カテゴリー「保護者との協力関係をつくる」の記事

小さなトラブルを見逃すな、子どもと保護者が納得する生徒指導とは

 子どもの指導は「スピード感のある対応」が不可欠である。
「生徒指導の遅れが命取りになる」といわれる。
 生徒指導の対応が遅れば、遅れるほど、学級経営が厳しい状況になることを意識して、小さなトラブルを見逃さないようにしよう。
 気づかないままに進んでしまうと、あっという間に学級崩壊になってしまう危険がある。
 生徒指導の技術として、小さなトラブルを見逃さない教師としての力量を定着させるためには、
(1)その日の問題は延ばさない
(2)スピート感ある対応を心がける
(3)物がなくなったときの対応を意識する
(4)保護者との連携を強固にする
(5)報告・連絡・相談を密にする。
(6)不公平感、不平等感に陥らないようにする
(7)いじめの対応を原則とする
(8)保護者との面談を積極的にする
 これらの生徒指導の技術は、教師として身に付け、確実に実践の中で活用を図らねばならない。
 何か生徒指導の問題が起きたときは、その日のうちに対応しよう。
 下校時に、子どもがどの状況にあるか、見極める力量が教師になくては生徒指導は始まらない。
 下校時に声かけをして、状況を把握しておくだけで、子どもの気持ちが少し晴れやかになることも少なくないからである。
 その日の問題を延ばさないためのチェックポイントは
(1)子どもの体調が悪いまま、下校させていないか
(2)ケガをしたまま、下校させていないか
(3)学級でのトラブルを保護者に報告しているか
(4)下校時に、悲しい思いをしている子どもはいないか
(5)いじめに関するトラブルはないか
(6)帰りの会での生徒指導の問題を放置していないか
(7)子どもの気になる状況の解決策は図れたか
(8)継続指導中の子どもの状況の変化を見たか
(9)保護者との面談等について計画的に進めているか
(10)管理職との報告・連絡・相談はしているか
 その日に起きたことの解決の方向性を明確にしておくことは、明日の解決に向けたステップにもなるということである。
 生徒指導は、ほとんどの場合、保護者との連絡や状況説明が欠かせない。
 その説明が不十分だと、小さなことでも担任と保護者との理解度の違いが生じることになる。
 教師の配慮ある一報が保護者にあれば、信頼につながることを理解しておこう。
 担任にとって、保護者は最大の応援団であることを意識しておこう。
 このことは、話し言葉や電話対応でも自然と分かってしまうものである。
 今日すべき保護者との連携を怠れば、明日は苦情となることを認識しなければならない。
 保護者との連携を強固にするには、
(1)生徒指導に関することは保護者に簡潔にする
(2)伝える内容を箇条書きにして、分かりやすく説明する
(3)関係者の状況を理解したうえで伝える
(4)場合によっては、家庭にまで足を運ぶ
(5)今後の対応を的確に説明する
(6)当事者相互の連携も確実にする
(7)この程度は、というときにも必ず連携を取る
(8)保護者との連携は、担任の思いを必ず伝えるという意識をもつ
(9)一歩先までの見通しを伝える
(10)解決までの期間を意識する
(11)担任の対応で「大丈夫」の意識をもたせる
(釼持 勉:東京都公立高校・小学校教師、教育庁、小学校長を経て、帝京大学教育学部教授、東京学芸大学特任教授)

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家でダラダラとしたり、親に逆らう、わが子との過ごし方に悩む、保護者に教師はどうアドバイスすればよいか

