カテゴリー「学習指導・学力」の記事

音読で学力が上がる、おもしろいと思わせる工夫をするとよい

 私は最初、子どもたちにはとても優しい先生として接します。そして、子どもたちとの関係づくりができたら、ビシバシと基礎づくりや、音読指導などを始めるのです。
 音読指導は厳しくやりますが、おもしろくやります。つまらなければ、子どもたちがついてこないからです。
 おもしろくする方法は、お笑い芸人のトーク技術と同じです。
 例えば「スイミー」の音読指導では、「ある日! 恐ろしい!!(ジャジャジャジャ・・・・・・・ジョーズの音楽のマネ)・・・えー、コマーシャルが入ります」と、「ある日」と「恐ろしい」で切って、恐ろしそうな顔と言葉で、しかもギャグを入れたりしています。「おっ! 見たこともない魚たちが!!」と、床面を見ながら言ったりします。
 常に、おもしろい読み方、笑わせる授業になるようにしています。同時に、その空間も感じるような音読です。私は「立体的な音読」と言っています。
 朗読の研究会に行くと「邪道」「淡々と読み、子どもたちに想像させなきゃいけない」と言われますが、私はおもしろくやって、実際に子どもを伸ばしているのだから、気にしません。
 逆に、読み聞かせの会の人たちから「教え方がわかりやすい」とほめられました。
 私は「一人の落ちこぼれも出さない」という信念を実現するために、教科書を音読する一斉指導で、子どもたち全体の学力の最低ラインを上げていきます。
 読めるというのはすべての教科の基礎・基本です。教科書をすらすら読めるというのは、どの科目もそこそこできる子です。教科書を音読させてみると、できる子、できない子が一度にわかります。
 私は国語だけでなく、全教科で教科書の音読をします。読めることはすべての基礎基本です。初めての文章は多くの子どもが読めません。これは、基礎・基本ができていないということです。なのに、もっと難しいことをやるのは無駄なのです。
 音読は理解の基本です。とにかくこれを続けると、クラスの平均点が驚くほど上がります。社会科のテストで、これまで勉強してこなかった子が100点を取りました。「がんばったな」と声をかけると「あれだけ教科書を読めば誰でも覚えますよ」と言いました。これぞ音読効果、自然に内容を覚えるのです。
 一回読んだら終わりとはしません。バリエーションをつけて、テンポよく繰り返し読ませます。例えば、全員で読ませる。一人ひとり短い文章で区切って次々全員に読ませる。班全員で声をそろえ読ませる。班の中で一人ひとりに順番に読ませる。班ごとに全員の前で読ませる。
 順番に一人が一文を読んだら、次に全員が復唱します。一つの班が読んで全員が復唱することもあります。そうすれば、ほかの子が遊ぶことがなくなります。
 今の子どもはイメージする力が弱いのです。私の学級では、大きな声で、強弱をつけたり、その場面をイメージさせながら表現する音読をさせています。例えば「このとき、『ごん』はくやしいと思ったのか、しかたがないと思ったのか」を何度も読み、何度もいろいろな読み方で読むことで、その場がイメージできるようになってきます。
 私の学級の音読授業を見て「まるで演劇のようだ」と言う人もいます。私は演劇のように音読する指導をしています。その登場人物になりきることで「その心情もわかるではないか」と思うからです。いろいろな視点で音読することで「さまざまなものの見方がある」ことに気づく子がいます。社会にでてからも役立つスキルだと思います。
 私が音読の良い見本を見せたり、子どもの中で上手にできた子がいたら、その子のやり方をみんなの前で見せたりします。上のレベルを見せて伸ばしたほうが全体的に伸びるのです。「どうして音読しなきゃいけないの?」と言う子がいますが、理屈ではなく、真似することが大事なのです。体で覚えたほうが、上達が早くなります。
 勉強ができない子というのは、まずスピードがありません。速くよめない。だから、ゲーム感覚で超高速読み競争をよくやっています。最初の一文を意識して速く読むのがコツです。その後の速度が規定されるからです。
 
