カテゴリー「保護者との協力関係をつくる」の記事

保護者とうまくつき合うにはどうすればよいか   飯村友和

 私は、個人面談や懇談会が嫌でたまりませんでした。
 しかし、そのような気持ちでうまくいくはずがありません。
 まずは自分が楽しくなることを心がけています。
 そして、保護者の方と仲よくなるように努力しています。

 子育ては本当に大変なんです。
 子育てをがんばっているお母さんをまずは褒め、感謝の気持ちを伝えましょう。
 家では見せないよいところを伝えれば、喜んでもらえるはずです。

 改善点は、伝える必要がありますが、その後でよいのです。
 保護者と担任が仲よくなることが大事です。

 懇談会は楽しい雰囲気でつながる時間と位置づけます。
 緊張をほぐし、話しやすい雰囲気をつくるためにミニゲームをします。
 よくやるのが、1つ前の人と自分の「好きなものと名前」を言う自己紹介です。たとえば、

「猫が好きな飯村さんの隣のKポップが好きな田中です」
「Kポップが好きな田中さんの隣のお茶が好きな吉田です」
 というように続けると楽しい雰囲気で始めることができます。
 そのほかに、子どものノートを見てもらい、鉛筆でコメントを書いてもらう。
 子どもたちからのビデオメッセージを見る。
 クラスのイベントを映像で見る。
 子どもたちのアンケートをもとに話し合う。
 このようなネタを数多く持つことが大切です。

 また、少人数のグループに分かれて話し合う場を設け、保護者の情報交換の場、つながる場になるようにしています。
 学級通信を出して、教師の考え、子どものよいところを伝えます。
 授業のことも書くと自分の実践記録にもなります。
 学級通信は親子の会話の話題にもなります。学級通信を出すことを強く勧めます。

 子どもが何かよいことをしたときに、小さな便箋にそれを書き、連絡帳に貼り付けます。
 短いものでも感謝されることが多いです。
 1日3人などと決めて子ども全員に書くようにします。

 保護者とは小まめに電話や家庭訪問で連絡を取り合うことが大切です。
 保護者からクレームがきたとき、いじめなど深刻なことがあったときは、家庭訪問して顔を見ながらお話をした方がよいでしょう。
 場合によっては、学年主任や管理職といっしょに行ってもらうとよいでしょう。

(
飯村友和:1977年千葉県生まれ、千葉県公立小学校教師。教育サークル「明日の学級づくりを語る会」代表)




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教師と親がつながり共に育つにはどうすればよいか   宮下 聡

 教師と親がつながり共に育つにはどうすればよいか宮下 聡はつぎのように述べています。
 教師生活を続けていると、どんな教育実践も親とのかかわりを抜きに考えることはできない。
 若い教師は「子どもだけでも大変なのに、さらに親の相手なんて」と考えている人は意外と多い。
 実際、教育現場で起きる子どもの問題は、家庭と切り離して考えることはできない。
 そこには学校外での子どもの生活が大きな要因として横たわっているからである。
 まず、大切なことは、教師が学校側の目線ではなく、ときには親の立場から実践をとらえ直してみることである。
 思いがけない解決策に気づくことがあるからだ。
 目線を変えてものごとをとらえ直す姿勢が求められているのは教師なのである。
 教師の思いをわかってくれない親が、実は親の思いをわかってくれない教師と感じていたと気づくことだってあるかもしれない。
 教師がおちいりがちな失敗として、あれやこれやと指示を出しすぎてしまうという問題がある。
 子育ての主体は親である。
 その子の発達上の課題を教師が把握していても、どうするかという問題の解決の主体は子どもであり親である。
 教師が決定権を横取りして指示を出してしまっていることはないだろうか。
 子どもの問題は子どもに返し、家庭の問題は家庭に返しながら知恵と力をともに出しあって解決の道を探っていくという「共同」のスタンスが教師に求められている。
 例えば、つぎの実践は私が親と一緒に考えだしたものだ。
 親と話しあって毎月開いた「学級懇談会」。
 学級懇談会では、子育てにかかわる親の思い疑問・不安がいくつも出され、それが若い担任であった私にとっては、大きな学びとなった。
 子育ての思いを親どうしが語りあった「親の回覧ノート」。
 子どもが家で班ノートを書いているのを見た親が「親もやりたい」と言って「親の回覧ノート」は始まった。
 受け渡し役の子どもは、親どうしの「会話」を読むことによって親の愛を感じることができた。
 土曜日を利用して親子で開いた「料理の鉄人大会」
 取り組みを通して教師としての視野を広げ成長させてくれた貴重な体験だった。
 どれも、クラスが指導困難な状況だったときに企画され取り組まれたものばかりだ。
(宮下 聡:都留文科大学教職支援センター特任教授、元公立中学校教師)

