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一人の女性教師が「やればできるんよ」と荒れた学校を立て直した、その方法とは

 広島県のある高等学校。この高校は、かつて県内一の落ちこぼれて荒れた学校だった。それを変えたのは、一人の女性教師だった。
 2001年に山廣康子さんは教頭としてこの学校に赴任した。
 教師すら指導を諦めていたこの高校は、落ちこぼれの受け皿校と呼ばれていた。
 喫煙、暴力、万引き、いじめが横行し、すがすがしいはずの新学期一日目に廊下はゴミで溢れていた。
 生徒たちが春の遠足で市内の動物園を回っていた。1年生のTくんは、入学以来何度かいじめにあっていた。彼は遠足中にも生徒に難癖をつけられて集団暴行を受けた。
 ところが引率の教師たちは遠足から学校に戻ると、山廣教頭に「何も問題は起こりませんでした」と事件の表面化を避けるために嘘の報告をしたのだ。
 山廣教頭はこの事実を別の教師から聞き、問題の教師たちに理由を聞いた。
 彼らは「放っておけば問題は収まりますから」「どうせ一番悪い生徒たちは辞めていきますから」と答えた。
 山廣先生は、目の前の教師に恐ろしさを感じた。生徒たちをなんとかしたいと思う山廣教頭にとって、最大の壁はこの無気力な教師たちだったのだ。
 集団暴行事件に端から始まった騒動は、1学期が終わるまで、校内を混乱の渦に巻き込んだ。
 山廣教頭と教師たちは、被害にあった生徒の送り迎えに追われた。
「いじめや暴力は絶対に許さない、安全な学校にしよう」という決意を固めていた。
 山廣教頭は全校生徒を体育館に集め、一大演説をぶつことに決めた。
「いじめや暴力に遭っている人は、絶対に守ってあげます。先生を信じて隠さないように。厳しい処分で対処します! いじめや暴力は絶対に許しません」
 と、激しい口調で演説した。
 また、加害者の保護者を集め、事件の経緯と学校の方針を明確にした。
 山廣教頭は、
「生徒たちの生活習慣を確立させたい。規範意識を高めたい。自律心を持たせて、自分や相手を大切にするよう導きたい」とその思いを、ぜひとも保護者に理解してもらいたかったからだ。
「親にとって、どの生徒もかけがえのない、かわいい子どもです。学校にとっても大切な生徒です」
「もし、被害者の子の親だったら、どんな気持ちになるか、考えながら聞いてください」
 と、被害者がどんな目にあい、どんなつらい思いをしたか事実を克明に説明した。
 凄惨な場面の一部始終を話す時には、山廣教頭は声がふるえ、涙が出そうになった。
 途中「むごすぎる」と泣き出し、廊下に出る保護者もあり「被害者に謝罪させてほしい」という声もあがった。
「被害者には私たち学校が、責任を持って対処します。安全で安心な学校生活が送れるよう全力でがんばります」
「そのためには、みなさんのお子さんに、心から反省をさせなければなりません」
「現状をしっかり見つめ、学校と連携し、力を合わせてがんばりましょう。何より大切なのは親の愛情です」
 その日を契機に、保護者の口から子どもに対する愛情や熱意、期待などを直接聴くことが多くなった。
 山廣教頭は逐一それらの言葉を生徒に伝えるようにした。
「幸せだね、お母さんがこんなことを言っていたよ。これほど両親から思われているなんて」
「がんばって親孝行しんさい。あなたが学校でがんばることが最大の親孝行なんだから」
 保護者と生徒の架け橋になることで、なんとか生徒たちを更正させようと必死だった。
 最初のうちは無表情で話を聞き流している生徒や、恥ずかしいのか顔を反らして聞こえないふりをする生徒が多かったが、次第に素直に聞き入るようになっていった。
 うれしいことに、徐々に生徒のほうからも、家庭での生活や親のことを笑顔で話してくれるようになったのである。
 山廣教頭は保護者と生徒の関係が少しずつ変わっていると、そう肌で感じるようになった。
 山廣教頭は、赴任した当初から職員室もふくめ学校の汚さにへきえきしていた。
 学校が荒れているせいなのか、だれも校内を清掃しない。ゴミは散らかり放題。生徒や教師も積極的に掃除をしようとしない。
 学校改革の最初の一歩は職員室の掃除だったかもしれない。山廣教頭は流し、食器棚などを徹底的に掃除をした。そのほかにも、机の配置換え、不要物の処分などを行った。
 同時に山廣教頭は、校内の掃除にも取りかかった。まずは自ら行動で示そうと思ったのである。廊下や階段を、毎日黙々と掃除した。
 休憩時間のたびに、生徒たちが出てきて、パンの袋やジュースの紙パックを捨て、生徒がツバを吐くので、廊下や階段の汚れは目を覆いたくなるほど不快だった。
 山廣教頭がトイレットペーパーでツバを拭き取り、そのあとをモップで拭く。きれいにすると、生徒がまたツバを吐き、散らかす。それをまた掃除する。その繰り返しだった。
 山廣教頭が掃除をしていても、教師たちは、避けて通ったり、ごくろうさまの言葉もなかった。結局、手伝ってくれたのは、一人の女性教師だけであった。荒れた校舎の光景が、教師や生徒の心象風景であるかのように感じた。
 夏休み前のある日、ふと校門から校舎に登っていく70段の階段を見て山廣教頭は思った。
 階段はいつもゴミだらけ。生徒は掃除をしないし、教師もさせるつもりがない。これでは、いつまでたってもきれいになるはずがない。
 そこに、ずらっと花を植えたらどうなるだろうか。そう思った瞬間「ゴミの代わりに花を植えてやれ」と決心した。
 決めたらすぐ動くのが、山廣教頭の身上。体育教師の協力を得て、プランター100個に、ベゴニア、サルビア、ペチュニアなどの花を植えた。九月の始業式には見事に咲きそろい、学校の校門の前は見違えるようにきれいになった。
 学校を再生するためには、まず教師の意識を変えなくてはならない、というのが赴任した当初からの、山廣教頭の考えだった。
 というのも、教師たちの大半が、都合の悪いことはすべて社会のせい、他人のせいにしていたからである。
「生徒を受け入れてやらなければ」と言うけれど、それでは生徒のためにはならない。そのまま社会に出したら、生徒たちは間違いなく切り捨てられる。
 生徒たちを受け入れ、救うと言いながら、生徒たちの行動を放置し、容認するだけという野放しの状態。いったん、このように割り切れば教師はとても楽である。
 教師たちはみんな、口では「大変だ、大変だ」と言っていたが、生徒指導も進学指導も、教材研究も、クラブ指導も十分にしないのである。
