カテゴリー「不登校」の記事

不登校の基本的な問題とは何か、不登校児と家族の生きざまとは

 不登校の基本的な問題は、外界(社会)に積極的に働きかけたり、環境に柔軟に適応したり、環境を変えていく子どもの自我が抑圧され衰弱する点にある。
 本来、能動的な活動はほとんどの子どもたちに備わっているのだが、この能力が消衰するのである。
 学校でよい評価を得ることが、子どもたちの最大の課題として押しつけられる現実がある。
 まじめに、親や学校の求めるものを先取りした子どもたちが、不登校へと陥っていく。
 おそらく、その子どもの生活史で、内的欲求や本音に基づいて能動的に外界に働きかけたときに、心に精神的な傷を受ける経験を蓄積していったのであろう。
 それは、子どもにとって、人への不信と猜疑心をつのらせていくものとなる。子どもの魂や本来の関心、感動や喜びを圧殺することになるからである。
 したがって不登校は子どもの立場からみれば、合理に従おうとする理性と、自分らしくありたいという魂が求めること、との激しい矛盾の過程である。
 多くの人々は、この合理に従い、再び登校できるようになることを治療と呼んだ。
 しかし私は、子どもたちの魂の再生に力を注いだ。
 その結果、不登校児であった子どもたちが、いきいきと活動するようになったとき、その親たちは「この子のおかげで私たちは本当の夫婦になれた。この子と共に本当の家族を生きられる」と必ず言う。
 子どもの不登校は、子どもにとっても、その家族にとっても痛ましいものだ。
 しかし、よくよく考えてみれば、その子にとって初めて家族と本音がぶつかり合い、本当の関係づくりのきっかけとなる。
 閉じこもり、時には死を思う。その過程に親たちが正面から向き合うとき、初めてその家族にとって、いきいきとした生活が始まる。
 当初は苦しみを共にし、そして後には、本当に明るくすがすがしい家族へと成長する。
 私に言わせれば、我が子の不登校と対峙し、これと格闘する過程は、その家族が真に生きることそのものだ。
 願わくば、健常と呼ばれる子を持つ家族も、不登校の子を持つ家族の生きざまを先取りして、共に死を覚悟して共生できる、真の家族へと成長していただきたい。
 心の底から安心し、信じることのできる家族があってはじめて、子どもはどこまでも自立への旅へと向かえるものなのだ。
(森下 一:1941年生まれ、精神科医。不登校児のためのフリースクール「京口スコラ」、生野学園高等学校(不登校児の全寮制中・高等学校)を開設。その活動と功績により吉川英治文化賞を受賞)

 

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いじめられても親に言わない理由とは、不登校の子どもはどう働きかければよいか

 いじめられていることを、子どもが親にも相談しないのはなぜでしょうか。
 さまざまな理由が考えられます。
1 いじめ加害者に「親に言ったら殺す」などと脅され、その恐怖心から言えずにいる場合があります。
2 親に対する信頼感がなく、いじめられていると言っても取り合ってくれないと感じている。
3 立派な親であるがゆえに言えない子どももいるのです。
(1)プライドが許さないからです。友だちにいじめられているのはみじめなことなので、かっこう悪くて親にも言えないのです。
(2)自分のことを誰よりも大事に思ってくれている親であるからこそ申しわけなくて言えないのです。
(3)家の外の世界は地獄だから、せめて家の中だけはいじめに関係しない本来の自分でいられるようにしたいがために言わないのです。
 不登校の子どもはどう働きかければよいのでしょうか
 不登校の子どもが電話も家庭訪問も嫌がっている場合どうすればよいでしょうか。
 できることはあります。一つは手紙を出してみることです。
 この方法は、子どもにとっては侵入され感じが少ない。
 手紙を読むも読まないも自由だからです。
 手紙はあれこれとたくさん書かないことです。
 例えば、美術展に行った時にはがきを買って「寒い日が続きますね。その後お元気ですか。先日、美術展に行ったらこの絵が気に入ったので絵はがきを送ります。風邪を引かないように気をつけてください。ではまた」のような簡潔な内容にしておきます。
 本人と直接に関わることが難しければ、保護者との関わりを密にするという方法もあります。
 保護者が安心感を取り戻し、心に余裕が生まれれば、子どもの心にも余裕ができ、家庭の中によい循環が生まれるからです。
 待つことが大事です。教師が心を動かしながら待つのです。
 相手を動かそうとするのではなく、自分の心を動かすのです。
 どんなことで苦しんでいるのかな、今の自分をどんなふうに感じているのかな、など。教師が自らの心を動かしながら教育をおこなうことが大事なのです。
(竹内健児 1962年生まれ、奈良産業大学、京都光華女子大学、徳島大学准教授を経て、立命館大学大学院人間科学研究科教授。臨床心理士、公認心理師)

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不登校の子どもと親は、どのように指導すればよいのでしょうか