 学校ではしっかりして見える子どもでも、家ではダラダラと過ごしてしまい、親の注意を聞かないという子どもがいます。
 勉強もせずに、ダラダラと過ごすわが子の姿にいらだつのが親です。
 親の心配もわかりますが、家庭はくつろぎの場でもあります。家庭での厳しさを要求すれば、子どもの「行き場所」がなくなります。
 どの子どもも、学校外でストレスを受けて生活しています。
 家庭でくつろげるから、心が安定するのです。
 ある程度、家庭でわがままになるのは当たり前のことなのです。家庭がくつろぎの場として機能していることを伝えることで、保護者を安心させてあげましょう。
 特に子どもが大きくなれば、何度も同じことで注意するのは逆効果です。
 例えば、子どもが行動するまで、「早く!」「早く!」と繰り返さないように保護者に助言してあげましょう。
「〇時まで」と、区切りをつけて注意した後は、少し様子を見て子どもが動くのを待つ。それでもダメなときには、ガツンと叱る。そんな具体的な方法を助言することです。
 小学校高学年になると、親のいうことを聞かなくなり、注意すると反抗的な態度をとる子どもが増えてきます。
 子どもは、小学校高学年になると、大人の行動を客観的に見るようになるものです。
「お母さんも、できていないじゃん」「口ばかり」と反抗的な態度をとることもしばしばです。それが、自立の準備であり、成長と言えます。
 親はわが子のこととなると、つい感情的になってしまうものです。
 注意すればするほど反発するものです。頭ごなしに叱るのではなく、「いつ勉強を始めるの?」「約束を破ったらどうするの?」など、子ども自分で決めて行動できるような方法で導くことが大切だと、保護者に助言しましょう。
「誰もが通る道」だと、子どもの成長を喜ぶことで、保護者が対応を考えるきっかけにしたい。
 よく「先生からきつく言ってください」と頼む保護者がいます。
 それを真に受けて厳しく叱っては、子どもは親にも教師にも反抗的になり、信頼関係に悪影響が出てしまいます。「お母さん、心配してたよ」と優しく諭すことです。
(中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校長。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる) 

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授業態度が良くない子どもがいるとき、保護者と連携し、保護者の協力を得るにはどうすればよいか

 授業中、教師の話を聞かずに、落ち着きのない子どもがいます。
 学習理解に支障をきたし、周りの子どもたちの迷惑にもなります。
 授業中、手遊びしたり、隣の子に話かけたり、時には立ち歩いたりする子どもがいます。
 注意しても、すぐに同じような行動をして、周りの子どもたちも学習に集中することができません。
 あまりにひどい場合は、教師の指導に加えて、家庭と協力して対応することが必要です。
 保護者に「落ち着きがない、集中力に欠ける、周りの子の迷惑になる」ということを伝えるだけでは、問題を解決するどころか、かえって保護者の反感を買うだけです。
 落ち着きのない子どもの、何が原因なのか、家庭ではどんな様子なのかを、保護者と一緒に考える姿勢、相談する姿勢で話をすることが大切です。
 共に原因を探ったり解決法を考えたりする姿勢で臨めば、保護者も真剣に考えるようになると思います。
 いくら指導しても効果がない場合、他の教師に相談して、自分の指導が悪いのか、子どもに何か問題があるのかを判断してもらうことです。
 客観的にみて、子どもに何か問題があるようなら、保護者に協力をお願いしなくてはなりません。
 保護者に学校での気になる様子を詳細に伝え、現在にいたるまでの家庭での子どもの様子について教えてもらいます。
 そのうえで、どのような対応をとることが子どもにとってベストなのかを保護者を交えて相談する必要があります。
 学習障害と言われるような子どもがいることがあります。しかし、はなから「あの子は・・・・」とレッテルを貼って対応してはいけません。
 自分の指導を厳しく見直して、子どもをよく観察する姿勢を持ち続けましょう。
(中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校長。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる) 

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保護者との信頼関係は、子どもの家に「足」を運び、家庭訪問することで築け