 教師にとって、こんな楽な学校はない。授業中寝ていてもオーケー。制服を着ていなくてもオーケー。
 このままでは、この子たちは落ちるとこまで落ちてしまう。山廣教頭は危機感を持っていた。とはいえ、いきなり教師たちの意識を変えることはできない。
 そこでまずは、生徒を指導するという、教師としてごく当たり前の意識を芽生えさせようと思いついた。
 夏休みの間に教師を集めて会議や研修を行い、いくつか提案することにした。
 まず、提案したのは、遅刻指導をするということ。しかし、教師たちは、ことごとく反対した。「では、ゆっくりやりましょう」と、ひたすらなだめ、こんこんと説得を続けた。
 次に服装指導を提案した。私は、まず身だしなみをきちんとしなければ生徒たちの意識は変わらない、という確固たる信念をもっていた。
 職員会議を延々と続け、ようやく、遅刻指導から行うことが決定した。
 服装指導は、とりあえず、山廣教頭をはじめ生徒指導部の教師が積極的に指導することで落ち着いた。
 早速、二学期の始業式から、校門の前に遅刻指導のテントを張った。教師が交代で常時テントにいるような体制を整えた。
 実質的には「出入り指導」であった。
 朝、遅刻してくる生徒はもちろん、授業中に勝手に学校に出入りする生徒をチェックする機能も兼ねていたからだ。
 出入りする生徒を呼び止めて、話をして、少しずつ人間関係を築いていく。それが、この指導の目的でもあった。
 1カ月、2カ月と続けるうちに、遅刻指導のテントは、次第に効果をあげ始めた。
 遅刻が目に見えて減少し、さらに、生徒と教師の関係が密になった。
 テントの前で、一対一で話をすることができるため、生徒が勉強、家庭、恋いの悩みを打ち明けることなどが次第に多くなったからだ。
 同時に、教師間で生徒たちに関する情報の共有化も図れるようになったのである。
 山廣教頭は、環境が変われば人も変わると信じていた。
 学校改革を進める山廣教頭に、全国の学校や駅のトイレを掃除するボランティア団体『広島掃除に学ぶ会』との出会いで、ある考えが浮かんだ。
 山廣教頭は、学校が休みの日に生徒たちと一緒に校内のトイレ掃除をしようと提案したのだ。
 3ヵ月をかけ徐々に準備をしていくことにした。「掃除に学ぶ会」の機関誌を各教室に配布したり、会の活動内容や、全国各地の参加者の体験発表などを紹介して、生徒たちに参加を呼びかけた。
 当日たくさんの生徒を動員しようと、山廣教頭は生徒たちの自宅に個別に電話をかけ始めた。「教頭の山廣ですが・・・」電話に出た生徒や保護者は、何ごとかと驚いた様子だった。
 しかし、主旨を説明すると「わかりました。参加します」と、一様に保護者たちも理解を示してくれた。
「友だちも誘ってね」と、そんなふうに、人間関係が築けている生徒、一人ひとりに電話をかけて「出てね、出てね」と頼みまくった。
 ふだんから積極的に生徒に声をかけていたので、そのネットワークを生かして、生徒集めに奔走した。
 また、問題行動を起こした生徒は自動的にトイレ掃除に参加させる方法をとった。
 一方、教師たちには半ば強制的に参加を促した。
「各クラスの問題行動を起こした生徒がトイレ掃除に出るのだから、その担任も一緒に参加するように」
 そうした結果、当日は、生徒や教師はもちろん、PTAや同窓会の人々、「広島掃除に学ぶ会」のメンバーや、県警や県教委の関係者、そしてイエローハットの鍵山相談役など、総勢300名が参加することとなった。
 さらに話題性があるということから、地元の新聞社やテレビ局などが、大挙して取材に訪れるという一大事に発展していった。
 無気力だった教師たちの目つきも変わり、懸命にトイレ掃除をした。その姿を見て、問題の生徒たちも掃除に参加した。トイレ掃除を始めると、嫌悪感も忘れみんなどんどん集中していった。
 トイレ掃除は思わく以上に大成功だった。山廣教頭にとって、生徒たちが熱心に取り組んでいる姿は意外だったし、正直、生徒たちがここまでやるとは思っていなかった。
 このトイレ掃除で得られたことは、トイレをきれいにした、という充実感だけではない。
 大勢の人々と一緒になり、一つの目的に向かうことで生まれる共有体験も得られるのだ。特に問題行動を起こす生徒たちにとって、大人と一緒に何かに取り組むという経験は、新鮮なことに違いなかった。
 もともとこの学校の生徒たちは、大人に対する不信感が非常に強い。
「どうせオレらは、ダメなんだけー、相手にしてくれるはずがないじゃん」と、投げやりなところが見られる。劣等感が強く、世の中を肯定的にとらえられない。
 そこへ、これだけの大人が自分たちの学校へやって来て、新聞やテレビも取材してくれた。
 問題を起こしての報道ではない。「オレらでも注目されるんだ」という事実が、生徒たちを力づけた部分も大きかったのだろう。
 トイレ掃除終了後、体育館に集合して、全員でおむすびとみそ汁を食べながら、体験発表をした。
「初めは抵抗があったけれど、きれいになっていくのが楽しかった」と、どの生徒も晴れ晴れとした表情で、口をそろえてそう言った。
 翌朝、遅刻指導で校門に立っていると、声をかけてくる生徒がいた。「先生、おはよう」と、山廣教頭に敵対心をむきだしにしていた問題行動の常習犯の生徒だった。
 トイレ掃除を機に、学校全体の空気が、少しずつ変わり出していく気配があった。
「掃除に学ぶ会」の方たちの姿を見て、自分たちの学校は自分たちの手できれいにしようという意識が芽生えてきたようだった。
 それ以来、教室を掃除しようとか、ゴミのポイ捨てをやめようという動きが、教師や生徒たちの間に、徐々にではあったが、自然に生まれていった。
 学校が少しずつきれいになることで、生徒や教師の心が安定するという変化が起きているようだ。
 翌年の夏にはトイレ掃除だけでなく荒れたグランドの草刈りが行われ、その成果として7年振りに体育祭が開催されたのだ。不良グループのリーダーは盛り上げ役のリーダーになっていた。
 山廣教頭は、何か特別なことが起こったのではなく、地道にこつこつと積み重ねて来たことが成果として大きく現れたのだと話す。
 4月、高校に新たな入学生たちがやってきた。そこにかつての荒れた学校の影はもうない。山廣教頭の学校改革は、着実に成果を上げたのである。
(山廣康子:1949年生まれ 元広島県公立高校校長。荒れた学校をトイレを掃除するボランティア団体の協力を得て、学校を立て直した)

