カテゴリー「子どもの成長をはかる」の記事

学力を身につけ勉強大好きという子どもに変えるには、どうすればよいのでしょうか

 計算練習をやっても、たいして頭を使うわけではないし、考えをつけるうえでほとんど役に立たない。だから文章題とか、もっと難しいことをやらないと頭がよくならないと思っている人はとても多い。
 おそらく9割以上の人はそう思っていることでしょう。そういう思いは、親だけでなく、多くの教師もそう思っています。私もそうでした。
 しかし、川島隆太教授()が、ごく単純な計算に取り組むと、計算をつかさどる左頭頂葉だけでなく、前頭葉・頭頂葉・後頭葉と、脳全体が活動していることが発見されたのです。
 脳神経細胞同士のつながりが強化され、太くなり情報が非常に流れ易くなっていく。計算練習は、まさにそういう働きをする勉強でと言えます。
 読み書き計算の力は、毎日毎日の短時間集中型の勉強を継続して取り組むなかで、子ども自身がびっくりしたり、感動したりするほど、目覚ましく伸びていくのです。
 学力を身につけるには、毎日、ほんの少しの時間でよいのです。そう、小学校一年生であれば、日に10分、三年生なら30分、六年生であれば60分、それだけの時間を、読み書き計算の練習に当てるのです。
 こつこつと続けてさえいけば、一学期間に驚くばかりの伸びを示します。この体験は、子どもを勉強大好きという子に変えていきます。取り組んだ子には、自信と誇りをもたらします。「やったらできる子なんだ」と、その子の人格の発達に好影響を及ぼします。友だちに親切で、学級の仕事もよくやり、信頼される子どもへ成長します。
 子どもたちの未来は、確かな読む力、書く力、計算力という学力の基礎をしっかりと身につけるかどうかにかかっています。
 読み書き計算という地味な勉強は、子どもが根気よく、粘り強く、勉強や仕事を続けていく心性を育てあげていく効果的な学習です。読書好きの子にすること、書き取りの練習を毎日続けていくこと、計算が正しく早くやれるように、こつこつ勉強を積みあげていくことは、学力と人格をつくりあげていきます。
 読書は、文字や文章を読むことによって、新しい知識や考え方を吸収していくことができます。内容そのものは、活字を読むことを通して理解していくのです。ということは、書かれている文章の中身を明確にイメージ化しないと理解できないということです。
 テレビといった映像文化は、読書という文字文化に比べると易しい文化です。目で見、耳で聞くことを通じて瞬間的にわかる文化です。
 文字文化は、読み書き計算といった学力の基礎を身につけなければ理解すらできません。その習得には月日がかかり、相当な習練を要します。その獲得の過程では、集中力・持続力・継続性といった力がしっかりと身についてきます。
 貧しい家庭の子どもでも、多少恵まれた家庭の子どもでも、学力や人格が発達するするためには、学力の基礎としての読み書き計算の力が確かであるということが土台になります。それなくしては、高い水準の学力や知性をわがものとすることができません。
 学力を身につけるには、毎日、ほんの少しの時間でよいのです。そう、小学校一年生であれば、日に10分、三年生なら30分、六年生であれば60分、それだけの時間を、読み書き計算の練習に当てるのです。
 漢字は新しく教わるとき、漫然と同じ字を百字帳に書き続ける練習は効果があがりません。できれば、その字の成り立ちや意味もいっしょに教わると、たいてい一生の間、その記憶は保持されます。
 漢字が読めるというだけでなく、書くことも、その意味も、そして文の中での使われ方も併習させていくことが適切なやり方です。
 実際の文章の中での使い方も一回きりではなく、日を置いて何回か練習させたり、別の使い方をすることによって、子どもの身についた力に体化していくのです。
 物語文学などの読み物は、子どもの心を豊かにします。優しさ、思いやり、美しさや正しさなどを教えてくれます。すぐれた感動的な物語を読むことで、他の本も読みたくなったりするものです。
 文学の授業では、子ども同士が自分の体験に照らしあわせての意見や感想を出しあうことで、教師も含めて、その作品を深く理解していくことができるのです。せかせかした授業では、決して読み物好きの子にすることはできません。
 日本語では概念的・抽象的思考をするとき、必ずといってよいほど熟語を使います。熟語の意味が分からないでは、読み通すことすら困難となります。
 計算の練習も、やはり広い意味での世界を認識するうえでの初歩的な勉強になっているのです。
 例えば、小数や分数を教わるとき、それまでの四則演算だ得た認識では、想像もできなかった数の世界がひらけてきます。小数で、1より小さくて、0より大きい数があるということを知ります。
 また、ある数に小数をかけると、答えが元の数より小さくなってしまいます。これは、子どもにとっては、全く新しい世界の発見であり、知的ショックそのものとなります。
 計算力も算数の学力を伸ばすうえで、分析と総合の能力をつけていく大切な勉強なのです。
 特に顕著なのは、わり算練習です。これは全体と部分をつかむ力、それに分析と総合の力なしでは、正しい答えを求めることはできません。例えば、61403÷768を計算するとき、正しい答えは8よりもちょっと少ないかなと見極めてから、実際の演算に移ります。暗算で概算して、見当をつけてからやると桁間違いしません。
 習熟してくると反射的にできるようになりますが、そこまでになるには、反復練習を続けて練習しないと、すらすらできるようにはなりません。
 わり算が自由自在にできる域に達した子は、算数のよくできる子になります。その反対に、わり算でつまずいた子は、勉強の嫌いな子になっていきます。
 計算力は、練習密度の濃さに比例して伸びていきます。だらだらとしたやり方では力はつきません。わきめもふらず少なくとも10分は集中して続けます。それを毎日やっていくことです。
 かけ算九九は、ゼロの段を含めると全部で100題あります。その100題を正しく書き切るには、小学2年で2分、3年なら100秒で完答します。この速さでやれるようになるには相当量の練習を積まなければなりません。10000題は必要です。多いように思われますが、10分で500題やれる子であれば20日でできます。
 家族の人よりも速くできれば、大喜びするようになります。勉強嫌いだった子も勉強大好きの子に蘇えってくれます。この100マス計算は、子どもに自信を持たせる最良の勉強法です。
 最も基本となる一けた同士のたし算や、くり下がりのある15ひく7といったひき算には、いろいろなやり方があります。他の友だちの知らないやり方を見つけたり、いろいろと工夫して発見した方法を発表すれば、先生も、友だちも心からほめてくれます。子どもの向学心を高めてくれます。
 計算の練習に時間を浪費すべきではないといった考えの教師や大人は意外に多いですが、実は漢字や計算の練習によって、能力や勉強への気力を格段に高めていくのです。
 学力の優劣は、学力の基礎である読む力・書く力・計算力にほぼ規定されます。学力の高低は、その土台である言語能力によってほぼ定まります。なかでも、書きことばにどれだけ習熟し、活用できるかが学力の指標になります。
 書きことばの習得は、教科書だけでなく、広汎な読書への取り組みによってなされます。
 小学校4年あたりからは、学校で教わる勉強も、日常的・体験的な世界から、非日常的・理論的・抽象的な勉強が多くなってきます。そのとき用いるのが、漢字の合成によってできている概念語・抽象語です。漢字は、論理的・抽象的思考の世界へ向けて、子どもたちを離陸させるうえで不可欠な力として機能します。
 計算も、いままでとちがった小数とか分数など日常的に使わない数などが出てきます。計算練習は、抽象度の高い考えや処理ができる能力がおのずと発達してきます。
 毎日こつこつと学級で10分ほど、また家庭でも10分ほど基礎基本の計算練習をしっかりやっていくと、やがて小学生なのに、大人を追い越すぐらい正しく速くできるようになります。
 計算練習を毎日の基本的な生活習慣として取り組ませるとよい。計算は練習の過程で、努力や集中力にほぼ比例して、正確性と敏速性が上伸します。その中で計算のやり方や意味も分かるようになってきます。
 計算練習は、打ちこみの度合い応じて、計算力がぐんぐん伸びていきます。当初の1か月ぐらいはあまり著しい進歩はありませんが、100日ほど、毎日10分ぐらい練習を続けていくことによって、子ども自身が自らの伸びを実感することができます。
 そして、ある日、親や兄姉をみごと追い越すまでになります。このときこそ、子どもが勉強大好きな子に変身します。子どもに誇りと自信をもたらします。
 自らの集中力×持続力×継続によって、こんなに計算がすらすらできるようになったのか、その喜びと感動は、自分を見直す契機となります。
 小学生時代の6年間は、子どもの発達を主導するのは、学力の獲得と習熟にあります。低学力のままでは、人格の発達もはかばかしくありません。
 教わることがよく分かり、読み書き計算の力を、毎日こつこつ続けてやっていくことにより、学力が身についていく-学力の体化がなされていくのです。
 学んだことが分かる、覚えたというだけでは、体化した学力にはなりません。反復的・再生的・応用的な練習を通じて学力は体化します。練習が少なくては、せっかく覚えたものも身にはつきません。
 読み書き計算という学力の基礎がしっかりと身についてくると、すべての知的活動にゆとりがもたらされる。読書速度も速くなります。知的好奇心が多様に広がり読書分野も広くなります。
(
岸本裕史元:19302006年、神戸市生まれ、小学校教師。百ます計算の生みの親。1985年 「学力の基礎を鍛え落ちこぼれをなくす研究会(落ち研)(現「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会」)結成し、代表委員)
(
) 川島隆太:1959年千葉県生まれ、東北大学加齢医学研究所教授、医学博士。子どもたちが将来やりたいことができる大人になるには、(1)早寝早起きで、小学生であれば夜9時までに寝ましょう。(2)朝ごはんをおかずと一緒にモリモリたくさん食べること。(3)家にいるときは、家族と話をしたり、本を読んだりするように意識すること。(4)学校などでしている勉強も公文も、自分たちのさまざまな能力を上げる力を秘めている。