「この範囲を10秒で読もう。ヨーイドン」と。繰り返してやることで遅い子も「ワー、読めた」となります。人間って速くやることが好きなんです。いろいろな面でスピードアップできます。
 もちろん、落ちこぼれそうな子は、個別に入念なケアが必要です。集団をレベルアップさせつつ、個別にも関わります。だから私は、授業の中で一斉指導と個別指導をミックスさせています。その子だけに関わっていたら他の子が騒いでしまいますので、個を指導しながら全体を、全体を指導しながら個を指導しています。
(
杉渕鉄良:1959年東京生まれ、東京都の小学校教師。「教育の鉄人」と呼ばれる実践家、子どもを伸ばす為に命をかける熱血教師。ユニット授業研究会代表。その実践スタイルは全国の教師、保護者から支持を受ける。2003年夏、日経スペシャル「ガイアの夜明け」に出演。PHP「VOICE」や、経済誌「プレジデント」での教育シリーズに取り上げられ、各方面からの注目も高い。ユニット授業、10マス計算、表現読み、指名なし発言など、子どもの可能性を引き出すため、さまざまな工夫を凝らした教育実践を行っている) 

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基礎学力をつけると子どもが落ち着き問題行動も減る、基礎学力づくりを実践した学校の方法とは

 兵庫県の山口小学校()の実践はNHKの番組で全国に伝えられると、大きな反響がありました。読み書き計算の徹底反復の実践だけをやっていたわけではありません。基礎学力を生かして、仲間づくりや体づくり、生活習慣づくりなどと組み合わせながら、全人格的な発達をめざして実践しました。
 「学校で学ぶことが楽しい」と思える学校をめざしました。子どもたちには笑顔があります。学校と家庭が協力しあった生活習慣づくりで基礎学力が育てられてきたのです。
 子どもたちに基礎学力がないと、課題をお互いに発表しても理解できないのです。それで私たちは基礎学力が大事だということを感じるようになりました。実践が進み子どもたちに基礎学力がついてくると、子どもたちは落ち着いてきました。問題行動で教師が悩まされることはありません。しっかり学習させているにもかかわらず、八割の子どもたちは学校が楽しいと答えています。保護者も95%が山口小学校に満足していると答えています。また卒業生の中から難関と言われる国公立大学に続々と合格したのです。
 読み書き計算の学習は、子どもにとってしんどいものです。しかし、友だちが励まし合う学校では、一緒に学んでいるという共同意識に支えられ、つらいハードルも乗り越えられます。苦しい学習も喜びに変っていきます。そして成長が自覚されることによって自信もわいてきます。競争がゲーム、楽しさとなり、真のライバルは昨日までの自分なのです。
 すべての教科の学習には、必ず読み書き計算の能力が必要となります。つきつめると言葉と数です。豊富な言語と、数の処理が速く正確であることが学力の土台なのです。学習能力は、見聞きすることを理解する能力です。体得すると、授業がわかって面白くなります。だから、学習能力が伸びてくると、子どもも教師も授業が楽しくなってくるのです。そうすると子どもたちの学習能力が加速度的に高まっていきます。
山口小学校の実践を紹介すると
1音読・暗唱
 音読でつまずいているようだと、満足な読解はできません。育てるには毎日の音読練習が有効です。音読が上手になるコツは、少しずつ全員の音読を毎日聞いてあげることです。3行ほど読ませ、よくなるポイントを助言することが大切です。
 国語の表現読みなどの音読をさせるとき、効率よく上達させるには、教師が手本を示すことです。もうひとつ重要なのは、評価をきちんとすることです。私の場合は5段階評価を行って、何をどうがんばればいいかを確実に伝えるようにしました。音読カードを用意し宿題に出します。
 同じ文章を一か月くらい音読させると子どもたちは暗唱してしまいます。小学生は格別の記憶力がある時期です。言語の学習には暗唱が最も効果的です。
 どんな教科も音読させることが重要です。社会や理科、算数などでも音読させ、すらすら読めるようにすることが大切です。算数の文章題などを理解するためには、論理的な思考が必要となります。私たち大人が社会で読むのは論理的な思考を必要とする説明文が多いのです。そのためには、読みこなす力をつけておかなければなりません。
 読むということは認識そのものですから、とにかくたくさん読ませることが認識訓練になります。
2 読書指導
 読書指導は、朝の10分間読書と「お話を聞く会」があります。頭の新鮮な朝に、短時間集中的に読書をするのは効果があります。
 「お話を聞く会」は全校一斉の読み聞かせの会で、学期に一回です。あらかじめ教師は読み聞かせする本を決めます。子どもたちは聞きたい本を選びます。その人気の度合いに応じて大小の部屋が決められます。本番の時、子どもたちは聞きたい本の部屋に行って、どの先生が本を読むか初めて知ります。
 ふだん触れ合わない先生が読み聞かせしてくれたり、いろいろな学年の子が集まるのでいっそう楽しくなります。いろいろな人間とふれあうことによって、子どもたちが閉塞感を持たないようにし、学校の中の空気を循環させることは非常に大切だと考えます。
3 読解指導
 読解の指導は「一人調べ」と、その読解を比べ合わせる「全体学習」の二段階に分かれます。読解力は一人調べと発表をくり返せば深まります。
 「一人調べ」は、物語の登場人物の心情を表すことばなどを見つけて、自分なりの解釈を書く学習です。それぞれの段階でつまずいている子の指導ができます。そのやり方はほかの教科へも応用できます。将来、世の中を理解していくためにも確実に役立ちます。
 私は子どもたちに「ノートを見てごらん。ノートに書かれていることが、キミの頭の中だよ」と、よく言います。ことばなどを映像的にとらえて頭の中に整理されれば、理解はより深く正確になるものです。
