カテゴリー「教師の心の安定」の記事

「私は教師に向いていない、辞めるか」とばかり考えていた新任教師が、どのようにして教師の仕事を続けたいと思うようになったか

 A先生は、新任の小学校女性教師で、地方の小規模校(全学年が単学級)の4年生の担任になりました。
 幼いころから先生になることをめざしていたA先生は、理想に燃えて一人ひとりの子どもの個性を伸ばすことを目標に積極的に関わっていこうとしました。
 しかし、授業中に立ち歩いたり、突然大きな声で話し始めたりする多動傾向の子どもへの指導に手を焼いているうちに、周囲の子どものなかにもそれに同調して騒ぐ子も出てきました。
 多動傾向の子の保護者に協力を求めると「去年はそんなことはなかった。うちの子ばかりを問題視するのはおかしい」と批判された。
 昨年度は厳しい指導をするベテランの男性教師が担任をしていましたが、転勤し、十分な引き継ぎを受けることができなかったようです。
 他の保護者からは「きちんと授業を成立させてほしい」と強く要求されるようになってしまいました。
 A先生は真面目で責任感が強く、自分一人で問題を抱え込みがちなところがある。
 子どもたちにも「こうあるべきだ」と固定的な期待感を抱きがちで、どちらかというと柔軟な対応が苦手なタイプです。
 また、他人に頼まれると嫌とはいえない性格で、後で後悔することもよくあると言います。
 A先生からの次のような相談メールがありました。
「朝は気合い入れて出勤しますが、時間が経つにつれ、だんだん無気力になり、逃げたいという気持ちになってしまいます」
「他の先生に助けてもらっても、私一人になれば元通り。『私は教師に向いていない、辞めるか』と、気づいたらそればっかり考えています。すぐに涙が出てしまいます」
 私は、次のような返信をしました。
「多くの新任教師があたる壁ではないでしょうか。思うように子どもたちが動かないもどかしさや焦りなどから、理想と現実の落差でショックをうけているのでは」
「他の先生が入ると子どもたちが落ち着いているのは、A先生の前だから、自分たちの素顔を出しているとも考えられます」
「子どもたちはA先生に安心感を抱いて、ありのままを出しているとも言えます。子どもの成長には安心感が何よりも必要です」
「子どもの気持ちで学び合おう、一緒に遊ぼうという感じで接したら、少し変化が出るかもしれません」
「難しい子どもばかりでなく、しっかり頑張っている子、楽しそうにしている子にも目を向けてみたらどうでしょうか」
「いいとこ見つけの名人先生をめざしてみたら」
「すごくいい先生になろうとするのではなく、一緒にいて楽しい先生をめざしてみるのも一つの方法です」
「それと、周りの先生も忙しいでしょうが、相談されたり、頼られたりするのは嫌なものではない。信頼できる先輩や管理職にかたひじ張らずに相談してみてください」
「人と話すと、少し気持ちが楽になります。相談することは恥ずかしいことではないし、自分のためというよりも、子どもたちのためと思って相談してみてください」
「うまくいかなくて当たり前。そんな気持ちでやってみたらどうでしょう」
 A先生は「一人で無理にやってもどうにもならない」と開き直ってから、気持ちが少しずつ和らいでいったようです。
 A先生は同じような悩みを抱かえた新任の仲間や職場の先輩と、子どもへの対応について相談し合うようになりました。
 話を通じて自己理解が進み、自分が身にまといがちな固い殻にも気づき、もののとらえ方も少しずつ変わっていきました。
 反抗的な子どもも「心のどこかで変わりたいと願っている」と思えるようになり、以前に比べ、授業に行くのが苦痛でなくなったと言います。
 自信が100%回復したわけではありませんが「教師の仕事を続けたい」と思いはじめるようになっていきました。
(
新井 肇:1951年生まれ、埼玉県公立高校教師を経て、兵庫教育大学教授。カウンセリング心理学を基盤とした生徒指導実践の理論化、教師のストレスとメンタルサポート等を研究)