 

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トラブル対応は初期が最も重要である、「トラブルは恥」という意識は捨てよう

 トラブル対応は、初期段階が最も重要です。
 教職員の精神の健康管理のためにも、指導の悩みやトラブルに関する相談を出し合い、情報を得ることのできる雰囲気を職員室につくろう。
 近年は、教職員評価制度が導入されたことで、管理職にトラブルを知られることを避ける教師が増えているようです。
 仕事上の悩みや相談を気軽に口にできない雰囲気が職員室にまんえんすると、トラブルが管理職の耳に入ったときには、手の付けられない状況になってしまいます。
 学校ではトラブルが起きるのが当たり前と考えるのがふつうです。
「学校はトラブルがあって当たり前」であることを、管理職が機会あるごとに伝えていくことが必要です。
 その機会を積極的につくるためにも、管理職はすべての教職員との会話を毎日欠かさないことです。
 管理職が教職員と個別に話をし、聞いていると、必ず子どもの指導に対する悩みやトラブル対応などについて、教職員が口にするようになります。
 何かと課題の多い教育現場において、何の悩みも抱かえていない教師は、誰一人いません。
 教職員の本音を引き出すことができるのは、管理職しかいません。
 活動的で自己主張のかたまりのような子どもたちが集まるのが学校です。
 友だちとの摩擦を経験して、子どもたちは成長していきます。
 ですから、どんなに学級経営がうまくいっているクラスでも、毎日、必ず些細ないざこざは起きているはずです。
 その些細なトラブルに対して、教師がどのような初期対応をとるかによって、クラスがさらにまとまるのか、逆に大きな問題に発展するのかが決まります。
 大きなトラブルに発展してしまった事案の中には、初期対応をもっと丁寧にやっていたら、大きな問題にはならなかったというものが、たくさんあります。
 子どものトラブルも保護者対応も、初期対応が8~9割の比重を占めると言って過言ではありません。
 的確な初期対応をとるためには、些細な問題を出し合うことのできる雰囲気を職員室につくることが大切です。
(中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校校長。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる)

