カテゴリー「保護者との協力関係をつくる」の記事

保護者に子どものよいことを伝える「電話感謝デー」で、教師と保護者の信頼関係をつくる

 子どものよいことを電話で保護者に伝える「電話感謝日」をはじめた。
 2週間に一回、木曜日に私は名簿を見ながら保護者に電話をかけている。つけた名前は「電話感謝デー」です。
 
「もしもし、溝部です。今日はいい電話ですよ」と言って話し始める。
 
「ええっ、そんなことがあったんですか」と、お母さんの喜ぶ声がうれしい。
 1軒目、2軒目、3軒目と進む。だいたい5軒目あたりが本命だ。はじめはウォーミングアップをかねて軽やかにかけるものの、5軒目あたりが近づくとちょっぴり手に汗がにじむ。
 あれは、たしか11月頃のことだった。電話感謝デーも4周目くらいになった時、いつものように、子どもの「よい出来事」をお話しし、電話を切ろうとした。
 すると、お母さんから「本当にそれだけですか?」と、聞き返された。
 
「そうですよ。今日は電話感謝デーといって、よいことを連絡する日なんですよ」と言うと、
 
「そんなことはないでしょ。それだけで学校の先生が連絡してきますか」と、きつい調子で問い詰められた。
 ああ、本当はこれが言いたかったんだ。それを半年もがまんしていたのか。
 それでも、お母さんが本心を話してくれたことがうれしかった。
 
「お母さん、本当によいことをしたから電話したんですよ。悪いこともお知らせします。でも、それと同じくらい、よいお知らせもしたいんですよ」と、私も本心を話した。
 大人同士が信頼の糸をつなぐには時間がかかる。けれど、思いが通じるとうれしいもの。
 6軒目、7軒目。これでおしまいだ。最後のほうには、いい夢が見られそうな保護者を入れる。これくらいのクールダウンは、許してくださいね。
 これを続けていると、
 
「うちにも、電話感謝デーの日がきましたか。待っていました」と、そう言って、喜んでくれる保護者も出てきた。
 電話で保護者が少しでも喜んでくれるのなら、やってみようじゃありませんか。
(
溝部清彦:1958年大分県生まれ、小学校教師。全国生活指導研究協議会指名全国委員)

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教師と学校に文句を言っていた親が協力するようになった、どのように対応したか

 学校に文句を言ってくる保護者は「困った親」として、クレーマーとかモンスターペアレントとして敬遠されます。
 教師は親の様子を嘆き、親は教師の状況を嘆き、お互い批判的な眼差しを強めます。学校と保護者との関係は実によそよそしいものになってしまいます。
 「困った親」を「困っている親」として見るという見方に立てるかどうかが肝心なことではないか。
 「困った子」「困った親」といった見方から、保護者と教師、子どもと教師とのすれ違いが生じてきてしまうのです。荒れる、暴れる、ものを壊す、人を傷つけるなど、問題を起こす「困った子」は、実は本人が困っているのだという認識が必要です。
 私は、親と共同して子どもを育てるために「対話」を大事にしました。対話は、直接会って話をする方法と、連絡帳を使って文章で対話する方法とがあります。
 対話による会話は、消えていってしまうという点が利点でもあり、欠点でもあります。おしゃべりは、やがて忘れられます。都合のいいことだけが頭に残ります。
 気持ちや考えが試行錯誤の状況であるときは、会話による意思疎通が大事です。新しい発見があったりするでしょう。
 連絡帳は、文章で確実に思いを伝えていくことができます。くり返し読み返すので、忘れないどころか、読むたびに印象が深まっていきます。
 私が対話を大事にして「困った親」を解決していった実践例を紹介します。
 私はクレーマーの保護者A(以降A)がいる小学校の二年生の担任になりました。
 前年の一年生のとき、つぎのような出来事がありました。
 Aさんの子ども(以降a)が自己中心的で他の子どもの気持ちを考えない言動に、まわりの子どもたちから言葉による攻撃がありました。
 Aさんから「aがいじめられて、学校に行きたくないと言っているので休ませる」と、電話があり、その後、aさんは学校を休み、Aさんから担任への抗議の電話が続きました。
 担任が家庭訪問しても、一方的な担任批判となり、登校させる話にはなりません。学校に来て校長にも抗議するようになりました。
 やがて、Aさんはわが子がB子にいじめられたと弁護士を立てて、B子の親を相手に損害賠償請求したのです。B子の親は子どもを裁判に巻き込ませたくないので金銭的な和解に応じました。
 年度末の三学期になり、Aさんは「B子を転校させろ」と言ってきました。それで異例の学級編成替えをすることになりました。
 私は二年生を担任するにあたって、aさんが四か月におよぶ長期欠席の後、登校できるのだろうか。親と学校の間に生じた不信感をどのように乗り越えていったらよいのか考えました。
 
