カテゴリー「同僚・管理職との関係」の記事

職員会議で意見を通したければ、職員室での地位を上げるようにして、根回しをすることが勝負の9割を決める

 職員会議で意見を通したければ、職員室での地位を向上させるのが一番だということである。
 そのためには、仕事をどんどん引き受けるに限る。
 たとえば、大変な校務分掌があれば進んで引き受ける。研究授業や全体指導も、進んで引き受ける。
 女性が重たい物を持っていたら、進んで持ってあげる。ドアの所で一緒になったら、開けて先に通してあげる。
 そんなことをしていれば、職員室での地位は上がるだろう。
 仕事を進んで引き受ける癖をつけておくと、教師として大きく成長できる。特に不得意なことをこそ、積極的に引き受ける癖をつけておくとよい。
 不得手を引き受けてがんばると、不得手が一つ消える可能性がある。うまくいくと得技になってしまうことさえある。若い頃は失敗してもいいので、不得手な分野ほど引き受けてほしい。
 そして、職員会議で意見も通りやすくなる。もっと大切なことは、教師として成長することだ。自分を成長させるために、いろいろな仕事を引き受けよう。
 そうすれば、職員室での立場は強くなり、職員会議で意見も通りやすくなるはずだ。
 職員会議では戦うべきでない。そんなエネルギーがあるなら、子どもたちや保護者のために使ったほうがよい。
 職員会議で自分の提案を通したいなんて、ギラギラした気持ちは捨てる。
 何を言うかではなく、誰が言うかだと心得る。
 手続き論を何よりも大切にする。影響力のある同僚に相談しておくことだ。つまり、根回し。
 職員室には、大きな影響力を持つ教師がいる。その人を味方につけておかねばならない。
 提案する前には、その人にしっかり二人きりで相談しておく。自分だけに相談されれば、人間うれしいものだ。
 その人からアドバイスをもらえれば、気持ちよく受け入れて提案する。そうすれば、その人も味方になってくれるはずだ。
 勝てない勝負はしないことだ。勝てない勝負をする人がいる。正直、無駄だなあと思う。
(中村健一:1970年山口県生まれ、山口県岩国市立小学校教師。授業づくりネットワーク、お笑い教師同盟などに所属。笑いとフォローをいかした教育実践は各方面で高い評価を受けている。 また、若手教師を育てることに力を入れ、多くの学生に向けて講演も行っている)

| | コメント (0)

職員室の同僚教師との関係づくりで大切な「あ・そ・ぼ」のルールとは何か

1 あ 
 職員室で大事なあいさつは、退校時のあいさつです。
 午後から出張する場合、黙って学校を出て行ってはいけません。学校を離れることとは「子どもから離れる」ことだからです。
 自分が学校にいないとき、自分はどこで何をして何時にもどるのか、同僚に知らせる、それが職員室のあいさつです。
 校外に出る場合は、学年主任へのあいさつはもちろん、職員室の教頭や教務の教師の前を通って「あいさつ」をして職員室を出ていくようにします。
 周囲に誰もいなければ、退出時間も書いて必ずメモを残していきましょう。
2 そ
 相談とは、教師の仕事を学び理解を深める大事なはじめの一歩なのです。
 学校現場は、常に動きながら学んでいくところです。
 職員室も同じで、事前に至れり尽くせりでノウハウを教わることはありません。そんな余裕もありません。
 実践の中で疑問が生じた時に明確な答えを、問題にぶつかった時に適切な対応を学ぶことで、教師の仕事について理解を深めていきます。
 ですから、困った時や、やり方がわからないことは、まずは自分なりに頭を使って考えることが大切です。
 そして、考えたように行動していいか「相談」します。
 例えば、校務分掌のプリント作成にしても、いきなり「どう作るのか」たずねるのではなく、まずは自分で過去のものを調べて内容を把握し、今年度はどうするか考えて、仮につくったものを教頭や主任にみてもらいます。
3 ぼ
 職員室のいいところは、年齢をこえて、同僚として、お互い助け合うことが当たり前にできることです。すすんで「ボランティア」を実現しましょう。
 ボランティアとは、奉仕すること、すなわち相手に尽くすことです。
 例えば、放課後の学年会の話し合いの時に「今日は寒いから、温かい飲みものがあったほうがいいかな」とお茶をいれたりします。
 また、算数の学習プリントを作成したら「こんな教材を作ってみましたけど、どうでしょう」と同じ学年の教師にみてもらいます。
 そして、アドバイスをもらって修正したら、学年分を印刷して「よかったら使ってみてください」と他のクラスの教師にもお渡しします。
 このように、自分にとっても同僚の教師にとっても「あったらいいな」「できたらいいな」ということを実現することです。
 自分の仕事の範囲はここまでだから、とはじめからバリアをつくってしまっては、いい同僚関係は築けません。
 若い教師は、教師としての経験が少ないからこそ、自信を持ってできることには、積極的に手と体、頭を動かし、特技を活かしていくようにしましょう。
 得意なことをやるのは楽しいですから、多少仕事が増えてもうまく効率よくこなせるはずです。
 そういうアピールを職員室は歓迎しています。
(有村久春:1948年生まれ 元東京都公立学校教員・小学校長 岐阜大学教授 専門は生徒指導論、カウンセリング、特別活動論)