 理解した内容のなかで、何か必要で何が必要でないかを考えて、一つの中心的なことを軸に関連づけて、再構築していけば、わりに簡単に頭の中が整理できます。
 「全体学習」は、子どもたちに読解の内容を発表してもらい、確かな読解や多様な読解ができるようにします。人の発表を聞く構えが子どもたちにないと話しにくいし、発表がへたな場合、聞きにくいものです。聞く・話す技術が必要になります。朝の会のスピーチや発表活動などを多く作って、意識的に訓練する必要があるでしょう。
4 書く力を育てる
 今の子どもたちは、漢字を書くことを極端に苦手にしています。ですから、書きながら覚える「読み書き同時習得」が重要になります。漢字は読み書き同時習得で、初めて学力になります。
 熟語は一見するだけで、その意味を理解することができます。山口小学校では、熟語から漢字の意味を知るというやり方のほうが、子どもたちにとって理解しやすいということがわかったのです。それで、新出漢字の復習のときは、熟語をすべてピックアップして、連想ゲーム式に覚えます。加速度的に漢字を覚えることができます。
 方法プリントの左に新出漢字、中に熟語の読み、右に熟語を書きます。漢和辞典を引き、熟語の意味を確かめます。書けなかった熟語は、次の日練習させます。最初は学校で指導し、慣れれば宿題にします。1日に10程度の漢字の熟語を2日で覚えることができるようになってきます。
 漢字は要素ごとに分け、まとめて覚えると覚えやすくなります。
漢字の習得率を上げるため、
(1)
毎日必ず漢字の練習時間を作り、間違いの多かった漢字ばかりをプリントにまとめて、全部習得できるまで指導する。
(2)
新出漢字の学習は教科書の進度とは別に指導する。短期間に覚え、復習に時間をとり、11月中に終了する。
(3)
三学期は漢字学習の復習期間とする。
(4)
年度末に、全校一斉に「漢字力試し」(各学年熟語20)を実施し、習得率の確認をすると同時に、次年度の指導の参考とする。
(5)
習得率の悪い漢字をピックアップすることで、効率的な習得率の向上を図る。
5 計算力
 計算力は算数のかなめです。計算力の土台は、一桁のたし算、ひき算、かけ算です。分数や少数、わり算は、それらの組み合わせでしかありません。土台をしっかり築くと以降の学習のつまずきを防ぐことができます。そこで、簡単にきたえられるように考案された教材が「百ます計算」(岸本裕史考案)です。
 百ます計算は縦と横に10個ずつ、百個のますを作り、たし算やひき算、かけ算やわり算を行い、時間を計ります。中学年以上では2分以内でできると算数の計算が支障なくでき、3分になるとつまずきが目立ちます。それで2分以内を目標にします。大切なのは毎日少しずつやることによって、記録が伸びることが励みになり、自分の成長に喜びと自信を持てるようになることです。全学年で、算数の授業の最初の10分間やって計算力をつけています。
 最初いやがる子どももいるかもしれませんが、どんどん自分の記録がよくなりますから、多くの子どもたちは百ます計算を喜んでやります。大切なのは毎日少しずつやって、毎日記録を取ることです。記録が伸びることが励みとなり、子どもたちは自分の成長に喜びと自信を持てるようになります。学校ぐるみで見守り、フォローすることで初めて生きた成果が得られるのです。
6 運動
 年間を通じて体育にもたいへん力を入れています。朝のジョギングや縄跳びなどをして、体が活性化した状態で学習に入れるようにしています。5月の運動会、6月の鉄棒発表会、夏の水泳、11月のマット運動会、冬のマラソンなど、知育を伸ばすためにも体育は欠かせないと考えているからです。
7 家庭と連携し生活習慣を改善する
 知育と体育の健全な発達を支えるものは生活習慣です。子どもたちの学力が伸びるためには、全力で学習するための集中力と忍耐力が必要です。生活習慣が乱れてくると、子どもたちは落ち着きを欠いたり、集中力がなくなり、キレたり、荒れも増えます。
 生活の乱れをなくすためには、学校と家庭は常に密接な連携を保っていなければなりません。私は生活習慣の乱れを直すことが、学力づくりの条件と考え、保護者にアンケートを実施しました。食生活や生活習慣についての授業を授業参観に合わせて全校で実施しました。
 朝食をしっかり食べると子どもの精神の安定のためによいことがわかってきました。各家庭には、米飯の朝食を推奨したり、睡眠時間の確保とテレビの視聴時間の短縮をお願いしました。
 生活習慣点検を毎日、音読指導とあわせて行うことで、家庭との連携も進みました。
 PTAの講演会では生活リズムの研究者や医者を招き、みんなで学習しました。こうして、子どもの学習を支える体と健康作りが進むことで、子どもたちの集中力と忍耐力がつちかわれていくのです。
6 宿題
 宿題をしっかり出すようにしています。宿題は主に市販のプリントでだします。ドリルも使います。だいたい「学年」×15分~20分です。宿題の学習時間はそれほど多くはありません。なぜかというと、どの学年でも宿題を出しますから、家庭での学習習慣が早くから確立していること、学校の学習で得られた集中力が家庭でも発揮されるからです。
 学校での学習と家庭学習が相互的に働きあうことで、自分の学力がしっかりしたものになるということを、子どもたちはよくわかっているのです。ですから、宿題をしない子どもが少ないのです。
(
)
陰山英男は兵庫県朝来町立山口小学校教諭時代に、独自のプログラムに基づいた「読み書き計算」の徹底反復練習と家庭生活の改善で子どもたちの学力を驚異的に伸ばす。その指導法は「陰山メソッド」として教育者、保護者から注目を集めた。
(
陰山英男:1958年兵庫県生まれ、兵庫県公立小学校教師、広島県尾道市立小学校長(公募)、立命館小学校副校長、国の教育再生会議委員、大阪府教育委員長を経て立命館大学教授、日本教育再興連盟代表理事、徹底反復研究会代表。兵庫県の朝来市立山口小学校で保護者を巻き込んで、基礎学力向上のための岸本裕史が提唱した百ます計算や日常の生活を見直すチェックシートの活用などで成果を上げた)