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課題のある子が気になる、明日の授業は大丈夫だろうかと考えて、夜なかなか眠れません、どうすればよいのでしょうか

 眠れないことが、病気の症状なのか、そうでないのかは、自分で判断することが難しい場合もあります。
 日中、気分の面も身体の面でも特に問題がなければ、病気とはいえません。
 ところが、日中も気分や体調に問題がある場合や、心配事が解決したり、身体的な病気が治癒したのに不眠が続く場合には、心の病気を疑うべきでしょう。
 ただし、実際の学校現場では、次々と心配事が起きるでしょうし、多忙も続いて一息つくことさえ困難かもしれません。
 常にストレス状態が慢性的に続いているわけですから、いつ心の病気になっても、おかしくない状態です。
 不眠症にはさまざまなタイプがあること、長引けば病気のサインであることを知っておくのがよいでしょう。
 次に不眠症の具体的な解決法について述べます。
 眠りやすくする方法
(1)
寝る前に熱すぎない風呂にゆったりつかり、血液の循環を良くして、身体をほどよく温めれば眠りやすくなります。
(2)
午前中に日光浴をする
 午前中に日を浴びると、脳内の睡眠物質の量が調整され、夜眠りやすくなります。
(3)
短時間の仮眠を取る
 短時間、軽く仮眠を取ると、その後、集中して活動できるため、夜、すっきりと眠れるでしょう。
(4)
楽観的な気持ちを持つ
「眠らなければ」と、強く考えれば考えるほど、意識がはっきりして、かえって眠りにくくなるのです。
 基本的に、不眠そのもののために死ぬことはありません。
「2,3日眠らなければ、その後は疲れ果てて眠れる」というような、眠りに対する楽観的な気持ちを持つことが眠るコツといえるでしょう。
 過労だけが原因であれば、いずれ夜も眠れるようになるものです。
(5)
気分転換を図る
 楽しい出来事を思い出すことで、気持ちがリラックスでき、眠りやすくなるということもあります。
 寝酒の量が増えることは好ましくありません。
 夜、眠れないという理由で、お酒を飲む人が少なくありません。
 確かに酔ってくれば寝つきは良くなるのですが、酔いが覚めてくれば脳も覚めて浅い眠りになり、目ざめやすくなります。
 ですから、寝酒の量が増えることは好ましくありません。アルコール依存症になる人もいます。
 睡眠薬は専門医の処方で
 不眠がある程度続き、昼間に眠気が強くなったり、集中力が低下してミスが増えるといった、日常生活や仕事上でも支障が出てきた場合には、治療的な対処が必要です。
 安全で副作用の少ない睡眠を助ける睡眠薬があります。
 睡眠薬に対する悪いイメージもありますが、一時的に合理的に使うのであれば、まず問題はありません。
 日常的に使うぶんには、効かなくなることがないため、中毒を起こすことはほとんどありません。
 ただし、睡眠薬を使うのであれば、専門の医師に相談して、自分の不眠のタイプに合った薬を処方してもらうことが、一番効率的です。
 そのうえで、決められた量をきちんと守るなど、正しい使い方をしてほしいと思います。
(
中島一憲:19562007年、1990年より東京都教職員互助会三楽病院勤務し部長、東京医科歯科大学教授を歴任した。精神科医師)

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教師が「辞めたい」という気持ちに追いつめられるものは何か