「困っ子」は「困っている子」、「困った親」は「困っている親」だという思いを強く胸に抱いて指導する準備を始めたのです。
 親とのていねいな対話が大事なので、連絡帳を預かり、翌日応答するようにしました。aさんのよい言動を連絡帳に書くようにしました。また「子どもたちは、子ども同士のトラブルから学ぶ」ということも連絡帳に書きました。
 友だちづくりを中心にした集団づくりの成果が表れて、aさんは成長してきました。aさんの学校での様子のよいことを中心にAさんに具体的に伝えました。問題点も伝えましたが、こみいったことは会って話したり、電話をしたりしました。
 7月になって、Aさんの問題点が表れました。子どものトラブルを、わが子のいい分だけ聞いて客観的に判断しないのです。Aさんから私に電話があり「Cくんのわが子に対する不愉快な言動が変わらないなら、私は何らかの方法を考えざるを得ません」と、前年と同じ脅しをしてきました。
 私と会いたくないということから、電話でのやり取りとなりました。私は、Aさんのわが子の言い分だけで判断している客観性のなさと、Cくんへの偏見について考えを改めるように迫りました。Aさんも言いたいことを言いました。
 十分聞いたので「aさんの成長をだいなしにしないように」と言って、こちらから電話を切りました。
 やはり、子どもは子どもの中で育つものです。aさんの場合もそうでした。朝の会、帰りの会を大事にして、苦情を出させ、不満を家に持って帰らさないようにしました。
 子どもたちの中で起きたトラブルは、話しい合いを通して解決させていくようにしました。そのうち、1日を振り返って、友だちを認めたり、感謝することが増え、認められる喜びを知ることになったのです。
 二学期の合同誕生日会で、aさんは班の出し物で、ナレーター役をして、ひょうきんさを見せ、みんなを笑わせました。aさんがいると学校が楽しいという声がでるようになりました。aさんはCくんとも仲よくなっていきました。
 12月の生活科のイベントで、誘いを受けてAさんも他の保護者と共に生き生きとお手伝いをするようになり、保護者同士の輪づくりが実ってきました。
(
大和久 勝:1945年東京都生まれ、元東京都公立小学校教師。大学講師、全国生活指導研究協議会常任委員、『生活指導』隔月刊編集長)

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子どもの学ぶ意欲を保護者と教師が共同して育てるにはどのようにすればよいのでしょうか