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教えることは難しい、子どもに学ぶ意欲をうながすにはどうすればよいか

 実際に何かを教えるということは、かなり難しいものだ。私は20歳代のころから家庭教師や塾のアルバイトで教えてきた。最初に塾で英語を教えた時、50人ほどいた生徒がみるみる減って、5人ほどになって、やめざるをえない事態に陥った。今から思うと、悪い教え方を次々と繰り出していた。その後、私はどうすればおもしろい授業ができるか日々工夫を重ねた。その結果、40歳代には、私は予備校のカリスマ講師として日本中に知られる存在になった。
 私は、教えるということは、「教える側の押しつけによって学ぶ側の自立を促すという矛盾した行為」だと思っている。教えるからには、学ぶ側が自分で考えよるようになるために強制しなければならない。しかし、ずっと強制していたのでは、学ぶ側は自分で考えようとせず、いつまでも他人の考えをうのみにし自立できない。その強制と自立とのかねあいこそが、教える技術のすべてと言っていいだろう。
 ところがそれがなかなか難しい。教える内容や教える相手によっても一律ではない。コミュニケーション力を用いて、相手の子ども一人ひとりの気持ちや理解度をその表情や態度から察し、説明の仕方を変えながら徐々に難しいことを教えていかなければならない。
 時には、プライドをくすぐったり、あえて傷つけたりして、学びたい気持ちを高める必要がある。そうしながら、だんだんと学びたいという気持ちを起こさせ、自分で考えるように促さなければならない。
 子どもに学ぶ意欲をうながすにはどうすればよいか。
 究極の方法は「教師が手本を見せる」ことだ。例えば英語を教えるとき、自分がどんなに英語を愛しているかを語り、英語の楽しさについて熱をこめて語る。それだけでも見本になるものだ。
 子どもに「自分で答えを発見するように導く」というのもひとつの方法だ。答えを発見する少し前まで、ヒントを出し、決定的なところは子どもが発見するように仕向けるのがうまい方法だ。子どもが優秀であれば、ほんの少しヒントを出すだけでよい。優秀でない場合は、ほとんど答えに近いものを教師が口にしてやっと気づくだろう。
 大事なことは、子どもに自分で気づいたように感じさせることだ。もっとも好ましいのは、子どもが読みとった以上のものを、その後、教師が見せることだ。そうすることで、子どもが自分で発見すると同時に、いっそう高い次元があることも学び、教師の能力を信頼するようになる。
「短期的な目標を与える」ことも有効である。短期的な目標を持たせ、それをめざして努力するうちに一人ひとり力を伸ばし、達成感を味わわせる。すべての教育の基本はそこにあるといっていいだろう。
「ゲーム感覚で練習させる」こともよい。何かを身につけるには反復練習が不可欠だ。しかし、どうしても単調になり身が入らない。それを長続きさせるのにもっともよいのは、ゲーム感覚で練習させることだ。
 ゲーム感覚を取り入れることで、楽しみながら学ぶことができる。もっともシンプルなゲーム感覚といえば「競争」だ。他者との競争ではなく「時間を決めてその間にどれほどできるか競う」こともできる。それ以前の自分の記録との競争ということになる。
「間違い探し」をすると楽しんで学習することができる。「おかしなところが五か所ある」と探させると興味を持って間違いを探そうとする。
 何かを教えた後には、必ず「復習テスト」をするのが好ましい。それをしないと、学習したことが整理できず、いつまでも定着しない。例えば、その日の最後に、その日教えた内容の重要ポイントをテストに出す。毎回必ず行うようにしておくと、教えている間も緊張感が持続する。五問くらい、穴埋め問題などで出題する。「四問できたら合格。それ以下なら、もう一度やり直し」そうすれば、子どもは気合いを入れてテストに取り組む。
(
樋口裕一:1951年大分県生まれ、塾、予備校、京都産業大学客員教授を経て、多摩大学教授。全国で文章指導を展開し、小論文・作文の指導者として知られ小論文の神様と呼ばれる。小論文と作文専門の通信指導塾「白藍塾」塾長でもある)