 保護者に顔を合わせて伝えるのと、文章や音声だけで伝えるのとでは、同じメッセージでも、受け手側のイメージが大きく異なることがあります。
 トラブルの報告や生徒指導上の必要な事柄は、保護者の顔を見て伝えることで、後の大きな労力を削減することになります。保護者と「顔を合わせる」ことが大切なのです。 
 保護者には誠実さを示すことが教師への信頼を高めます。
 大きなトラブルが生じた時の家庭訪問は、当然です。そうしなければ、保護者の気分を害することになります。
 反対に、ほんの些細と思われることで家庭訪問をすると、保護者は「そんなことで? ありがたい!」と、教師への信頼を高めます。
 家庭訪問し、足を運ぶことはおっくうに感じるかもしれませんが「この30分間の労力が、後のトラブルへ発展することを回避する」と考えて、機会を見つけて家庭訪問をするように心がけましょう。
 大きなトラブル以外での家庭訪問は、保護者と顔を合わせて世間話をする感覚で、気軽に行うことが基本です。
 子どもが病気やケガなどで欠席した時、近所の子どもやきょうだいに連絡帳を預けたり、電話でメッセージを伝えたりするのが一般的な対応です。
 しかし、子どもが欠席した時こそ、家庭訪問のチャンスです。
 保護者と直接、出会って話をするための理由ができます。
 何よりも、子どもを思う誠実さが保護者に伝わり、信頼関係を築く機会になります。
 他の教師がやらないことこそ、効果も大きくなります。
(中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校教頭。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる)

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学級通信で保護者とよい関係をつくるには、どうすればよいか

 保護者が参加する行事は早めにしらせるようにします。
 最近は共働きの家庭が増えています。間際になってからの休暇の申請はしづらいものです。早めに伝え、計画的に休暇が取れるようにします。
 大事なことは強調して伝えるようにします。
 保護者は授業参観でしか授業の様子を知ることができません。
 学級通信に授業記録を載せることで、授業での子どもの様子を伝えることができます。
 子どもたちの様子を臨場感を持たせて伝えるには、子どもたちがしゃべったことをそのまま書くとよい。
 出来事の説明をしながら、その途中に子どもたちが話したことを書いていきます。教師と友だちとのやりとりを書いていくと、さらに臨場感が出てきます。
 子どもたちの写真を載せると、忙しい保護者でも、数秒で見ることができます。子どもたちの写真にほっとする保護者もいるでしょう。
 写真を載せる場合、事前に校長と保護者に許可を取っておきます。
 学級通信にも保護者から感想をいただいたら、担任との関係もよくなっていくでしょう。
 学級通信に感想記入欄を設けたり、感想記入カードを配ると、保護者も感想を書きやすくなり、関心も高まります。
 保護者から感想をいただいたら、お礼の返事を書きます。
 いただいた感想は、前もって学級通信に掲載することを伝えておきます。その際、名前は出さないこと、文字の訂正をすることもあることを伝えます。
 実際に掲載する場合は、事前に連絡帳などで、掲載してもよいか確かめます。
 感動するエピソードは、子どもたちにも保護者にも喜んでもらえます。
 明るく希望に満ちた感動話を子どもたちに語り聞かせ、学級通信で紹介します。
 時には子育ての情報を載せる。
 ちょっとした失敗談と、それをどのように乗り越えていったかを紹介しましょう。
 保護者の参考になると同時に、同じ悩みを抱かえる親として、親しみを覚えてくれると思います。
(山中伸之:1958年生まれ。栃木県公立小・中学校教師。実感道徳研究会会長 日本群読教育の会常任委員)

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保護者から信頼を得るには、教師の実践による子どもの変容を親が感じとることが基本になる