 金澤純三さんは元開善塾教育相談研究所長で、不登校の実践的な指導にかけては、わが国における第一人者といわれ、長期にわたる不登校も、わずか数週間で改善させる技をもつ。
 不登校の子どもも学校へ行きたいと思っているので、登校の支援をしてあげる必要がある。不登校の子どもを減らすには母親の健全化が欠かせない。
 金澤さんは講演で、興味深い話を次のように披露されました。
 私のところに来る子どもは,長期間学校を休んでいる場合が多い。
 母親が学校に相談すると,「温かく見守りましょう」とか「様子を見ましょう」と言われ、どんどん月日が経ち,どうしようもなくなる。
「様子を見る」という実態のない言葉は使わない方がいいだろう。「様子を見に行きましょうか」と言って家庭訪問をするなどまず行動をすることが必要である。
 不登校になる子どもは,長期の休み明けから学校へ行かなくなるケースが多い。なるべく早く学期内に戻すのが大切である。
 学校を休めば自分は悪いことをしたと思いこみ自己評価が下がる。この自己評価をどのように上げていくかが重要である。
「休んでもよい」とか「休んでもこうすればよい」と子どもに伝えるようにすればよい。ただ例外もあるが,休めばエネルギーが溜まるということはない。
 休めばエネルギーが溜まるなら,長期の休み明けに休むことはないからである。
 今の子どもたちは基本的に大変神経質である。小さいほうを大切にして,大きいほうを見過ごしている。
 また,今の子どもに特有なのは,他人の痛みに鈍感,自分の痛みには敏感で,バランスが取れていない。バランスが取れていない人は,他人の痛みがわからないのでいじめなどで相手を追い込んでしまう。
 先生たちも頭髪の指導にあるように,細かなものにこだわっている。
 1年近く登校拒否をしていて,久しぶりに学校に来た子どもに,髪の毛が伸びているから切りなさいというような指導をいきなりすると,こんなところには来られないと普通は思う。
 受け入れる先生は,不登校の子どもに対して家庭よりも温かくて居やすいようにしなければならない。みんなが来やすい学校にすることがまず大切である。
 頭髪がどうとか細かいことにこだわらない。指導力のない先生は,型を求める。
 弱い子どもや敏感な子どもがいるのだから,だれもが来られるように,先生は子どものそばにいてあげなくてはいけないのに,用事があるからといって離れてしまう。
 母親が,子どもが動かなくなり困ったと相談に来たときには急であってもきちんとやさしく応対してほしいものである。
 困っている子どもは,自分が困っているとは言えない場合が多いので,先生が家庭訪問をするということが大切である。
 家庭を見ると子どもの問題も見えてくる。神経質な家はきちんとしている。庭も整備され,玄関マットもきれいになっていると,子どもがずれたときに,何か騒動があるだろうなあと予想することができる。
 そういう家には,私たちは半ズボン,ランニングで行くなど失礼な格好で訪問するときがある。
 子どもは変な人だなと思うかもしれないが,警戒はしない。
 これは,スキを作り,打ち込み(攻め)させるねらいがある。経験のない人や頭の固い人は,真面目に行くのでうまくいかない。
 教育で歪んでくる子どもは母親に神経質な人が多く,ある一部分をよくしようとして全体をだめにしている場合が多い。まず母親と仲良くなるようにする。
 カウンセリングにしても教育にしても,必要なのは相手に好きになってもらわなければならない。相手を敬うことにより,好かれるようになる。
 家庭訪問の具体例として,お茶が出たらそのお茶を褒めたりすると,まず好意的に思ってくれる。
 お茶を飲んで今日は家の場所がわかったから帰ると言うと,大抵は呼び止めて子どもに会ってくれと言われる。
 このように,母親がまず先生を受け入れてくれなければ子どもは受け入れてくれない。
 次に子どもの部屋に通されたら,子どもの宝物を探し,それについての質問をし,褒める。まず本人以外のものを話題にする。
 えてして先生は,聞きたいことをいきなり聞こうとするが,子どもが言いたいことを聞くということが大切である。子どもが大切にしているものに先生が興味を示す。
 子どもは自分の大切なものに興味を持ってもらうと,自分に興味を持ってくれる,自分を大切に思ってくれていると思う。
 それによって安心感を得ているのである。先生たちはそういった子どもを見る目,気づく心を持ってほしい。
 帰るときは,子どもに玄関まで送ってと言う。最後に子どもに会って別れることが大切である。
 母親が出ると子どもと切れてしまうから,母親には出ないようお願いしておく。
 行動療法とは,再学習させることである。
 要するに「学校を休むと楽だ」と考えている子どもに,「学校へ行くと楽だ」というように考え方,感じ方を変えるのが私の言う行動療法である。
 心が変われば行動が変わると思っている人がいるが,行動が変わったら心が変わるという考え方である。行きたくなくても行かせると学校に行きやすくなる。
 今の子どもたちに共通している悩みとして不眠がある。私のところは8,9割の子どもが寝られないと言うが,実際には寝ている。
 そういう子たちは眠れないと感じているということを理解しなければならない。今の子どもたちは,不安とか不満とかいうのを「何々感」という形で表すが,これからの生徒指導はそれにどう付き合っていくかということである。
 本当は寝ていると言ったら子どもは自分のことをわかってくれないと思って関係が切れてしまう。そのときに,躁鬱タイプと神経質タイプによって言い方を変える。
 例えば,11 時に寝るときに,躁鬱タイプの子どもには 11 時「少し前」に足を温めなさいと言い,神経質タイプには 11 時「2分前」に足を温めなさいと言う。
 生徒指導では,神経質な子どもには厳密にやり,躁鬱タイプの子どもには曖昧にやるというのが大原則である。
 言い方は違っても,「足をお湯で温めなさい」と言った次の日に「どうだった?」と聞く。
 お湯で温めなさいとか塩を入れなさいといろいろ方法を変えて「どうだった?」と共感的に聞くことにより,子どもはつながりができたと感じ,自分を見てくれているという安心感が,不眠感を消してくれる。
 共感的に理解をするということが大切である。
 ところが下手な先生は欠点ばかりを指摘する。欠点をなくせば長所だけが残るという数学的な考えで,欠点だけとろうという発想でいくと子どもは神経症,脅迫症状を起こしてくる。
 生徒指導上の共感的理解とは,「次の一手を早く打てるか」ということである。
 この子どもには今どんなことが必要なのか,言葉や態度などから先生がいかに的確に対応できるかが子どもの心地よさと関係してくるので,共感的理解を中心にやっていただきたい。
 子どもを学校に連れて行く「登校訓練」をやるが,これは学校に行っても危険でない,安全であるということを体験的に理解することである。
 人に見つからないように行こうと言って連れて行くと,意外と行けるようになる。
 実際に行ってみて嫌なことがないと,体験的に理解したということになる。
 子どものカウンセリングで必要なのは「癒す」ことではなくて,「鍛える」ことである。
 不登校の子どもの家に行くと,畳なのにベッドで,きれいな絨毯が引いてある。