 

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ココロの貯金がたまると子どもが変わり、親も変わる    東ちひろ

 ココロの貯金がたまると子どもが変わり、親も変わると東ちひろはつぎのように述べています。
 人はだれでも、心の中に「ココロ貯金箱」をもっています。
 親や教師から、ほほえみかけられる、信頼して任せられるなど「プラスのふれあい」をたくさん子どもがもらうと、その貯金箱の中にどんどん貯金がたまっていきます。
 そうすると、子どもの心に余裕が生まれ、他の人にやさしくなれたり、助けたりすることができるようになります。
 子どもたちの自己肯定感が高まり自信を持って成長していくことができます。
 もちろん、子どもをしかることも必要ですが、「マイナスのふれあい」の方が多くなると、親や教師の言うことを聞き入れず、やる気をなくしたりするのです。
 この貯金箱は、穴があくことがあります。
 けなす、無視する、イヤミや皮肉を言うと、子どもの存在や価値を認めていないことになり、自己肯定感がどんどん下がってしまいます。
 あなたも学校の先生にほめられ、やる気になった経験があることでしょう。
 私は学校の先生にほめられることで一気に大量の「ココロ貯金」が貯まると思っています。
 それほど教師の力は絶大なのです。
 私は家庭に、子どものよさを電話やメモを使って伝え、「ほめ日記」に記録することを1年間つづけました。
「ほめ日記」を通して、教師が子どものどんなところを、どんな言い方でほめたかを親が知ることができます。
 教師にわが子がほめられることで、親の心にも確実に貯金がされます。
 親の「ココロの貯金」が貯まってくると、親が子どもにもやさしい言葉をかけやすくなります。
 
親と教師が車の両輪となり、子どものよさを伸ばしていくことができました。
 意欲的に活動する子、心の安定した子がどんどん増えていきました。
 子ども一人ひとりや学級全体が、確実によい方向に変化していくのです。
 それは、まさに教師としての醍醐味でした。
(東ちひろ:幼稚園・小学校教師、教育委員会を経て、「東ちひろマザーズセラピー」主宰。上級教育カウンセラー、()生涯学習開発財団認定コーチ)

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保護者からの問い合わせや苦情に、どのようにすれば保護者と信頼関係がつくれるか   小山田 穣

 学校には様々な問い合わせや苦情が寄せられます。
 このようなとき、
「学校への不満や文句だと受け止め、親や子どもに原因や問題がある」
 と考えるか、
「学校が気づいていないところを教えてくれたのだと受け止め、そのための解決の方策を考える」
 かでは、その後の対処に大きな違いが出てきてしまいます。
 保護者との信頼関係づくりのためには
1 保護者に担任から、学習内容や学級の様子、子どもの様子をこまめに伝える
 このためには、学級だよりや連絡帳、授業参観や保護者会等で、
(1)日々の授業の状況
 今、指導のうえで力を入れていることやそのポイント。
(2)学級や子どもの様子
 学習や生活面でがんばっている姿、家庭にお願いしたいこと。
 などを日頃から伝えることが大切になります。
2 保護者と担任の双方向の協力を依頼する
 年度当初の保護者会や日頃の学級だより等で、
(1)「子どもの成長のためには学級と保護者の協力が必要であること」
(2)「そのためには、学級から子どもや学級の様子、協力してほしい」
 ことなどを伝えていくので、
(3)「家庭からも心配なこと、問い合わせ等ありましたら気軽にお伝えください」
 といった双方向の情報提供を大切にしていく担任の姿勢を示し、それに行動で丁寧に応えていくことが重要になります。
(小山田 穣:小学校教師、東京都教育委員会指導主事、校長を経て東京学芸大学特任教授)

 

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保護者と教師が共に気持ちをよせて取り組むことができることは何か   佐藤友子