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中学生をやる気にさせるコツとは

 私は、人間というものは「やる気」を持つことによって、どれだけ自分の可能性の花を開かせ、大きく成長するかを、多くの教え子の姿から学んできました。
 やる気の火種は誰にでもある。もとは小さな火であったはず。その小さな火も、実行が伴うことによって、どんどん大きくできる。子どもの気力はどこから生まれるか。それは、その子どもが持った「自信」だ。自信さえつけば、もうしめたもの。あとは自分でどんどん大きくしていく。
 中学時代は、ゆれ動きの激しい時期です。思春期のまっただ中の時代であり、この時期をどうすごしてゆくかが、子どもの長い人生に大きなかかわりをもってくるでしょう。
 それだけに、親や教師の対応は重要な意味を持っています。子どもがやる気を持つのも、持たぬのも「親しだい」「教師しだい」と言っても過言ではない事例にたくさん出会いました。
 子どもを「やる気」にさせるポイントは「子どものよいところを見つける」ことです。
 やる気を起こさせるには、小細工も計算もいりません。子どものよいところを、心で感じたものをプラス・メッセージで、湯気の立っているうちに伝える。これだけでよいのです。
 よいところとは、長所、取り柄、ホッと心が温まったり・うれしく思ったことです。親や教師は、あまりにも近くで子どもを見ているので、子どもの欠点を見つけるのが得意です。
 中学生を「やる気」にさせる接し方のポイントは、
(1)
自信を持たせる:「なかなかやるじゃない」と、子どもの自信を定着させる。
(2)
関心を示す:子どもが関心を示してほしいというサインを感じると、「がんばっているな」と思うことに関心を示す。
(3)
失敗に共感し、アドバイスを:くやしい思いに共感し、「どこを直したら、うまくいきそうかな」と、再起の力をわかせるのです。
(4)
努力のすばらしさを教える:大人の努力している姿を子どもに見せる。
(5)
子どもの興味・関心を尊重する:打ち込めることを体験させ、あまり目先のことに目を奪われないほうがよい。
(6)
心からほめる:お世辞ではなく、100%、心から喜び、感激、励ましを表現する。
(7)
どこかに可能性があると信じさせる:「なかなか目のつけどころがいい」と、迷える中学生に可能性の光を与える。
(8)
その子の伸びを指摘する:その子どもの成長を具体的に指摘して、それを本人に自覚させる。
(9)
信頼すると意欲がわく:教師に不信感を抱いている生徒はその教師から学ぼうとしない。教師が子どもに信頼感をよせると子どものやる気を引き出すことが可能になる。
(10)
尊敬するとやる気がわいてくる:「すごい」とその人の力量に尊敬の念を抱くと、まねでもいいから、その人に近づこうとします。
(11)
上手に叱る:「ここをこう直すと、もっと光が出てくるよ」と、子どもに期待感をもった指摘をする。
(12)
公平に子どもを扱う
 長い教職生活の間には、本当に苦しんだこともありました。「自分には向かない仕事なのかなぁ。もう、きょうでこの仕事にピリオドを打とうか」と、考えこんでしまう事態もありました。
 生きがいを与えてくれたのは、子どもたちであり、保護者でした。保護者と額を寄せ合い「あの子のやる気をどう掘り起こしていったらよいか」と考え、ちょっとしたアドバイスで子どもがモリモリやる気を出し、はつらつとした姿で物事に取り組むようになったときは、「教師の仕事って、本当にいいなぁ。こんなに喜ばせてもらい、楽しませてもらって、そのうえ、給料までもらえるんだ」と思ったものです。
(
山田暁生:1936年~2008年、和歌山県出身、東京都公立中学校教師(35年間)。山田中学生問題研究所代表、全国教育交流会「やまびこ会」主宰。学級・学年・数学・進路通信などを約3万枚発行し、保護者や生徒とのコミュニケーションに力を入れてきた。「読売教育賞・賞外優秀賞」受賞。NHKラジオ第一「子どもと教育・電話相談」レギュラーアドバイザー、テレビ寺子屋講演講師なども務めた)

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子どもたちは自立心と友だちをつくり助け合うことの喜びと大切さに気づいてほしい

 私は1944年に軍人としてフィリピンに着任し、終戦(1945)後も潜伏していたフィリピンのルバング島から1974年、53歳で日本に帰国した。日本はすっかり変貌して知らない国のようだった。
 どんな仕事をしてよいかわからずにいたとき、ブラジルに移住していた兄から「牧場をやらないか」と勧められた。ルバング島30年の体験で、熱帯の風土や気候は肌で知っている。自然と牛が相手なら、人間関係に悩むこともないだろうと考えてブラジル移住を決めた。
 簡素な木造の家には電気も通っていなかったが、寝る間も惜しんでブルドーザーを運転し、ジャングルを開拓した。現在、私の牧場は牛を1800頭を飼育している。
 牧場経営が軌道に乗ってきたとき、日本の少年犯罪が多発していることを新聞で知り「日本の子どもたちは追いつめられている。このままでは日本がダメになる」と考えた。ブラジルの牧場経営は私がつきっきりでいる必要はなかったので、1984年に日本に帰り、富士山麓で子どもたちのキャンプ場を開いた。
 私は子どものとき、親に反抗し、困らせてばかりいた。私に子どもを指導する資格があるとは思えないが、自然のなかでサバイバル技術と知恵なら子どもに授けられる。この自然塾での子どもの指導は私の人生の最後の仕事となった。
 キャンプは小学三年生から中学生まで約80人。三泊四日と六泊七日のコースがある。一人で生き抜くつらさ、困難、寂しさ、友だちをつくり助け合うことの喜びと大切さに気づいてもらうことが目的だ。
 キャンプで火をおこし、森にある道具だけを使った牛肉の燻製づくり、ナイフやロープの使い方、北斗七星やカシオペアの位置から時間を計る方法などを教えている。
 もちろん、どのグループの指導も順調にはいかない。年長の子が年少の子の面倒をみようとしなかったり、衣服が汚れるから地べたに座れない子もいる。それに、友だちをつくるのが下手だ。
 親が子どもをペットの犬をかわいがるように子どもを育てていると、子どもは増長する。犬は成犬になってからの調教は難しい。待て、座れ、お預けは子犬のときに教え込むしかない。叱られたことのない犬は、自分をその家の権力者だと勘違いし、気にくわないと飼い主を噛むようになる。
 暴力や学級崩壊は、秩序や礼節が欠落してしまった家庭の破綻の延長線上にあるのではないか。犬も人間も、しつけができていないと手に負えなくなる。怖いもの知らずがいちばん怖い。
 キャンプでは腕力や気の強さの違いがすぐわかり、強い子が弱い子をたたく心配も出てくる。私はキャンプの初めに「自分がされて嫌なことは他人にしないこと。他人をたたけば、その子は私たちスタッフに強く叱られても文句は言えないよね」と必ず話している。
 教師は人にやさしくしなさいと教えるが、強くなければ、やさしくはできない。寒い山の中で凍えている人に自分の上着をかけてやるのはやさしい行為だが、上着を脱いだ自分はさらなる寒さに耐えないといけない。「頑張れ」と言葉で励ますだけなら、見物人と同じである。
 私はジャングルで一人だったが、子どもたちには、手を伸ばせば手をつないでくれるかもしれない仲間がいる。サバイバルのいちばんの術は、自立心と仲間・友だちなのだ。
 私は今年、80歳を迎える。私の人生はすでに一回、減価償却してしまった。小学校の同級生も三分の一は戦死した。私は何かのはずみで死なずにすんだだけで、残りの人生はもうけものだと思っている。もうけは独り占めにするのではなく、子どもたちに返したい。
 松下幸之助さんは、かつて成功の秘訣を聞かれ「成功するまで続けること」と答えた。私が子どもたちに伝えたいこともこれである。
(
小野田寛郎:1922年-2014年和歌山県生まれ、1944年陸軍軍人としてフィリピンのルバング島に着任し1974年に帰国した。半年後ブラジルに移住して牧場を経営。少年犯罪が多発する現代日本社会に心を痛め、健全な日本人を育成したいと、サバイバル塾『小野田自然塾』を主宰。自らの密林での経験を元に逞しい日本人を育成するとして、講演会や野営等を行った)