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危機は不意に起こる、危機に強い学校とは、どのような学校か

 危機は不意に起こる。パニックにならないためには、想定しておくことだろう。
 先を読み、事前の予防や回避策が重要なのである。
 危機に強い学校とは、危機を想定した対応のシステム化を常に意識していることである。
 危機が発生したとき、何をどういう視点で、どこまで行うのかを瞬時に判断できるよう事前にマニュアルを作成し、事が起こった時はシステムとして対応できる学校である。
 また、システムの更新の工夫も検討し、保護者との信頼関係を構築することも重要である。
 学校で問題が発生した場合は、パニック状態になり、有効な手だてがとれないと思っていい。そこで、次のポイントを常に意識している学校が、危機に強い学校といえる。
1 早く慎重に最初の一手を打っておく(早く、慎重に)
 危機が発生すれば、混乱状態が予想される。
 即座に最初の一手を打っておくことだ。たとえそれが最善の一手でなくても、時間が稼げることで、冷静に対応することが可能となる。この一手が職員の判断力・決断力なのである。
2 何をどこまで知らせるか範囲を即座に決める
 内容によっては、学校内だけでは留めておけないこともある。逆に、人権的配慮から、あえて公表の必要がないものもある。隠匿が後で大きな問題に発展しかねない。
 どこまで公表するかは管理職の裁量権である。ただ、昨今は公開が原則になっている。マスコミ対応もここにある。監督権者との意思疎通が欠かせない。
3 社会的な視点から問題を考える(誰が見ても、おかしいことぱおかしい)
 発生した危機を教職員以外の者が聞くとどう思うかという視点で考えて欲しい。
 マスコミ報道で学校の対応が叩かれるのは、実はこの視点なのである。そのため、教職員の声はもちろん、PTA等など他の意見を聞くことも一案であろう。
4 教職員が一体となって取り組む
 危機対応においては、教職員の共通理解と行動が重要である。
(1)事前にしておくこと
 何が問題になるのかを教職員に知らせることから始めたい。
 他で発生した危機情報を収集し、自校にあてはめて検討しておく。その結果を知らせ、危機状態にならないための工夫を施しておく。
(2)起きてしまった時の対応
 最初の一手を即座に打つ。特に連絡系統の確保が欠かせない。
 また、子どもたちに対する説明責任が伴う。保身に走らないほうが傷は少ないと考えるべきである。
(3)日常的な配慮も重要
 日常の教職員の人間関係はどうか、互いに信頼し合えるかどうかも重要な視点である。危機状況で動ける学校の基本はここにある。
5 メディア対応
 危機対応ではマスコミ対応の視点が必要である。
 学校では、子ども、保護者、地域に対する影響が懸念される。したがって、迅速な対応が基本である。早期の対応がその後を決める。
(1)マスコミ報道は排除できない
(2)事実は隠蔽できない
 先手を打っておく。例えば、教育委員会への事故報告(速報)であり、PTAへの説明である。
 事故の経緯、原因や動機、対処、今後の方針を明らかにしておきたい。
(3)学校は社会的な認識をもって対応しないといけない
 気になることは、日頃から保護者を交え、十分話し合っておきたい。保護者との信頼関係があれば、風評にもならない。
「こんな報道をするほうが問題だ」と受け入れない意識が、問題を繰り返す元凶となる。
(4)記者と誠意をもって対応する
 記者は不足する情報を周囲から補強する。その情報は大体批判的なものと考えたほうがいい。こうした情報を含む報道が世間を騒がせているのである。
 誠実な対応とは、記者にとって必要な5W1Hを提供し、出せない個人情報などはきちんと説明することである。
 記者は、まわりくどい専門的な説明を嫌う。教職員は概してそういった説明をしがちである。
(阪根健二:1954年神戸市生まれ、香川県坂出市立中学校教師、香川県教育委員会主任指導主事、坂出市立中学校教頭、香川大学助教授を経て鳴門教育大学教授。専門は学校教育学(危機管理、教職論、生徒指導)

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子どもが学校でケガをし、痛みもないとき、どう対応すればよいか