 保護者と教師が共に気持ちをよせて取り組むことができることは何か佐藤友子はつぎのように述べています。
 私の子どもがまだ五歳のころ、不登校の高校生の親からの相談で突然、
「先生に親の気持ちがわかりますか」
 と言われた。
 「偉そうな態度で、あんた、まだ親でもないのに」という思いがその親の態度にあらわれていた。
 どう返事をしたらよいのか、私も親だと伝えるべきか、親であることと子どもの不登校の相談と関係があるのか。
 ここで下手な返事をしたらもう話をされないだろうなあと思ったが覚悟を決めて、
「私の子どもはまだ保育園なで、高校生の親のお気持ちはわかってないんでしょうね」
「私の子どもが高校生の頃になったら少しはわかるようになるかもしれませんが・・・」
「今日はできるだけ子どもさんの側に立ってお話をしようと思います」
 と言った。
 すると、その親は、
「ありがとうございます。子どものことを大事に思っていただいているんですね」
 と言われた。
 私はその親の思いほどその生徒のことを大事に思っていたかといえば自信がない。
 でも、学校で教育活動に関わる大人が一番に気持ちをよせて「どうしたらよいか」を考えるのは「生徒」のことである。
 その基準さえぶれなかったら誰とでも共に取り組むことができるということを、理屈だけでなく実感させていただいた体験であった。
 親から不登校の相談があったときどのように対応しているか佐藤友子はつぎのように述べています。
 原因がどこにあろうが子どもが学校へ行かないということは、多くの親にとってはつらいことである。
 親として自信をなくし日常の会話さえも神経を張り巡らしておられ、それがまた子どもの神経を苛立たせるという悪循環もあります。
 不登校の親から相談があったときは、私は
「学校のことは、子どもさんから話されない限り話題にしないでください」
「それ以外のことは今まで通り、叱ることは叱って、ほめることはほめてください」
「学校のことを子どもさんから話され、返事のいるときは、お母さんはこう思うと、思っていることを伝えてください」
「わからないことはわからないと。返事のいらないことであれば、否定せずに聞いてください」
「あせらずに一緒にどうしたらよいか考えていきましょう」
 と話します。
 親は、親の気持ちに寄り添って、話を聞いてくれる人を求めておられるのではないか?
 話の中で一つでもいいから、よい対応がないか見つけようと耳をこらし、
「お母さん、その対応はよいと思います。すごい!」
 と共に喜べる感覚が大事だと思う。
 親には「あせらないで」と言いながら、教師が「よい結果」と思えるものを出そうということにばかり気持ちが傾いたとき、ときには親を「責めている」ように映ってしまうこともあるだろう。
 冷静な判断と共感する気持ちを併せ持つことの難しさをいつも感じている。
(佐藤友子:元京都府公立高校養護教諭)

 

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親にとってよい先生とはどのような先生か   小野田正利

 親にとってよい先生とはどのような先生か小野田正利はつぎのように述べています。
 親にとって「よい先生」というのは、「子どものことをちゃんと見てくれている先生」のことである。
 ただし、この場合「本当に見てくれているかどうか」の問題ではなく、親にとって「見てくれていると感じられるかどうか」という、要するに印象の問題に帰着すると捉えることが可能だ。
 「いい先生」「よくない先生」の親の評価は多様にあるが、その教師の実像よりも、うわさ話でも一定の印象が形作られる。
 親の関心は「わが子のことをちゃんと見てくれているかどうか」であり、分かりやすく言えば、日常での細かいことの積み重ねがモノを言うことが多い。
 例えば、連絡帳のちょっとしたひとこと、クラスのささいな決め事(例:席替え、係の決定)とその理由、授業のために家から持って行かなければいけない教材などで、安心したり不安になったりする。
 日常の学校生活は、要するに「細かいこと」の積み重ねであり、だからこそ同一の発言や行動が、時には正反対に解釈される余地が生まれる。
 ここに子どもからの一方的な話や、親同士のネットワークがマイナスに作用すると、そのイメージがレッテル貼りされてしまうことも多い。
 悪いイメージを持たれると、教室での実践や親との関係がうまくいかなくなり自信を失ってしまう。
 教室の実践を人に言いたくなくなり秘密主義なる。
 ふだんなら気にならないようなことに過剰に反応し、攻撃的にふるまうと最悪で、支持する親や同僚は激減する。
 そうならないためには、子どもの顔が見える形で親とコミュニケーションを積み重ねることによって、情報不足による疑心暗鬼(ぎしんあんき)を防ぐことができるだろう。
 例:連絡帳の一言や学級通信、保護者面談、家庭訪問など。
 それでも悪循環から抜け出ることができないときは転勤して、いったん悪循環を断ち切り恢復を待つようにする。
(小野田正利:1955年生まれ、大阪大学名誉教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)

