カテゴリー「教師の心の安定」の記事

現場教師として困難を何とか乗り切ってこられた私の考え方と、教師が元気に生活を送る原則とは

 小学校の教師生活は分刻みの生活です。私が現場教師として心がけていたのは、つぎのような動きです。
 「よく見る」「それが何かと考える」「打つ手を処方する」「行動する」
 しかも、瞬時に考え、動くものですから、よく失敗もしました。これが私にとって「現場を生きる」ということでした。
「行動する」ことが現場教師であると私は考えます。失敗を恐れないことです。失敗すれば「ごめん、ごめん、間違いました。これから気をつけます」と礼を尽くしてあやまればいいのです。
 楽しそうに教師生活をおくる教師もいれば、いつも不平不満を口にして過ごす教師がいます。
 その違いは、教育の仕事を、どのような考え方で行っているかどうかに、かかっていると私は思います。
 元気に教師生活をおくるためには、考え方をきちんと持っていることが一番大事なことなのです。
 私は37年間の教師生活で、一度も教師を辞めたいという気持ちになることはありませんでした。
 私は悩まないようにしていました。
 悩みのほとんどは時間が解決してくれます。
 悩まないようにするには、行動することです。
 悩んでいないで、次をどうしていこうかと、考えのベクトルを変えていきます。
 現場の教師のみなさんは、できるかぎり機嫌良く仕事をしていただきたいと私は願っています。
 機嫌よく仕事をしている教師のそばにいると、自分も機嫌良く何かをしたくなるからです。
 もやもやした気持ちも軽くなります。
 だから、子どもたちの前でニコニコ笑ってみましょう。
 教師が機嫌よく振る舞い、
「心身がアクティブであることは、気持ちがいい」
 ということを自分自身が素材となって子どもたちに示し、伝えてほしいと思います。
 振り返ってみると、私はテーマを持って教師生活をしていました。
 自分の気になることをテーマしました。
 例えば、子どもたちへの音読指導をどうしたらよいか。漢字指導の効果的な方法など。これらのことについてコツコツと資料を集め、自分なりにまとめていくと、教師生活は豊かになります。
 私は教師としての資質を高めるために、もっとも大事なのは土台となるスタンスであると考えています。
 このスタンスは、仕事へ向かう姿勢や態度を意味します。
「素直さ」「責任感」「向上心」
 がスタンスになると考えています。
 このスタンスの上に、その教師がもつ「性格」(キャラクター)がのるのです。
 そして、その上に、教育技術がのっかる。
 ここをカン違いしないことです。教育技術だけをどんなに積み重ねても、しょせん限界があることを、心してほしいと思います。
 教師が元気に生活を送る原則は、次の四つである。
(1)自分が発揮できる
(2)他の人から認められる
(3)無理をしない
(4)知りたいこと、やりたいことができる
 テーマを持って教育の仕事をしなくては、これから大変ですよ。その日暮らしの生活は、これからとてもつらくなりますよと、いう言葉を含んでいます。
 大切なのは、教師の時間と自分の時間をきちんと区別することである。
 教師としての時間を長く取ることによって、確かに教師意識は増大する。しかし、やせ細っていくのが人間としての自分だ。
 教師の仕事とは別に、音楽も聴きたいし、映画も見たい。教育に関係のない本も読みたいし、友だちと旅行もいきたいではないか。
 ふつうの働き人が元気に生活をしていくには、きちんと仕事の時間と、自分の時間を区別する必要がある。
 私は、いつもそのように思っている。
(野中信行:1947年生まれ、元横浜市立公立小学校教師、横浜市の初任者教師の指導にあたり、全国各地で教師向けの講座やセミナーを行っている)

 

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他の教師から悩み相談を受けた場合、アドバイスするときに気をつけることとは