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子どもを育てるのに必要なのは「この人は、私のことを本気で見てくれているんや!」という「愛」と「信頼」やと思うで

 僕は小学校のPTA役員として運動会の放送関係を手伝うことになった。子どもたちにできるだけ本当の実況をさせたいと思った。それで、運動会の実況をするとき僕の口真似をさせたんや。僕が「まずは、白がいいスタートを切りました」って耳元で言うたら、子どもはその真似をして「まずは、白がいいスタートを切りました」って叫ぶねん。「それを追って赤!」「赤組がんばってください」と真似をして子どもが叫ぶ。
 初めは声が小さな子も、真似をすることで、どんどん声が出てきた。そしたら、すぐに「エエ感じや、最高や」ってほめる。それが午前中の後半になると、子どもがもうアドリブで、どんどんしゃべっとんねん。練習のときに「エエかあ、絶対に前向きな言葉でいくんやで。『赤組遅いですね』『あー、抜かされました』とか、やる気なくなるような言葉は絶対あかんでぇ」と注意を与えていたんや。それを見事に守ってる。すごい!
 でも、そういうのがすぐにできる子どもばかりじゃない。中には「キミなぜ放送部なの?」っていう子もいる。カツゼツは悪いし、暗い声しか出ない。けど僕はその子の隣にいて、その子がしゃべるたびに「うまい! イケてる!」ってほめた。そしたら、どんどん声が出てきて、語尾も上がっていった。それが子どものすごいところよ。「出来た! レモンさんにほめられた! 先生にもほめられた!」これって、自信につながるよね。そういう子どもの隠れている才能を引き出すのが教育やなぁって、本当に思うたね。
 ただ、ほめ方も本気でほめなぁアカン。ただのオベンチャラは通用せーへん。本気でほめたくなる部分に気づくことや。しかし、ほめてばかりやったら、これまたアカン。やっぱり「ここは、こうしたほうがさらによかったかな?」っていう言い方も必要やね。
 でもね、よう勘違いして、ただただ怒っている大人がいる。いちばん肝心なのは「その相手にその人の『愛情』が伝わってんのか?」ということと、「その相手との間に『信頼関係』がしっかり出来てるのか? それに気づいて言うてるのか?」ということ。
 そこをなくして「厳しく、厳しく」なんて思ってると、今の時代えらい目にあうし、えらい目に遭わせることになるんや。
 スパルタがよいとか、優しく言うのがよいとか、そんなものさしやないんやで。やり方の問題じゃないねん。時代が変わろうと真理は変わらんねん。「この人は、僕のことを本気で見てくれているんや!」という「愛」と「信頼」やと思うで。
(
山本修嗣:1964年生まれ、大阪府出身のラジオDJTBSラジオの『全国こども電話相談室・リアル!』、NHK Eテレの『きらっといきる』、ニコニコ動画の『ミュージックボンバー』などの番組に出演している。自らの子どもが通う小学校でPTA会長を5年間務めた。その後もPTA顧問を続けている)

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大人のずるさを敏感にキッャチし、押しつけを嫌がる小学校高学年の子どもに、人間のすごさを伝える

 体も心も変化する小学校の高学年の時期に、人間のほんもののすごさを伝えると子どもたちの背筋がシャンとなる。
 小学校高学年の子どもは体も心も変化する時期です。伝えたいのは人間のすごさです。
 この時期の子どもは、ほんもの志向です。大人は本気で子どもと向き合うことが要求されます。
 大人のなかにあるずるさやウソを敏感にキャッチし、大人の権威を押しつけられるのを嫌います。ほんものの大人にであったときの子どもの受けとめかたはすばらしいものがあります。
 私の学校では、そば職人といっしょにそばをつくる授業をします。職人のあざやかな技や、そばにかける職人の情熱をまのあたりにした子どもたちは、職業観を新たにします。
 以前、ホスピス(末期のがんなど治癒の困難な疾患にかかった患者とその家族に対して、快適な生活を送れるように支援およびケアを提供する)活動されている人を招いて子どもたちに語ってもらいました。
 私は子どもたちに死を教えるということに、不安がありました。しかし、患者が精いっぱい生きる姿を語られることによって、子どもたちは生きていることのすばらしさをしっかりと受けとめました。人間がシャンとする、というか、子どもの背筋がピンと伸びたような時間になりました。
(
行田 稔彦:1947年新潟県生まれ、和光小学校・和光鶴川小学校校長、日本生活教育連盟委員長)