 わが子の学ぶ意欲に関心のない親は一人もないといってよいでしょう。どこの懇談会でも話題になります。
 懇談会で 「うちの子はできが悪くてね。親が親だからしかたがないのかねェ」と言う親に懇談の場面で私は何度も出会いました。間違った情報が流れているのです。
 そういう親は、能力の低い親からは能力の低い子どもしか生まれないと思っているのです。私はそうしたとき、懇談している親にきっぱりと「能力は遺伝ではありませんよ。学力は伸ばせますよ」と。
 そして懇談では、つぎのことを必ず話題にしなければならないと思ったのです。
 私が教師をしてきた50(小学校、中学校、高校、大学)の体験から、遺伝どころか親を越えて力を伸ばした子は数えきれないほどいます。
 決して遺伝がどうこういう問題ではありませんでした。親子であっても、それぞれ違う人格なのですから、ちがう可能性があるのは当然のことなのです。また塾へ行かず、自学自習で目的を遂げた子どももたくさんいます。
 では、何が大切だったかと考えてみると、二つありました。 
 一つは、子どものもっている取り柄に気づかせ、そのことを自信にして学習意欲に結びつけていくこと。
 もう一つは、学習するとき「質問とくり返し」を大事にすることを教え、支援してあげるということです。
 つまり、自信をどう育てるかに眼を向けることが何よりも必要です。そのためには
「勉強以外のことで自信をもたせ、それをバネにして学習意欲に結びつけていくといいのですよ」と。
 たとえば「友だちが多い」「持久走が得意」「後かたづけができる」というようなことです。これを子どもに意識化させ「できるぞ、やれそうだ」と自信になるように励ましていくのです。
 でも、これたけでは、すぐに学習の意欲には結びつきません。さらに示唆を与えるのです。
「友だちが多いんだから、わからないことは質問したり、教え合ったりするといいよ」 
「持久走が得意でねばり強いんだから、学んだことをくり返し覚えていくといいよ」
「後かたずけができるんだから、きちんとした計画を作って学習すると力が伸びるよ」
というようにです。
 すると、子どもは勉強以外のことが学習に結びつくことに気づき、しだいに「やる気」をだしていくようになるのです。
 また、このことは、ほんとうの学力を身につけるうえでも重要な意味があります。というのも、本当の学力は成績のことをいうのではありません。自分で疑問を持ちながら真理・真実を解き明かしていくことの力のことをいいます。
 また、他の人と学び合いながら、そこで体得する認識・行動・感性の総合的なものをいうのです。
 したがって、子どもが自分の生活と行動に自信を持って認識の獲得に挑むようになることは、ほんとうの学力に迫る土台となります。それは、子どもの将来にわたって、学ぶ意欲を持続させる土台ともなるのです。
 親に「学習の方法がわからないので、つまずいているみたいです。どうしたらよいでしょう」と、相談されることがあります。
 大人たちが少し考え合ってみれば、子ども自分でやれることが二つ見つかります。それは
(1)
わからない点を友だちや先生に質問すること
 質問は、わからないことを見つけだして他の人に聞くことです。ですから「わかるため」というだけでなく、その子の自発性を培うのに大きな意味をもっています。
 また、疑問が解けて知的要求が満たされれば、自分の努力の成果ですから感激も大きいのです。
 
そして、友だち同士でやれば友情も深まりますし、先生に教えてもらえば多面にわたって見識を身につけることができるでしょう。まさに一石二鳥いや四鳥にもなるわけです。
(2)
学んだことをくり返しながら身につけること
 人間は何もかも覚えている人などいないでしょう。ですから大事なことは、くり返して覚えなければどんどん忘れてしまいます。一度学んだだけですぐ身につくということはありません。
 そこで、くり返し覚えるのですが、その過程で新しい発見をしたり珍しいことに出会ったりすることもたくさんあります。たとえば「保険」という漢字をくり返し覚えているうちに「検査」「倹約」のけんという字は「へん」がちがうことに気づいたという子どもがたくさんいます。
 ですから「くり返し」は記憶を確かにするだけでなく、想像・創意を豊かにする役割ももっているということができるのです。
 今の子どもが「くり返し」ができないのは「速くて便利な方法」を追求してきた社会が「やればできるはず」の子どもの力を封じ込めてしまっているのです。大人たちこそ反省しなければならないことなのです。
 懇談で親たちは「言われてみれば、そのとおりですねェ」と、うなずいてくれました。私は「今からでも決して遅くはない」ということを強調したいのです。
 それには教師が授業で「質問」を大事に扱い、それを「子ども同士の学び合い」で解決できるように指導することが大事です。
 また、親は「質問とくり返し」の大切さをわが子に話してあげ、時間と手間をかけて実行できるように励まし援助してあげるとよいでしょう。
 親と教師が共同して、その努力をすれば、必ず子どもの力を呼び起こすことができます。それが実行できてくると、生きる力となる学力が子どものものになっていくと思います。
(
坂本光男:19292010年、埼玉県生まれ、元小学校・中学校・高校の教師。教育評論家。日本生活指導研究所所長・全国生活指導研究協議会会員)

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担任に不満を持つ保護者との出会いが私の教員人生に大きな影響を与えた