 

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担任と保護者が良好な関係をもつには、どのようにすればよいか

 教師は子どもから投げつけられる暴言や保護者からの苦情で非常にストレスのたまる仕事です。
 教師は自分の感情を上手にコントロールできる力をつけていかないと、子どもや保護者とつながることや、トラブルを乗り越えていくことはできません。
 斎藤 修は保護者と関わるとき、最初の懇談会で次のようなお願いをします。
1 この時期の子どもというのは自己中心的に物事を考えます。
 ケンカをしたときにも自分のしたことは忘れて、されたことだけを家で話すことが多い。
 わが子の話は信じてもいいと鵜呑みにしないでください。
2 トラブルを通して子どもは自分を理解し、相手を理解していきます。
 トラブルは子どもの成長にとって必要なことです。
 トラブルがあっても、見守るという姿勢が大切です。
3 教師と子どもは信頼関係で成り立っています。
 子どもはいい先生だと思うと指導を受け入れます。
 わが子の前では、子どもと教師の信頼関係を崩すような言動は避けてほしい。
 私も保護者の悪口は絶対に言いません。これはお互いの約束です。
4 子どもの不安なことや心配なことがあったら連絡帳を使って早めに連絡してください。
 家でがんばったことなども知らせてください。
 私も子どもを励ますことができます。
 家庭と学校が連絡し合い、事実を共有し合うことが子どもの成長に必ず役だつと思います。
5 連絡帳は、いきなり感情的な言葉を書かないで「いつもお世話になっています」といった枕ことばをつけてください。
「どうなんですか?」とかという書き方をしてもらえると、教師も冷静に対応できます。
6 保護者回覧ノート
 クラスを二つに分けて保護者の間に回覧ノートを回します。
 一人何ページ書いてもいい、手元に置いていいのは三日間、書けないときはパスができる。
 書かれた文章はコピーして全員が目を通すことができます。
 保護者たちはぎっしりと書いてくれます。
7 懇談会
 保護者同士が仲良くなるよう、最初によくゲームをします。雰囲気はすぐに明るくなります。
 お互いのことを理解し合うために、趣味や最近がんばっていること、うれしかったことなどについて交流し合います。
 グループ懇談で子育て交流をすると、保護者たちはよく話します。
 同じ悩みを持っていることを知って安心したり、子育てのヒントをもらったり、話し合いは盛り上がります。
 また、三月の最後の懇談会では、保護者一人ひとりに「子育てがんばり賞」のミニ賞状を渡すことにしています。
 保護者たちに好評です。保護者会でも遊び心をおおいに発揮したいものです。
(斎藤 修:1953年福島県生まれ、元千葉県公立小学校教師、全国生活指導研究協議会常任委員)

 