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やさしくて、しんの強い子どもを育てるにはどのようにすればよいか

 私は、長い間教師生活をしておりまして、いろいろな子どもに接してきております。心配なのはいじめです。子どもは本来、すなおでやさしい心を持っているわけですけれども、子どもたちの心にこんなひずみができてしまった。
 私の求めている理想の子ども像は「やさしくて、しんの強い子ども」「心やさしく、りりしい子ども」「あたたかくて、たくましい子ども」です。
 そういう子どもに育てるには、どうしたらいいか。それには昔からいわれている言葉で「愛は愛を育て、憎しみは憎しみを育てる」という言葉があります。教師が子どもに愛情をかければ、子どもは教師を尊敬し、教師と子どもとが信頼関係によってあたたかく結ばれていくと思います。
 幼児期は自立させる時期です。基本的な生活習慣をきちんと身につけるしつけをする。反抗する時期でもあります。だめなことはダメとしつけることによって反抗期が順調に育つわけです。子どものいうなりになると、自立できない子どもになってしまう。同時に母親の愛情、肌のふれあいを求めています。それをだいじにしないと、親離れができないのです。
 私も小さいときから、母や学校の先生から童話などいろいろなお話を聞いて育ってきました。今、考えてみると、それが私の人間形成、とくにモラルの原形になっているように思います。人間いかに生きるべきかということを、犬やうさぎやつるの言葉で、子どもたちにしみこませるという、そういう哲学がふくまれているということを忘れないようにしてほしい。しかも、人が語る話を聞くには、頭の中で子どもは空想しなければならない。これがよいのです。これがいろんなものを考える力のもとになります。
 もしも、子どもがわるいことをしたならば、「なぜこんなことをしたのか」と人間としてぶちまけて、激しく怒ってください。父親のごとく激しく怒ったならば、あとで母のごとく「わかったでしょう。これから気をつけてね」とやさしく言うようにします。こういうふうに一人二役をしていただかなきゃなりません。そうすることで精神的な自立ができるのです。
 子どもがわるいことをしたならば怒る。そのあとでやさしくする。すぐその場ではおそらく感情が高ぶっているからできないと思います。少し時間をおいたほうがいい。ご飯やおやつとか何か食べたあとがいいようです。そのとき人間は心がなごむわけですから。
 くどく叱るのは、子どものためよりも自己満足のためじゃないかと思う面もあります。子どもの中には、人前で怒られると非常にショックを受ける性質の子どももいます。そういう子どもは、ひそかに呼んで注意します。
 このように、親の場合も教師の場合も同じように、きびしさの後のやさしさの調和が大事なのです。
 子どもは友だちとの関係でも育っていきます。人間としての交流で友情が育つのです。自然な遊びの中から笑ったり、泣いたり、怒ったり、けんかをしながら社会性が育ち、自分たちはどうしなければならないかということが、自然にわかり、身についていくのだと思います。
 こういう点からも子どもの遊びを大事にしてほしい。その遊びをしなくなると、連帯する心が育たない。また、子どもは精力がありあまっている。それが発散できないと、いろんな問題をおこすわけです。うーんと遊ばせることです。中学のクラブ活動の重要性はこういうところにもあるわけです。
 宮沢賢治は非常に思いやりのある人だったそうです。友だちと遊んでいたとき、荷車が近づいてきて友だちは手をひかれてしまった。賢治は血が出ているのを見て、友だちの指を思わずわが口の中に入れてしまった。私はこんなやさしい思いやりを持った子どもになってもらいたいと思うんです。人の悲しみはわが悲しみ、人の喜びはわが喜び、ということがわかるようになると、それが、本当のやさしさ、本当の強さへと発展していくと信じるわけでございます。
(
金沢嘉市:19081986年、愛知県生まれ、東京都公立小学校校長、教育評論家、子ども文化研究所長を務めた)

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甘やかさないで、子どもを自立させるにはどのようにすればよいか