 他の教師から、悩み相談を受けた場合に気を付けておいた方がいいことは、
1 話をじっくりと聞く
 まずは「その人の話を興味を持ってじっくりと聞く」ことが一番必要なことです。
 話をよく聞かないと、困っていることの内容も、本人のつらさもイメージできなくて、何が問題となっているのかわかりません。
 話をよく聞かないと、共感もできないから、アドバイスのしようがないと思うのです。
 じっくりと聴いているだけで、相手は「自分の苦しさを分かってもらえたみたい」と、ずいぶん落ち着くこともあるようです。
 だから、いいアドバイスをすることが答えじゃなくて、一生懸命に聞いて、共感できたりすれば、それが一番いい形の援助になるんじゃないかと思うのです。
 聞いているうちに「わかる、わかる。あるある、私にも」と、一緒になってグチを出しあう感じになることもあります。
 そうなったら、もうアドバイスなんか必要ないかもしれません。
 相手が自然に答えをだしていることだってあります。
2 アドバイスには危険性もある
 悩んでいる人にとっては、誰もが思いつくようなアドバイスは、本人はそれができないから悩んでいて、追いつめられ、苦しんでいるのです。
 いくら一生懸命「こうすればいいのよ」とアドバイスをしても「アドバイスされたことが実行できない」ということで、自分を追い込んでしまうことも少なくありません。
 だから「この人の気持ちが少しでもラクになればいい」という配慮が必要です。
「ラクになり、元気にさえなれば、自分で解決法も思いつくし、対処もできるだろう」と思うのです。
 私は、相手のできていないところや、欠点などを指摘してみても、まずは元気になれないと思っています。
 それより「そういう悩みを抱くのは、あなただけではない」と、いうことを伝えたいものです。
 自分で自分を責めて苦しんでいるところを、少しでも減らしてもらえたらと思います。それが何よりの力になると思うからです。
3 アドバイスは具体的に
 教師の悩みは、ほとんど「明日からどうすればいいのか?」という切羽詰まったものがほとんどです。
 たとえば「クラスの子とうまくいかない。管理職からは厳しく指導しろと言われるけど、本当にそうなのか?」などといった、ものばかりです。
 こういう悩み相談には、良い結果が出るようなアドバイスでなくてはなりません。結果が求められるのです。
 適切な対処の方法を選んでいくには、学校で起きるさまざまなことを実験結果として見ていく視点が必要です。
「そのやり方で効果があったかどうか」を意識して見ていれば、有効性もおおまかに判断できます。
 そういう風にまわりのやり方を見ていて「ああやると失敗するんだ」と学ぶこともたくさんあります。
 サークルで悩み相談がでると、私自身も「自分もそれが聞きたかったんだ、ラッキー」などと、いろんなことを学んできました。
(中 一夫:1960年鳥取生まれ、東京都公立中学校教師。仮説実験授業研究会会員)

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教師が自分の心の不調「早期発見」をするためのチェックリストとは

 どんな病気も、何より大切なのは早期発見。こころの病気も同じです。
 初期の段階で対処すれば、こじれずに済むこともあります。
 次のストレスチェックは、ストレス状態を知るうえで大変有意義なもので、ぜひ取り組まれることをお勧めします。
 自分自身の心の状態をチェックする(最近1カ月を振り返って)
【日常生活で】
□夜中に目がさめて、眠れなかったり、熟睡感がなかったりする。
□頭痛や体の痛み、コリが悪化した。
□食欲が湧かない、または過食してしまう。
□コーヒーやアルコールの摂取量が増えた。
□休日はほとんど寝て過ごす。
□朝、吐き気や腹痛が出たり、下痢しやすい。
□朝、目が覚めても疲れが取れず、体がだるい。
□動機やめまいが頻繁に起きるようになってきた。
【教育活動で】
□教材研究が面倒くさいと思うようになった。
□週案など、提出物の締め切りに遅れることが増えた。
□採点ミスなどの仕事上のうっかりミスが増えた。
□授業に自信が持てなくなってきた。
□職員室の机の上、教室の掲示物などが乱雑になってきた。
□同僚や管理職に反感を覚えることが増えた。
□同僚や管理職が自分をどう思っているのか、気になるようになった。
□児童生徒を、過度に強く叱りつけてしまうことが増えた。
□児童生徒とあまり関わりたくないと思うようになった。
□保護者への連絡が煩わしくなった。
□特定の保護者とのやり取りに負担を感じるようになった。
□自分のしていることが、無意味に感じられるようになった。
2 判定
 自分が意外とストレスを感じていることに気づいた人もいるかもしれません。
 次の判定結果に基づき、ご自身の心の健康状態を確認してください。
(1)チェック数 0~3 良好
 今のところ、心の健康状態はほぼ良好です。
 ただし、心の病は環境などが変化すると、わずか数カ月でも発症することがあります。
(2)チェック数 4~10 要注意状態
 ややストレスが多く、心の健康が脅かされている状態です。
 大きな負担がかかると、抑うつ状態など、病的な状態になる可能性がぐっと高まるので注意が必要です。
 これ以上の不調に陥らないよう、日頃からストレスコントロールを意識した生活を心がけてください。
(3)チェック数 11~15 不良状態
 ストレス過多で、心の健康が崩れかけた状態です。このまま放置すると危険すると危険です。
 まずは、良質な睡眠を十分に取るなど、しっかり休息することを優先させ、ストレスコントロールに取り組んでください。
 それでも状態が改善しないようならば、相談機関の活用や、場合によっては医療機関への受診も検討しましょう。
(4)チェック数 16~20 危険水域
 非常に危険な状態です。今すぐ、相談機関や医療機関に行き、適切にメンテナンスしましょう。
 あなたという存在は、自分だけのものではありません。家族、同僚、友人など身近な人のためにも、心の健康を回復させるため、速やかにしかるべき行動を取ってください。
(真金薫子:東京都教職員互助会三楽病院精神科部長、東京都教職員総合健康センター長、東京医科歯科大学臨床教授)