| | コメント (0)

同僚教師や管理職の気になる言動は、どう対応すればよいのでしょうか

 同僚教師の中には、失礼な言葉遣いや態度で接してくる人がいます。
 例えば、子どもが向上すれば「わたしには、力量がある」と自慢する教師や、子どもにトラブルがあると保護者や他の教師のせいにして責任転嫁する不遜な態度の教師がいます。
 管理職の中にも、見下すような言葉遣いや失礼な態度で接する人がいます。
 相手に失礼な態度をとられると、こちらも感情的になって、ぞんざいな言葉や態度で返したくなります。
 しかし、もし、相手と同じような態度で応戦したとすれば、相手と同じ土俵の上に立つ失礼な人間ということになります。
 気分を害する態度をとってくる相手には、気持ちのうえで常に相手の上に立たなくてなりません。
「あなたの攻撃など、こたえてないよ」と、平然と受け流さなくてはなりません。周囲で見ている人たちも「あの人はさすがだ」という目で見るようになるはずです。
 周囲の教師の信頼を得、あなたがいつも笑顔で充実した仕事をすることこそが、失礼な態度をとる人にとって最大の反省材料になるはずです。
 気分を害する言葉や態度をとられたら「このような人に、感情を乱されるのは損」と考えて、軽く受け流すようにしましょう。
 同僚教師との張り合いや対立などは、自分の不徳の致すところと、自分を鍛える機会にしましょう。
 誰かの言動に、逐一、心を揺り動かされるのは、自分を苦しめるだけ。受け流して平常心を保つことに努めよう。
(中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校校長。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる)

| | コメント (0)