 子どもが変わった、子どもがヘンだ、と十数年来ずっと言われていますが、学校現場で日々接している私たちからすれば、その変化は加速度を増し、ほとんどの教師たちはその指導の臨界点に達していると言っても過言ではありません。大きな原因の一つは「甘やかされた子どもたち」なのです。甘やかされて子どもたちをだめにしているのです。甘やかしに代わり、子どもたちの主体性を育てるにはどのようにすればよいのでしょうか。
 まず私たちがすべきことは、子どもの見方を改めること。認識を変えなければなりません。子どもの力を信じてあげること。これが生徒指導の基本です。教師が「何かをしてあげなければ」という意識にとらわれず、信頼して子どもが見られるようになると、教師も子どももやる気がでて、双方ともいい状態になります。
 教師が子どもたちの引き起こす問題一つひとつに気をとられ、反応していたらクラスは前に進めず立ち往生するでしょう。泣いていた子は、数分もしないうちに泣きやみ、談笑しています。子ども信じてふる舞う教師のクラスの子どもたちは、やがて先生を信頼するようになります。秘訣は子どもの中にある回復する力、対応する力をいつも認めているから、子どもをうまく導くことが可能になるのです。
子どもたちに自立をうながす、自己肯定感を育成するには
(1)
子どもの「できている点」指摘する
 子どもたちの何気ない、当たり前の行動にこそ関心を持ち、「やあ、よくきたね」「楽しそうだね」など自然に声かけをします。
(2)
子どもの言動を可能な限り肯定的にとらえる
 授業中「おしゃべりをやめなさい」から「こっちを見てくれる」といった言い方にします。どうしたら、否定・禁止から、肯定的表現になるかを工夫するのです。
(3)
子どもの存在を肯定する
 たとえ勉強しなくても、掃除をサボッていても、また尊いのです。そう見られると子どもは変わります。問題の大半はそれだけで解決するでしょう。
(4)
子どもの基準で考えてみる
 教師の基準でなく、その子の基準で考える習慣を持ってほしい。すべての子どもは成長したいと望んでいます。その視点から子どもたちの言動を見る。その子のしたいことをわかろうとする。「ああ、きみはこうしたかったんだね」と言うことができて、子どもの立場に立って共感がうまれます。
 私たち教師が子どもたちの信頼を裏切るような言動をしていなかったか、いつもチェックする必要があります。
 子どもの自立をめざすステップとは
(1)
子どもの感情を受け止める(自分を見つめられるようにする)
 イライラしたなど、自分の感情が自覚できると、自立への第一歩につながります。それは自分の気持ちを大切にする自分を慈しむ態度につながっていきます。教師が「それは、怒りたくなるよね」と感情に相対すると、どうしたらいいかが見えてくるものです。
(2)
子どもの意志を聞く(自分を理解する)
 「あなたは、そのときどう思ったの」「どうしたかったの」と、感情の背後にある子どもの思いに触れます。子どもは思いを話せたときに、はじめて「わかってもらえた」と感じることができます。そのとき、子ども自身の中で自分の問題も整理されてきます。自分の問題と向き合い、「どうしようか」という気になるのです。教師は子どもの事実関係を把握し、その背後を明瞭にすることです。
(3)
子どもに選択肢を用意する(可能性をさぐる)
 子どもに選択肢を与え、どんな結果になるか予測させます。たいていは「どうすればいいか」見えてきます。すべての行動には相手がいますから「そうか、では相手にどういうふうに言おうか」共に考えるようにします。それが可能性をさぐることになります。
(4)
子どもの自信を育てる(思ったことを実行する)
 ここまできたら、あとは実行です。そのときあらかじめ失敗を覚悟しておくことです。失敗からたくさんのことを学べることを知らせておきます。他者の協力を引き出すかということも考えさせます。
(5)
子どもの責任感を育てる(自分の課題は何なのか)
 責任感とは、いま起こっていることに、自分はどう対応するかという積極的な意識です。子どもが、いろいろなことを言うのに耳を傾けながら、勇気づけをしてやる気を出させ、「では、あなたにできることは何ですか」と問いかけます。
(
椎名 薫:1954年埼玉県生まれ、埼玉県公立小学校教師。アドラー心理学に興味を持つ、上級教育カウンセラー)

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兵庫県山口小学校の10年間の実践で高い学力を子どもたちはつけていった