 教師の仕事の多忙化による疲労の蓄積に加え、子どもの問題行動の指導や、保護者からの苦情への対応で日常的なストレスにさらされた結果、「うつ状態」などに陥って病気休職となるケースが増加しています。
 実際、私の大学院で、長期派遣の現職教師236名を対象に学校現場での心の危機について、その原因を尋ねたところ、つぎのような結果になりました。(20092011年度)
1.
手に負えない子どもに振り回される   97
2.
職員間の共通理解や協力が得られず孤立 64
3.
保護者との人間関係 51
4.
管理職とのあつれき 43
5.
同僚とのトラブルやいじめ 33
6.
多忙     30
7.
他校への転任 14
8.
新任         10
9.
部活動の子ども・保護者とのあつれき 9
10.
望まない担任や分掌                9
 教師が仕事に対する無力感や無意味感、あるいは自己否定的になり「辞めたい」という思いに陥っていく背景には、何があるのでしょうか。つぎのようなことが考えられます。
 教師のパーソナリティ要因がある
 挫折や危機から抜け出すことを妨げる性格として
(1)
自己の信念や、やり方に固執して、柔軟性にかける
(2)
他者の期待に応えようとする
(3)
仕事が競争的で、目的達成志向が強く、他者に対して批判的、攻撃的になりやすい 
 自分は教師に向いていないのではないかという揺らぎ
(1)
子どもの指導や保護者対応などに対する自信の低下
(2)
教職適性感の低下
 職場の要因
(1)
仕事の多忙感
(2)
管理職との共通理解の不足や意見の対立による葛藤
(3)
同僚教師が協力的でない
 教師に「辞めたい」という気持ちを抱かせるものは、教師個人の性格というよりも、むしろ自分は教師に向いていないのではないかという揺らぎや職場の要因から生じるものが多いように見受けられます。
( 新井 肇:1951年生まれ、埼玉県公立高校教師を経て、兵庫教育大学教授。カウンセリング心理学を基盤とした生徒指導実践の理論化、教師のストレスとメンタルサポート等を研究)


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悩みや憎しみは、どんどん膨らんでいく、どうすれば楽になるのでしょうか?

 悩んでいる自分を認めず「こんなふうに悩んでいてはだめだ」と責めてはいけません。
 悩みは鎮まるどころか、かえって膨らんでいきます。
 悩みや憎しみや不快などのマイナス感情は、それを否定すればするほど、どんどん膨らんでいくのです。
 悩んでいる自分を否定するのではなく「ああ、自分には『教師を続けられないのではないか』という不安や自信のない気持ちがあるんだな」と、まず、認めること。
 そして、それをただただそのまま認め、眺めるような姿勢でいるのです。
 これができるようになり「ダメ教師としての自分」も、自分の一部として認めることができるようになると、そうした否定的な気持ちそのものが小さくなっていきます。
 重要なことは、何が出てきても、ただただそのまま認め、眺めるという姿勢です。
 実際に、悩みと上手につきあえるようになると、それまでのクヨクヨした心の重さが消えていき、生きることがだいぶ楽になっていくはずです。
 私のカウンセリング室に来られる人に「あなたは、どうなりたいですか」と尋ねると、多くの人は「悩みのない人生を送りたい」と言います。
 しかし、悩みがまったくない人など一人もいません。
 カウンセラーである私は、相談にくる人を「悩みがまったくない人」にしようとは思っていません。
 むしろ「悩みと上手につきあう方法を学んでもらう」お手伝いをしています。
 自分の悩みとの関わり方は、つぎのように3つあります。
(1)
感情を押し殺してしまう方法
 自分の悩みを自分から切り離して、自分の外に閉め出し、あたかも悩みなどないようにふるまう方法です。
「私は大丈夫、私は大丈夫・・・・・」と感情を押し込めていると、いずれ症状に出てきます。
(2)
いっぱい、いっぱいになって苦しんでいる状態
 悩みと自分が同一化してしまい、それにとりつかれてしまっている状態です。
「教師として、自分はやっていけないのではないか」という、いやな感じばかりが膨れあがり、やがてその悩みに覆い尽くされてしまう。
(3)
悩みを認めて、距離をとる
 自分の悩みを認め、それと同一化してしまうのではなく、外に追いやることもせずに、それを「認めていき」「距離をとる」方法です。
 悩み、うつ的な気分がある。そんな自分を否定するのではなく、そういう自分も、自分の一部だとそのまま認めていくのです。
「うつ」の人は考えすぎる傾向にあります。考えすぎると心のエネルギーは奪われていってしまいます。
 私は相談に来られた人に「どうやったら、考えすぎずにすむか、その工夫を一緒に考えていきましょうね」と言うことがよくあります。
 そして「悩みを認めて、距離をとる」方法を学んでいただくのです。
「私はダメな教師ではないか」とまじめな人ほど、ひたすら考えます。前向きな人であればあるほど、そこから脱出しようとして、もがき苦しみ続けます。
 しかし、それは不可能なので「やっぱりダメだ」となってしまう。脱出できるような悩みでしたら、うつにはなりません。
 どうしても自信がない。そうしたら、自信のなさやうつ的な気分をそのまま、認めていくしかないのです。
 認めて、しかしそれにどっぷりつからない。「自分の悩み苦しみと、一歩距離をおく」のです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授。専門は臨床心理学、カウンセリング心理学。悩める教師を支える会代表。現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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教師が学級崩壊など危機的状況になっても、乗り越え教師人生をまっとうしていくうえで支えになることとは