 手をかけたら子どもは良くなると思うことが,子どもをだめにする。
 子どもを癒す必要はない,若いうちは鍛えなければならない。弱い子を強くしなければならない。ストレスのない社会はないのだから。
 今の子どもに欠けているのは「耐性」である。耐性を獲得するには失敗経験をすることである。「我慢」=「鍛える」ということかもしれない。
 だからといって失敗しても大丈夫だよと言うと身構えてしまう。ところが知らず知らずのうちに失敗して,それを乗り越えて目標達成すると耐性ができる。
 例えば,マッチで火をつけるのを 19 回失敗して 20 回目に成功させるようなスモールステップで成功体験をしていく。
 これを「単位操作」と言うが,この子どもに欠けているものを本人が意識しないように体験させていくのである。
 次に「 けんちゃん(仮名,中学2年生男子)」の実践について述べます。
 2年間学校に行ってないと母親から電話相談が2月にあった。
 家に行き,部屋に入ると,雨戸が閉まりうす暗く,子どもはコタツに体を半分入れて寝ていた。
 母親も一緒に聞きたいと言ったが,うまくいっていない人と一緒に話をしてもうまくはいかないので断った。
 彼はミイラのようで,目だけを出して動かなかったが逃げずにいるので,拒絶していないと判断し、話をした。
 帰り際に「もう少し楽にしなよ」と言ったら,彼は体を固くした。
 これは私を拒否し抵抗するための反応であるので,逆に「体を固くしてみな」と言うと,体を固くしてこれ以上できなくなったとき,「もういいよ」と言ったら息を吐いて体を緩めた。
「たいへんだったね」と言うと,座り直し,「はい」と答えた。すると,急に母親が「けんちゃん今何されたの」と言って入ってきた。
 子どもが少し変化すると親はおおげさに反応するので,子どもは変化を親の前で表せない。
 しゃべらない子や,昼夜逆転の始発点も親がしょっちゅううるさく言う場合が多い。
「今子どもと話をしているから口を挟まないでください」と言っても,子どもの声を久しぶりに聞いたので言うことを聞かない。
 しかたないので彼に自分の部屋に行っていてと言うと,「はい」と言って立ち上がり部屋を出て行った。
 母親も後を追おうとするので待ってと言っても聞かず行ってしまった。
 母親はにこにこして戻ってきて「けんちゃんが一人で暗くて寂しくなるといけないから電気とテレビをつけてきました」と言った。
 ルソーが『エミール』の中で,子どもを不幸にするには,子どもが望むことを親が全部やってしまえばいいといっている。これが神経質タイプの不登校の主流である。
 いかに親を安定させるかが課題といえる。
 彼に「学校で会いたい人はいないか」と聞くと,養護教諭の先生に会いたいと答えた。
 なぜかと聞くと,クラス発表の日に学校に行き自分の名前があったので安心したのだが,そのときに神経を遣って疲れて倒れた。
 小学校時代の友達6人が保健室へ連れて行き寝かせてくれ,まわりで騒いでいたところに先生が来た。騒いでいたことを怒られるかと思ったら,養護の先生は自分がいなかったことを詫び,6人にお礼を言ったので,彼はそのときのお礼を言いたいと思っていた。
 そこで,先生が今学校にいるか確認しようと話し「だれにも会わないで学校まで行ける道を知っているか」と聞いた。
 たいていの子どもは,だれかと会うのを避けて学校に行けなくなる。休んでいると二次障害が出て,休んだことで自分は悪い奴だ,ダメなんだと思っているからみんなに会えない。だから,会わなければ行ける場合が多い。
 だが先生が「だれにも会わなければ行けるだろ」と子どもが恥ずかしいと思うことを直接言ってしまうと,結局は行かない。
 自分が分析したことをその子どもに言わないでいただきたい。自分が分析されたというのは,子どもにとってはつらいことである。
 翌日の午後保健室へ行き,こんにちはと言って入ると,彼に描いてもらっていた似顔絵のとおりの先生がいた。
 先生はすぐに立ち上がり,笑顔で迎えてくれ,担任の先生を呼んでくれた。担任の先生も喜び,出席を取ってもよいですかと聞かれたのでお願いしますと言った。
 彼は相当緊張しているので,先生にはすぐに出直すと言って帰った。
 帰るときに,ここにタンポポがあるとか水がわいているとか言いながら帰ると,そのうち「あそこにすすきがまだ生えている」と子どもの方から言ってくるほど落ち着いてきた。
「君はいい目してるね」と,どうでもよいことを褒める。
 彼と家に帰り,私だけまたすぐ学校に行き,先生に「出席だけ取ったらどうでもいいような話をしてすぐ帰らせてください。まず学校は,安全で安心なところだと思わせてください」と依頼した。
 少しずつ慣らせていき,人がいない部屋などに行かせてみる中で,教室に入る準備のために,どの辺の席がいいか聞いていく。
 保健室登校は1週間くらいがよく,その間にクラスの生徒には,昨日まで来ていた生徒のように振る舞うように話しておく。
 ある時,先生にわざと忘れ物をしてもらい,誰かに取りに来るようにしてもらう。生徒はだれでもよい。その生徒には,おはようと言ってもらい,あとは何も言わないようにしてもらう。
 翌日,計画通り,先生が万年筆を忘れ,それを取りに子どもががらりと開けて入ってきて,おはようと言って帰っていた。
 彼は緊張していたが,「よく頑張ったな,だんだん会えるようになるから」と言うと,彼も「はい」と返事をした。
 それから,教室に入るまでの不安解消表を作る。教室に入るまで,今日は職員室の前,今日は教室が見えるところ,今日は教室を外から覗くというようにイメージで練習させる。イメージでできたことは動きやすくなる。
 しかし,実際にはイメージより手前で止まる。そういうとき8秒間息をして力を入れ,8秒間抜く,これを繰り返していくと教室まで行けるようになる。
 少しずつスモールステップでやる。本人がもう一度やり直したいという気持ちにそってやるとうまくいく。
 テーブルカウンセリングのために,ご飯を食べさせてくださいと頼んだとき初めて祖母が出てきた。祖母は彼の魚を取り食べさせた。
 私はやめてくださいと再三言ったが,やめなかったのできつく叱った。なぜかと言うと,本来言うべき父親がいたからである。
 祖母は,立ち去っていくときに母親に「あなたが食べさせてやって」と言った。
 家族全体が病んでいたから彼は問題行動を起こして,まともな家庭にしようとしたのではないかと思う。
 子どもが3,4年休んでもあまり関係ない。休んでもあとでやるぞと思えば,必ずやれる。
 もし身近に「休んでしまったが,僕の人生間に合わないのではないか」と思っている子どもがいたら,
「やる気になって死ぬ思いでやればできるんだ,両親も死ぬ思いで働いているんだ」と言えば,安心する。
 指導をするときはなるべくユーモアをもってやってほしい。厳しくて温かいというのがいい。
 やさしくて冷たいというのは,自殺する子どもの家庭に多い。
 よく子どもと遊ぶこともよいが,子どもの世界に入り込まない。特に母親にこれを注意していただきたい。
(金澤純三:行動療法的アプローチを主として神経症的不登校の援助指導法の研究・開発に取り組む。日本の不登校相談の草分け。不登校にかかわる実践的指のわが国における第一人者といわれる。文部科学省の委員を歴任。元開善塾教育相談研究所長)