 山口小学校の実践はNHKの番組で全国に伝えられると、大きな反響がありました。読み書き計算の徹底反復の実践だけをやっているわけではありません。その基礎学力を生かして、仲間づくりや体づくり、生活づくりなどと組み合わせながら、学ぶことが楽しい学校をめざしてきました。子どもたちには笑顔があります。学校と家庭が協力しあうことで育てられてきたのです。
 子どもたちに基礎学力がないと、課題をお互いに発表しても理解できないのです。それで私たちは基礎学力が大事だということを感じるようになりました。実践が進み子どもたちに学力がついてくると、子どもたちが落ち着いてきました。問題行動で教師が悩まされることはありません。しっかり学習させているにもかかわらず、八割の子どもが学校が楽しいと答えています。保護者も95%が山口小学校に満足していると答えています。また卒業生の中から難関と言われる国公立大学に続々と合格したのです。
 読み書き計算の学習は、子どもにとってしんどいものです。しかし、友だちが励まし合う学校では、一緒に学んでいるという共同意識に支えられ、つらいハードルも乗り越えられます。苦しい学習も喜びに変っていきます。そして成長が自覚されることによって自信もわいてきます。競争がゲーム、楽しさとなり、真のライバルは昨日までの自分なのです。
 すべての教科で学習するには、読み書き計算の能力が必要です。つきつめると言葉と数です。言葉が豊富で、数が早く正確であることが確かな学力の土台なのです。学習能力は、見聞きすることを理解する能力です。体得すると、授業がわかって面白くなります。だから、学習能力が伸びてくると、子どもも教師も授業が楽しくなってくるのです。そうすると子どもたちの学習能力が加速度的に高まっていきます。
 山口小学校の「読み書き計算」の実践を紹介すると
1 読む力を育てる
 読む力の指導は、音読・暗唱・読解指導です。育てるには毎日の音読練習が有効です。どんな教科も音読させることが重要です。算数などを音読して論理的な理解力をつけておくことです。音読カードを用意し宿題に出します。同じ文章を一か月音読させると子どもたちは暗唱してしまいます。暗唱が最も効果的です。音読が上手になるコツは、少しずつ全員の音読を毎日聞いてあげることです。そしてよくなるポイントを助言することが大切です。
 読書指導は、朝の10分間読書、お話を聞く会があります。頭の新鮮な朝に、短時間集中的に読書をするのは効果があります。読解の指導は「一人調べ」という各個人が物語の登場人物の心情を表すことばを見つけて、自分なりの解釈を書く学習です。それを比べ合わせる「全体指導」の段階があります。読解力は一人調べと発表をくり返せば深まります。
2 書く力を育てる
 漢字は読み書き同時習得で、初めて学力になります。山口小学校では、子どもたちにとって理解しやすいため熟語から漢字の意味を覚えます。連想ゲーム式に覚えると加速度的に漢字を覚えることができます。漢字は要素ごとに分け、まとめて覚えると覚えやすくなります。
漢字の習得率を上げるため、
(1)
毎日必ず漢字の練習時間を作り、間違いの多かった漢字ばかりをプリントにまとめて、全部習得できるまで指導する。
(2)
新出漢字の学習は教科書の進度とは別に指導する。短期間に覚え、復習に時間をとり、11月中に終了する。
(3)
三学期は漢字学習の復習期間とする。
(4)
年度末に、全校一斉に「漢字力試し」(各学年熟語20)を実施し、習得率の確認をすると同時に、次年度の指導の参考とする。
(5)
習得率の悪い漢字をピックアップすることで、効率的な習得率の向上を図る。
3 計算力
 計算力は算数のかなめです。計算力の土台は、一桁のたし算、ひき算、かけ算です。分数や少数、わり算は、それらの組み合わせでしかありません。土台をしっかり築くと以降の学習のつまずきを防ぐことができます。そこで、簡単にきたえられるように考案された教材が「百ます計算」(岸本裕史考案)です。百ます計算は縦と横に10個ずつ、百個のますを作り、たし算やひき算、かけ算やわり算を行い、時間を計ります。中学年以上で2分以内でできると算数の計算が支障なくでき、3分になるとつまずきが目立ちます。それで2分以内を目標にします。大切なのは毎日少しずつやることによって、記録が伸びることが励みになり、自分の成長に喜びと自信を持てるようになることです。全学年で、算数の授業の最初の10分間やって計算力をつけています。
 年間を通じて体育にもたいへん力を入れています。朝のジョギングや縄跳びなどをして、体が活性化した状態で学習に入れるようにしています。5月の運動会、6月の鉄棒発表会、夏の水泳、11月のマット運動会、冬のマラソンなど、知育を伸ばすためにも体育は欠かせないと考えているからです。
 知育と体育の健全な発達を支えるものは生活習慣です。子どもたちの学力が伸びるためには、全力で学習するための集中力と忍耐力が必要です。私は生活習慣の乱れを直すことが、学力づくりの条件と考えアンケートを実施しました。生活習慣が乱れてくると、子どもたちは落ち着きを欠いたり、集中力がなくなり、キレたり、荒れも増えます。そのためには、学校と家庭は常に密接な連携を保っていなければなりません。そこで、食生活や生活習慣についての授業を授業参観に合わせて全校で実施しました。朝食をしっかり食べると子どもの精神の安定のためによいことがわかってきました。各家庭には、米飯の朝食を推奨したり、睡眠時間の確保とテレビの視聴時間の短縮をお願いしました。PTAの講演会では生活リズムの研究者や医者を招き、みんなで学習しました。こうして、子どもの学習を支える体と健康作りが進むことで、子どもたちの集中力と忍耐力がつちかわれていくのです。