 教師の抱かえる悩みが、最初は子どもとの関係、保護者との関係などによって生み出されたものであったとしても、それだけで退職や休職に追い込まれるケースはそう多くはありません。
 同僚や管理職に仕事の悩みを相談できると答えた教師は約14%しかいません。学校現場において教師がいかに孤立しているかがよくわかります。
 同僚や管理職との人間関係ができていない教師が精神的に追い込まれていくのは、精神疾患による休職教師の約半数が、その学校へ転勤して2年以内に休職している、という事実にも示されています。
 こうした現状の中で求められるのは「お互いに、お互いを支え合う職員室」づくり「弱音を吐ける職員室」づくりです。
 私が多くの学校現場に足を運んできて最も強く感じたことのひとつは「管理職によって職場の雰囲気はこれほどまでに大きく影響されるのか」ということです。
 ある学校の教頭は、かつて担任だったとき、クラスが崩壊した経験があります。うつ病を患い、精神神経科のクリニックに通院していました。彼は次のように言います。
「今はこれだけ教師が大変なんだから、うつ病になるのは、まじめに教師をやっている証拠でしょう」
「だから、担任の先生方には、みんな抱え込まずに、支え合っていきましょう、口をすっぱくして言っているんです」
 この教頭先生は、自らつらい経験にしたことで、今、担任が助けを求めやすい雰囲気づくりに努めています。
 また、ある小学校教師はかつて学級崩壊を体験し、うつ病になった折り、休職をしようと相談にいった校長から、こう言われたと言います。
「うつ病になったのは、むしろ真剣に責任感を持って仕事をやっていた証拠だ。うつ病は教師の勲章だよ、きみ」
 校長からこの言葉をもらったのをきっかけに、この教師は回復していきました。
 結局、一度も休職せず、通院治療でうつ病を治すことができ、今では、ある小学校の校長になっています。
 この教師は言います。
「もしあのとき、校長はじめ、同僚の先生方から、厳しいことを言われて突き放されていたら、私はたぶんもう退職していたと思います」
「今、こうやっていることができるのも、校長や同僚に支えてもらったおかげです」
「教師にとって、同僚や管理職による支えほど、教師人生の危機を乗り越えるうえで大きな力になるものはないですね」
 学級崩壊のような危機的状況にあっても、その問題をみんなで共有できる学校では、ともに危機を乗り越えていくことを通して、一人ひとりの教師が成長していくことができるのです。
 教師には「学級経営の失敗をさらすのは恥である」といった意識の人がいます。
 しかし、担任が問題を抱え込むと、保護者との関係の悪化など、二次的な問題が生じる可能性が高くなります。
 このような悪循環を防ぐために必要なのは、早期発見、早期対応である。そのため教師には「じょうずに助けを求める力」が求められます。
 それが、これからの教師に求められる資質であると考えられるのです。
 不運にも現任校でそうした人が見つけられない場合には、一人悩みを抱かえるのではなく、外部の仲間や専門家に助けを求めることです。
 かつての同僚や管理職、初任者研修のときの同期の仲間、大学時代の仲間、教師のサポートグループや研究会で知り合った仲間などの中から、一人でもいいので「何でも言える人」「わかり合える仲間」を見つけていきましょう。
 そんな存在が見つかった教師は、回復を見せていく場合が多いのです。
 このような仲間の存在こそが、教師が幾度かの不調を乗り越えながらも、数十年の教師人生をまっとうしていくうえで、最大の支えとなるのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)