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授業で教えたいことを教えないことが、子どもたちの集中力をつくる

 授業は「教えたいこと」を「教えない」のが基本原則だ。本来、子どもたちは自ら知恵出し合い、それを解き明かしていく過程を通して発達をとげていくものだ。教師が授業で、子どもたちに、「教えたいこと」をすぐに教えるようでは、子どもたちを自らの足で山へ登らせないで、ロープウェーで頂上まで連れていってしまうことと同じだ。それでは、子どもたちの足腰が鍛えられない。
 四年の理科で、植物教材を扱っていたとき、雑誌「アエラ」(2000424日号)が届いたので、読んでいると農業の記事が目にとまり「あっ、これは授業で使える」と思った。
 そこで植物学習の最後に、この記事を使って授業をした。もちろん、この記事を印刷したものを、授業の最初に子どもたちに渡して授業したということではない。そんなことをすれば興味が半減してしまう。授業の展開は次のようにした。
教師「この『アエラ』という雑誌の記者が、記事を書こうとして、ある農家を訪れた」
教師「イチゴを育てているビニールハウスの中に案内されて、驚いたことがある。ストーブが置いてあったのだ。なぜだろう?」
子ども「温かくして早くイチゴができるようにするため」
教師「たしかに、そういうこともあるけど、それだけではないんです」
子ども「二酸化炭素を出すため?」
教師「まえに学習したことをよく思いだしたね。植物が栄養をつくり成長するためには、光や水のほかに二酸化炭素が必要だったでしょ。そのために置いてあるということです」
教師「ところがもうひとつ、木の箱が置いてあったのです。その中には何が入っているんだろう?」
 どの子も、その箱というのは、いったいなんだろう? と、わくくわした表情で考えている。知的な興味が集中を生み出す。
子ども「肥料」
子ども「ハチ」
教師「そう。あなたが言ったように、その箱にはミツバチが入っていたのです。どうしてビニールハウスにミツバチが必要なんだろう?」
子ども「ビニールのなかでは風がないから、花粉が飛ばない」
子ども「ハチが密を探しているうちに、からだにおしべの花粉がつき、それがめしべにつくようにするため」
教師「そうです。それで実ができるのです。ただイチゴには蜜はないそうです。ハチはえさにする花粉を求めて動き回っているうちにめしべに花粉がつくということです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 子どもたちは一瞬にして、教材の質を嗅ぎとってしまう。現実の農業の姿が見えることは、子どもたちにとってもうれしいことなのだ。イチゴだけでなく、ダイコン、ニンジン、キャベツ、タマネギ、メロン、ウメ、リンゴ、ナシ、モモ、カキ・・・・・・がミツバチによって栽培されていることに子どもたちは驚く。
 雑木林や雑草が生える場所も、年々減少してきている。昆虫のすめない環境が広がってきているのだ。この点についても、今後、子どもたちの目を向けさせていきたい。
 いずれにしても、教えずに、自らよじ登らせるようしてこそ集中力が生まれる。考えさせる授業は集中力を育てる。
(今泉 博:1949年生まれ、東京都公立小学校教師を経て北海道教育大副学長(釧路校担当)。「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う) 