多くの教師が求めている校長とは、どのような校長か

 人事考課の導入に伴って、職員室の雰囲気が悪くなっている学校が少なくないと聞きます。
 そんな学校では、管理職と教師の関係が、管理的関係、評価的関係になってしまっているのではないでしょうか。
 その雰囲気をつくっている要因の一つは、管理職の伝え下手にあります。
 管理職として評価するのですから、厳しいことを言わざるをえないときもあるでしょう。例えば、
「あなたの自己評価は高すぎます」「あなたの問題は〇〇ですね」
などと、教師の意欲を低下させる伝え方をしていないでしょうか。
 教師になる人の多くはまじめな優等生です。そのため傷つきやすく、叱られるとやる気を失ってしまう人が多いのです。教師はほめられて育つ人が多いのです。
 教師の評価は、本人の自己評価をもとに、コーチングの技法を生かして、その教師の持ち味を生かして肯定的にかかわっていくことが大切です。例えば、
「あなたは自分のよさをよくわかっておられますね。その資質は私たちの学校に、とても必要なものだと思います」
「私は、その資質をもっと○○に生かしていただきたいと思います」
「その具体的な方法として何か考えられることはありますか」
 まず、教師の持ち味となる点に着目して、ほめ「この学校はあなたを必要としている」
というメッセージを伝えます。
 そのうえで、その資質を学校をよくするためにどのように生かしてほしいか、具体的な方法を本人と一緒に考えていくのです。
 その教師の持ち味を生かし、そこを伸ばして、足りない点を補えるのが、できる管理職、伸びていく学校です。
 リーダーシップとは、モチベーションを高めるような指導性です。
「私はこういう学校にしたいんです。そのためにみなさんの力がどうしても必要です。ぜひ力を貸してください」と言える校長先生。
 個々の教師に対して、「あなたに期待していますよ」「あなたが必要なんですよ」と言える校長。
 校長は「私のことを必要としてくれている」という感情を一人ひとりの教師が抱くことができれば、やる気もわいてくるというものです。
 いっぽうで、「何かあったらいつでも相談してくださいね」と気楽に相談にのってくれるカウンセリングマインドも必要です。「弱音を吐ける職員室」をつくっていく最大の役割をはたすのが校長です。
 ぜひ、教師が弱音を吐けるようなあたたかい雰囲気を、校長自らリードしてつくっていただきたいと思います。
 以前、ある小学校の教師が「私にとって校長先生は、学校における親のような存在です」と私に言ったことがあります。
 小学校教師の管理職に対する依存と期待は、並はずれて大きなものがあります。逆にそれが得られなかったときの教師のダメージは非常に大きくなります。
 保護者から攻撃や学級崩壊で教師が傷つき、私のもとに相談に来られた先生方が嘆きます。「校長先生は私を守ってくれませんでした」と。
 ある教師が不登校になりかけた子どもの父親に刃物を突きつけられ「どうしてくれるんだ」とすごまれたそうです。
 それを校長に相談しにいったら、「あなたも大変だね」と受け流されたそうです。
「次に来たら一緒に会いましょう」と言ってもらえなかった・・・・・・。これがショックで大きなダメージを受けられました。
 いっぽう、いろいろな組織の役員をしている大物校長で、一週間に一度くらいしか学校にこない評判の悪い校長がいました。
 ところが、ある父親が学校に乗り込んで来たときのこと。強面で、「娘が学校に行きたくないと言っているぞ。担任を出せ!」とすごんでいます。
 ここで、たまたま、その時に学校にいた校長が登場して、
「ちょっと待ってください。この担任の先生は、私が信頼をおいてお願いしている先生なんです」
「文句があるなら私がお聞きしましょう。さあ先生、あとは私に任せてください」
 このことで、校長の支持率が急上昇したそうです。
 とても荒れていた小学校に校内研修に伺ったときのことです。確かに惨憺たる状況です。
 授業中に物は飛んでくる。子どもが教師の足を引っかけ「くそじじい」「くそばばあ」と言う。黒板には毎日「死ね」の文字。
 しかし、校内研修は和気あいあいとしています。
「あらら、また『死ね』って書かれたの、一週間連続じゃない?」
「足ひっかけられて、あざできちゃうなんて、なんだかK-1みたいね」
 いちばん荒れているクラスの担任は
「職員室がこんなにいい雰囲気だから、なんとか続けることができているんです」
と。
 この学校の校長が実に脱力しきったいい雰囲気を出しています。
「先生方、ほんとうによくやってくれていますよね。私にできることですか・・・。研究指定校をお断りすることくらいでしょうか(笑い)
 管理職がリードして、お互いに弱音を吐いていいんだよ、支え合っていこうという雰囲気をつくること、これはとても重要なことなんです。
 講演会などで担任の先生方にお聞きすると、およそ6割が「うちの校長は頼りない」「リーダーシップが足りない」と感じているようです。
 また、理想の校長像をお聞きすると、最も多い2つが、
「こちらの話もよく聞いてくれて、フットワークもよく、頼りがいのある校長」
「いざというときに守ってくれる、親分肌の校長」
です。
 先生方は、きまったように、
いざというとき守ってくれる、親分肌の校長がいなくなったと嘆いています。
 保護者の攻撃や学級崩壊で心身ともに疲弊しきったとき、「それでもがんばろう」と教師を続けられる教師と、「もうだめだ、限界だ」と辞められる教師。
 この違いが、管理職の対応一つにかかっていることは少なくないのです。
 多くの担任が求めているのは、「いざというとき」に「必ず守ってくれる」と思える「親分肌の校長」です。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授。専門は臨床心理学、カウンセリング心理学。悩める教師を支える会代表。現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