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教師が心を痛め休職したりする原因は何か

 教師は真面目で誠実だ。誠実だから教師になったのだ。真面目でない人間には教師は絶対つとまらない。
 心を痛めて、休職する教師が増えている。辞める教師が増えている。
 それを取り上げてくださるマスコミも多い。有り難いことである。
 しかし、マスコミの方々は、われわれ教師の「さが」をよく分かっていらっしゃらないようだ。
 教師が自殺したり、休職者数が増加したりすると、すぐに労働時間などが問題にされる。
 確かに教師の仕事は忙しい。しかし、私は、そんなことは問題でないと思っている。
 教師が心を痛める原因は何か? それは「報われない」からである。
 どんな仕事でも、辛いことはある。忙しくて、睡眠時間も満足に取れないことがあるだろう。
 仕事は、厳しいものである。それは仕方ない。
 それでも、その努力が報われれば、人間はがんばれるのだ。
 どんな忙しかろうが、徹夜が続こうが、報われている限りはがんばれる。
 われわれ教師は真面目なのだ。良心的なのだ。子どもたちの笑顔を見て、やりがいさえ感じられれば「教師になって良かった」と思える。
 どんなに仕事が忙しくても、体がきつくても「がんばって良かったな」と思える。
 それなのに、いまどきの教師は「報われない」、がんばっただけの見返りがない。
 見返りとは、現金ではない。子どもたちの笑顔、保護者の笑顔、つまりは「先生のお陰で」と言われることが少なすぎる。
 いや、逆に一生懸命やった、がんばりが裏目に出ることが実に多いのだ。
 これでは、われわれ教師は「報われない」、がんばれない。
 教師という仕事の本来の喜びは、子どもの成長である。かけ算九九ができるようになったなど、子どもを成長させることができると、ものすごくうれしい。
 そして、自分の成長を実感した時の子どもたちの笑顔を見ると、さらにうれしい。
 これが、教師の「さが」である。そのためなら、どんなに大変でもがんばれる。
 われわれ教師は辛いのは、忙しいからではない。「報われない」から辛いのだ。
 今、教師に必要なのは、教師が報われることである。
(
中村健一:1970年山口県生まれ、山口県岩国市立小学校教師。授業づくりネットワーク、お笑い教師同盟などに所属。笑いとフォローをいかした教育実践は各方面で高い評価を受けている。 また、若手教師を育てることに力を入れ、多くの学生に向けて講演も行っている
)

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運わるく学級崩壊してしまっても自分を責めてはならない。人のせいにしてでも、生きのこれ

 教師は真面目な人が多い。だから、学級崩壊してしまったら、自分を責めてしまう。そんな人ばかりだ。
 そして、心を壊す。体を壊す。辞めてしまう人だっている。自殺してしまう人だっている。
 学級崩壊しても、悪いのは自分(教師)ではない。学級崩壊を起こすような子どもが悪いのだ。保護者が悪いのだ。少しはそうやって、人のせいにしてみよう。そうすれば、少しは心が軽くなるのではないか。
 ある女性教師がいた。かなりの確率で学級崩壊した。すごいのは、彼女の明るさだ。職員室で見ていると、学級崩壊している担任だなんて、とても思えない。
 よくしゃべり、よく笑う。風邪ひとつひかない。学校を休むなんてことはない。毎日元気に働き続けていた。
 なんでこんなに元気で明るいんだろうと、不思議に思っていた。彼女の話を聞いていて、よく分った。
 彼女は、自分が悪いとは全く思っていない。悪いのは全て、子どもであり、保護者であり、世の中なのだ。
 だから、彼女は傷つくこともなく、明るく元気に働き続けられる。すごいことだ。
 私は、彼女に学ぶべきだと思っている。人のせいにすれば、病気にならなくて済むのだ。辞めなくてすむのだ。少しはそうやって、人のせいにしてみよう。
 また、彼女が元気でいられたのは、周りにいた同僚教師の力も大きい。人のせいばかりにする彼女の発言を一切とがめなかった。「うん、うん」とうなずき「そうだよねえ」と共感的に聞いてあげた。
 彼女が元気で居続けられたのは、職員室の力が大きいと思う。
 人間誰しも、相性というのがある。もし私がものすごく相性の悪い子や保護者の担任になってしまったら、私のクラスだって学級崩壊してしまうのだ。
 もちろん、教師の努力で学級崩壊になる確率は下げられると思っている。そう思っていないとやってられない。
 しかし、学級崩壊の確率はゼロではない。学級崩壊してしまう可能性は誰にだってあるのだ。
 運わるく学級崩壊してしまっても、自分を責めてはならない。人のせいにしてでも、生きのこれ。
 教師として1年間生き残りさえすれば、次の年は楽勝に感じられるはずだ。とにかく1年間をしのぎきり、生き残ることが大切なのだ。
 これは、将来、学級崩壊に当たってしまった時の私へのメッセージでもある。
(
中村健一:1970年山口県生まれ、山口県岩国市立小学校教師。授業づくりネットワーク、お笑い教師同盟などに所属。笑いとフォローをいかした教育実践は各方面で高い評価を受けている。 また、若手教師を育てることに力を入れ、多くの学生に向けて講演も行っている
)