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学習指導は子どもが自ら学習するようにすることなのに、教科書通りの無難な授業でよいのか

 「今の若い教師の指導に、文句のいいようがないですよ」と、ある指導主事の話。それほど立派なのかと思ったら、そうではなかった。教科書通りの授業をしているのである。教えている教師もおもしろくないだろうが、子どももおもしろくない。
 しかし、「校長も、親も、教科書通りきちんと教えているから文句のいいようがない」という授業をしているというのである。教科書を教えているから、教科書準拠の市販テストのできもよい。
 「もっとおもしろく授業をやりなさいよ」といったら、「教科書通りに授業をやっているのが悪いのですか?」と開きなおるという。
 冒険しよう、少しはおもしろくしようという気は全くない。ただひたすら「教科書を忠実に教える」ことに徹している若い教師が結構いると聞いて驚いている。
 学習指導するというということは、「子どもが、自ら学習するようにすること」である。教科書を忠実に教えている教師に「教科書をひたすら教え込むことで、自ら子どもが学習するようになるのか」と、問いかけるべきである。
 文句をいわれないようなことをすることが教育でない。子どもが意欲を燃やして追究し、自らつかんだ問題を必死で解決していくようにすることが教育である。
 そうすると、子どもが成長する。子どもの成長をうながすのが教育である。
(
有田和正:19352014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた) 

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授業で「話し合い」の学習指導はどのようにすればよいか

 話し合いは最も多く使われている学習方法であるのに、最もまずいようである。話し合いで「新しい価値が生み出される」ことなど容易なことではないのである。
子どもたちの話し合いで気をつけなければならない点は、
(1)
話題が鮮明であるか。
(2)
その話題について子どもたちにズレがあり、それを埋めようとするような話し合いがなされているか。
(3)
話し合うことによって、新しい価値が生み出されているかどうか
(4)
「話し合い」と言いながら、形式的な形をふんでいるだけで、あとは教師の考えを押しつけていないか。
話し合いのときの発言のしかたも問題である。
(1)
既有の知識や経験をもとにして話題について考え、自分の考えをはっきりと述べているか。
(2)
四段落の形で発言できているかどうか。
 
例えば、社会科の授業であれば
「何という資料の」
「何ページに」
「これこれの内容が書かれている」
「だからわたしはこう思う」
という四段落の形で発言できているかどうかである。これこそ社会科的というか、根拠を明らかにして考えを述べている例である。
(3)
「わたしの考えはこうである」「わけはこれこれだからである」と述べているかどうかである。
 発言のしかたが鍛えられているかどうか、ちょっと聞いただけでわかる。(1)(2)(3)のような下じきをもってみることだ。
 子どもの意見が、教師によって、集約・焦点化されているかどうかである。こうしなければ、話し合いの意味はない。
(
有田和正:19352014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)