 掃除のとき、転校してきたばかりの子どもが、ほうきをもって大暴れをしました。
 そこで、私は掃除を中断させて、子どもたちに
「掃除は何のために行うか」
「掃除をするための方法として大切なことは何か」
ということを、時間をかけて一人ひとりに考えさせ、話し合いをさせました。
 私は、この機会を利用して、受け身で行動してきた子どもたちを、能動的な活動のできる子どもに切りかえさせたいと考えたからです。
 次のことについて、一人ひとりが掃除の必要感をもつまで話し合ったのです。
(1)
学校は自分達の学習するところ
(2)
学校は友だちと学ぶところ
(3)
先生から指導をしていただくところ
(4)
そのために、自分たちの生活の場は、自分たちがいつもきれいにしておくことが大事。そこで、教室の環境を整えるための掃除の果たす役割は大きい
(5)
小学校高学年の掃除の仕方は、低学年とどこを違えたらよいか
(6)
責任ある行動とは
と、いったことです。
 これらのことについて、十分話し合ったあと、子どもたちの中から出てきた合言葉は
「ごみの0運動・ピカピカの5年生」
でした。
 次の日から、子どもたちは時間内に順序よく友だち同士が声をかけあいながら掃除をするようになりました。
 そして、数日後のことです。保護者から担任あてに連絡帳に次のようなことが書かれてくるようになったのです。
「最近、A男が家の庭をはいているんです。何か先生が言ってくださったんでしょうか」
「先生、子どもが家で自分の周りを綺麗にしているんです」
「B子が台所を、きれいに掃除してくれるんです。かわりましたね」
と、いったようなことが書かれてあったのです。
 保護者と連絡帳を通して話が楽しくできるようになりました。
 今回の掃除の問題が結果として、何人かの子どもにとっては、家庭の生活まで波紋を広げたようです。
 子どもは、一つひとつの行動について、必要性を感じ理解すれば、積極的に物事を行うようになるということです。
 そして、今まで、細かく世話をしすぎていた親も、自律していく子どもの行動に驚き、教師の指導性を高く評価して、教師に対する信頼を絶対的なものとしていくのです。
 教師と保護者が信頼を結び、子どもの教育のため、なかよしになるためには、このように実践による子どもの変容を親が感じとることが、基本になると考えてよいと思います。
(
帆足文宏:元東京都公立小学校校長)

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保護者と担任が信頼関係を築くためには、たくさんの連絡方法があるとよい、どのような方法があるか

 保護者が一番知りたいことは、学校でのわが子の様子です。
 もし、わが子に心配なことが起こったとき、状況がわからなければ悪い想像が膨らみ、不安がどんどん増して「一体どうなっているんだ!」となります。
 しかし、学校でのわが子の様子が少しでも見えていれば、状況がつかみやすくなり、落ち着いて「学校での様子を詳しく聞いてみよう」となります。
 人は隠されていると悪い方向に考え、見えていれば安心できるものです。
「学校での様子がよくわかる」と、保護者が安心できるようにすることが、学校と保護者との信頼関係を築く基礎となるのです。
 最初の保護者懇談会で、担任から「保護者への連絡方法」について話します。
「連絡ノート」「学校の電話」「携帯電話」「一筆箋」「学級ブログ」「学級通信」
を準備していることを伝えます。
 保護者から「子どもが、お便りを見せてくれなくて」という声を聞くことがあります。
 保護者と直接つながるチャンネルがいくつもあるというのは、教師も保護者も心強いものです。
 その中から「一筆箋」「学級ブログ」「学級通信」について次に述べます。
 まず「一筆箋」です。用意しておいた一筆箋に、子どもたちのよさを文章にし、本人に渡し保護者に伝えるものです。
 誰でも自分の子どもがほめられれば、うれしいものです。そして、担任は一人ひとりをよく見てくれて、いるんだなあと感じるはずです。
 短い文章で気軽に書け、ちょっと特別な感じが出せるので、私は一筆箋を愛用しています。
 次に「学級ブログ」です。4月に管理職や保護者に実際に見てもらいながらルールを説明し、理解を得るようにします。例えば、
(1)
メリットやデメリット
(2)
「パスワード」を知っている人しか見られないこと
(3)
名前や地名などの固有名詞は載せないこと
(4)
掲載されては困る場合は、写真を載せないこと
(5)
クラスが変わった場合はプログを削除すること
などの運用ルールを説明します。
 内容は、翌日の時間割と持ち物、宿題などの連絡事項と、その日の子どもたちの様子です。子どもたちの様子は、写真に短いコメントをつけるだけという簡単なものです。
 基本的に毎日更新しています。更新に要する時間は5分程度です。
 写真と短い文章だからこそ「この写真は何をしているの?」と、わが子との会話のきっかけになっているそうです。
 最後に「学級通信」です。学級通信は担任と子ども、保護者の交流の場です。
 子どもたちの声を中心に、楽しかったこと、悩んでいること、自分が学んだことや成長したことなど様々です。
 保護者にわが子だけでなく、クラスの子どもたちの考えが見えるように意識して子どもたちの声を選んでいます。
 子どもたちの声にコメントする形で担任の思いや保護者からの感想も載せていきます。
 保護者には、行事や学習発表会などの感想をカードに書いてもらうようお願いしています。届いたカードを学級通信に匿名で紹介します。
 担任からの思いを一方的に伝えるよりも、保護者がどう見ているか、分かる場を用意することが大切だと考えています。
 子どもの成長を願って、学校と保護者が「いつでも」「多チャンネル」「双方向」の情報公開を心がけ、共に手を取り合って進むパートナーとして協力していきたいと思っています。
(
白井 敬:長野県公立小学校を経て信州大学教育学部附属長野小学校教師)