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イライラや怒りを感じた時、どのようにすれば心を落ち着かせることができるか

 イライラや怒りを感じた時や、相手のことを考え、落ち込む時間があったら、自分のために、少しでもイライラしない心の整え方を考えることが大事です。
 ふだんの生活で怒り、不安、焦りなどを感じた時、心身を落ち着かせる技法にはつぎのようなものがあります。
1 6秒カウントダウン
 前頭葉が怒りの感情を発動するまで3~5秒かかると言います。
 イラッとしたら、心の中で「6,5,4,3,2,1」と数えます。
 出来事から気持ちをそらすことが目的です。
2 肩のリラックス
 身体の弛緩は心理的弛緩をもたらし、怒りと緊張に効果があります。
 両肩を上げ、5秒数えます。力を抜いて肩を下ろします。10秒数えます。これを3回繰り返します。
3 冷たい水を飲む、顔を洗う
 冷たい水が興奮した体や心臓を落ち着かせる。
4 温かいタオルで首や顔を温める
 ふわっと温かいものに包まれると、気持ちが落ち着きます。
5 タイムアウト
 いったん、その場を離れて気分転換し、身体をリラックスさせ、少しでも気持ちを落ち着かせます。
6 セルフトーク
 怒りの感情が起こった時、気持ちを落ち着かせる言葉を自分に言い聞かせてください。
 肯定的なセルフトーク(ラッキー、おもしろい、もっとやりたい)に変えることが心を良い状態にしていきます。
 例えば、試験前に「これだけ勉強したんだから、自分を信じよう」
7 思考停止
 いやな出来事が起こると、そのことをずっと考えてしまいがちです。
 ネガティブな考えや感情が頭の中でぐるぐるしてきたら、思いっきり心の中で「ストップ」と声をかけるのです。
 偏桃体を興奮させたままにしておかず、前頭葉を使うということです。
8 一点集中
 辛いことを考えていると、どんどんその辛さにとらわれてしまいます。
 別の方へ気持ちを向けることで、心に余裕ができるようになります。
 頭の中が怒りの感情でいっぱいだと思った時に、例えば、自分の身の回りにあるものに集中して見ます。
「このボールペンは、いつ買ったんだろうか。素材は何だろう。重さはどれくらいかな・・・・」と、どんな質問でもよいので自分に問うてみてください。
9 イメージトレーニング
 自分がリラックスできる場面を考え、心身を落ち着かせる方法です。
「心地よい良いなぁ」と思う場所や出来事をイメージするもの、「とらわれ」から解放される方法です。
10 顔のリラクセーション
 顔の表情は感情を生み出すと言われています。悩みや不安を抱かえていると眉間にシワがより、目がつりあがって顔の表情が険しくなります。
 顔の緊張をほぐすため、顔のリラクセーションをすることで顔の表情も穏やかになります。
 鏡の前でニコッとしたり、目を大きく開き、口角を上げて「あ、え、い、お、う」と大きな声で自分にニコッとしてみると表情筋が緩んできます。
11 気分転換
 自分でやってみたい、楽しい「わくわくすること」を考えたり、行ったりして気分転換します。
 考えるだけで「ご機嫌になること」を頭に思い浮かべてみましょう。
 思いついた方法をやってみて気分転換になったものをレパートリーに加えましょう。
(佐藤恵子:東京都公立小学校・中学校スクールカウンセラーを経て、私立中学校・高校スクールカウンセラー。アンガーマネージメントジャパン代表理事)