 

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不登校の子どもたちを対象とした取り組みにはどのようなものがあるか

 兵庫県生野学園高校は、不登校の子どもたちを対象とした、全寮制の高等学校(中学校も併設)です。
 不登校の子どもたちは人への信頼や自信を失い、不安や焦燥感あるいは無気力感の中で苦悩しています。
 こうした子どもたちにとってもっとも必要なことは信頼できる人と出会い、ゆったりと安心できる環境の中で、本来の自分らしさを取り戻していくことです。
 安心できる居場所を見つけ、信頼と自信を取り戻した子どもたちは驚くほど生き生きと活動するようになります。
 こうした子どもたちの人間的な成長は人とのかかわりの中からしか生まれません。
 人とのかかわりを避け、単に知識や資格を取得するだけでは問題の本質的解決にはならず、先送りするだけです。
 生野学園はこうした考えから全寮制としています。
 学習だけでなく生活をともにする中で子ども同士、子どもとスタッフの間に深い関係を築き、人への信頼感を育て、社会性を身に付けていくことが出来るのだと考えています。
 不登校の子供たちの親が変わっていったきっかけの多くが、自分の子どもとの対話ではなく、ほかの不登校の子どもとの対話であった。
 なぜそのようになるのかと言いますと、自分の子どもとは、最初からそれほど深刻な話はできません。
 しかし、他人の子どもだと、ある程度客観的に冷静に話をできますし、余裕を持って話を聞くこともできます。
 そのため、親の生き方の誤りという核心の部分について、少しずつ気づいていくことができるわけです。
 親の会(2ヶ月に一回)で、徹夜で話をしていくうち、親たちは、少しずつ自分の子どもがどういうことを不安に感じ、学校にいけなくなったかということに気づきはじめます。
 子どもの心に近づきはじめるわけです。
 親が気がついていく姿に、子どもも反応していくのです。
 そのようにして、親子のあいだで「心のキャッチボール」が始まり、「魂の出会い直し」が起きはじめることにより、子どもたちはみごとに立ち直っていくのです。
 親がその生き方を変えることで、子どもが変わっていったのです。
 いまの子どもの問題の大半は、親の責任です。
 親の問題が、子どもにとっていかに大きいかということです。
 神経症で不登校の子どもは、実は完璧主義です。
「ねばならない」ということに縛られています。
 文化祭の準備でリーダーが「完璧にできなくていいから、とにかくやってみよう」と言って、バンド演奏などを成功させました。
 その小さな成功体験が意欲にかわっていったのです。これはひとつのヒントになると思っています。
(高橋史朗:1950年兵庫県生まれ、思想家、教育学者。麗澤大学特任教授。親学推進協会理事長)