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保護者と直接つながりをもち、協力しあう、つきあい方とは

 クラスの規律維持には保護者の支援が欠かせない。
 保護者の支援と信頼を勝ちとることができれば、いざこざのない楽しい1年が約束されている。
 しかし、いくら経験をつもうとも問題がまったくなくなるわけではないが。
 では、保護者の支援と信頼を勝ちとるには、どんな問題を起こす子どもであれ、「保護者との最初の接触は前向きなものでなければならない」ということだ。
 たとえば、ほとほと手を焼いていた子どもの家に電話し、保護者に
「じつは、きょう電話したのは、○○さんが私のクラスにいてくれてどれほど楽しいかをお知らせするためです」
「○○さんは、とても張り切って学習していて、クラスの討論のときなんかには、大変な活気をもたらしてくれます」
「だから、今日、○○さんにいったんです。『○○さん、きみはいつもとてもマナーがいいね。お母さんの育て方がものすごくよかったんだな』って」
「で、そのとき決めたんですよ、お母さんに電話して、すばらしい育て方をなさったとじかにいおう、と」
「今日はお話しできてよかったです」
と、私は真っ赤なうそをついた。
 それなりの理論があった。
 電話の翌朝、○○さんは
「あんた、いったいなにを考えてんの?」とでもいいたげな顔をわたしに向けてきた。
「へえ、学校じゃ徹底的にワルをやってもいいんだな。この先生、母ちゃんになんにもいわないんだ」と。
 それから3日間、辛抱に辛抱を重ねた私は、ふたたび○○の家に電話をかけた。
「今日は、かなりアタマにきています」
「じつはですね、こんなことをいうとショックを受けられるでしょうが。私でさえほんとに驚いたのですから」
「このところ、○○さんの学校での様子が少し変だったんですよ。私には信じられなかったんですが」
「実は、このところまったく授業を聞かないし、ほかの子どもにもいやがらせばかりするんです」
「たまりかねて、○○さんを廊下に連れ出して、○○さん、今日のきみはどうしちゃったんだい? 信じられないよ」
「お母さんは○○さんのことで一生懸命だし、いままでの育て方だってみごとなものだ」
「お母さんを侮辱していることになるんだよ」
「それを聞いて、○○さんはどうしたと思いますか?」
「そんなこと知ったことか、みたいな態度に出たんです」
保護者:「ちょっとここにおいで、すぐ来いといってるんだよ、このバカが」
 ○○さんは私を出しぬいたつもりになっていた。
 それでも最終的には、私が母親と直接つながりをもち、協力しあうことで、横道にそれないようにすることができた。
(ロン・クラーク:米国の小学校教師。各地を冒険旅行したのち、小学校の教師となる。ハーレムの底辺学校から優秀児を排出し、目覚ましい成果をあげる。2001年28歳のとき全米最優秀教師賞を受賞)

 

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担任と保護者との関係をよくするには、どのようにすればよいか