 初めて学校に赴任したとき「自分こそ世界で一番優秀な教師だ」と、私は思っていた。
 新任で五年生を担任し、初めの頃こそ、若い教師ということで、多くの保護者から笑顔で歓迎を受けた。
 しかし、時が経つにつれて「学習の進度が遅い」とか「教室が汚い」とか「子どもの言葉づかいが悪くなった」といった不満が保護者の間から出てくるようになり、それとともに保護者の顔から笑顔が徐々に消えていった。
 私自身も保護者に会うのがおっくうになり、保護者会の日は私が不登校になりそうであった。
 そのような状況を感じて私なりに、子どもと休み時間、一緒に遊ぶとか、子どもが提案してきた早朝のマラソン練習に付き合うなど、少しずつ努力をしていたが、保護者にはならなか理解してもらえず、苦情はいっこうになくなることはなかった。
 五年生も終わりに近づき、学年末の保護者会が行われた。学年末ということもあり、保護者の私への批判は、ますます拍車がかかった。
 次々に出される私の実践への不満、保護者会の雰囲気は重苦しいものになっていった。そして、いつも私に一番厳しい苦情をいう学級代表のお母さんがスッと立ち上がって発言を始めた。
 私は、路整然と完膚なきまでに私の批判が語られると想像した。重っ苦しい気持ちを通り越して「どうにでもなれ」と、開き直ってしまった。
 しかし、その母さんから語られた言葉は
「皆さん、いろいろとご意見があると思いますが、先生が担任されて、私たちの子どもがたくましくなったのは、どなたも感じることではないでしょうか」
「私は、先生のこの面を大切に見守っていきたいと思います」
ということだった。
 今までの重っ苦しい教室内の空気がこの発言でガラッと変わった。発言の最中に何人かの保護者のうなずく姿も見えた。
 私はこのお母さんのひと言を聞いて
「ああー、私はこのひと言で生きて行ける。これからの教員生活、死にもの狂いで努力していきたい」
と、思った。
 教師は誰でもみんないい教師でありたいと願っている。ただ、一生懸命努力しても人間関係のゆがみや、相互理解の不足などによって、自分の持ち味が発揮できない場合がある。
 そのようなとき、保護者のひと言でやる気を起こしたり、反対に意欲を失ったりする。私の場合、あの厳しい学級代表のお母さんがいたおかげで、やる気が出て努力する教師になれたと思う。
 このお母さんが厳しかったのは「本音で私の実践を見つめてくれていたからだ」と、思うようになった。
 
「子どもや保護者と、ともに本気で、人生を一緒に生きることの大切さ」を、私はこの母親との出会いで学んだ。
 その後、六年生の担任として、自分の実践を保護者にしっかり伝えようと、学級通信を毎日出した。その結果、子どもに毎日、日記を書かせることになった。
 また、学級通信が授業の資料にもなった。さらに、学級通信に後押しされて、実践を最後まで頑張りぬいた。
 初めのうちこそ、苦手だった保護者会が、私の学級経営の重要な柱の一つになった。
 一人の母親との出会いが私のその後の教員人生に大きな影響を与えたのである。
(
西島興蔵:元東京都公立小学校管理職)

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保護者との個人面談でよい関係をつくるにはどのようにすればよいでしょうか