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教師の仕事からくるストレスの原因と、教師が燃え尽きないようにするには、どうすればよいか

 多くの教師がストレスにさらされ、メンタルヘルスが深刻の度合いを強めている。中でも、もっとも多いのは抑うつ状態に陥る、燃え尽き症候群、バーンアウトである。
 燃え尽き症候群は対人援助職業に特有のストレスを指し、単なる疲労とは異なり、長期間にわたり人を援助する過程で、解決困難な課題に常にさらされた結果、極度の心身の疲労と情緒の枯渇をきたし、自己卑下、仕事嫌悪を伴う状態である。
 担任は常に個と集団とのバランスを取りながら、子どもの変化や保護者の要求を敏感にキャッチすることが求められる。
 また、担任と子ども、保護者の関係は少なくとも1年間は継続される。カウンセラーと違って、お互いに相手を変えることができないため、人間関係がこじれると身動きがとれなくなってしまうこともある。
2012
年に、現職の教師72人にストレス要因を尋ねたところ、
(1)
手に負えない子ども振り回される (35)
(2)
保護者との人間関係 (17)
(3)
職員間の共通理解や協力が得られずに孤立 (17)
(4)
同僚とのトラブル (14)
(5)
管理職とのあつれき (11)
のような結果がえられた。
教師の仕事は、
(1)
その行為の責任や評価が子どもや保護者から絶えず直接的に返ってくる。
(2)
教える相手が変われば、同じ態度や技術で対応しても同じ成果が得られるとは限らない。
(3)
ここまでやれば完成というゴールが見えないために、仕事を家まで持ち帰り、境界を越えて学校外の日常生活にまで入り込みやすい。
(4)
気になる子どものことが頭から離れず。また、突然、保護者から相談や苦情の電話がかかってきたりして、素の自分に返ってほっとする時間がもてなくなってしまうことも少なくない。
 教師は、子ども・保護者・教師間の人間関係に取り囲まれている。特に、子どもや保護者との人間関係が悪化した場合は、大きなストレスになる。
 教師がパソコンに向かう職員室は、心の居場所が少なくなり、教師どうしが本音で語り合い、愚痴をこぼし合う機会が失われつつある。
 教師相互が語り合い、支え合う雰囲気を意図的につくり出すことが必要となっている。
 がんばりすぎて限界に至る前に、素直に「しんどい」と言える温かい職員室の人間関係を築きたいものである。
 うまくいかないときに弱音を吐いたり相談することは恥ずかしいことではない。同僚性を高め、協働で仕事に向かう基盤づくりが必要になっている。
 困った問題があるときに相談できる人が職場内にいる。あるいは、教師間の人間関係が良好で、協力的に解決を図ろうとする雰囲気と体制が確立されていれば、困難な状況に取り組んでいくことができる。
(
新井 肇:1951年生まれ、埼玉県公立高校教師を経て、兵庫教育大学教授。カウンセリング心理学を基盤とした生徒指導実践の理論化、教師のストレスとメンタルサポート等を研究)