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学校内外に何でも話せる場と雰囲気があれば教師は救われる

 学校の中で孤立し、追い込まれる教師が後を絶ちません。真面目すぎる性格も災いして、精神的に追い込まれていく教師がいます。
 どうすればよいのでしょうか。いくつかポイントをあげると、
1 学校で何でも話せる雰囲気が教師を救う
 これには校長、教頭のリーダーシップが不可欠です。教師が何でも話せ、伸び伸びと働ける校内づくりには、管理職の力が必要です。
 ある小学校では3クラスほど学級崩壊状態にありました。
 しかし、校内研修の雰囲気は和気あいあいとしている。何でも話せる雰囲気があり、内容は深刻であるにもかかわらず、温かい空気が流れていました。
 クラスが荒れて悩んでいた教師に私が話しかけると、
「実は2カ月前までは、私も教師を辞めようと思っていました」
「最近は子どものことを可愛いと思えなくなった」
「物は飛んでくるわ、くそばばぁと言われるわ、黒板には死ねと書いてある」
「けれど、この学校には教師同士お互い何でも語り合え、支え合える雰囲気があるんです」
「それで、私も何とか続けられているんです」
と言う。私は「なるほどな」と思いました。
 この学校の雰囲気づくりのキーパーソンは学級崩壊を経験した教頭でした。当時を振り返りながら、
「私のクラスが学級崩壊になったとき、周りの教師に支えられて退職せずに済みました。こうして教頭になることもできました」
「いま振り返っても、自分の学級運営が格段悪かったとは思わない。私のクラスにたまたま問題児がそろっていたのです」
「荒れる可能性をもった子ども同士が、爆発すれば、どんなクラスでも崩壊してしまいます」
「今は、教師受難の時代です。これだけ、子どもも親も難しい時代だったら、長い間教師をしていれば、一度くらいは学級崩壊になったり、精神疾患になるのも当たり前です」
「だから、私はこうした自分の体験を話して、クラスが荒れても恥ずかしいことではないのだから、お互い支え合っていこう、一人で抱かえ込まないようにしよう、と呼び掛けているんです」
と語ってくれました。
2 教師は思い込みが強い
 教師の孤立化を防ぐために、大切なのが「教師自身の意識改革」です。
 教師には真面目で頑なな人が多い。融通がきかず、問題を1人で抱かえ込んでしまうことが多い。たとえば、
「クラスに問題が起きたら、すべて私のせいである」
「学級が崩壊したら、教師として失格だ」
などという思い込みがあり、そのために苦しむし、弱音を吐けなくなるのです。
 弱音を吐けないから、クラスが荒れ始めても誰にも言えず、荒れていくのを放置するしかなくなってしまいます。
 だから私は、弱音を吐けること、早めに他人に助けを求められることは、これからの教師に必要な能力の一つであると言っています。
 クラスが荒れても別に恥ずかしいことではありません。親からクレームをつけられるのも特別なことではありません。
 これだけ難しい時代なのだから、問題が起きるのも当たり前というぐらいの意識をもってほしいと思います。
3 事例討論会で支え合いをする
 事例検討会で、教師同士の支え合いの会を開くことを私は提案しています。
 まず、有志の教師が、毎回、開催を知らせるプリントを制作します。
 会の趣旨には、学級経営や生徒指導、教育相談の勉強会ですと記しておく。
 少人数でも月に一回程度、定期的に開き続けることが大切です。
 その会の内容は、
(1)司会者から順番にいま学校で気になっていること、困っていることを、一人5分程度話していく。
(2)一人につき15分程度、4~6人で知恵を出し合いながら解決策を考えていく。
 その際のポイントは、とりあえずどうなりたいか、そのためにさしあたり何ができるかを話し合うのです。
 ルールは、何も準備しないこと、全員が自分の問題を語ることです。これが継続できるポイントです。
 要は、教師相互のサポートグループ、問題解決の話し合いを行うわけです。
 成功のポイントは、司会者役の教師自身が、口火を切って「自分のクラスでうまくいっていないこと」を話すことです。
 全員が自分の抱かえている問題について語るのです。そうすれば、問題を話すことに引け目を感じずにすみます。
 絶対に批判はしない。あくまで温かい雰囲気を心がける。
 ぐちをこぼせるだけでなく、少しでも解決のための糸口を手にすることができ「来て良かったな」「元気が出たし、得したな」と思える会にすることです。
4 学校に教師の心の居場所としての雑談部屋をつくる
 教師同士でぐちをこぼし合ったり、無駄話ができるような場所を確保しておくことが大切です。
 校内に、クッキーや紅茶を準備した雑談のためのスペースを設けておくといいでしょう。
 職員室は机と机の距離がありすぎて、大切な話はしにくい場所だと思います。
5 利害関係のない相談相手を見つけよう
 学校外での教師同士のネットワークも大切です。
 同じ志をもった者同士の研究会に入っておくのもいいでしょう。
 何でもいいから、同じ関心をもつ仲間と時々会って、いろいろ話す機会をつくっておくようにしてほしいのです。
 そんな仲間こそ、何かつらいことがあったとき、最も信頼して相談できる相手だからです。
 同じ学校に勤務していると、いくら気が合うとはいえ相談内容によっては、はばかられる場合があります。
 その点、別の学校に勤めている教師なら大丈夫。しかも関心のあるテーマや興味対象を共有できる者同士なので、親身に話し合えます。
(諸富祥彦:1963年福岡県生まれ、 明治大学文学部教授。「現場教師の作戦参謀」として、抽象的ではない実際に役立つアドバイスを先生方に与えている。悩める教師を支える会代表)

