そのためには、制度の改革だけでは不十分です。教師の質を上げなければいけません。
 教師の質を上げることは、子どもたちの質をあげることにつながります。子どもたちの質を上げれば、日本という国の質を上げることになるのです。教師が変われば日本が変わる。
 理想を掲げ、志を持って一歩を踏み出せば、個人のレベルでも変えることはできます。特別な力や地位がなくても、できることはいくらでもあるのです。
 本気になった教師による、本気の教育こそが、いま求められているのです。
(
原田隆史:1960年大阪府生まれ、大阪市立中学校教師(20年間)、教師塾主宰を経て原田教育研究所社長、埼玉県教育委員。大阪市立松虫中学校を態度教育・価値観教育・自立型人間育成教育により建て直し、陸上競技では7年間で13回の日本一を達成した)

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親がモンスターになっている場合じゃない、親の学校とのつき合いかたはどのようにすればよいか

  私は教師の質が下がったとはけっして思いません。親と子ども、社会が変わったのです。
 団塊ジュニアの親はバブル期に青春を過ごし、欲しいものを手にいれてきました。家庭は友だち親子で大人と対等な関係です。言いたいことがあれば言うべきだという意識を持っています。そして、いま親の中心世代は長い不況の時代に学生時代を過ごしています。「がんばってもムダ、真面目にやってもむくわれない」という思いがあります。しかし、学校は真面目にがんばることに価値があり成り立つものです。
 いちばん変わったのは子どもたちです。傷つきやすくて図に乗りやすい子が増えたのです。叱られ慣れていないせいで、叱られると自信を失いひどく傷つきます。ほめると調子に乗って手がつけられなくなる。集団行動をさせにくい、集中力のない、教師の言うことを聞かない子どもが増えてきました。
 社会の価値観が変わりました。学校はよいサービスを提供すべきであるというイメージがつくられたのです。世の中全体がクレーム社会となり「不平や不満は言ったほうがいい」という考えがまかり通るようになりました。権利を主張する一方で義務から逃れようとする人が増えています。そんな我がまま、クレーム社会でモンスター・ペアレントが登場したのです。
 そんな時代だからこそ、親と教師の関係も正しく変わる必要があると私は考えます。親が担任をやりこめても意味はありません。担任を支えバックアップすることで、子どもたちは楽しい学校生活が送れるのです。では具体的に親は担任とどう関わればいいのでしょうか。
(1)
親は文句を言うのではなく、お願いする
 不平不満を言うのはただのクレーマだと思われてしまいます。担任にしてほしいことを整理して「お願いします」という姿勢で、まずは連絡帳で相談し、そのあとで直接話します。学級全体のことは、数人の保護者と相談して意見を統一したうえで担任へ。
 新任などの若い担任であれば「私たちに協力できることはありませんか。がんばってください、応援していますよ」という姿勢を見せ、保護者が味方であることを伝えましょう。学級の荒れなど状況に変化がなければ校長にも相談を。副担任を入れるとかの対応をしてもらえることがあります。保護者が教室で見守のもいいでしょう。くれぐれも若い担任を追いつめないことです。うつ病で休職することも多い時代です。保護者の協力で担任を支えてあげましょう。
 ベテランで気になる担任もいます。そのワンマンぶりに圧倒されることがあります。実はいま50代の女性教師の離職が増えています。理由は感覚の古さ。「これまでの指導では、子どもも保護者もついてこない、厳しすぎるというクレームが絶えない」ということで自信を失ってやめてしまうのです。でも、ベテランらしく、わかりやすい授業をしてくれる能力があります。こういう担任はとてもプライドが高いですから、親の姿勢としては「いつも感謝しています。頼っています」と言うのがいいと思います。「先生に叱られるから学校をやめたいなんて言いまして」と悩みを相談します。担任は「一年生には厳しすぎたかな」と気づき、多少は行動を変えるものです。しかし、それは親が甘やかすからだと怒る場合は、校長先生に相談せざるを得ないでしょう。
(2)
担任の先生を飛ばさない
 いきなり校長や教育委員会に訴える親が増えています。それでは「担任を信頼していない」ことになります。
(3)
担任のプライドを傷つけない
 教師は優等生でプライドが高い。そのプライドがあるからこそ、意欲も生まれます。子どもの聞こえるところで担任の悪口を言うのは厳禁です。
(4)
担任への励ましと感謝を伝えて
 親は問題のあるときだけ担任とコミュニケーションをとろうとしますが、実は担任は「満足しています」というメッセージも欲しいのです。連絡帳に書き込んでみてください。きっと、もっといい担任になろうと思ってくれるはずです。
 親と教師は、子どもがよりよく育つために見守っている存在だということを忘れてはいけません。教師といい関係を考えるとき、中心には子どもがいます。何か困ったことがあり、その原因が教師の指導力や人間性にあると感じた場合でも、教師への不平不満はあえてのみ込んで、子どもが困っているという事実を担任に伝えてください。そして、いっしょに対応を考えてくださいとお願いするのです。親と担任がいがみ合っては何も解決しません。
 そして問題が解決したら「ありがとうございます。さすが先生」と、担任に言葉をかけてほしいのです。どんな仕事も、評価されることでがんばれるものです。担任だって感謝されればさらによくなろうと思います。それが人間というものです。子どものためにも、担任とぜひ、よいパートナーシップを築いてください。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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