 休み時間に「先生、階段で転んでしまいました」と、報告を受けました。特に痛みもなさそうなので「気をつけてね」とだけ返事をしましたが、対応はどうすればよいのでしょうか。
 緊急措置の必要性を判断して対応し、保護者へ連絡をしましょう。
 対応のポイントは
1 「まぁ、いいか」は厳禁
 子どもたちから「転んでしまいました」「運動場で転んで頭を打ちました」というような報告はよく受けます。
 子どもたちがケロッとしていると、つい教師も「まぁ、いいか」と安心して過ごしがちですが、これは絶対にしてはならない対応です。
 すぐに、担任自身でケガの状態をチェックし、保健室へ連れて行くなどの適切な措置を講じなければなりません。
2 「念のため」という気持ちが大切
 子どもは自分自身がケガをしていても、見逃してしまうことがあります。
 学校内における子どもたちのことは、教師が保護者の代わりに責任をもって見てあげなくてはいけません。
 学校で起きたことの責任は教師にあります。常に「念のため」という用心深い気持ちが大切です。
3 弁護士からのアドバイス
 ケガについては、事前の防止の点において、学校側に落ち度がない場合でも、教師には事故後に適切な措置をとり、損害を最小限に抑える責務があります。
 例えば、授業中にボールが目に当たったとき、外観上の異常が見られず、子どもも「大丈夫」と答えたが、後の健康診断で網膜剥離が判明し、保護者への通知義務が問題となった裁判例もあります。(この事案では責任否定)
 まずは、子どもから詳しく事故の状況を聞き、緊急の手当てや保護者への通知の必要性の有無など、慎重に判断しましょう。
 教師には、事故後、適切な措置を講ずることで被害を最小限にとどめる義務があります。
 事故の内容、状況、子どもの年齢・判断能力などの事情によって保護者への報告義務も問題とされる場合があります。
(丸岡慎弥:1983年神奈川県生まれ、大阪市公立小学校教師。教育サークル「REDS大阪」・銅像教育研究会代表、事前学習法研究会会長)
(大西隆司:1976年奈良県生まれ、弁護士)

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子どものケガなど、学校での緊急時の事故対応はどうすればよいか

 学校で子どもがケガをしたり、学校での事故で救急車を呼ぶことがある。
 学校で事故が起きれば、その学校の速やかな対応と保護者との連携がどのように機能していたかが問われることになる。
 学級担任の判断が信頼をなくすことも考えられる。
 どの手順ですればよいか、学校の中の風通しを十分にしておかないと、緊急時の対応ができなきなってしまう。
 自分の学校の緊急時の体制を確認し、いつでも起こり得ると、状況を見据えて対応をしていかなければならない。知らないでは通用しない。
 ケガや事故が起きた時の対応が学校マニュアルとして設定されているので、その状況に合わせて、報告・連絡・相談をする。
 事故が起きれば、必ず管理職に報告して状況の確認と養護教諭の判断で、生命を最優先に、確実に次の対応をしなければならない。
(1)
養護教諭、管理職に速やかに報告する。
(2)
ケガの状況により救急の要請をする。
(3)
保護者に報告し連携する。保護者に希望病院等の確認し、速やかな搬送をする。
(4)
その日のうちに子どもの状況の把握をする。
(5)
ケガの状況を把握し、その日からの指導に生かす。
(6)
状況を教育委員会に報告する。
(7)
保護者からの連絡を受ける。
(8)
子どもへの対応策を明確にする。
(9)
事故防止の対策をまとめる。
(10)
事故防止策を教育委員会に報告する。
(釼持 勉:東京都公立高校・小学校教師、教育庁、小学校長を経て、帝京大学教育学部教授、東京学芸大学特任教授)

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遠足でバスが事故を起こし、子どもが入院するなど、危機的な事件、事故、災害が起こった場合、どう対処すればよいのでしょうか

 ある小学校で4年生がバスで遠足に行く途中で、運悪く踏み切りで電車と衝突してしまったのです。
 電車がいち早く危険を察知し、遠くからスピードを落としていたため、大惨事にはいたりませんでしたが、バスの運転手と数人の子どもがケガをして入院しました。
 その事故は、テレビのニュースで報道されたため、学校には、子どもの安否を気遣う保護者などから電話が殺到しました。
 この危機を学校はどのように対処したのでしょうか。
 「何が起こったのか」「自分の子どもはどこにいるのか」と、興奮してやってくる保護者などを緊急危機対策室(図書室)に入ってもらい、随時、状況を説明したり、入院した子どもの病院名を伝えました。カウンセラーも配置しました。
 これと、平行して、マスコミ関係者の部屋を用意して、全ての報道関係者を校長が対応しました。
 校長は、わかっている限りの正確な情報をマスコミに伝達することにより、誤解を招くことを防いだのです。これによって、マスコミの報道に煽られることはありませんでした。
 校内にいる他の子どもたちは、担任が情報を伝え、通常どおりの授業が行われました。
 しかし、事故でケガをした子どものきょうだいや友だちが動揺しているようであれば、希望者にはカエンセラーが待機している部屋に行ってもよいという対策がとられました。
 このような重大な事件や事故、災害が起こった時は、関係者や周囲の人々が混乱しパニックを引き起こす可能性が高い。
 危機発生後、迅速かつ冷静、的確に対応することが必要になります。
 危機的な事件、事故、災害が起こった後、精神的な衝撃を受けたため、眠れないとか、いつも不安感にさいなまれるとか、思い出すと恐怖感がよみがえるなど、日常生活に影響が出てくる場合があります。
 この対応として、事件発生の翌日にスクールカウンセラーが各教室に出向き、2030分程度の、危機後の介入説明的カウンセリングを行います。
 事件、事故の状況や経過の説明をした後、それによって精神的影響を受けたり、生活に何らかの変化が現れてくることが多々あることを説明します。
 もしも、そうなった場合にはどうすればよいのかについて話をします。そして、希望者にはグループカウンセリングも行う旨を呼びかけます。
 また、場合によっては、担任や保護者の希望で、子どもをグループカウンセリングに参加させることもあります。
(
新福知子:東京都台東区教育研究所、千葉県スクールカウンセリングを経てCPI危機予防研究所代表
)