 保護者に笑顔がない場合でも、教師は笑顔で迎えたいものです。いきなり本題に入らず、子どもについてのさりげない話題から入ると、保護者の緊張感も和らぎ、話し合いもスムーズに進みます。
 学校生活の中で、子どもたちがふとつぶやいた一言や、ふと見せた意外な一面などを、さりげない話題として、日ごろから記録することを心がけておくとよいと思います。
 さりげない話題がきっかけとなって、家庭での子どもの様子を保護者が話してくれることもあります。
 面談中は努めて明るく話すようにします。子どもの失敗や直してほしいところなども、明るく話した方が保護者に安心してもらえ、好感度が上がります。
 個人面談は、教師が保護者に学習面や生活面で子どもの顕著な様子を伝えるのが目的ですが、保護者の中には話したいこと、聞きたいことがある人もいます。
「お子さんのことでご心配なことが、何かありますか」
「お聞きになりたいことや、ご要望が、何かありますか」
 と聞いて、必ず保護者の話を聞く時間を設けます。
 保護者の話を聞くとき最も大事なことは、共感的に聞くということです。話の内容や話している人の気持ちを受け入れながら聞くようにします。そうすれば、保護者は安心し信頼感を高めます。
 共感的に聞くには、うなずきながら聞く。時々、言っていることを確認し復唱する。保護者の気持ちを復唱するようにするとよいでしょう。
 保護者が聞いてあまりうれしくないことは言葉でさらりと伝え、よいことは具体的なエピソードにしたり、写真で見せたりします。こうすると保護者は子どものよい面が記憶に残ります。
 あまりよくないことを伝える際には、どうすればよくなるのか、その方法を伝え「ここを改めれば、こう伸びていきます」というように、よくなった未来の姿をイメージして伝えるようにします。こうすれば、よくないことも、よいイメージで伝えることができます。
 理想的には、よいことを伝えてから、よくないことを伝え、最後にさらによいことを伝えて終わるとよい。
 保護者に親しみを覚えてもらうには、くだけたところ、だめなところ、などを見せることが必要です。時には、保護者と世間話をしたり、趣味の話をしたり、ざっくばらんなところもあるとよいでしょう。ただし、肝心な話をさしおいてというのはいただけません。
 それは、保護者との距離感を縮め、関係をつくるための必要なコミュニケーションとも言えます。世間話や趣味の話ができるくらいに親しくなれば、学級経営もやりやすくなります。
(山中伸之:1958年生まれ。栃木県公立小・中学校教師。実感道徳研究会会長 日本群読教育の会常任委員)

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親になって教師の幅が広がり、荒れた学級を立て直すことができるようになった

 教師になって18年目の女性小学校教師。子どもが安心しそうな優しげな容貌に似ず、かなりタフな精神の持ち主のようで、これまで学級崩壊した学級を受け持ち、みごとに立て直した経験もある。
 二児の母親として子育てと教師の仕事とのはざまで苦しんだが、親となって得ることができたことについて次のように語ってくれた。
 子どもが生まれてたいへんな反面、親になったことで教師としての幅が広がったかな、と思えることがあります。家庭訪問や親子面談のときなんか、親の心理が手にとるようにわかるのも強みです。
 何年か前、非常に問題の多い一年生の学級を受け持ったことがあった。その時の学級にも暴力的な子とか、いじわるする子がいた。
 その中のボス格の男の子が「俺のランドセル持ってけよ。持っていかないとぶっ殺すぜ」と、他の子を脅してたのね。家に帰って親に「○ちゃんに、ぶっ殺すって言われた」と言うと、親はびっくりしてすぐ学校に電話をかけてくる。
 そこで「ランドセルは自分で持つこと。それから、ぶっ殺すなんて言ってはいけません」と指導すると「おまえ、先生に言いつけただろ」とまたいじめる。しまいには学級の大半の子が情緒不安定になっちゃって、手に負えなくなってきた。
 そこで私、思い切って学級全員の親を学校に呼んで個別面談したの。一人30分ずつで三週間かかったけど、それなりの成果はあった。
 状況を、順を追って説明することで親の不安が解消されるし、親とよく相談のうえ、親と教師の連携プレーで根気よく指導すれば、子どもはちゃんと言うことを聞く。
 ただ、ボス格のいじめっ子のお母さんはかなり手ごわくて、納得させるのに一時間半かかった。最初の30分は私に対しての反感。「上の子はおとなしいから、この子は腕白なくらいでいいんです!」って、すごい剣幕。
 話を一通り聞いた後、私は
「こういう子は、四年生か五年生になったあたりで、いじめられっ子になりますよ」
「今は体格も力も優っているけど、みんなが成長して横並びになったとき、恨みつらみが噴出して、いじめっ子が、いじめられっ子に転ずる」
「私は、そういう例を過去に何度も見ているから。これ、脅しでもなんでもなくて真実なんですよ」
と、強調して言った。
 面白いのは、このへんから、お母さんの心理状態が「反感」から「戸惑い」に変わっていくのね。で、たたみかけるように
「そうなっては困るので、お母さんもどうぞ、家でお子さんの言動に気をつけてあげてください」
「まだ、間に合うんです。二年生以降の記憶は消えないけれど、今、お子さんが変われば、一年生のときのことは同級生の記憶に残らないと思います」
 面談の最後の30分は、もう「深い共感」ね。そうなればしめたもの。そのお母さんは
「これからは、うちの子が何かしたら、なるべく早く私に教えてください」って、態度が軟化した。
 論理的な説得力をもって最後は親心に訴える。ここで、他ならぬ「親」としての私が生きることになります。
 でも、こうした親との駆け引きがうまくできるようになったのは、じつは私の上の子が小学校に入学してから。一年生の時の担任が連絡帳を本当によく読んでくれて、どんな些細なことでも、学校で何かあると逐一連絡してくれる先生だった。
 まさにかゆいところに手が届くという感じで、親が先生にこうしてほしいと思うことを全部してくれた。それを見てすごーく勉強になったのよ。
 以来「親として先生にしてもらいたいと思うことをしてあげたい」というのが、私の座右の銘になった。逆にコレはしてほしくないなと思うことは決してするまい、と心がけている。
(
森口秀志:1966年東京都生まれ、フリーライター、エディター。大学在学中から教育・音楽・若者文化等をテーマにルポを発表)