 気がかりなことがあれば直ちに親に連絡するような誠実さが親との関係をよくし連携をつよめます。
 学級通信で子どもたちの学級の生活のさまざまな姿を紹介することも大事な連携なのです。発行しても読まない親がいると言う教師がいます。
 しかし、これでもかと小石を積み重ねていくと、親の意識を変え、それが子どもにもよい影響を与えていきます。
 担任が最も話を聞いてもらいたいと思う親は保護者会をよく欠席します。どうしても、この親と話をしなければと思ったら個別に面談するしかありません。
 そのとき最初から断定したような話し方は避けることです。
 勇み足になってしまっては、まとまる話もまとまらなくなります。相互に事情を確かめながら、情理を尽くして話し合ってみるのです。
 一回でわかりあうことはまれです。回を重ねて足を運ぶ必要があります。
 子どものことで親と教師の間にトラブルが発生すると、「教師が言った・言わない」という状況が生まれることがあります。
 それだけに、教師の発言は言葉を選ばなければなりません。誤解されないよう、率直に話せる話し方ができるようになってほしい。
 子どもが教師に話すことと、親に話すことは微妙に違っていることが多い。
 だから親の話に耳を傾けることで、総合して判断するという姿勢が教師に必要とされています。
 親からの相談を、「心配いりませんよ、そのうちに直るでしょう」と軽く受け流さないで、重く受けとるようにしましょう。
 親にとっては軽い問題ではないはずです。相談を受けたら、自分だけで抱え込まないことです。
 生徒指導・教育相談などの学校組織で情報と知恵を出し合い、話し合うようにします。
 どう手を打つかとなれば、さらに親や子どもと相談を重ねなければならない。これも連携の一つの姿なのです。
 学級が荒れてきたと、まず感じるのは担任です。
 親も子どもの話を聞いたり、素振りで、学級の荒れを案じます。
 学校は機を失しないで親に協力・支援をしてもらうとよいでしょう。
 臨時保護者会を開いて、可能なかぎり事実を伝えて、家庭で何をすればいいか、話し合ったり相談したりしてもらうのです。
 事の重大さを理解してもらえば、父親が子どもを諭したり、学校内外のパトロールに親が立ち上がった校区もあります。
 今日、子どもの背景にある家庭の状況も複雑です。家庭崩壊、生活困窮、子ども虐待などさまざまな状況があります。
 こうした場合、教師が家庭訪問するだけでは問題は解決しません。
 地域の民生委員・児童委員と連絡を取ったり、福祉事務所や児童相談所に通報したりと、保護・援助の手を打ち、子どもの生活環境の改善を図らないと、子どもを立ち直らせることはできません。
 子どもが悪いのは家庭が悪いからだと嘆くだけでなく、子どもを救う連携策も学校の大事な役割になっています。
 学校で事件(事故)が発生した際は、被害者、加害者の保護者にきちんと連絡し、対処を的確に進めなければなりません。
 教職は公的な職業です。言いにくいことも遅滞なく告げる役割を担っています。
 加害者には明確な事実を伝えます。
 加害を認めないようであるなら、回を重ねて話をしなければならないし、「学校が悪い」と言い立てるなら事情を説明して得心してもらう努力も必要です。
 誤解を避けるためにも管理職が立ち会うようにします。
 日頃から家庭と連携ができているかどうかで、対応はずいぶんと違ってきます。
 判明した状況は親に一つひとつ連絡し、確かめ合いながら、問題解決を続けます。
 的確に行わないと後日に問題を残します。
 学級の保護者にも機をとらえて説明する必要があります。
 被害者には手厚い態度で対応することをまず考えなければなりません。
 学校の不行届(ふいきとどき)についてきちんと侘び、見舞いの言葉はかけても、かけ足りないぐらいに考えていいでしょう。
 今後のことについて相談を重ねなければなりません。
 事故再発は、どうしても防ぎたいものです。それだけに事情の究明は、どれほど大変であろうとも、きちんと行うようにしたいものです。
 学校や教師の立場をかばうことばかり考えると、解決は厄介となり関係修復に長い時間がかかるようにもなります。
 授業参観日で、日ごろと違って「いい子」なってしまう子がいます。
 また、いつも通り授業にあきて授業不参加の子どももいるでしょう。
 こうした姿を見て親は「学校はどうなっているのか」と不安を抱きます。学校を批判する親もでてきます。
 ちょっとしたことでも不満に耐えられない子、それに引かれて規律を無視する子どもの増加に教師が教室で叱ったり威圧したりするだけでは事態は好転するものでしょうか。
 これには、学校と家庭が手を携えないと問題の解決が図れないはずです。
 だから、保護者会で教室の状況を率直に話さなければならないと思います。それも、参観日で目にした状況とは異なる、毎日の子どもの姿を語らねばなりません。
 保護者に話さずにおくと、対処しきれなくなることがあります。
 後手に回ってしまっては手遅れなのです。
 それには、きちんとメモを作って、状況がわかるように説明することです。
 そして、どんなことに協力を求めるか明確に話します。
 こうした会では、担任の指導について批判もでるでしょう。
 紋切型の話し方や答弁はしないようにします。
 それと、不確かなことや思いつき、実現できそうもないことは語らないことです。
 現在の教室の実態を率直に語るようにします。
 子どもの様子を具体的に語らなければ保護者の理解は得にくいでしょう。
 授業中、立ち歩かないことや、私語をしないことなどは、学校に子どもを送り出す家庭としては当然のこととして注意しなければならないことです。
 保護者が気づいて実行してもらわなければならない時なのです。
 率直な語りかけこそ、説得力をもつでしょう。
 保護者からの、子どもたちの「いさかい」の苦情は管理職にも報告します。
 こうした際の子どもへの対応は「そのうちやろう」などと構えるのではなく、直ちに開始することなのです。
 初動の遅れが問題を後日複雑にすることもある。
 子ども同士のちょっとした「いさかい」は、子ども同士で解決することのできる力を少しずつ、つけていくことが大事だろうと思います。
 譲ることは譲ったり、認め合ったりすることを諭したり、そうした体験のできる活動や遊びを組織することで解決の方向はみえてきます。
 保護者からの苦情のなかには、教師の言動や指導法に関することがあります。
 うるさいなどと考えないことです。このときは、事実を慎重に確かめ、不行届があったときは、認め、詫びるようにします。
 保護者に誤解があるなら、事実をもとにして、それを解くよう策を立てます。
 いずれにせよ、保護者の理解を得ながら、善後策をきちんとたてていくようにします。
 学校は良質の教育サービスを提供する場です。
 授業が崩れ、学級が荒れると、批判の矢が学校に向かってしまうのは当然のことだと思わなければなりません。
 担任の交代を多くの保護者が要望してきたら、学校としてはまことに厄介な問題です。
 学校としていかに学級の建て直しに努力を重ねているか十分に説明しなければなりません。
 これからどうするか策を具体的に示さなければなりません。
 専科教員の導入やティームティーチングを利用するなどの策を示すのです。
 そうした策をとっても、事態が変化しないならば校長は担任の変更を決定せざるを得ません。
(飯田 稔:1933年東京都生まれ、千葉大学附属小学校に28年勤務、同校副校長、千葉県公立小学校校長、千葉経済大学短期大学部名誉教授。学校現場の実践に根ざしたアドバイスには説得力がある)