手に負えない生徒に出会っても過度に落ち込まず、弱音を吐くことが、辞めたいと思う危機を乗り越える第一歩となる

 中学校で国語を教えるA教師は、16年目の女性教師です。どの学校でも熱心に取り組み教師という仕事に自信を感じていました。
 しかし、二年生の担任となり、はじめて手に負えない生徒と出会いました。
 他の生徒に暴言を吐いたり、暴力行為をすることもあり、学級全体が落ち着かなくなっていきました。
 何とかクラスのなかに溶け込ませようとして、あらゆる手を講じてみましたが、どれもうまくいかない。
 担任である自分が、一人の生徒を指導できずにいる状態を、悔しく、許せなく思いました。
 同時に、他の生徒にも嫌な思いをさせて、申し訳ないという思いで胸がいっぱいになりました。
 女性であるという、どうしようもできない部分も含めて、すべては自分の責任であると、自分を追いつめていきました。
 教室では、その生徒の言動に自分の感情が振り回され、常に張り詰めた緊張状態に置かれていました。
 職員室で、周りと和気あいあいとやっていくことが好きなA教師でしたが、学級がうまくいっていないことを正直に言えなかったため、同僚の教師との間に自分から垣根を作ってしまいました。
「大変なのは、わかっているはずなのに、誰も助けてくれない」と孤独感と不信感とが募っていきました。
 家でも学校のことが頭から離れなくなり、悶々とした日々を送っていました。
 食事もおいしく感じられず、食欲も落ち、眠りが浅くなったり、朝起きるのが辛くなったり、身体に変調も来すようになりました。
 しかし、放課後の掃除のときに、被害を被っていると思っていたクラスの女子生徒から
「先生、具合、悪くない。みんな心配しているよ」
と声をかけられ、ハッとしました。
 教師とはこうあるべきという自分の思い込みにだけとらわれて、生身の人間としての思いに正直に向き合ってこなかったのではないか、と気づかされました。私は
「もいいい。彼を何とかしようと思うのは、やめた」
「批判的に冷ややかに見ていると思ったクラスの生徒のなかにも、心配してくれている子もいるんだ」
「担任だけが必死で、性急に頑張るのではなくて、生徒たちと一緒に考えながらやっていこう」
「彼を何とかすることができなくても、周りの生徒たちをもっと大切にしよう」
と開き直ることができました。
 A教師は同僚の教師に「自分の手には、負えません」と宣言しました。
 その後は、少しは余裕をもって、当該の生徒と接することができるようになりました。
 余裕をもって接すると、その生徒の悪い面ばかりでなく、良いところが少しずつですが見えるようになってきました。
 その生徒の適切な行動に対して、自然にほめ言葉も出るようになり、ギクシャクした関係も徐々に改善の方向に向かっていきました。
 また、学年の教師の協力を得ながら、学級の立て直しも図ることができました。
 A教師が、この危機を乗り越えることができたポイントは
「自分が努力すれば何とかなる。自分だけで何とかできる」と過信していたところから、
「自分には、できないところもある。他の教師の助けが必要なときもある」
という考えに至ったところにある。
 教師が自分の思いとかけ離れた状況であっても、ありのままの現状をさらけ出すことは、自分自身のためだけでなく、ひいては子どものためでもあるのです。
 自分の限界を知り、難しい問題にはチームで、ときには、周りの子どもの力も借りながらかかわることです。
 問題を一人の教師が抱え込むのではなく、できるだけ多くの教師が組織的に関わることで、柔軟な子ども理解や、ていねいな対応も可能となります。
 教師も、おとなしい教師、怖い教師、お茶目な教師、しっかりとした教師、失敗するけど頑張る教師など、教師の世界も様々な個性の人間がいるほうが集団としての力を発揮することができます。
 誰かが「大変だ、しんどい」と声を出すことが、時には必要です。
 そうしないと、教師各自がバラバラになって、悩みを抱かえ込みながら孤立感を強めるだけの職員室になってしまいかねません。
 頑張り過ぎて、限界になる前に「しんどい」と言える温かい職員室の人間関係をつくることが、辞めたいと思うほどの危機を乗り越えるための第一歩となるのではないでしょうか。
(
新井 肇:1951年生まれ、埼玉県公立高校教師を経て、兵庫教育大学教授。カウンセリング心理学を基盤とした生徒指導実践の理論化、教師のストレスとメンタルサポート等を研究
)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