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教師は献身的で自分を追い込みがち、自分の健康と向き合うことも大切である

 いくつもの学校を巡回相談していると実感するのですが、現在、医療機関に通院しながら仕事を頑張っている教師がたくさんいます。
 また、その反対に、健康診断で疾患があると指摘されながらも、いまだに医療機関に診てもらっていない教師も相当数いるようです。
 退職して2~3年内にお亡くなりになる教師の話を耳にする機会が多いものですから、心配ですね。
 教育は、献身的に殉ずる姿勢があってこそ向上していくという側面があることは否定できません。
 それだけに、教師にとって重要な特性である献身的に子どもを気づかう心、利他的な奉仕の精神が、バーンアウト(燃え尽き症候群)やうつ病のリスクを高める性格特性にもなっているのです。
 私自身も、昔は教師の仮面を1日中かぶっていて「頑張ることが正しいことだ」と思い込んでいる人間でした。
 子どもから信頼され、感謝される教師をめざして、毎日遅くまで子どもの教育に情熱を傾けていました。
 いつの間にか、ハードルを勝手に高く設定し、自分で自分を追い込んでしまいました。
 無理がたたったのでしょうか、30歳代半ばに、いわゆるパニック障害のような症状が出ました。
 とにかく不安でしかたがない。車を運転していて渋滞で止まってしまうと、急に冷や汗が出て車外へ飛び出したくなることさえ、あったくらいです。
 追い詰められた自分から脱出するには、いろいろな方法があると思いますが、私の場合には、現状について「しょうがない」と思うことで、脱出への糸口を見つけました。
 私事で恐縮ですが、30歳代初めに命の危機に見舞われて
「どうして自分だけがこんな目に遭わなければならないのか」
「この先、どうやって生きていけばよいのだろうか」
と絶望のなかで必死にもがいている時期がありました。
 そんな私を窮地から救いだしてくれたのは、恩師からの一言でした。
「人間には、自分の力や努力ではどうにもならないものがある」
「そんな時は、しょうがないと思うよりほか文字通り『しょうがない』」
と。
 誰でもそうですが、病気を告知された当初は、個人差はあるにせよ、自分の状態について、頭(理屈)で理解できても、心(感情)が受け入れるには相当の時間がかかるものです。
 しかし、一方で病気がありながら、病気になって良かったという人がいるのが不思議です。
 多少時間を要しますが、病を受け止められるようになると、
「金儲けをしたい」「有名になって注目されたい」
等の雑念から解放され、自分が生きる意味を見出せた時、前を向いて再び進むことが出来るようになるのです。
 その瞬間が「生き直す」スタートラインです。
 誰かのために自分が役立っていることが、これからの生きるエネルギーになるのです。
「必ず、道はありますから」生かされていることに感謝です。
(土井一博:公立中学校教師を経て退職後、筑波大学大学院で健康教育学を学び、茨城県等でスクールカウンセラー歴任し、埼玉県川口市学校教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー。日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長。専門は教職員のメンタルヘルス、学校健康心理学、教師教育)

 