 

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親から不登校の相談があったときどのように対応しているか

 親から不登校の相談があったとき、つぎのように対応している。
 原因がどこにあろうが子どもが学校へ行かないということは、多くの親にとってはつらいことである。親として自信をなくし日常の会話さえも神経を張り巡らしておられ、それがまた子どもの神経を苛立たせるという悪循環もあります。
 不登校の親から相談があったときは、私は
「学校のことは、子どもさんから話されない限り話題にしないでください。それ以外のことは今まで通り、叱ることは叱って、ほめることはほめてください」
「学校のことを子どもさんから話され、返事のいるときは、お母さんはこう思うと、思っていることを伝えてください。わからないことはわからないと」
「返事のいらないことであれば、否定せずに聞いてください」
「あせらずに一緒にどうしたらよいか考えていきましょう」
と話します。
 親はすぐに結果が出なくても親の気持ちに寄り添って、話を聞いてくれる人を求めておられるのではないか?
 話の中で一つでもいいから、よい対応がないか見つけようと耳をこらし「お母さん、その対応はよいと思います。すごい!」と共に喜べる感覚が大事だと思う。
 親には「あせらないで」と言いながら、教師が「よい結果」と思えるものを出そうということにばかり気持ちが傾いたとき、親と同じペースで一緒に対応できずに、ときには親を「責めている」ように映ってしまうこともあるだろう。
 自分のこととして取り込まず、冷静な判断と共感する気持ちを併せ持つことの難しさをいつも感じている。
(
佐藤友子:元京都府公立高校養護教諭)

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親から不登校の相談があったときどのように対応しているか

 

 親から不登校の相談があったときどのように対応している。
 原因がどこにあろうが子どもが学校へ行かないということは、多くの親にとってはつらいことである。親として自信をなくし日常の会話さえも神経を張り巡らしておられ、それがまた子どもの神経を苛立たせるという悪循環もあります。
 不登校の親から相談があったときは、私は
「学校のことは、子どもさんから話されない限り話題にしないでください。それ以外のことは今まで通り、叱ることは叱って、ほめることはほめてください」

 「学校のことを子どもさんから話され、返事のいるときは、お母さんはこう思うと、思っていることを伝えてください。わからないことはわからないと」
「返事のいらないことであれば、否定せずに聞いてください」
「あせらずに一緒にどうしたらよいか考えていきましょう」
と話します。
 親はすぐに結果が出なくても親の気持ちに寄り添って、話を聞いてくれる人を求めておられるのではないか?
 話の中で一つでもいいから、よい対応がないか見つけようと耳をこらし「お母さん、その対応はよいと思います。すごい!」と共に喜べる感覚が大事だと思う。
 親には「あせらないで」と言いながら、教師が「よい結果」と思えるものを出そうということにばかり気持ちが傾いたとき、親と同じペースで一緒に対応できずに、ときには親を「責めている」ように映ってしまうこともあるだろう。
 自分のこととして取り込まず、冷静な判断と共感する気持ちを併せ持つことの難しさをいつも感じている。
(
佐藤友子:元京都府公立高校養護教諭)

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小学生の不登校を100%なくすには、どのようにすればよいか