困っている生徒や指導に困っている教師に養護教諭や同僚教師が協力して指導に生かすようにするには、どうすればよいか

 私が養護教諭として保健室で毎日生徒たちと接するなかで、保健室に生徒がやってくるのは、体の具合が悪いだけで来るのではなく、その奥にある心の具合の悪さも訴えて来るのだということを実感しました。
 それは、生徒たちの自覚のあるなしにかかわらず、不満であったり、不安であったり、虚ろな心を抱かえていることでした。体の不調として訴えながら、心の問題と密接な関連がある場合も少なくないことも分かってきました。
 たくさんの生徒たちと出会いました。保健室での生徒たちは、楽しかったことよりは、苦しみや悲しみ、つらさや切なさを、時には涙を流しながら話してくれました。
 生徒たちの体と心の問題に対応しながら、私自身も悩んだり、喜んだり、教えられたりして、生徒たちと一緒に成長してきたような気がします。
 養護教諭が生徒たちに対応している姿を見れば、単なるおしゃべりとしか映らないかもしれません。
 しかし、体のことを通して、さりげなく、どうしても聞いて確認しておかなければならないことは、会話の中に取り入れます。
 できるだけ話しやすく、答えやすいように質問して、生徒の思いのたけを聞き取ることができるように配慮しながら対応しているつもりです。
 養護教諭には特権があります。それは、生徒たちとゆとりを持って十分に時間をかけて会話することができることです。養護教諭は、よく話を聞いてくれるといわれます。
 担任は、次の授業を気にしながら、生徒たちの話を聞いたり、短い休み時間に対応しなければなりません。何か問題が起きたときや、生徒の様子の変化に気づいたときでも、さりげなく話を聞こうにも時間が少なすぎます。
 生徒がいま何に困っているのか、どうしてほしいと考えているかを養護教諭が耳にすることがあります。
 そんなとき、生徒の秘密を守ることに気をつけながら、担任に伝えます。担任と問題を共有しながら指導にあたります。
 そのとき担任は、生徒に養護教諭から聞いたと言わないことを約束してもらいます。
 生徒が養護教諭に話してくれたことを、担任は必ず生徒の口から聴き取ってもらうようにしなければなりません。
 そうしなければ「養護教諭しか知らないはずなのに」ということで、私と生徒の信頼関係はなくなってしまうからです。
 養護教諭がそっと担任に伝えておくと、担任も、生徒が何に困り、悩んでいるのかをあらかじめ知っておくことになります。それほど難しくなく話がすすみます。
 気になる生徒の指導に苦慮している担任から、私に「あの生徒に聞いてみてください」とお願いされることもあります。
 養護教諭と担任との間にかぎらず、学校の中で、信頼関係ができている教師間でも可能です。生徒に対する指導に生かすことができます。
(
白鳥クニ子:1944年福岡県生まれ、元福岡県公立高校養護教諭)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

困ったときには、同僚教師や管理職に相談し助けてもらおう、そのためにはどうすればよいでしょう

 教師の世界は、さまざまな人間の寄り合い世帯である。多様な才能の主がいる。
 たとえば、コンピューターに向かっておれば、それだけで満足する人、部活動の指導にすぐれた人、生徒指導に成果をみせる人など、さまざまな人がいる。
 学校という職場は、十人十色である。さまざまな人に接して、それぞれのよさを知り、それを身につけ、人間性を豊かにしていこうではないか。
 また、同僚教師や管理職に相談し、助けてもらうとよい。そのための処方箋は
(1)
短所よりも長所で
 人間はだれでも長所と短所をもっている。長所が即短所という場合もある。
 まず、同僚教師や管理職の長所を先に認めていこう。そうすると、同僚教師や管理職のことが好きになる。精神的にも安定する。
(2)
自分から先にあいさつを
 あいさつは「私は、あなたに敵意をもっていませんよ」という意味がある。
 そう考えると「おはよう」のひと言は、私はあなたに敵意をもっていませんから、なかよくしましょうね、という意味である。
 そうであるなら、まず自分から先に声をかけたいものです。
(3)
心をゆるして相談できる人を持つ
 利害関係を超えて、同じ教職にある者として教育観に共鳴できる人を同志として持ちたい。
 そのような、心をゆるして相談できる同志の教師がいると精神的にゆとりがもてる。
(4)
同僚教師に助けてもらう
 どんな教師でも、若い時の失敗経験を生かして今日がある。だから若い教師は失敗をおそれるなと言いたい。
 子どもの心をつかみきれず、苦悩することがある。教師であれば経験することである。
 ところが、恥を知られたくないとの思いから、だれにも相談せずに問題を隠そうとする教師がいる。
 隠しきれなくなった時には、手もつけられない状態になってしまう。最もまずいやり方である。
 そうならないために、ぜひとも同僚教師に相談し、助けてもらおう。
 例えば、教師と子どもたちの間にズレができたら、どうすればよいのでしょうか。
 教師と子どもたちとの間にすきま風が吹き始めると、よそよそしくなる。
 そんなとき、熱心に授業をすればするほど心理的ズレが大きくなる。授業は言葉のやりとりか中心になるものだから。
 そこで、授業のことやイヤなことは、すべて忘れて、子どもと一緒に遊び、運動するのがよい。
 そうすれば、言葉でなく身体のコミュニケーションが可能になってくる。子どもたちが「先生、なかなかやるじゃない」と思ったら成功の第一歩である。
 その時、同僚教師が「〇〇先生は、すごいねえ。子どもと一緒になって遊んでくれる先生なんて、今どきめずらしいんだぞ」と、子どもたちに言ってもらって、同僚教師に助けてもらおう。
(5)
管理職とコミュニケーションを図って信頼関係を
 ふだんから、管理職とコミュニケーションを図って、信頼関係を構築しておくとよい。
 学校には保護者からさまざまな声がよせられる。それに対応するのが、主として管理職である。
 その時、ふだんから管理職とのコミュニケーションで信頼関係ができていると、管理職は理解してくれていて、守ってもらうことができる。
(
倉田侃司:1938年広島生まれ、広島大学附属小学校教師を経て広島文教女子大学教授、広島経済大学教授を歴任した
)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