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教師が保護者から信頼を得るためには、どのようにすればよいか

 教師が保護者から信頼を得るために大切なのは保護者の話しを心をこめてじっくりとお聞きすることです。「この先生は信頼できそうだ」という気持ちを抱いてもらえるまで、信頼関係づくりに徹することが重要です。
 学校に批判的な親に対して、まじめな教師ほど正論で説得しようとする傾向があります。しかし、親のほうとしては「どうしてわかってくれないの」と被害者感情を募らせてしまいがちです。
 教師の保護者対応でいちばん大切なのは、「おもてなしの心」です。おすまし顔の教師は嫌われます。歯をだして笑える、気さくな雰囲気を醸しだしましょう。
 保護者の中には被害者感情や不遇感の強い人がいて、「私はもっと大事にされるべきなのに、大事にされていない」という気持ちを抱きがちなのです。
 私は、さまざまな職種のクレーム対応係の方にお話しを聞きました。みなさんが口をそろえておっしゃるのが、「おもてなしの心で、何かを教えていただくという気持ちで接するしかない。あとは持久戦です」ということです。
具体的には、
(1)
学校の玄関までお迎えに行く
 おもてなしの心はまずお出迎えです。学校まで保護者が足を運んでこられたことへの労をねぎらいます。そして応接間など、冷暖房のきいた居心地のいい部屋にご案内します。
(2)
お茶とお菓子を出す
 お客として、もてなされていると思っていただくために、重要なのがお茶とお菓子です。コーヒーは相手をシャキっとさせるので、冷たいお茶をだして、クールダウンしてもらいます。こころがなごむような甘めのお菓子をだすのがよいでしょう。
(3)
対応の服装はスーツで
 教師がジャージ姿で対応したら保護者は「自分は軽んじられている」と思われても仕方がありません。
(4)
必ず一人ではなくチームで動くこと
 必ず二人以上で対応します。一人だと保護者に振り回されることになりがちです。
(5)
場所と時間の原則を守る。自宅や携帯の電話番号は教えない
 面談の時間も例えば、保護者が夕方六時に来るとすると、「今日は七時から用事があるので、一時間しかお時間がありません」と、最初に言うことが肝心です。
 面談は学校で、電話も学校でしかとらないという原則を守ること。自宅の電話と住所を保護者に教えたために家庭崩壊に陥った教師を私はたくさん知っています。
(6)
親の思いを受けとめる
 応対の時間は一時間から一時間半が目安です。聞き方のコツは、相手の目を見て、うなずきと相づちをしっかり行うこと。
 相手を説得したり、論破しようとせず、言い分をよく聞き、その思いを受けとめることが肝心です。また、なにかお願いをしたいことがあるときは、指示をしようとせず、お願い口調で伝えることが大切です。
(7)
子どもの「うそ」には事実で対応
 子どもが「うそ」をついているとしか思えないようなとき、「この子がうそをついているんです」と保護者を責めてしまうと、ますます怒りを買うだけです。
 たとえば、子どもが同席しているとき、子どもの「うそ」は一切指摘せず、ただ淡々と同席している子どもに「事実」を確認する質問をします。
 「そのときどうしたの」「次に何があったの」「それで、そこに何人いたの」「名前は」・・・と、このように、質問だけをしていって、子どもに事実を答えさせるのです。「うそ」をついているときは、話に矛盾がでてきます。
 このようにして、信頼関係づくりができたところで、保護者に「一緒に考えていきましょう」と、共に問題解決を考える姿勢を打ち出していきます。
 さらに十分な信頼関係ができたら、「学校として、一つだけお願いがあるのですが」と学校側の要求を切り出していくのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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教師が保護者とつきあうとき、重要なことが三つあります