 

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保護者を巻き込む保護者参観の授業で保護者に安心感を

 保護者を巻き込む授業で保護者に安心感を、と細水保宏先生はつぎのように述べています。
 保護者がいる前で授業をするというのは担任がナーバスになることが多く、つい無難な授業を選択しがちです。
 細水先生も昔は算数で簡単な問題を出して全員が解けるようにしていました。
 でも、問題が易しいと、子どもたちはすぐ飽きてあとは遊んでしまいます。
 保護者は「うちの子にはこんな易しい問題は合わないわ!」と担任批判が始まってしまいます。
 そういった傾向を見て細水先生は、保護者会ではまず担任の教育観を見せるべきだと思うようになりました。
 例えば、今の教育で足りないのは、授業で子どもが間違える経験が少ないこと。
 間違える経験をする授業を考えました。
「間違えさせる」教材を用意すれば、保護者も巻き込むことができます。
 細水先生が行った五年生「円と正多角形」の授業では、折り紙とハサミを使いました。
 折り紙は教材開発に適していて、ノートに貼らせると子どもも喜びます。
 100円ショップで大量に買い教室に置いてあります。
 では、折り紙を対角線に合わせ(2分の1)て半分に折ります(4分の1)。さらにもう半分に折ります(8分の1)。
 すると8分の1の三角形ができるはずです。あとはハサミで切るだけ。
 授業では、まず細水先生が手本を見せます。
 折り紙を折って、最後に「いい? 一本の直線で切るんだよ」と言って切る。広げてみると、きれな正八角形。
 細水先生はこの作業を、クラス全員の子どもたちと保護者にも折り紙を配って切ってもらいます。
「では、折り紙を開いてみましょう」と細水先生が言うと、机の上に一斉に開かれた折り紙は、正八角形と思いきや、正方形、手裏剣・・・・。「え~、なんで」ざわめきが教室中に広がります。
 実は、三角形の切る箇所によって、できあがる形が変わってしまうのです。保護者も間違えているわけですから、わが子が間違えても腹が立ちません。
「みんな、間違えて当たり前。ここで成功すると算数的素質がありすぎ。先生の立つ瀬がない」と言いながら、切った折り紙を黒板に貼っていくと、正八角形とそれ以外の図形との違いが見えてきます。
 正八角形の勉強をするとき、そうでない図形をもってきて比べたほうがやかりやすいこともあります。
 ですから、あえて間違いの図形を貼って違いを見ます。
 算数的活動とは、実はこういうことを言っているのではないでしょうか。
 細水先生が「どこが違うかな?」と尋ねると、賢い子は切ったときの折り目の長さが違うことに気付き始めるでしょう。
 どう切ると、正八角形になるか皆で考えた後、今度は正方形や手裏剣にするにはどうすればいいかも考えました。
 最後に、子どもたちに、つくった図形をノートに貼らせます。
 ノートには間違えた原因を書かせてもいいし、図形に目玉をつけさせたりしてアート風にまとめさせてもいいでしょう。
 この教材で、私は親の授業観を変えたいと思っていました。
 こういう子に育ってほしいという細水先生の教育観を見せたかったのです。そうすることで親を巻き込むことができます。
 多くの保護者はわが子しか見ていません。
 わが子をしっかりと見てくれている担任に対してはあまり文句を言いません。
 担任は「あなたのお子さんをちゃんと見てますよ」とアピールすればいいのです。
「急に背が伸びましたね」と、全員に同じ一言ではなく、その子に応じた一言を伝えれば、保護者は安心してくれるでしょう。
(細水保宏:1954年生まれ、横浜市立小学校教師、筑波大学附属小学校教師、同副校長を経て、明星大学客員教授兼明星学苑教育支援室長、明星小学校長。全国算数授業研究会元会長、ガウスの会会長。全国各地の小学校で授業や講演)

 

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