 宿題をしっかり出すようにしています。宿題は主に市販のプリントでだします。ドリルも使います。だいたい「学年」×15分~20分です。宿題の学習時間はそれほど多くはありません。なぜかというと、どの学年でも宿題を出しますから、家庭での学習習慣が早くから確立していること、学校の学習で得られた集中力が家庭でも発揮されるからです。学校での学習と家庭学習が相互的に働きあうことで、自分の学力がしっかりしたものになるということを、子どもたちはよくわかっているのです。ですから、宿題をしない子どもが少ないのです。
(
陰山英男:1958年兵庫県生まれ、兵庫県公立小学校教師、広島県尾道市立小学校長(公募)、立命館小学校副校長、国の教育再生会議委員、大阪府教育委員長を歴任した。兵庫県の朝来市立山口小学校で保護者を巻き込んで、基礎学力向上のための岸本裕史が提唱した百ます計算や日常の生活を見直すチェックシートの活用などで成果を上げた)

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子どもの「学童期」(6~12歳)と「思春期」(12~20歳)の発育の特徴を理解し対応するには

(1) 子どもの発達「学童期」(6歳~12歳)
 子どもは自分のスピードとやり方を大切にする。そして、子どもは自分らしくがんばる。そういったことに「大らかさと自信」を親や教師が子どもにつけさせるようにべきである。
 そして、それを培うには、親や教師は子どもに有能感「自分には自分なりの力があるという感覚」を学童期に身につけさせることが何よりも大切である。
 「有能感」を身につけさせ「勤勉性」を育成することが学童期の最大の課題である。
 もしこの「有能感」を身につけそこなうと、深い「劣等感」を抱くことになり、これはこの後の人生を通して、重い苦しみとなって悩まねばならぬものとなりがちである。
 「有能感」は学校でのみ得られるものではない。親は勇気を持ち英知を傾けて、子どもに、さまざまな体験をやらせてみて、子どもの内にある力が何かを探り、引き出すよう励ますことが肝要である。学童期ほど適切な時はない。
 もう一つ、学童期である小学校高学年に「あなたと私」という仲間意識を育てることである。この時期に少しずつ、他者の喜びや満足や安定を自分のそれと同じように重要なものと考え始める。仲間とのつながりは社会性をやしなううえで大事な経験を積むことになる。
(2)
思春期(12歳~20歳)
 大人の身体になりながら、大人と認められぬ若者たちは、思春期という中間地帯を、悩みつつ、深り、歩んでいかなければならない。その時期、彼らは生まれて初めて「自分は何か」「これからどうなっていくのか」といった自分の存在を自分に問う。真の自分を求め確立していく。
 思春期は性の成熟が進んでいき、ホルモン内分泌の動きによる性の衝動が若者たちをまどわせ、不安にする。
 家庭から一般社会へと自己存在の場の拡大を迫られるし、依存的状況から独立的状況へとさまざまな困難な課題を抱かえる。
 新しい安定した基盤を自己の存在の根底に見いだし、確立するまで、思春期は「不安」にぬりつぶされる。
 思春期は安定した基盤を持たぬゆえ、自意識がむやみに強くなり、周囲に対する過敏性を極めて強いものにする。むやみに威張るかと思うと、深い劣等感に落ち込む。大人に対して親愛の情を持つかと思うと軽蔑的にふるまう。孤独を好むかと思うと集団に身を置きたがる等、全く相反する心情が、一人ひとりの若者の心の中にうずまいているということである。
 また、ほんの少しのことで幸福の頂きに登るかと思うと絶望のどん底に沈み込むといったように、若者の感情がとかく両極端に動きがちである。
 最後に社会的側面はどうか。大人としての立場は出来上がっていない。そうした中で、若者は既成の社会や大人に鋭い批判の矢をあびせ始める。経験を持たぬ若者たちは、観念的に批判する。
 そのように、しだいに社会との接点を持つなかで、若者はしだいに社会的体験を深め、真に社会の一員として参加する準備をするわけである。
 いずれの側面においても思春期が「危機的である」と言える。そうした危ない橋を渡ってこそ、自我の同一性、すなわち「自分を取りまく世界の中や、広がりの中で、自分を保ちながら、なおかつ他者と密接な関連をもち、自己の統一体としての存在を確かにする」という作業が可能になるのである。
 我々大人はこれらの思春期の特性をよく知り、柔軟で広やかな心を持って、若者を眺めていくべきだと思う。
 表面的にくずれがあるように見えても、内面的に成熟過程をしっかりたどってきたものは、早晩自分をより確かな形で見出し、歩んでいくにちがいない。
 一方、表面的には、ほころびの少ないものも、内的成熟いかんによっては危ない場合もある。つまり表面のほころびよりの程度よりも、それまでの発達過程がより重要であると考えられる。
(服部祥子:1940年生まれ、大阪大学医学部精神科医、大阪市立小児保健センター精神科医長、大阪人間科学大学教授等を経て、頌栄短期大学学長)