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教師受難のむずかしい時代を生き抜いていくために必要な教師の能力とは何か

 今のようなむずかしい時代に教師生活を長く続けていくためには「弱音を吐く能力」「助けを求める能力」が必要不可欠なものとなりつつあります。
 弱音を吐き、助けを求めることは、教師受難の時代を生き抜いていくための能力の一つなのです。
 助けられ上手な教師は
(1)困っていることを解決するために、同僚や管理職からの助言や援助を求める。
(2)自分が困っているときには、話を聞いてくれる人がほしいと思う。
(3)困っていることを解決するために、自分と一緒に対処してくれる教師を探す。
(4)自分の周りの人に助けられながら、うまくやっていきたいと思う。
 男女別でみると、女性のほうが男性に比べ、助けを求めることへの抵抗が少ないようです。
 助けられ下手な教師は
(1)よほどのことがない限り、人に相談することがない。
(2)なにごとも、同僚や管理職に頼らず、自分で解決したい。
(3)同僚や管理職の助言は、あまり役に立たないと思っている。
(4)援助を求めたら、人はわずらわしく感じるのではないかと、思っている。
(5)自分が困っているとき、同僚や管理職は、そっとしておいてほしい。
 助けられ下手な教師の特徴は、
(1)自尊心の高すぎる人
 経験的にも能力的にも「自分はできる」という自負のある先生が学級経営や保護者対応に行き詰ったとき、プライドが邪魔をして助けを求められないのです。
(2)自尊心の低すぎる人です。
 学級崩壊に陥っている。保護者から攻撃を受けたというとき、これ以上自分のダメなところを見せたら、人から見放されるという怖さがあって相談ができないのです。
 大切なのは、勇気をもって自分の苦しみを打ち明けることです。助けを求めれば、救われるチャンスも得られるのです。
「そうは言っても、助けを求められる人、いないんですよね」と、言う教師は多い。
 でも、ほんとうにいませんか? あなたの周りにほんとうに一人もいないでしょうか。
 実は、同じようなことで悩んでいる教師は、結構いるものです。
 幅広く目を向けて、安心して相談できる相手を見つけましょう。
 周りを広く見渡して、味方になってくれそうな教師を探す習慣をつけること。
 これが、あなたがこの先も教師を続けていくための、大きな助けとなるのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授。専門は臨床心理学、カウンセリング心理学。悩める教師を支える会代表。現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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教師が悩みを共有し、お互い支え合いながら課題を解決していける人間関係づくりが求められています、どうすればよいのでしょうか

 教師同士が雑談することでどのような効果をもたらすのでしょうか。
「同僚が自分をサポートしてくれる仲間だと感じることができた」
「ストレスをほぐせた」
「人間関係がよくなり、仲良くなることで学校が楽しくなった」
「なごやかになり、気持ちが落ち着く」
などのメンタル面で大きなプラス効果があります。
 ある学校では、校長自らが職員室の後方に仕切りを作り、雑談できるようにしていました。
 勤務時間外に、教師たちはそこでお茶を飲み、お菓子を食べ、子どものことなど様々なことをしゃべってから帰路につきます。晴れ晴れとした顔で帰っていくのです。
 学校でのストレスを学校で解消していくことで、家庭にストレスを持ち込まないようにすることができます。
 結局それは、翌日の勤務への意欲を高めることにつながっていったのです。
 校長が「雑談スペースを作ったことで、先生方の仕事の効率が上がった」と、胸を張って言っていました。
 雑談時間を「余分な時間」と考えず「リフレッシュする大切な時間」と考えることが必要なのではないでしょうか。
 雑談のときに、どのような言葉がけをするかというと、例えば
「私のクラスに、授業中に騒がしい子どもがいるのですが、先生は騒がしい子を担任したことがありますか。もし、あればどのような方法をとりましたか?」
と、聞くとよい。
 教師は誰でも教えたがりです。その部分に触れるように話すと、気軽に相談に乗ってくれます。
 また、趣味の話なども、雑談の中に入れましょう。お互いのもち味や興味のあることを日頃から知っておくことが、気軽に雑談に入るためには必要です。
 年配の教師は、情報機器が苦手な人が多く、若い教師にかなわないと思っているものなのです。
 だから、ちょっと気後れしていてしまい、声をかけづらいところがあるのです。若い教師も、自分から声をかけていくことです。
 雑談には、リラックスしたりストレスを軽減する効果があるのですから、とにかく思ったことをしゃべりましょう。
 ただし、相手に対して「NGワード」がありますから、それだけは気をつけましょう。
 こうした雑談スペースを上手に使いながら「悩みを聴き合える素敵な職場」を創り出すことが、教師の同僚性を取り戻し、お互いが支え合う職場を創ることにもなるのです。
 若い教師は「悩みを聴いてもらえる時間がない」とよく口にします。
 若い教師は、ささいなことで悩むし、落ち込むことが多い。
 教師は多忙であるが、次のように同僚教師や管理職から認められることが多忙感を軽減する大きな力にもなっています。
「協力してくれる人がいる」
「やったことを認めてくれる人がいる」
「管理職や同僚から認められたり、労をねぎらってもらうと負担感が減る」
「管理職に信頼されて任されていると感じるとき」
 誰もが「人から認められたい」という思いをもっています。
 人間同士としての温もりこそが大切になっているのです。
 悩みを共有し、お互いが支え合いながら課題を解決していける人間関係づくりが求められています。
(増田修治:1958年埼玉県生まれ、埼玉県公立小学校教師(28年間)、白梅学園大学教授。「ユーモア詩」を通じた学級づくりを進めた。2002年にNHKにんげんドキュメント「詩が踊る教室」放映。小学校教師を対象にした研修に力を注ぐ)  