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短時間の徹底反復学習で基礎学力をつくる

 朝自習、朝読書、朝の会などの時間を基礎学力の時間としています。算数や国語などすべての教科は基礎の土台づくりが大切です。
 「読めて書ける」「たし算、ひき算、九九」が基礎中の基礎。たとえば九九なら、九九のカードを作り、そのカードを見せた瞬間にパッと答えが出るくらいに鍛えます。基本的な「読み・書き・計算」が速くできるということが、私の考える基礎中の基礎です。
 だから、私はどの学年を受け持っても、最初は10マス計算のたし算ひき算と音読で基礎の力をチェックします。5,6年生になると、簡単すぎると言う子もいますが、10マス計算を10秒でやれるかと言うと、できる子はほとんどいません。いかに基礎ができていないかわかります。
 私の授業は集中、高速、超高速です。ですから、音読も計算も、圧倒的な量をこなします。超高速な分、空く時間ができるので、基礎の時間を設定できるのです。
 杉渕学級では、徹底反復が特徴のひとつです。漢字テストや算数のプリントは、しばらく毎日同じプリントをやらせます。そして、それをやるときの制限時間をどんどん短くしていくのです。たとえば、10マス計算のプリントならば、最初は10秒でやらせていたのを、どんどん短くしていき、5秒を目標にさせるなど、負荷を強くすることで、ハードルを上げていきます。
 できない子は、毎日同じプリントをやることで、答えも覚えるぐらいになるので「自分もできる」という感覚をつかむことができます。
 クラスの中には「自分はできない」と思い込んで、やる気のない子がいます。しかし、こうした子が、徹底反復で毎日同じプリントをやるうちに、10秒かかっていたのが7秒になり、6秒になり、5秒を切るとなってくると、そのプリントだけではなく、すべての授業にものすごくやる気を出すようになるのです。
 徹底反復も、毎日同じでは飽きてしまいます。教材や取り組む方法は、変化があっておもしろい企画を考えるようにしています。
 音読、漢字を書く、いろいろな音読、表現読み、歌、百人一首、たし算、ひき算、かけ算、わり算、こうした基礎を6年間積み重ねると、すごい実力になります。
(
杉渕鉄良:1959年東京生まれ、東京都の小学校教師。「教育の鉄人」と呼ばれる実践家、子どもを伸ばす為に命をかける熱血教師。ユニット授業研究会代表。その実践スタイルは全国の教師、保護者から支持を受ける。2003年夏、日経スペシャル「ガイアの夜明け」に出演。PHP「VOICE」や、経済誌「プレジデント」での教育シリーズに取り上げられ、各方面からの注目も高い。ユニット授業、10マス計算、表現読み、指名なし発言など、子どもの可能性を引き出すため、さまざまな工夫を凝らした教育実践を行っている)

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傍観者をつくらない、子どもが成長したと自覚させる授業をする

 何のために授業をするのでしょうか? それは言うまでもなく学力を形成するためです。その学力形成を効果的に行っていくにはつぎのような方法があります。
(1)
子どもたち全員に保障されなければならない
 日本中で行われている授業は、まず教師が発問し、それに対して子どもが指名される。その子と教師だけで授業が進められていく。
 これでは、子どもたちに一部の参加者と多くの傍観者をつくってしまい、学力の形成が全員に保障されることはかないません。
 私の授業は、作業で答えさせるような発問をします。そして、巡視して子どもたちの反応を読み取り、分類していきます。あの子に発言させれば、つぎにはこの子が反論するだろうというプランが立ちます。授業を組織化します。作業→巡視→分類→指名という形にしますと、常に授業は全員が参加します。そのことによって子どもたち一人ひとりが授業で充実感をもつことができます。
 私の授業での作業は簡単なもので「○か×を書きなさい」「1か2で答えなさい」と、短時間です。しかし、書いてから、選んだ答えの根拠を求めていくので難しくなります。
(2)
授業は子どもをよりよく変えることを保障しなければならない
 人間は変わって、変わって成長していくのです。間違えた子ほど変わり伸びる可能性があるということです。間違いをこころよく受け止められる学級づくりが絶対に大事になってきます。
 教育は子どもをよりよく変えることが本務です。1時間の授業で子どもが、向上したり、成長したと自覚すれば、おもしろかったなあと思い、授業を期待するようになります。
 そのために、一番大事なことは1時間の授業の中でこうしたいという理想の状態が具体的にわかっているということです。教師がそれを把握していることが、子どもをよく導き育てる大前提です。
(野口芳宏:1936年生まれ、元小学校校長、大学名誉教授、千葉県教育委員、授業道場野口塾等主宰)