 不登校の子どもたちの本心は「学校に行きたい、友だちとも遊びたい。でも行けない」です。だから不登校の子どもは学校に行けるようにしてあげられるのです。
 不登校が起きる原因は100%家庭内にあります。私たちは「親が変われば子が変わる」の言い伝えどおりに「子育てで親を変えることができる」ことで、不登校を克服することが100%可能だということです。
 私たちが「親の変わり方」を教え、親が正しい子育てができてこそ、完全に克服できるのです。継続登校ができるのです。
 私はお母さんに、登校指導をするときに、次の理念を守っていただいています。
(1)
親が「感謝、気配り、心配り、思いやり」を持ち、子どもに背中で教える。
(2)
人のせいにしない。 
(3)
わが子は、いい子だと考える。
(4)
過去のことは言わない。
(5)
誰も責めない。
(6)
不平不満を言わない、思わない。
これだけを親も子も守りますと、学校生活や社会生活が円満にすごせるのです。
 親はわが子が不登校になるとは夢にも思わなかったと言います。子どもは性格的に、何か自信のないもの、不安なものがあったら、一時、学校に行きたくなくなったり、お腹が痛くなったりします。子どもはほんの些細なことで、行きづらくなり、行きたくなくなります。
 親はあわてて、原因を聞きだそうとしたり、何とかしようと、学校の先生にすぐ相談したり、相談所に行きます。「頭が痛い」など、身体症状を訴えるので、医者に診てもらっても異常なしです。
 指導機関などで「やさしくしてあげなさい」「甘えさせてあげてください」「待ちましょう」などの指導を受けた母親が、そのとおりにしますと、すぐにわがままが出てきます。
 そのうち、階段を転げ落ちるように、昼夜が逆転したり、暴力や暴言を吐いたり手がつけられないような振る舞いをするようになったりします。いつまでも出口がありません。
 こんなとき、専門のカウンセラーをつけて「行くきっかけ」をつくり、解決をはかってあげないかぎり、小学生のような小さな子が目の前の問題を整理して、自分から行くということは、とうてい無理なことです。
 私は590人の不登校の子どもを学校に戻しました。子どもは一人ひとり異なります。その子をあらゆる角度から見て対策を立てなければならないのです。
 不登校を起こす子どもは、性格と関連があります。性格の改善に取り組んでいくことが大事です。ほとんどの親は性格に原因があることに気づいていないのです。
 休みだすと、子どもは「友だちがどうの、先生がどうの」と言いわけに終始します。これではいつまでたっても解決しないのはあたりまえです。
 不登校を起こす子の典型的な性格は「神経質で気にしすぎる」というものです。そんな子に育てたのも親です。このような性格の子が、交友関係、学校生活、家庭で何かに悩み、解決できずにいるため、頭が痛い、熱が出る、だるい、朝、起きられない、家を出られなくなったりして不登校になることが多いのです。
 私たちが、不登校の子どもを100%登校に導く方法を述べます。
 私たち(カウンセラー)と大学生、お母さんの努力、担任の先生、友だちが関わります。
 まず、大学生が大きな役割を担います。大学生は子どもたちと年齢が近い。子どもにとってお兄さん、お姉さん役になります。心を開いて遊んでくれると信頼がめばえます。子どもと接する大学生から、子どもの性格、今何を考えているのか、学校に対する気持ちはどうかが報告されます。
 報告を聞いて、母親はわが子の心の中がよく見えてくるのです。私は、次々と登校に向けての指示を出していきます。わがままな子どもがおおいので、言動に問題がある場合は「こんなときは、こうするんだよ」と、大学生やカウンセラーが教えます。
 性格に問題がある場合は、私が親に子育て方法を変えるよう、的確に教えます。不登校になる子の親は、子どもが自分でするのを待ち切れず、先さきに「早くご飯を食べなさい」などの言葉をかけることが多い。これでは「自立心と協調性」が育たない。
 不登校をなおすための親が守るべきことは、
 命令・指示はしない。先さきに言わない。子どもの機嫌を取らない。聞こうとせよ。「子どもが、どうする」ではなしに「親がどうする」を基本とする。「失敗は成功のもと」と良いほうに考えていく。不平不満を言わない、などたくさんあります。
 子どもの性格を親が変えておかないと、継続して登校ができないからです。みんなと交わって学校生活が送れるよう、子どもに「自立心と協調性」をつける対応を学んでもらいます。
 大学生が、いろんなことを子どもに聞き出しても、子どもが心を開いているので何でも言ってくれます。子どもが登校の意思を見せてくると、登校に向けて大学生やカウンセラーと話し合います。
 子どもが学校で一日過ごす予定を、子どもの知っている範囲で組みます。
 例えば、教室の席、下駄箱、ロッカー、給食当番、日直の仕事・順番、学級の係、体育の並ぶ順番、掃除の班・場所、必要なもちものなど。
 しかし、ここから先は担任でないとわかりません。母親と大学生やカウンセラーと学校を訪問して、担任に準備や持ちもの、教室の様子を教えていただきます。
 担任との「心の打ち解け」が重要です。そこで担任に家庭訪問してもらいます。子どもは大学生やカウンセラーもいるので安心して会えます。
 登校日は木曜日か金曜日にします。疲れないためです。学校は一人で過ごせる場所ではありません。友だちが必要です。登校前に家に友だちに来てもらい、詳しく学校の様子を聞いたりします。
 長く学校に行ってなかった小学生には、登校前に学校を見学しておくことが大切です。夕方誰もいない時間に、大学生と一緒に行って担任に説明してもらいます。
 登校日は、大学生や友だちと一緒に学校に行きます。一度登校すると小学校は楽しいので意外と継続登校がうまくいきます。
 数日間、大学生は朝、起こすのを続けます。母親では起きない子が多く、行きづらい表情をみせることがあるからです。登校を確認し、夕方、宿題や明日の準備ができるのを確認します。
 私は二か月くらい継続登校を見守り、問題のないようになるまで指導しています。
(
吉岡康雄:1940年大阪府生まれ、体育指導員、青少年指導員、親子問題研究所主宰を経て、登校拒否サポート協会設立、親の学校開校)