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子どもがケガをしたとき、どのような配慮が必要か

 子どもの事故防止、安全の確保には細心の注意をしなければなりません。しかし、どれほど気を配ろうと、子どもはケガをすることがあります。
 子どものケガは直ちに救急措置をするとともに、あせらずあわてず対処を考えなければなりません。教師があわてれば、ケガした子どもはもちろん、学級の子どもも動揺してしまいます。
 子どもがケガしたときは、励ましと慰めの言葉をまずかけます。そして、言葉をかけながら、救急策を考えて対処します。その際、ケガの状態を軽くみることは避けましょう。
 軽いケガと思って下校させたら、帰宅後に痛みが激しくなり、医師に診てもらったら骨折と診断されたなどの話も聞きます。こうなると事態は厄介です。やはり、監督不行き届きと思われてしまうからです。
 したがって、担任の判断で処理せず、保健室で救急措置をしてもらうようにします。つまり、学校として対応するのです。
 ケガした事実を校長(教頭)に率直に報告しなければなりません。率直に報告しなければ、校長は判断を間違えてしまうかもしれません。このことはぜひ注意したいことです。そして、事故の経過を的確に記録しておきます。ケガの原因によっては事故報告書の作成も必要になります。
 保護者に連絡する際、話し方や言葉の用い方は十分気をつけたいと思います。保護者はわが子がケガをしたと聞けばいささか動転しているでしょう。それを察して話をすることを忘れないようにしたいものです。
連絡の要点は
(1)
ケガをした事実「いつ、どこで、どのように」
(2)
ケガの程度
(3)
現在の状況(保健室にいる、医師に急送等)
(4)
保護者に直ちにしてほしいこと
(5)
お見舞いの言葉を申し述べる
 連絡の際、くどくどと言い訳したり、責任回避の主張ととられがちな話ばかりすると、保護者の心証を害することがあります。また、事故の原因を率直に話さないと、後日トラブルが生じることもあるでしょう。
 こうした際の処置は、落ち着いて冷静に、そして的確にすることです。もし事情がわかりかねる場合は、「目下、調査をしていす」と話して、わかり次第連絡するようにします。不確かな説明はいけません。
 また、日本スポーツ振興センターの給付金、つまり治療費のことを初めに話すと「お金の問題ではありません」と反論されることもあります。お見舞いの言葉の後に、忘れることなく、付け加えたいことであります。
 子どもが学校の管理下にある時、ケガをして診療を受けた場合、日本スポーツ振興センターから、治療費の一部が給付される仕組みがあります。この制度は教師や保護者の多くが承知しています。
 しかし、その細かなルールになると、よく知らないまま過ごしている教師も意外と多いのではないでしょうか。担当者(教頭、養護教諭、事務主事)に、ルールの要点をたずねてから、保護者に説明する慎重さが必要であるように思います。
 もし、説明に自信がないのなら、担当者に説明してもらうように気を配る必要もありそうです。お金がからむだけに、話の内容は正確明解でありたいものです。
(
飯田 稔:1933年生まれ。千葉大学附属小学校に28年勤務、同校副校長、千葉県浦安市立小学校校長を経て、千葉経済大学短期大学部名誉教授。学校現場の実践に根ざしたアドバイスには説得力がある)

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初期対応につまずくと後々まで影響する、大切な理由と失敗しないためにはどうすればよいか

 「初めよければ終わりよし」といいます。初期対応のつまずきは後々まで影響します。
素早い「初期対応」が何よりも大切です。
その理由は次の4点にあります。
(1)
初期対応が効を奏すれば、二次的問題の発生を阻止し、問題の拡大を防ぐことができるからです。逆に、初期対応に失敗すると、その処理に多大なエネルギーを注がなければならなくなります。
(2)
初期対応はそのあとの対応を方向づける重要な段階です。初期対応が危機管理全体の成否を左右するのです。
(3)
問題の渦中にある子どもの「心のケア」を成功させるポイントは、即時対応・早期解決にあるということです。即座に対応すれば小さく収まるということです。
(4)
初期対応で、「素早く対応してくれた」「一生懸命にやってくれた」という評価は、そのあとの「小さな失策」を寛大な目で見てもらえることにつながります。
 日々の教育活動を進めていくなか、多くの危機場面に遭遇します。初期対応をつまずかないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
 そのつど「さて、どうしよう?」と首を傾げているわけにはいきません。自ら判断し、即座に対応しなければならない場面は数多くあります。「今すぐ、何をすべきか」に悩んだときに、その答えが詰まった救急箱を各教師が持っていなければなりません。
(
嶋﨑政男:1951年生まれ、東京都立中学校教師・教育研究所指導主事・中学校長等を経て神田外語大学教授)