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私たちは常に何らかのストレスを受けて生きている、具体的なストレス解消法にはどのようなものがあるか

 私たちは生活環境から常に刺激を受け、それに反応しながら生きている。
 生きている限り、私たちは常に何らかのストレスを受けていて、それから完全に逃れられることはない。
 ストレスとどう仲よくつきあっていくかを考えることが現実的な解消法につながる。
 仕事の中で生じたストレスは仕事を通じて、人間関係の中で生じたストレスは人間関係を通して解決していくのが理想である。
 ストレス解消は、心身の疲労が解消されるときに感じる、気持ちのよさ、すっきり感、心が清められるような感じ、安心感や安定感がでてくることが目標となる。
 具体的なストレス解消法は
1 一人でできるもの
 身近なものでは、酒、買い物、スポーツなどが多いと言われている。
 しかし、このようなものは一時しのぎでしかないのでそれがエスカレートしていくと依存症や嗜好になってしまう危険性がある。
 一人でできる趣味には、心を楽しくさせ、満足させ、心を元気に作用がある。
 しかし、趣味はあくまで気ばらし、気分転換と考えるべきで、趣味をすることでストレスの原因が解決されてストレスが解消されるものではない。
2 相手が必要なもの
 気の合う人とおしゃべりして話を聞いてもらう。動物を飼うことなどである。 
 フィーリングの合う、価値観が同じで、気をつかわないですむ人に自分のもやもやした思いを聞いてもらうことは、とっても心が楽になる。
 言葉を使わず自分の好きな動物と一緒にいることも心をなごませる。
3 最大のストレス解消法
 最も効果のあるストレス解消法は睡眠である。眠ることにつきる。
 ストレスの苦しみは起きているときの意識上の問題であるから意識レベルを変えることがまず第一である。
4 原因別のストレス解消法
(1)人間関係が原因の場合
 人間には生理的に好き嫌いがはっきりしているところがあるので、生理的に合わない人との人間関係は割り切るしかない。
 マナーや社会常識などを重視しつつ、それを利用してその人との距離をとる、言葉づかいなどに気をつけるしかない。
 人間は感情がからんでくると自己制御が難しくなる。だからこそ、常日ごろの人間関係が重要となる。
 自分と価値観が合って、気をつかわずに何でも話ができる人を大切にすべきである。その人とは性格傾向も似ているため、自分と同じような挫折体験をした確率が高い。
 とすれば、自分に合った適切なアドバイスを得ることができるかもしれない。
(2)過労からくるもの
 目的追求型の日常生活から生じた結果なので、まずノルマをもたない自分が主体的に使える時間をつくることが効果あるといえる。
 例えば、旅の好きな人ならば目的をつくらない旅をしてみることなどである。
(3)自分を縛っている固定の規則や習慣がストレスの原因となっている場合
 十分に時間をとって内省し、他人が決めたことに従わされていることからくる不自由な生活、疲れ果てている感覚、心の窮屈感、本当は心の底から求めている解放感に気づくことである。
 人間の本能は自由、わがままに生きることにあるのだから。
4 感性を鍛え磨く、大切にする
(1)身体の健康を大切にする
 心を守ってくれるのは身体なので、身体の健康が大切である。
 十分な睡眠と楽しく、おいしく食べることができる生活が必要条件である。
 健康な感情を持っていれば、今しんどいのか、まだ底力がのこっているのか、もう精一杯なのかなどがわかる。
 心と身体のバランスが崩れてしまうとこの感覚が機能しなくなる。
(2)自然と向き合う
 大自然に触れることによって、絶対的な考え方と、自分の考えを基準にした相対的な物の考え方の両方を体験してみる。
 自分のそれまでの想像を超えた全体的視野、自然がもたらす絶対的感触を経た上で相対的に物事を考えることで、物事の本質、限界、可能性、希望が見えてくる。
(3)本物に出会う
 世の中には決してお金で置き換えることのできないものが存在することに気づき、心が関係しているということに気づくことができるかどうかが、人間としての分岐点である。
 そのためには、一流といわれるもの、本物だといわれるものを創作した人、一流のスポーツ選手、芸術家の生き様に何を感じるかにかかっている。 
(岡田 謙:医師(精神保健医)。教師と児童の精神疾患治療で有名な関東中央病院の部長を務め、東京都医師会学校精神保健検討委員会委員。平成18年から「くじらホスピタル」の初代院長に就任)