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教師に怒りや敵意を持った保護者と、共に協力して解決するための道筋とは

 怒りや敵意の感情は、自分の願いが満たされないことから起きます。
 まずは、保護者が何を願っているのかを把握することが基本になります。
 怒りや敵意をもつ人は、必ず状況や相手を変えさせたいとの願いがあるはずです。
 その願いは、どのようなものなのか、その願いを読み取ることが大切なのです。
 本当の願いは、強い怒りに覆われます。
 保護者は「先生は、自分の願いに耳を傾け、味方になる人なのか」を探っています。
 教師は、保護者を分かり、理解してくれる存在になるよう心がける必要があります。
 そのために、教師は意識して保護者の心情に寄り添わなければならないでしょう。
 保護者の願いに意識を集中し、理解した部分を言葉にします。
 あわせて、それまでの保護者の苦労をねぎらいます。 
 教師という立場は、子どもの味方になるのは簡単ですが、保護者の味方になるのは難しいのです。「親がもう少し努力してくれればよいのに・・・・」と願うことが多いからです。
 保護者の願いが分からない段階では、不用意な解釈は慎みます。
 保護者の心情に寄り添い、願いをじっくりと感じとるようにします。
 保護者の願いや心情が分かったら
「〇〇してほしいんですね」「〇〇ということで、腹立たしく感じるわけですね」
などと、怒りを要求に置き換え、願いとして理解し、その願いがかなわないことを受け取って、言葉にします。
 大事なのは「今の問題を少しでも上向けるために、自分はどのようにすればよいか、何ができるか」を考えることです。
 保護者の怒りや敵意を保護者のせいにすると、関係の悪化は続きます。
 問題の解決に歩み出すには、見解の相違を見ないようにします。
 保護者の願いを正確に読み取り、見解が一致する点を探し、その一致点の上に立ち、具体的な解決策を探すのです。それ以外に抜け道はないのです。
 そのためには「どうなりたいのか」「どうしたいのか」について、保護者と共有できるレベルにまで願いを広げ、一致点を見出します。
 広い視点に立って、大きな目標で一致点を見出すようにします。
「お子さんに、幸せになってもらいたい」
「お子さんが、辛い思いから解放されるようにお手伝いしたい」
「お子さんが、今よりも快適な生活を送れるようにしたい」
 この程度まで、共有できる目標レベルを広げれば、保護者も異は唱え難いはずです。
 共通の願いに立っていることを確認し、学校側の願いと保護者の願いの一致点を、さらに狭いレベルでも見出すようにします。
 目標を共有することで、仕切り直しをするためには、学校側が、今後の大目標や当面の目標、そのための方針、方法について、事前に具体的に整理しておかねばならないでしょう。
 そのためには、学校側が様々なレベルでの対応策のアイデアを腹案としてもたねばならないのです。
 現実的な目標が共有できる関係になれば、もはや敵対関係ではなくなります。
 目標に向かい、何をしていけばよいのか、解決策や工夫について、額を寄せ合って考えます。
 学校側は話し合いで、保護者に
「学校にしてもらいたいことがありますか」
「してほしくないことがあれば、おっしゃって下さい」
と尋ねます。また、
「何か変えてみたいと思っていらっしゃることはありますか?」
「何かしてみたい工夫があれば、教えていただけますか?」
と尋ねます。
当面、何ならできるのか」を中心に、極めて具体的に考えます。実行できやすいプランを選択します。
 プランを定めて、一定期間実行した後で、評価し必要に応じて変更します。
 成果の出ているプランは続け、出ないものは取りやめを考えることも考えればよいのです。
 大事なことは、一緒に歩む保護者の意欲や意志を支え続けることです。
(
小林正幸:1957年群馬県生まれ、東京都港区教育センター教育相談員、東京都立教育研究所相談部研究主事等を経て東京学芸大学教授。不登校を始め学校不適応、ソーシャルスキル教育、教育相談、教育技術を研究
)