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手に負えない生徒に出会っても過度に落ち込まず、弱音を吐くことが、辞めたいと思う危機を乗り越える第一歩となる

 中学校で国語を教えるA教師は、16年目の女性教師です。どの学校でも熱心に取り組み教師という仕事に自信を感じていました。
 しかし、二年生の担任となり、はじめて手に負えない生徒と出会いました。
 他の生徒に暴言を吐いたり、暴力行為をすることもあり、学級全体が落ち着かなくなっていきました。
 何とかクラスのなかに溶け込ませようとして、あらゆる手を講じてみましたが、どれもうまくいかない。
 担任である自分が、一人の生徒を指導できずにいる状態を、悔しく、許せなく思いました。
 同時に、他の生徒にも嫌な思いをさせて、申し訳ないという思いで胸がいっぱいになりました。
 女性であるという、どうしようもできない部分も含めて、すべては自分の責任であると、自分を追いつめていきました。
 教室では、その生徒の言動に自分の感情が振り回され、常に張り詰めた緊張状態に置かれていました。
 職員室で、周りと和気あいあいとやっていくことが好きなA教師でしたが、学級がうまくいっていないことを正直に言えなかったため、同僚の教師との間に自分から垣根を作ってしまいました。
「大変なのは、わかっているはずなのに、誰も助けてくれない」と孤独感と不信感とが募っていきました。
 家でも学校のことが頭から離れなくなり、悶々とした日々を送っていました。
 食事もおいしく感じられず、食欲も落ち、眠りが浅くなったり、朝起きるのが辛くなったり、身体に変調も来すようになりました。
 しかし、放課後の掃除のときに、被害を被っていると思っていたクラスの女子生徒から
「先生、具合、悪くない。みんな心配しているよ」
と声をかけられ、ハッとしました。
 教師とはこうあるべきという自分の思い込みにだけとらわれて、生身の人間としての思いに正直に向き合ってこなかったのではないか、と気づかされました。私は
「もいいい。彼を何とかしようと思うのは、やめた」
「批判的に冷ややかに見ていると思ったクラスの生徒のなかにも、心配してくれている子もいるんだ」
「担任だけが必死で、性急に頑張るのではなくて、生徒たちと一緒に考えながらやっていこう」
「彼を何とかすることができなくても、周りの生徒たちをもっと大切にしよう」
と開き直ることができました。
 A教師は同僚の教師に「自分の手には、負えません」と宣言しました。
 その後は、少しは余裕をもって、当該の生徒と接することができるようになりました。
 余裕をもって接すると、その生徒の悪い面ばかりでなく、良いところが少しずつですが見えるようになってきました。
 その生徒の適切な行動に対して、自然にほめ言葉も出るようになり、ギクシャクした関係も徐々に改善の方向に向かっていきました。
 また、学年の教師の協力を得ながら、学級の立て直しも図ることができました。
 A教師が、この危機を乗り越えることができたポイントは
「自分が努力すれば何とかなる。自分だけで何とかできる」と過信していたところから、
「自分には、できないところもある。他の教師の助けが必要なときもある」
という考えに至ったところにある。
 教師が自分の思いとかけ離れた状況であっても、ありのままの現状をさらけ出すことは、自分自身のためだけでなく、ひいては子どものためでもあるのです。
 自分の限界を知り、難しい問題にはチームで、ときには、周りの子どもの力も借りながらかかわることです。
 問題を一人の教師が抱え込むのではなく、できるだけ多くの教師が組織的に関わることで、柔軟な子ども理解や、ていねいな対応も可能となります。
 教師も、おとなしい教師、怖い教師、お茶目な教師、しっかりとした教師、失敗するけど頑張る教師など、教師の世界も様々な個性の人間がいるほうが集団としての力を発揮することができます。
 誰かが「大変だ、しんどい」と声を出すことが、時には必要です。
 そうしないと、教師各自がバラバラになって、悩みを抱かえ込みながら孤立感を強めるだけの職員室になってしまいかねません。
 頑張り過ぎて、限界になる前に「しんどい」と言える温かい職員室の人間関係をつくることが、辞めたいと思うほどの危機を乗り越えるための第一歩となるのではないでしょうか。
(
新井 肇:1951年生まれ、埼玉県公立高校教師を経て、兵庫教育大学教授。カウンセリング心理学を基盤とした生徒指導実践の理論化、教師のストレスとメンタルサポート等を研究
)