 教師が保護者とつきあうとき、どんなことに気づかったらよいのでしょうか。重要なことが三つあります。
(1)
保護者と同じ生活者としてつきあう。
 人間として対等につきあうということです。母親に会ったら「子育てってたいへんでしょう。いつもご苦労様です」と、庶民感覚や自然体で話し合える教師であること。
 子どもの成績や生活をすぐ話題にするのではなく、いろいろな生活にかかわる話題の話をするといいのです。
 生活の中の喜怒哀楽を共有し合えることが、人間として心を寄せあう一番のきっかけになるからです。
(2)
親にとって子どもは宝なのだという認識をもって、子どもにも保護者にも謙虚であること。
 親にとって、わが子は宝です。その親心を忘れて「できる子」だけを偏重するようなことをしたら、保護者が怒り、不信感をもつのも当然です。
 教師は「親の大事な宝を預かっているんだ」ということを、どんな場合でも忘れてはならないのです。保護者の願いを受けて、子どもを育てることが教師の仕事です。
(3)
新年度のスタートから、保護者とのつきあいにも、子どもへの対応と同じ重点をおいて取り組む。
 保護者との取り組みは、新年度の当初からスタートダッシュした方がよいということです。
 教師の傾向として「学級づくりや授業が軌道にのってから保護者との結びつきを考えよう」という人が少なくありません。
 子どもたちに力を注ぐだけでなく、保護者との取り組みにも同時に力を注ぐのです。
 
「これは話し合っておいた方がよさそうだ」と感じたら、始業式のその日でも家庭訪問してよいでしょう。
 また「このことはていねいに聞いておきたい」と思ったら、入学式の後の夜にでも、すぐ電話してよいでしょう。
 そのことが、以後の子どもの指導に、はかり知れないほどの効力をもたらすことを忘れてはなりません。
(
坂本光男:19292010年、埼玉県生まれ、元小学校・中学校・高校の教師。教育評論家。日本生活指導研究所所長・全国生活指導研究協議会会員)

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教師が原因で起きる学級崩壊とは、崩壊したとき保護者ができることはなにか