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自分たちで考え、学んでいく子どもづくり

 先生になり3年生の担任に。一生懸命に子どもにかかわるのだけど、教室はいつも落ち着きません。保護者会で「先生大丈夫ですか」と訴えられる始末でした。
 なんとかしようと僕は、本屋で授業の手がかりを必死に探し、仮説実験授業の「たのしい授業」を立ち読みすると楽しそうな授業実践がたくさん載っています。すぐに、そのサークルに入りました。スライム作りを紹介され、すぐにやってみると、子どもたちは大喜びでした。
 仮説実験授業では「授業の価値は子どもが決める」ことを前提としているので、授業が終わると子どもたちに5段階の授業評価と感想文を書いてもらうことが定番でした。この仮説実験授業のおかげで、僕は自分の実践を記録し、子どもの声に学びながら授業を改善することを学びました。
 その後、長期研修の試験に合格し、1年間母校の大学で学ぶことになりました。ワークショップに興味を持ち、ワークショップを研究している新潟県高志小学校を訪れました。研究の仕組みはシンプルで
「先生が自主的に一人ひとりがやりたいことをする」
「お互いにやっていることをレポートにして持ち寄ってワークショップで紹介し合う」
「成果がでたものは、お互い取り入れ合い広がっていく」
というもので、コーヒーを飲みながら自由に語り合います。僕も参加しましたが、心地よく、やる気が満ちている職員室ってとてもすてきでした。教室だけじゃなく、職員室って大事だなあ。学校って変わると興奮しました。
 職員室のチームワークづくりのために、小学校へファシリテーター(参加者の学習がスムーズに進行するように支援する人)に来てもらって研修をしたのです。そのファシリテーターの見事な進め方、振り返りの的確さ、人間的魅力に魅せられ、僕は子どもたちがどんどん動いて学び始め、伸びていく。そんなファシリテーターになろうとした。
 吉田新一郎さんから、ライティング・ワークショップ(作家の時間)という、「子どもたちが本物の作家になったつもりで、たくさん書く」活動があることを教えてもらいました。僕は、これが教室の学びを変えると直感しました。
 いいと思ったことは、すぐ試してみるのが僕の売りです。手ごたえは十分でした。子どもたちは書くことに没頭し始めました。書くことがクラスの中心になっていきました。卒業文集に載せる作文も、納得がいくまで5回も書き直す子が続出しました。僕はこの活動によって、子どもたちが主体的に情熱を持って学ぶ取り組みを体験しました。
 その後、「自分たちで考えて、自分たちで学んでいく」子どもづくりをめざして、つぎのような活動を展開していきました。
(1)
振り返りジャーナル
 振り返りこそ学びです。授業、行事、帰りの会で、そのとき起きていたことを振り返って意味づけをする。学びそのものです。子どもたちも僕も毎日書きます。「続けていると自分の成長につながる」と実感している。
(2)
ホワイトボード・ミーティング
 質問する方法をカード使って練習し対話を深めることが身につくと、ホワイトボードに意見を書き、効果的に合意を形成する方法です。
 掃除や給食の改善など、子どもたちが話し合いを進めていきます。聴くことが上手になり、無用な対立は減り教室が穏やかになります。授業などの話し合いが上手になり、学習に深まりが生まれます。
(3)
読書へのアニマシオン
 子どもの読む力を引き出すメソッドです。国語の授業の最初の10分間は読書です。読み聞かせでクラスにしっとりとした一体感ができる。
 本の魅力を子どもたちに伝えることが僕の仕事だと確信、教室には本がいっぱいあります。
(4)
教室リフォームプロジェクト
 子どもたちがアイディアをだし、自分たちで教室を居心地良くする。それは自分も周りの人も笑顔にします。
(
岩瀬直樹:1970年生まれ、埼玉県公立小学校教師。「学びの寺小屋 楽学」主宰。平成20年度埼玉県優秀教員表彰)

 

 

 

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