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不登校の対応と、ならないようにするにはどうすればよいか

 何も兆候がなく不登校になったり、非行や犯罪に走ったりすることはありえないことです。子どもの小さな変化を見逃さないで、早い対処をすれば、子どもを立ち直らせることは親ならできると私は確信しています。
 元来、人間として基本的に持っていなければならないものは、しつけによって身につけるものです。例えば、公共の場では大声を出さない、目上の人に対する態度や言葉づかい、あいさつであったりします。そうしたしつけを身につけずに学校に入学していくから、授業中に席を立ったり、教師に反抗したり、様々な問題を生んでしまうのです。
 私は「あたりまえのことが、あたりまえにできる」ようにと考えて教育しています。あたりまえのことが身につけば、ふつうに生活していくことができるのです。問題を解決するにはこの基本が一番大事です。
 ふだんから子どもの小さな変化に大きな関心を持ってあげなければなりません。当然、兆候があるのに、単に問題に気づいていなかったか、問題から目をそむけてきただけです。
 だから一度や二度学校に行かないぐらいでは、不登校になるとは思っていない親がほとんどです。後になって、不登校になってしまうことは普通に起こりえることなのです。問題は小さな芽のうちに刈り取ることが重要で、兆候を見逃さないようにしようという姿勢が大事です。
 不登校になる前に「学校に行きたくない」と言ったり、朝起きられなくなったり、表情が沈んでいたりするものです。毎日の子どもの表情や会話から変化を読み取る努力をしなければいけません。私は毎日の生活を通して「子どもは何を考えているのか?」「今日は顔色が良くないな?」「なぜ不機嫌なのかな?」と、そんなことばかり考えていますから、大体のことは把握できます。
 だから私にできて親にできないはずはありません。一番子どものことを気にかけているのは親に決まっているからです。子どもの変化に気づくようになったら、どう対処するかを考えるのは当然です。この対処を間違えて問題を大きくするケースが本当に多いのです。
 「学校に行きたくない」と子どもが言えば、一度や二度ぐらいならと、休むことを許してしまう親が多い。行きたくない子を行かせようとすれば反抗するからと逃げてしまったり、いじめがあるのなら学校に行かせなければ問題は起こらないと考える。
 しかし、実際には学校を休ませたところで何も問題は解決しません。それは原因が自分の子ども自身にあることが多いからです。子どもは学校に行かなくていいんだと都合よく考えしまいます。いったん楽を覚えてしまった子どもを学校に行かせようとすることはとても難しくなってしまいます。
 「学校に行きたくない」と聞いたら、真剣に子どもと話し、原因をはっきりさせることです。「不登校になんかなるわけがない」という楽観的な考えは捨てることです。
 子どもとただ話をすればいいというわけではありません。私が見てきた親に多いのは「学校に行きなさい」です。これでは、あまりにも表面的です。子どもの意見は聞き入れられず、強制ばかりする親だと、子どもから敬遠され、悪い方向に行くこともあります。
 変化に気づいたら、とにかく声をかけてあげる。そうすれば必ず反応がでます。親からまずアクションを起こすことです。子どもからは待っていても期待できません。
 ひきこもりの子どもというのは家族に対して不満を持っていることが多い。なぜ自分の気持ちが分かってくれないのだという不満です。「何のために勉強するのか?」「何のために朝起きるのか?」そういったものがないからひきこもっているのです。
 表面的なものだけを見て注意するのは本人とってこれ以上つらいことはない。「何のために」を作ってあげるために、希望のある話をしてあげ、いろいろなものを見せてあげることです。親が自分の経験で楽しかったことや社会の中に出て興味を持ったことなどを話して、雑談でもいいから本人の話を聞いてあげる。何に興味を持っているのか、まず聞き出すことが最初で、それがわかったらどんどん興味のある話をしてあげます。
 「何のために」ができれば、そうなるためにどうすればいいのか教えてあげれば、子どもは話を聞くようになるのです。子どもはみんな、親だけは自分の味方であってほしいと思いっています。
 まず一番大事なことは「何のために」という希望や目標を作ってあげ、やる気にさせてあげることなのです。それがないうちはいくら注意なんかしてもムダだと思っておいたほうがいいかもしれません。「何のために」というところに注目して、愛情を注いであげれば子どもは必ず親のところに戻ってきますよ。
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伴 茂樹:心理カウンセラー。不登校、引きこもり、家庭内暴力などを解決するために、全国から青少年を預かり、私塾を40年以上営む。教育の中にゴルフを取り入れるというユニークな方法で、立ち直らせた子どもは1000人以上という実績を持つ。青少年育成クラブで子供たちの教育指導を行っている。講演、TV出演多数)

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子どものしつけに悩む親が多い、しつけをするときに親が大事にすべき考え方とは 

 不登校に至る原因の多くが親子関係、特に母子関係に根ざしています。では、その母親にすべて責任があるのでしょうか。また、教師の間でよく家庭の教育力が低下してきたと言われますが、それも本当なのでしょうか。
 私は違うと思います。どの家庭も、どの母親も子どものためを思って一生懸命になっている、よい家庭であり、よい母親なのです。しかし、何か親と子どもの間にボタンの掛け違えがあるように思います。歯車がどこかでかみ合っていない、そんな状況なのです。親子関係を再構築することが必要だと私は思います。親たちのために、何か役立つことはないかといつも私は考えていました。
 このごろ、わが子は何を考えているのかわからず心配だ。問題を起こしたらどうしよう。教師だった私は、こういった多くの親の悩みに接してきました。子どもの「しつけ」をどう考えておこなえばよいか、悩み不安を持つ親はたくさんいます。子育ては、子どもに対する厳しさ、優しさ、甘さ、辛さ、どれもさじ加減が大事だと思います。
 