管理職と協力関係をもち、信頼される教師になるには、どうすればよいのでしょうか

 教師になる前に会社員だった私にとって、上司への報告は必要不可欠だった。
 どんな小さなことでも、短く報告することの大切さは、身にしみていた。
 何かあったとき、最終的な責任を負うのは、やはり上司であったからだ。
 この
「たった一言の短い報告こそが、職場でのコミュニケーションをつくり、信頼関係をもたらす」
のである。
 雑談で相手の考えや、今まで知らなかった一面が出てくることもある。
 しかし、多くの場合、仕事そのものを通してコミュニケーションがはかられ、一緒に仕事をする中で信頼関係がつちかわれていった。
 私自身も、その仕事ぶりこそを判断材料にした。
 私は幸いなことに職場の人間関係で悩むことがあまりなかった。
 私は、今までに3校の学校に勤務した。
 5人の校長先生と教頭先生、合計10人と出会った。
 意地悪をされたことは一度もない。
 ある校長先生は、私の研究授業の協議会でわざわざ司会をかって出て下さった。
 指導案を机に置くと、どんなに忙しくても、必ず見に来て下さった校長先生もいらした。
 私は、いつも、どの管理職にかわいがっていただいた。
 私は、何をしたか。
「特別なことは、していない」でも、
 朝は「おはようございます」
 帰りは「失礼します」
 年休は「年休をいただきます」
 途中で帰るときは「申し訳けありませんが、今日は失礼します」
と挨拶をした。
 教師と子どもの関係も一緒だ。
「教師と子どもの信頼関係は、その中心的活動である授業で作られる」
 子どもは、教師をその「授業」で判断する。その判断はかなりの確率で正しい。
 授業は子どもを変える。
「できないことを、できるようにした、たった一つの授業」
「わからないことを、わかるようにした授業」
は、子どもを変える。
 授業を中心にした誠実な仕事があるからこそ、私は県の研究会の授業をさせていただけることになった。
 校長先生から打診があった。
 私は「校長先生が向井にとおっしゃっていただけるなら、謹んでお受けいたします」と答えた。
 授業を確実におこない、与えられた仕事を責任をもって果たし、社会人としてのマナーを守る。そして、それを続ける。
 これこそが、信頼関係の第一歩である。
 誠実な仕事とおこないは、何よりも力となる。
(
向井ひとみ:兵庫県公立中学校教師
)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