 学級崩壊は、多くの場合、教師と子どもとの関係づくりの失敗が原因です。
 その原因の一つは、教師が子どもをひきつける魅力を持っていないことです。なんでもいいから、子どもたちが尊敬できるものがあると、子どもたちは教師に一目置いて見ます。
 私は、サッカーの得意な教師には「子どもたちとサッカーして、技を見せつけてやりなさい」と言います。そういうものなしで、教師が子どもたちの前に立って、指示を出しても、子どもたちには響いてきません。「なめられ」軽く見られます。なめられたら、子どもは言うことを聞かなくなります。
 また、子どもとのコミュニケーションがとれない教師も、学級を崩壊させてしまいやすいですね。授業中や日常のありとあらゆる機会に、きちんと子どもたちと言葉を交わせないのです。
 それができないと、子どもたちのために行っているすべてのことが「先生が勝手にやっていること」になってしまうのです。
 学級崩壊が起きたら、保護者はとても心配です。授業が成立しないのですから、当然です。だから「担任を代えてください」という要求が出てきます。
 しかし、担任が交代したらどうなるかを考えてみましょう。まず、一度崩壊したクラスは、誰が入ってもいい状態に戻すことは不可能に近いものです。交代するとしたら、誰がいるのかということも考えましょう。
 学校の中に担任を持たないで自由にしている優秀な教師なんて絶対にないですよね。それで、非常勤講師を探すことになります。優秀な人は引く手あまたで、フリーでいることは、まずないのです。要するに、担任を代えてくれと言っても、代えるための人手がないということです。
 たとえ、一度崩壊した学級に新しく教師が入っても、再び崩壊して休職してしまうということは当たり前のようにあることです。担任の代行をしながらがんばった教頭が倒れた例を私はいくつか知っています。交代してもうまくいく可能性はかなり低いと言っていいでしょう。
 がんがん担任を責めるより、どうしたら担任に協力できるのか、どういう補い方ができるのかを考えたほうか、現実的だと思いませんか。
 間違えてはいけません。学級崩壊のときに学級を荒らしているのは、担任ではなくて、子どもたちなのですよ。だったら、教師と相談して少しでも協力できる道を探すことが良いではありませんか。
 学級崩壊しているとき、保護者はどうすればよいのでしょうか。教師と一緒に話し合って少しでもわが子へのダメージが少ないように考えていくしかありません。頼りなく感じても、学級でわが子を見てくれているのは担任なのです。
 ともかく、親子が学級の現状についてじっくりと話しましょう。学級崩壊をわが子がどう感じているのか。困っていることはないのか。教師のことをどう思っているのか。そういうことについて話をするべきです。
 学級が崩壊しているとき、子どもたちは「イヤだ、楽しくない」と感じています。そういうマイナスの感情を吐き出させましょう。
 学校での精神的なダメージを「お疲れさま。今日はどんな感じだった」と、家に帰ったら癒してあげることを考えましょう。学校のことを会話できるようになると、子どもも楽だし、親にもいろいろなことが伝わってきます。
 直接、学校の様子を見に行ったうえで、管理職や担任とも話をしましょう。
 学習面でのフォローは、しっかり考えましょう。教師の力を借りましょう。教師を糾弾したり攻撃したりせずに協力していく姿勢でいたら、教師は出来る限りのことをしてくれます。
 学級が崩壊していても、教師と個別のやりとりはできます。個別に力を借りればいいのです。学校の教師って善良な人なのですからね。
(
多賀一郎:1955年生まれ、神戸大学附属小学校を経て私立小学校教師。退職後は追手門学院小学校講師、専門は国語教育。在職中に日本私立小学校連盟国語部全国委員長歴任。親塾・教師塾等で保護者・教師教育の手助けをし、全国で講演)

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保護者を味方につける三つのポイントとはなにか

 保護者の信頼を得るには、よい授業をすることが第一だ。
 子どもが学校から帰って「今日の勉強楽しかった」との声で、保護者は「今年の先生はよい」と感じてくれる。
 授業参観は、保護者がわが子を見に来るので、必ず子どもたち全員が活躍できる場を設け、知的な内容にする。
 今までで、一番良かったのは、点字・アイマスクの授業だった。点字の仕組みや読み方、目の不自由な人の介助の仕方を学んだ後、実際に子どもと保護者がペアになり、アイマスクの体験をした。
 三階の教室から一階まで、行と帰りで保護者と子どもが交代して行った。その後、一緒に点字ペンを使って名前を書くこともした。この授業は、子どもにも保護者にもとても喜ばれた。
 学校生活のほとんどを授業が占める。保護者は常にわが子は勉強がわかっているか気になっている。ふだんの授業をきちんとしていると、保護者から苦情の入ることはまずない。子どもが変わった事実は、保護者の信頼を深める。
 保護者の信頼を得る第二は家庭訪問で成功することだ。
 家庭訪問の日まで、担任として子どもにどう接してきたか、どう見てきたかが試される。家庭訪問では、子どもをうんとほめるにつきる。
 ほめられると保護者もうれしいものだ。教師への好感度が、とても増す。家庭訪問で、一気に保護者を味方につけてしまうことが大事だ。
 学校で悪いこと、目につくことを保護者に伝えることは、ひかえる。これから、いくらでも話す機会があるし、指導することで直っていくからだ。
 保護者の信頼を得る第三は、学級通信で信頼度アップをはかる。
 学級通信をできうるかぎり、出し続ける。私は年間100号を目標に取り組んだ。授業や学校生活の様子、日記が主な内容だ。
 子どもの発言は、授業中にメモを取り、ノートにひかえた。また、子どもの名前をできるだけ多く入れ、具体的に書くよう心がけた。そして、載せる子どもに偏りがないか気を配った。授業参観の後、保護者に感想を書いてくださるようお願いし、それを学級通信に載せた。
(
勇 和代:1965年大阪府生まれ、大阪府泉佐野市立小学校教師)

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