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保護者が「学級崩壊では」と校長に訴え、保護者会で責めたてられ担任が体調くずした、どうすればよいか

 年度当初から騒がしい状態が収まらず、保護者が「学級崩壊では?」と校長に訴えました。
 解決策を話し合う保護者会が開かれ、保護者が担任を一方的に責め立てる場になってしまいました。
 それ以来、担任は「学校が怖い」と感じるようになり、体調を崩して休みがちとなりました。
 長年、精神科の医師として教職員を診療してきて、以前と大きく変わったと感じることは、教師と保護者の関係です。
 保護者が学校に対して意見を述べる力を持ってきたと同時に、一方的に権利を主張する保護者も増えていることを痛感します。
 担任が学級崩壊など、子どもとの関係で悩み、体調を崩して休職するケースは少なくありませんが、最終的に決定的な影響を与えるのは保護者です。
 担任が保護者から責め立てられると、管理職が休ませる方向を選ばざるを得ないことが多いわけです。
 私どもの調査でも、保護者対応のストレスが加わると、休職率が高まることがわかっています。
 復職も保護者の動向が重要です。保護者が応援している場合と、バッシングされている場合とでは、復職できる時期がまったく違ってきます。
 休職して病状が回復しても、学校が怖いと思うほど心が傷ついていては、復職する自信が持てません。
 保護者に要望したいのは「子どもの前で担任の悪口を言わない」ということです。
 批判力がまだ育っていない子どもたちがまねをすれば、担任に必要以上の心理的負担がかかってしまいます。子どもの成長にも良い影響は与えないでしょう。
 また、管理職が担任の意見を聞かずに一方的に保護者に頭をさげることも少なくありません。
 管理職は担任と保護者の双方の言い分を聞いて、保護者の「わがまま」であれば、毅然と対処すべきです。
 重要なことは、担任の挫折体験を癒せるのは同僚教職員だということです。
 同じような立場で共感し合えるのは、同じ教職員です。
 悩みを打ち明け合うことで、挫折体験が癒され、結果的には症状も和らぐことが期待できます。
 専門家である教職員からの意見であれば、納得できるでしょうし、先輩や同僚から評価されることは自信につながります。
 もし、学校で相談することができないのであれば、病院などでカウンセリングを受けることをお勧めします。
 学校でのサポートと病院を受診して悪循環を断ち切るという、二本立ての取り組みが有効でしょう。
 教師自身のメンタルヘルスがプラスに作用するには、
(1)
子どもたちとメリハリをつけて接する
 杓子定規に、ただ厳しいだけ、正論を通す、優しいだけではだめではないでしょうか。
 子どもたちとメリハリをつけて接することができる教師は、生徒指導がうまいと思います。
 子どもの気持ちをフィードバックしながら、その心情を理解するコミュニケーションをはかる。
「叱るときは叱る。ほめるときはほめる」といったことをうまく使い分けできる教師であってほしい。
(2)
子どもの話を聴くだけでもだめです。子どもを理解するには、同じ目線に立ちながらも、あくまで友だち風になることなく、指導するときは毅然とした態度をとる柔軟さが必要ではないかと思います。  
 こうした子どもへの接し方が、結果的には教師自身のメンタルヘルスにもプラスに作用するのではないでしょうか。
(
中島一憲:19562007年、1990年より東京都教職員互助会三楽病院勤務し部長、東京医科歯科大学教授を歴任した。精神科医師
)

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