学級が指導困難になり親の抗議で新任教師が自殺し、裁判で公務災害に認定された事例とは、どうすれば防ぐことができるのでしょうか

 私が何人かの自殺されてしまった教職員の事例を見てきた中で感じるのは、同じ学校の職場がつちかうべき「共同性」の大切さです。
 窮地に陥っている教師がいたとき、親身になって助けられなくてもいい、助けられるような人のところに、きちんとつなぐというバトンリレーが働いているかどうかが重要です。
 それさえも無くなったときに、職場にギスギス感が漂い、教師が孤立感と絶望感に立ち尽くしていても、職場がそれを見殺しにするという最悪の事態に陥りかねません。次のような事例があります。
 2004年9月に、静岡県の小学校4年の担任である新任の女性教師が、自らの車の中で灯油をかぶって焼身自殺をしました。教師になってわずか半年後のことでした。
 授業がうまくいかない、指導が難しい子どもが何人もいる。それに、上司や先輩教師たちからの激しい叱責、職員室の希薄な人間関係が、孤立へと追い込んでいきます。
 職場の同僚教師は言います「隣の教師の悩みを、この1年知らないこともある」「悩みを打ち明ける時間もない」と。
 相手も忙しいから、自分の相談を持ちかけるのは申し訳ない、という気持ちが働き、距離ができてしまうのだろう。孤独状態は、あっという間に孤立感に変化する。
 自殺した教師の携帯には「子どものことは大変だし苦労するけど、一部の先生の言葉や態度に傷つく。苦しめられる」と残されていました。
 子どもや保護者対応に悩んでも、職場の雰囲気さえよければ、言葉が交わされ、会話も生まれます。
 新任の女性教師は日々の対応に困惑する中でうつ病を発症していました。事件の前日に、子どもの母親からの指導に対する抗議の手紙を受け取り、その翌朝に自殺しました。
 両親は娘の死を無駄にせず、若い教師が誇りと安心をもって働けるような状況に職場を見直す必要があると、公務災害認定を申請しましたが、棄却されたため静岡地裁に提訴しました。
 判決は、自殺について本人の性格上の脆弱性を否定し、当初から子どもの問題行動が相次ぐ中で、職場の支援体制が不足していたことを指摘し「公務災害であった」とする勝訴判決でした。
 判決では
「着任してわずか1か月半の期間に、数々の問題が解決する間もなく、立て続けに生じた点に特徴がある」
「状況が改善される兆しもなかったから、新採教員には緊張感、不安感、挫折感を継続して強いられ、強度な心理的負荷を与えた」
「こうした状況下では、当該教員に対して組織的な支援体制を築き、他の教員とも情報を共有した上、継続的な指導・支援を行うことが必要である」
「にもかかわらず、学校側は問題の深刻さを認識せず、また疲弊し続けていたことは十分察知できたにもかかわらず、情報が、周囲の他の教員と十分な支援が行われていたとは到底認められない」
として公務災害と認定しました。
 教師の病気休職の第1位は精神性疾患で大半はうつ病です。さまざまなストレスが精神性疾患の背後にあります。
 仕事の多忙化、人間関係のストレス(子ども対応、保護者対応、職場の人間関係)が、いまの学校の教師に覆いかぶさってきています。これに不眠状態が加わると事態は一変します。
 睡眠薬を飲んででも寝ることは、決して悪いことではありません。
 精神科の医師は「グチをこぼす」ことが重要だと言っています。先生方にお願いです。グチをこぼす場を3つ作ってください。
(1)
家族
 親でも、奥さんでも旦那さんでもけっこうです。家族が聞いてくれるだけで、どれだけ心が晴れるかが、わかります。
(2)
職場の同僚
 仲が良い、悪いなど様々あるでしょうから、3~4人でもけっこうです。飲み屋さん等で話をすることも決して悪くはありません。
 ただし、周りに他の誰かいないかをよく確かめてから話をするようにします。
 他人に話をするときは、コトのあらすじを整理しなければいけません。それが大事です。
 すると「本当は、あのお母ちゃんの思いは、ここに有ったんじゃないかな」とか「あの父ちゃんの願いは別のものだったのかもしれない」と気づくことがあるのです。
(3)
職業の違う友人
 飲み屋の大将、美容院のママさんなど、気のおけない関係を2,3人つくっておくことです。するとこう言ってくれます。
「先生も大変やな。でもな、あんたの悩んでいること、私らから見たら、どうでもええことで悩んでいるように見えるで(笑い)
 そうです、自分の姿は自分ではわかりません。鏡となるものを置いてこそ、はじめて自分の姿が見えるのです。
 先生、よく寝てください。多少教材研究が中途半端でもええじゃないですか。
 朝、子どもたちに「〇〇くん、おはよう! △△さん、元気?」と、はつらつとしていること、それが大事です。
 学校に登校して、先生方が元気じゃなかったら、誰が大人になろうと思いますか。先生方は大人のモデルです。未来への希望の光なのです。
 教師としての最大の資質は「はつらつとしている」ことです。
(小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