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保護者からの苦情を防ぎ、保護者と関係を築くには、どうすればよいか

 保護者対応と聞くと、苦い経験がある。
 初任者のとき、私はまだまだ未熟で、保護者から信頼されているとは言えない状況だった。学校に電話が鳴るたびに「自分ではありませんように」と願った。
 二つ目は、教師になって7年目。初めて1年生の担任になった。
 私のクラスには毎日遅刻する子どもがいた。そこで、家庭でもしっかり指導してもらおうと、連絡帳で「登校時間に間に合うように協力してください」と伝えた。
 私は心の中で「どうして、家庭で、ちゃんとしてくれないんだろう」という思いがあった。
 次の日、母親から返事があった。「家でも声をかけているが、うまくいかず、つらい思いをしている」ということが書いてあった。
 私は「母親を傷つけた」と後悔した。もっと他に伝え方はなかったのか。今、思いだしても、申し訳ない思いでいっぱいになる。
 私は一目見ただけで「この先生なら安心だ」と思ってもらえるようなタイプではない。
 こんな私でも保護者に信頼してもらいたい。どうしたらよいのか考えた。
 私は自分のキャラクターを考えて、まず、保護者に笑顔になってもらうことから始めてみようと思った。
 保護者と笑顔で話ができるようになることで、私への安心感の第一歩につながるのではないかと。
 同僚の教師が
「職員室に保護者が来たら、立ち上がって、ドアまで用件を聞きに行くようにしている」
「保護者も職員室にそんなに来たくないと思うから」
と教えてくれた。
 その日から、私は職員室に来るお客さんには立ち上がって対応するようにした。
 廊下で会った保護者には、笑顔で「いつも、ありがとうございます」「お疲れ様です」などと挨拶するようになった。
 そして、他にひと言、付け加えるようにしている。そこから、話が広がることもあったし、家での生活の問題などを教えてもらえることもある。
 それは、安心感につながっていくのではないかと思う。
 3年生の担任のとき、父親から学校に苦情の電話があった。
「わが子が友だちに傷つく言葉を言われた」と。
 そこには、わが子がいじめにあっているのではないかという、心配と怒りがあった。
 学校はどういう指導をしているのか、という不信感もあったと思う。
 私は、心臓がどきどきしながらも、頭は冷静になろうとした。
 私は、子どもたちから聞き取りしたメモを持ち、状況を説明し、子ども同士で解決したことを伝えた。
 電話対応では、保護者の話を穏やかに聞き、保護者の思いをくみとる。
 詫びるところは詫び、最後に自分の考えを冷静に伝えることが大切だと私は考えている。
 ここで、失敗すると後から大変なことになってしまう。
 電話対応で、30分以上かかりそうな場合は、家庭訪問させてもらったほうが、お互いの話が伝わりやすいので、その見極めも気をつけている。
 苦情などの電話があった場合は、当たり前のことだが、その子の様子をいつもよりよく見て、声をかける。
 事態が好転すると、つい忘れてしまいそうになるけれど、保護者の心配は続いている。
 参観日などで保護者に合えたとき「この前は、ご心配をおかけしました。その後どうですか?」と必ず声をかけている。
 また、学級でのトラブルで保護者に伝えて分かってもらった方がよいと思ったときには、学級通信で伝えて問題を共有できるようにしている。
「先生、うちの子のこと、お願いします」と言ってもらえるように、笑顔と心配りで関係をつくっていきたい。
(
戸来友美:北海道千歳市立小学校教師)