「しつけ」をしようとするときに、大事にしなければならないと思う考え方を私は下記のようにまとめました。つぎの中から、子どもを「しつけ」育てるヒントになるようなものがあれば、これ以上の幸せはありません。
(1)
優しさをもたせる
 自分を取り巻くすべてのものや人に優しさをもつことは、人間として生きるための一番大切なことです。家族内で助け合う姿を見せましょう。家族が「ありがとう」「ごめんなさい」をお互いに言いましょう。
 食事をできだけ家族で一緒に食べ「いただきます」「ごちそうさま」と感謝の心をもち、楽しく話をしながらとる食事は子どもの体も心も成長させます。
 夫婦仲良しは子どもにとっても快いもの。「お父さんのこんなところが好きなの」と言う母を子どもは大好きになります。親はきょうだいどの子も抱きしめましょう。親の愛情を受ければ今度はその愛情を周りに分け与えることができるようになります。
(2)
強さをもたせる
 行動に移す強さが必要です。母親のほめ言葉は子どもとって何よりのごほうびです。ほめ言葉ほど、子どもをやる気にさせ、つらいことを乗り越える力をもたらすものはありません。
(3)
社会性をもたせる
 人間は一人では生きられない。他者と協調性を持つことが求められます。社会性が一番育つのは遊びです。子どもは友だちとのふれ合いを通してたくさんのことを学んでいきます。
 あいさつや笑顔は何物にもまさる社交のツールです。親が使っていれば子どもも自然に交わせるようになるものです。
 子どもは家庭や学校などで認められると安心感が得られて、子どもの情緒を安定させ能力を伸ばします。
 他人を思いやり、自分がされてうれしかったことを人にしてみましょう。人は仕事など常に時間とともに行動しています。寝る前に明日の持ち物を準備しておくなど、何かを始めるときは準備が大切です。時間を大切にすることは、人生を生き生きとさせることになります。
 言葉はその人を表します。子どもに使ってほしいと思う言葉を母親がまず使いましょう。悪口をやめ、敬語を使いましょう。
(4)
意志をもたせる
 子どもには安心できるところが必要です。失敗したときは母親の胸に帰ればいい。そういう安心感があると、積極性が身についていきます。
 子どもは本来、すごいエネルギーを持っています。踏みだすことができないのは、慎重な性格なだけです。心が強ければ、強い意志をもたせます。
(5)
信じ合える心をもたせる
 人を動かす力は誠実な態度です。人から信頼されるには、人を信じて思いやる態度が必要です。友人こそ人生に最高の宝物です。よほど危険だと思われるとき以外は、どんな友だちでもわが子の成長のためだと思って見守りましょう。
(6)
責任を持たせる
 人に迷惑や気分を悪くさせるかもしれないときは「これはだめ」と厳しく禁止しましょう。お金を大切にし、貸し借りをさせないようにしましょう。約束は守る。自分で考え判断し行動し責任を持つ力をつけさせましょう。
(7)
目標をもたせる
 夢をもつことは生きる勇気になります。目標はすべての行動の引き金であり、続けるエネルギーになります。思い通りにいかなくても耐えていけるに違いありません。
 遊びで「勝ってもいばらない、負けてもふてくされない」を学びましょう。
(8)
知恵をもたせる
 親の価値観はしつけと同じで子どもに押しつけてもよい。親は子どもの前にそそり立つ価値観の壁になってほしいと思います。それに沿って歩いていくか否かはその子どもによります。
 できるだけ本物の芸術に触れさせて、子どもに感動する機会を与えてください。
(9)
感謝の心をもたせる
 感謝の心をもっている人は、楽しんで生きています。「みんなのおかげ」と思えば「この喜びをみんなで分かち合おう」と思うものなのです。
 たくさんの人たちによって支えられて生きていることに気づき感謝する気持ちがあれば、何か自分でできることで恩返しがしたいと思うようになります。
(10)
命を尊ぶ
 「お母さんとお父さんのところに生まれてきてくれて、ありがとう」と、親に言われると、生まれてきたことに喜びを感じます。自分を大事しようと思う感情がうまれ、よりよく生きようとします。
(
水田 均:1962年徳島市生まれ、公立学校教師、教育委員会指導主事を経て、心理カウンセラー。不登校・保護者サポート・心的外傷成人の心理療法を行っている)

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子どもを日ごろから把握し、いじめや不登校にならないようにするにはどうすればよいか

 子どもは日々変容していて、友だちとの関わり方も変わっていく。この子はこういう子だと思い込みがちである。
 それをなくすために、担任として子どもを観る視点を明確にして記録を取る。例えば、授業・休憩・給食・清掃時等で担任が観て「オヤャ」「ナルホド」と思ったこと、行動に変化が生じた具体的な場面や例、個人とまわりの人間関係等を座席表に書き込む。それを一週間ごとに、一人ひとりの子どものカードに書き込む。一か月ぐらいの期間のものをまとめて読み直して指導に生かす。
 しかし、子どもの今のありのままの姿を知るには、日常の子どもの興味や関心、流行についていけなくては時代遅れの先生と言われてしまう。例えば、子どもに人気のあるテレビ番組・タレント・まんが家・歌・歌手・遊び・遊び場所をどれくらい言えるか。
 いじめの把握は大変むつかしいが、教師はいつもアンテナを高くして子どもの送る信号を敏感にキャッチしなければならない。例えば、休憩時や放課後、子どもの不審な動きや遊び方、落し物、破損個所がないか調べる。机や壁、ロッカーなどに特定の子どものあだ名や悪口などは大事な信号。ふだん行かないところに級友と出入りしている。ふだん遊ばない子と一緒に遊んでいる。いつもと違う落ち着かない顔色や様子。仲間遊びをしているが動きや表情がさえない。プロレスごっこやボール遊びで特定の子に強く当てる。特定の子どもをからかう。
 不登校に至るまでに親や担任に何らかのサインをいつもよりは強く送っているときがある。心の不安や悲しみ、苦しみが表情や行動に出るのである。その子の立場で対応できれば未然に乗り越えられる。例えば、学校の話題をもち出さなくなる。楽しくやっていた遊びをしなくなる。しぶしぶ行動する。遅刻・早退・保健室へ行く回数が増える。忘れ物が増える。学習への集中力がなくなる。友だちと遊ばなくなる。係活動に参加したがらない。
(
塚田 亮:元東京都公立小学校長)


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