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新任2年目で小学校1年生担任に配置されダウンした教師の事例

 事例:Dさん(20歳代の小学校女性教師:適応障害)
1 状況
 新任2年目に「この学年だけは勘弁してほしい」と伝えていた学年に、学年主任を支える役割の1年担任として配置された。
 学年の担任構成は、新任1年目、新任2年目、講師、学年主任の4名です。
「2年目だから、あなたはできるわよね」という雰囲気を感じすぎてしまい、自分は一人でできなければいけないと、自分を追い込んでいった。
 前年にお世話になった初任者担当教師が転勤して、相談できなくなり、何をどうすればよいか、わからなくなっていた。
 担任したクラスの子ども同士のトラブルが絶えない状態になった。
 ただただ、大声でクラスの子どもたちに注意をするが、空回りするばかりであった。
 保護者のクレームが嵐のようにふりそそいできた。
 不眠、頭痛、吐き気とともに、朝、起きられなくなり、4月に教職員の専門病院を受診し、病気療養することになった。
2 よかったこと
 受診してからは、管理職が本人の負担を認め、本人をねぎらった。
 病気療養のうえ、職場復帰トレーニングに参加。仲間を得て「やってみよう」という気持ちになった。
 半年間という長めのプレ出勤(慣らし出勤)をしながら、教師として必要な多くのことを自然と身につけていった。教育センターの退職校長が、よく面倒をみてくれた。
 新年度から担任外での復職となり、3カ月伴走してくれるサポート教師も得た。
3 解説
 新任2年目は、まだまだ不安な時期であり、相談できる同僚教師がいなくなっただけでパニクック状態になる若い教師も珍しくないです。
 学年団によっては「それぞれ自分でやりましょう」という方針をとっていたりします。
 この学年のように、人員不足により学年主任が新任と講師のフォローをしている間に新任2年目が取り残され、混乱していたり、といったこともありえます。
 Dさんの場合、不安だから、そこだけは外してほしいとお願いした1年生だったことも、保護者の不安や期待に応えなくてはといった極度のプレッシャーを抱えた一因でした。
 子どもに、まず椅子にじっと座るところから教えるなど、思ってもいなかったことでした。
 新学期に大量にあるプリント類の配布も、落としたり、もらっていない子どもがいて混乱しました。 
 翌日から、保護者のクレームの嵐だったと言うことです。
 Dさんは、職場復帰のトレーニング初期には「なんで私がこんな目に」といった被害者意識を感じていました。
 模擬授業をすると、力量のある素敵な授業でした。
 その頃から、表情がゆるみ始めて、年配教師の参加者ともよい距離感で交流するようになりました。
 その後、校長の理解のもと、半年のプレ出勤を経て、復帰1年目は担任外、翌年度に担任をもつという配慮もあって、今も元気に勤務しています。
(井上麻紀: 臨床心理士。公立学校共済組合近畿中央病院メンタルヘルスケア・センター副センター長。10年以上にわたり、学校教職員の専門病院で、教員に特化したメンタルヘルスケアや職場復帰支援をおこなってきた)

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