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ダメなことはダメと毅然と指導をしなければ、子どもは健全な発達ができない

 生徒の問題行動に対して「ダメなことはどんな理由があってもダメ」とする指導をしなければ子どもは健全な発達ができるはずがない。
 荒れた学校を再生しようとするとき、日常の教育活動を充実するとともに、毅然とした指導の考え方をしっかりと認識したうえで実践にあたっていただきたい。他校の実践を形だけまねてもうまくいかないからである。
毅然とした指導をするための考え方とは
1 毅然とした指導こそが生徒と学校を変容させるという強い信念を持つ
 校長として赴任した中学校は荒れていた。職員会議で「最優先課題は学校秩序の回復である。今後は問題行動に対しては妥協のない対応をする」と宣言した。それまでの生徒の言い分を聞きながらじっくりと説諭する指導からの転換だった。
 生徒の反発を危惧した教師からは「そんなことしたら本校はもっと大変なことになる」と反対意見が出された。しかし不退転の覚悟を決めていた私は「長年の膿を出し切ったその先に学校の正常化ができる」と説得した。その結果、次第に生徒たちは落ち着いて授業を受けるようになり、学力も向上した。学校自由選択制度のもとで人気校になったのである。
 劇的な成果を生んだ理由は、本来子どもは失敗をくり返しながら成長するものだ。子どもが失敗したとき、怖い役割を果す大人がしっかりと叱ることによって、子どもは自分の過ちに気づき、規範意識や自制心を形成することができる。大人にはそのような大事な役割があるのである。
 子育てにおける大人の真の愛情とは、そのような姿勢のなかに存在すると言ってよい。この子育ての原則が見失われたとき、学校や社会は荒廃するのだ。
2 生徒の暴力に負けない強固な意志をもつ教員集団を組織する
 「暴力行為に及ぶ児童生徒に対して、教職員は正当防衛としての行為をするなどの対応も有り得る」との文部科学省の通知がある。教師は体罰が禁止されているが、殴りかかる生徒の腕をつかんで押さえつけることは、体罰であるはずがない。
 教師の力を発揮するには、生徒の暴力に立ち向かえるだけの体制を学校内につくるとよい。体力と気迫のありそうな数人の教師を呼んで、生徒の暴力行為に体を張って阻止してくれるように私は頼んだ。依頼に応じた教師は四人いた。
 私は「たとえ授業中でもなんでも、私が緊急招集の放送をかけたら、すぐ集合して生徒指導にあたってほしい。それでも生徒たちの暴力がやまない場合には、即座に私が警察の支援を要請する」と話した。
 これで生徒集団の暴力には負けないと確信した。実際に召集をかけた場面が二回あったが、これまでと異なるただならぬ雰囲気に強い決意を察知した生徒たちは身を引いた。
 一人の教師が単独で指導した場合には、生徒たちはその一人の教師を標的にする。だから、指導力のある教師を孤立させない対策を講じることは非常に重要なことなのである。
 念のために断っておくが、生徒指導においては「優しい母性的な姿勢の指導」と「厳しい父性的な姿勢の指導」のバランスがとれていることが大切である。もし悪役の教師が一人もいなかったら、だらしのない校風がすぐにできてしまうに違いない。
3 犯罪的な問題行動は躊躇せず警察と連携する
 対教師暴力、校内での放火、対生徒致傷事件、大量の器物破損等の重大な犯罪的問題行動が発生し、学校の指導が十分に及ばないと判断されたときは、すみやかに警察に支援を求めるべきである。
 被害を拡大させないことがもっとも緊急な課題だからである。警察への通報、被害届の提出、取り調べの立ち合い、保護者への説明等はすべて管理職が先頭に立って行う。そして、すみやかに臨時朝礼と保護者会を開催し「責任の取り方を学ばせる指導が大切」という学校の姿勢への理解を求めた。
 警察との連携を円滑に進めるためには、日常的に管理職と生活指導主任が警察署に出向いて、少年係と情報交換を行うことが有効である。学校と警察が日常的に連携を取っていることを、生徒や保護者に周知することが生徒の問題行動へのブレーキとなって働くのである。
4 PTAや地域の関係機関と積極的に連携する
 問題行動が拡大し、通常の指導では手に負えない状況になったときは、PTAや地域や行政などの外部の関係機関との連携を強化することが有効な対策となる。 
 私はPTAの役員と連絡を頻繁に取り、生徒指導について包み隠さず説明して理解と協力を要請した。PTA役員の耳に届く保護者からの学校批判の声には謙虚に耳を傾け、要望については即座に対応していった。
 地域が団結して健全育成に取り組むべきと考えた私は、「非行防止対策協議会」を設置した。PTA会長、指導主事、教育センター相談員、警察署少年係、民生委員、児童相談所職員がメンバーである。月一回開催し、情報連携から行動連携へ発展するようにした。
5 校長の迅速な決断と行動力
 問題行動に対して、教師集団が勇気と自信をもって生徒指導にあたるためには、「決断と実行と責任」のすべてにわたって、管理職が積極的にかかわることが必要である。
 実は、学校秩序が破壊され、状況が悪化しているときこそ、管理職が一段と踏み込んだ対応策を実行するチャンスである。大きな事件が起きた時には反対意見は出にくい。
 失敗や批判を恐れずに管理職が教師の先頭に立ったとき、教師集団の指導エネルギーは確実に増大し、学校は変容の一歩を踏み出すのである。そのときの校長の迅速な決断と行動が非常に大きな働きをするである。
6 教育行政に学校支援を要請する
 荒れた学校に必要なのは、学校秩序を回復するための戦力である。この状況把握を的確に行い、人材を派遣するのは教育委員会の仕事である。その対応にあたることも校長の重要な役割である。校長は積極的に教育委員会へ支援を要請すべきである。
(
山本修司:1950年生まれ、東京都公立中学校教師、指導主事、指導室長、校長を歴任し、荒れた学校を立て直した。2005年度読売教育児童生徒指導部門最優秀賞受賞、編著書『実践に基づく毅然とした指導』は、生徒指導に悩む教師たちのバイブル)