同僚教師と共に生徒を指導し育てるには、どうすればよいのでしょうか

 私は新卒から数えて現任校は三校目である。それ相応に問題に直面し、頭を抱かえ、右往左往しながら行動に移すと失敗し、その繰り返しから学び取ってきた。
 私の校務分掌は研修係である。これまでの学校でもこの係を多く担当してきた。同時に生徒会係も多く担当してきた。
 研修係は教師集団を統率する「上からの係」であり、生徒会係は生徒集団を統率する「下からの係」であるという持論を持って私は組織を動かしている。
 両者に共通するポイントとして「教師や生徒にきっかけを与え、行動をうながす情報を与える」ことである。
 私たち教師は、ほんの小さな「きっかけ」によって意欲がわくことがある。例えば、同僚教師の失敗談を聞いたときがそうだ。また、授業のコツをこっそり聞いたときである。
 さらに、行事や部活動に力を発揮する教師から生徒を育てるポイントを聞いたときだ。
 このように、ほんの小さな「きっかけ」が与えられることで、多くの教師は意欲的になる。
 最近の子どもたちは、自己中心的で巻き添えを食らわないよう、無関心さをよそおう。
 私は、そうした学級の雰囲気を感じ取った場合、問題意識を持つよう誘い、解決の筋道を考えさせる。
 解決策として、副担任や教科担任など学年の教師の力を借りるとよい。担任ひとりで学級経営のすべてを取り仕切るべきではない。
 生徒の荒れには組織化された教職員の組織体制で臨むべきである。
 では、どのような組織体制で臨むべきか。
 役割分担に基づいたキャラクターを演じることで、生徒にバランスよく接していくべきである。
 母親的役割をする母性教師がいて、厳しい叱り役の父性教師がいて、お兄さんお姉さんのようなチャイルド教師がいる。
 そうしたバランス関係のもとに日常の学校生活を過ごすことができれば、子どもたちもストレスを抱えず、他者理解なり自己表現がスムーズにできるはずである。
 ところが、そうした役割分担がなされていない学年や学校の場合、荒れる生徒が生まれてしまう。
 教師は忙しい。しかし、ここ一番、生徒について一緒に活動しなければならない時、このチャンスを逃がしてしまったがために教師への信頼感を失わせてしまった経験などは、誰にもあることだろう。
 自分が生徒と一緒に活動できない場合は、役割分担したチームワーク指導で、別の教師に生徒についてもらえばいい。
 私は校内では、主として父性教師である。しかし、時には母性教師にもなるし、チャイルド教師にもなる。
 一人の教師が時に応じ、機に乗じ役割を変化できるようになれば、生徒の力をまた違った形で伸ばすことができるだろう。
(
山下 幸:1970年北海道生まれ、北海道公立中学校教師)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

いじめの指導 さまざまな子どもの指導 ものの見方・考え方 カウンセリング 不登校 人間とは(心理・行動・あり方) 人間の生きかた 保育幼稚園 保護者との協力関係をつくる 保護者にどう対応するか 保護者の実態 優れた先生に学ぶ 優れた学級担任とは 優れた授業とは 優れた教科授業例 先生の実態 危機管理 叱る・ほめる・しつける 各国の教育 各国の教育改革 各教科の授業 同僚・管理職との関係 問題行動の指導 国語科の授業 地域 子どもから学ぶ 子どもたちに対する思い 子どもたちの関係づくり 子どもと向き合う 子どもの失敗 子どもの実態 子どもの成長をはかる 子どもの指導の方法 子どもの見かた 子どもの話し方 子育て・家庭教育 学び合う学び 学力 学校の実態 学校組織 学校経営と組織 学校行事 学級づくり 学級の組織と活動 学級の荒れ 学級崩壊 学級通信 学習指導・学力 学習指導案 実践のための資料 家庭 宿題 掃除 授業づくり 授業のさまざまな方法 授業の実態 授業の展開・演出 授業の技術 授業中の生活指導 教師との関係 教師と子どもの関係づくり 教師に必要とされる能力 教師の人間としての生きかた・考えかた 教師の仕事 教師の心の安定 教師の成長・研修 教師の話しかた 教師の身体表現力 教材・指導案 教材研究 教育の技術 教育の方法 教育の理念や思い 教育史(教育の歴史と変化) 教育改革 教育法規 教育行政(国・地方の教育委員会) 新学級づくり 特別支援教育 理科の授業 研究会開催情報 社会環境 社会環境(社会・マスコミ・地域) 社会科の授業 算数・数学科の授業 経営とは 英語科の授業 評価 話の聞きかた