自分の長所とか短所にこだわる必要はない、持ち味を生かしていけばよい
人の長所とか短所にこだわる必要はない。
お互い人間は、程度の差こそあれ、長所と短所を併せもっています。
そこで人は、ときにその長所を誇り、短所を嘆いて、優越感にひたったり劣等感に悩んだりします。
しかし、考えてみれば、お互いの日々の生活においては、長所がかえって短所になり、短所が長所になるようなことが、しばしばあるからです。
長年のあいだに接してきた、たくさんの経営者の人たちについても、そういう例をよくみかけます。
経営者の中には、知識も豊富で話もうまく、行動力も旺盛といった人がいます。
そういうすぐれた能力を備えた人が経営者であれば、その会社はまちがいなく発展していくようにも思われます。
しかし、実際には必ずしもそうでない場合が案外に多いのです。
反対に、一見、特別にこれといったとりえもなく、ごく平凡に見える経営者の会社が、隆々と栄えていることもよくあります。
どうしてそのようなことになるのか、非常に興味があるところですが、それは結局、経営者の長所がかえって短所になり、短所が長所になっているということではないかと思うのです。
すぐれた知識や手腕をもつ人は、何でも自分でできるし知っていますから、仕事を進めるにあたっていちいち部下の意見を聞いたり相談をかけたりということをしない傾向があります。
また部下にまかせても、いちいち細かく口出しをする。そういうことでは、部下はやる気をなくしてしまいます。会社の発展が妨げられるわけです。
一方、一見平凡に見える経営者の会社が発展するというのは、その反対の姿があるからでしょう。
部下の意見をよく聞き、仕事をまかせる。そのことによって全員の意欲が高まるといった経営を進めているわけです。
そういうことを考えるとき、お互いにあまり長所とか短所にこだわる必要はない、という気がするのです。
基本的には、長所と短所にあまり一喜一憂することなく、おおらかな気持ちで、自分の持ち味全体を生かしていくよう心がけることが、より大切なことではないかと思うのです。
(松下幸之助:1894~1989年、パナソニック創業者、経営の神様と呼ばれ、日本を代表する経営者)
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