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「学びかた」教育のめざすものはなにか

 「学びかた」の教育の基盤となるものは、どれほど勉強を嫌い、問題児といわれる子どもであっても「その心底には、学んでよくなろうと求める宝を秘めた人間である」と、子どもを認めることである。学ぼうとする宝の存在を信じない限り、育てるという教育は成立しない。「学びかた」の教育は、教えるより、育てる教育にその基本をおこうとするのはそこにある。
 「学びかた」のねらいは、個の確立である。個の確立とはやる気を持つことである。やる気こそ「学びかた」の水源である。そのあふれでる水が流れ、響きあわせて「ひとり学び」(個人学習)の川をつくり、それをふれあわせ「みんなで学ぶ」(集団学習)にひろめていく。
 学ぶということは、学ぶものの意志に支えられて行う学習である。やる気は興味ばかりでなく、学ばねばならないという必要感に支えられて生まれるものである。
 こうした意欲は、年齢が高まるにつれて薄れていく。何が原因なのであろうか。その原因の一つに教師が教えることにせっかちな余り、子どもの好奇心や欲求を摘みとり、いつも教えられて学ぶ学習を強要してきたことに原因があるように思われる。
 学ぶ意欲を高めるためには、自ら学ぶ学習の方が、楽しく充実したものになる。自ら学ぶ場面を設けて、子どもたちをそこへ突き放してやることである。
「学びかた」を学ぶことで得られると考えられることは
(1)
学びを魚釣りにたとえると、釣った魚を与えるよりも、魚を釣る、釣り方を身につけることが、人生を創造する鍵である。
(2)
学びかたを身につければ「いつでも、どこでも、だれでも」が学習できる。
(3)
たしかな学びかたは、その基本を学び、独自の経験と創意によって無限に成長していく。
 学ぶための必要条件は、どんなに学ぶ意欲があっても、文字の読み書き、文章を読解する力、数量の計算や処理、辞書のひき方、地図の見方、グラフの読み方がうまくできなかったならば、知識を学びとることは困難となる。
 知識の学び取りかたの「さしすせそ」は、「さ」探す(問題把握)、「し」調べる(学習計画)、「す」筋道を立てて考える(思考方法)、「せ」整理して確かめる(総括・評価)、「そ」そうかどうかためす(応用・生活化)
 授業は教材の論理を学びとることが本命で、それを少しでも、子ども自らの手で学習できるようにかるのが、学びかたのねらいである。
(
柴田義松:1930年愛知県生まれ、東京大学名誉教授。専門は教授学。教育内容・教科内容と教材の区別を提起し教授学研究に革新をもたらした)

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戦後の教育実践のあゆみ- 学力と自治の保証を求めて-

(1)高度経済成長と学歴社会の到来
 1950年代後半から本格化する高度経済成長政策は、「学歴や学力こそが豊かさを保証するもの」「子どもは少なく産んで大切に育てる」との意識を醸成することになった。
 この「近代家族」特有の意識の大衆化が、学歴社会、大衆教育社会を樹立した。
 教育改革によって単線型学校体系が確立され、大学進学率が上昇し、急激な学歴社会の到来は、学歴獲得競争をともなって子どもたちをまきこんでいった。
(2)
教育の現代化と広がる格差
 1958年の学習指導要領は告示となり、この改訂から経験主義から系統主義へと転換した。そして教育現場への統制力を強めた。また、道徳的な心情を養成するために道徳が特設された。
 1968年の学習指導要領は、現代科学の内容と方法でもって教育内容を編成した「現代化」を打ち出した。子どもたちにとって理解しにくい内容であっても学習可能であるという主張であったが、やがて子どもの格差がひろがり、落ちこぼれが問題となった。
 高度経済成長政策を推し進めるために、経済界から国際的な競争下で創造的な知的能力を育成することが要請された。この能力主義は、高校教育に対して多様化政策として、学校別・学科別・コース別の教育課程が編成され格差を顕在化させていった。
(3)
学力と自治の保障に奮闘する教師たち
 系統主義の立場から戦後初期の新教育に対して批判を行うなかで、民間教育研究団体が結成されることになる。
その主なものは、
「歴史教育者協議会」(1949年)、
「数学教育協議会」(量の体系・水道方式:1951年)、
「科学教育研究協議会」(1954年)、
「仮説実験授業」(問題→予想→討論→実験:1954年)
などであった。その主張は、教育課程の編成において「科学と教育の結合」をはかることである。
 他方、この時期に大西忠治たちによって、小西健二郎の「学級革命」に代表される生活綴り方にもとづく「仲間づくり」論が批判され、「班・核・討議づくり」にもとづく、「学級集団づくり」論が提唱される。
 これは、特設「道徳」の心情主義への批判を前提として、自治能力の形成を集団づくりという実践を行おうとしたもので、「全国生活指導研究協議会」(1959年)を主導する理論と実践となった。
 これら民間教育研究団体の成果は、手弁当の会員たちによる地道な活動によって発展・普及し、現代日本の「教育実践」に多くの示唆を与えている。
 教育の現代化で授業を理解できない子どもが増加し、1971年に落ちこぼれ問題がマスコミを通じて社会問題化した。神戸市立平野小学校で教鞭をとっていた岸本裕史は、落ちこぼれの子どもを救おうと百マス計算を始め、学力の定着(技能の習熟)を楽しく行える方法の開発と、学力形成を支える子どもたちの生活(見えない学力)の点検を同時に追究するようになる。
(
田中耕治:1952年生まれ、京都大学教授、専門は教育方法学(学力論・授業論・評価論)

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