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子どもが変われば、保護者も変わり、教師を信頼する

 新年度が始まった4~5月。保護者たちからは、クラスへの不安が多くよせられました。
「いじめの加害者の〇〇さんと、また同じクラスになってしまった」
「うちの子は△△さんから手を出されたことがあるので心配」
など、わが子にのみ関心が向いている保護者がおおぜいいました。
 家庭訪問でこうした保護者の話を一つひとつていねいに聴きながら、学級経営と授業をしっかりやっていくことをはっきりと伝えました。
 子どものよいところを見つけて、教師がほめることからスタートし、子どもたちがお互いにほめ合う。
 さらに「ほめ言葉のシャワー」「成長ノート」などを通して、友だちのよいところを積極的に見つけていく。
 こうした繰り返しの中で、少しずつ自信をもっていった子どもたちは、学校での様子を積極的に家庭で話すようになりました。
 今まで、友だちや学校への不満をこぼしてばかりいたわが子が、ほめられた喜びや友だちのよいところを話し始めたことに気づいた保護者は「今年は、今までと違う」と感じてくださったようです。
 保護者が学校に抱くマイナスの気持ちをプラスに転換してもらうために、私は最初の授業参観で子どもたちの学び合いの姿を見てもらい、これまでの不満・不安をふっしょくしてもらおうと考えました。
 授業では、話し合いの場面を多く取り入れました。話をしている人の方に体を向けてしっかりと話を聴き、全員が自分の考えを自由の考えを自由に出し合う。
 正解を求めるだけの授業とは全く異なる話し合いの授業に、保護者は驚かれていたようです。
 授業参観の後、子どもたちの「成長ノート」を各自の机の上に置いておきました。懇談会で、わが子の席に座った保護者おもむろに「成長ノート」を広げました。
「成長ノート」は、筋目筋目に合わせた規範意識や育てたい目標など、学級の中で学ばせたい“価値ある行為”を、書くことによって意識化させるノートです。
「今日の話し合いの授業で学んだこと」など、私が提示したテーマについて、子どもたちは意見や感想を書いていきます。
「うちの子が自分の意見をこんなに書けるなんて知らなかった」
 初めて見るわが子の「学びの軌跡」に、保護者は高い関心を示していました。
「うちの子は、新しいクラスでやっていけるのだろうか」という不安が「子どもたちは変わろうとしている」という期待に変わっていく様子がまざまざと感じられました。
 教師の仕事は、日々の授業が中心です。全ての大切なことが授業の中に入っていると思っています。授業づくりには「これくらいでいいだろう」という妥協点はありません。
 私は一人ひとりの子どもの学習ノートや「成長ノート」に必ずコメントを添えます。
 子どもたちに伝えたい大切なルールや学習のポイントをまとめたプリントや、子どもたちの意見や感想を集約したプリントを作って配ることもあります。
 結果的に、子どもたちの学びの姿を保護者に伝えています。
 日頃のつながりとは、日々の授業の積み重ねです。あくまでも教師は、授業で子どもたちと向き合っていくことが大切だと思っています。
 日々の授業で子どもたちが育てば、それを実感した保護者も成長するのです。
(
菊池省三:1959年生まれ 福岡県北九州市公立小学校教師、2015年に退職。コミュニケーション教育を長年実践した。「プロフェッショナル-仕事の流儀(NHK)」などに出演、「 菊池道場」(主宰)を中心に全国で講演活動をしている。 北九州市すぐれた教育実践教員表彰、福岡県市民教育賞受賞)

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