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保護者のクレームへの危機対応「さしすせそ」

「さ」最初のひとこと
 クレームを言ってくる保護者は感情的に高ぶっている場合が多い。「会議中なので後にしてほしい」といった教師の事情は通用しない。こじれてしまうのは、そういった教師の初期対応のまずさに起因している場合が多い。相手の心情に寄り添って「どうしたんですか」と聞き、「つらい思いをさせましたね」と、ねぎらいの言葉で緊張感をほぐす。
「し」慎重な応答
 クレーム対応の場合、保護者が感情的になっているので、教師の説明が言いわけとしてとらえられる。筋の通らない話でも「それは違います」などと説教してはいけない。保護者に批判されても、教師は感情的になってはいけない。「嫌な思いをさせましたね」と冷静を保ち、巻き込まれないことである。「私はこのように考えますが、いかがですか」と、保護者と共に考える姿勢で接する。
「す」推測の危険
 子どもが石をぶっつけてガラスを割ったようなとき、教師は「親がもっとしっかり家庭でしつけしておいてくれ」と思いがちである。推測で話をせず事実だけをもとに話すことが大切である。保護者に話をするとき「実は、石を投げてガラスを割ってしまったんです。最近イライラしているみたいで、心配なんですが、心当たりはありませんか」と、保護者と一緒になって解決していこうという姿勢が大事である。
「せ」誠意ある態度
 早く解決しようとして、中途半端な返答をしたり、問題を先送りしてはいけない。親の言い分をじっくりと聴くことに徹する。家庭訪問して解決できることなら、その日のうち話をする。要望にすぐ対応してくれたという教師の誠意が伝わるはずである。トラブルはその日のうちに対応することが問題を大きくしない第一歩である。
「そ」組織が一丸となる
 クレームの相手次第では「共感・傾聴・誠意」といった姿勢ではどうにもならないこともある。一人で背負い込まず、徹底的な情報共有と事実の確認、共同で事にあたることである。難題だと思われることは管理職へ報告し、組織一丸となって解決に当たる。そのためにも、事実経過の記録と報告を怠らないようにする。情報不足は後手に回り、問題を余計にこじらせることになる。保護者との対応は担任だけに任せず、生徒指導主事や管理職もあたり、関係諸機関との連携は管理職が担当する。子どものケアは全職員が役割を明確にして見ていくなど組織一丸となった対応が必要となる。
 わからないことは中途半端な言いわけをせず「その点については調べます」と、必ず後日報告する。子どものために「今できる、具体的な取り組み」を提案し、保護者の納得を得る。できないことはなぜかを説明し、結果の報告を約束する。そのような地道なかかわりが保護者の信頼を得ることになる。
 子どもの悪い点を教師から指摘され、保護者が子どもの言い分を話しているうちにクレームに発展する場合がある。話しを少しそらし、よい点を伝え、安心させる。先生はうちの子のこんなところまで見ていてくれていると保護者が思えば信頼される。教師は、日ごろから子どもと接し、事情を知り、もっと子どものいいところを見つけ出さないといけない。
 もつれても、子どもの指導に全力を尽くすことが解決の糸口になる。「何があっても、どの子も好きだ。学級のかけがえのない一員だ」という姿勢で臨めば、共感してくれるはずである。子どもが心配だから来たと、気になることがあれば家庭訪問するとよい。「先生は子どもの面倒をよく見てくれている」と保護者の見方が変わる。
 わがままを言ってくる親の本音は、子育てに悩み、困り果てた悲鳴である。どんなクレームに対しても教師は誠実に取り組むべきである。子どもは教師に認められればよくなっていく。子どもが変われば、保護者も変わる。教師がちょっと子どもや親に誠実に親切に対応していれば、なくなるクレームはいっぱいある。
(
山岡賢三:大阪市公立中学校英語科教師(25年間)、教頭、教育センター指導主事を経て退職し、樟蔭学園英語教育センターコーディネーター。大阪大学小野田教授主催「イチャモン」研究会に所属。大阪市教育センター時代に「保護者との関係づくり」研修プログラムを手掛けた)

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