カテゴリー「同僚・管理職との関係」の記事

職員室での同僚教師との豊かな人間関係は、心の支えになり、子どもの指導に生きる

 私がまだ20歳代だったころ「職場は仕事をするところ。同僚とおしゃべりをしたり、お茶を飲んでくつろいだりするのは、無駄なことだ」と考えていました。
 だから、放課後は自分の教室でテストのマル付けや環境整備をして過ごしました。
 職員室に帰っても、学級通信を書いたり事務仕事をしたりするなど、無駄な時間を過ごしたという記憶がほとんどありません。
 若い頃に勤務していた学校は、子どもたちが落ち着いていて保護者も学校に理解があったので、それで通用していたのだと思います。
 ところが、その後、転勤して勤めた学校は、子どもや保護者が様々な問題を抱かえている学校でした。
 子どもの指導は思うようにいかないので、自信を失うことも多々ありました。放課後になれば、保護者からのクレームが続きました。
 ある日、私がクレームで来校した保護者と夜遅くまで話し合いをして職員室に帰ってくると、同じ学年の先生方が残って私を待ってくれていたのです。
 先生方は、心配そうに「あの保護者は昔からこうなんだから・・・・・」「子どもは近所で、こんな様子らしいよ」などと、声をかけてくれました。
 私はその瞬間、張りつめていた気持ちがやわかぎ、心配して待っていてくれた同僚たちのあたたかさが心にしみました。
 それまで職場の同僚の先生との人間関係をないがしろにしていた自分の至らなさに涙が止まりませんでした。
 何か問題があった時、同僚の先生のサポートがどれだけ心強く、頼りになるかを思い知らされた一件でした。
 日頃の同僚の先生とのなにげない会話の中にも、子どもや保護者、地域を知る貴重な情報があることに気づくことができたのです。
(
中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良県公立小学校教頭。子どもを伸ばすためには、叱り方が大切と「叱り方&学校法律」研究会を立ち上げる。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる)

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教師の職員室での人間関係は、どういった様子なのでしょうか

 教師は、お互いを「○○先生」と呼び合う関係上、一般企業ほど、露骨に関係がこじれたりしないのが普通ですが、それでもやはり職員室という小さな部屋の中での人間関係はさまざまです。
 職員室の人間関係もそれなりに複雑ですから、先生たちは同僚に対する不満をだれにでもぶちまけてしまうわけにはいきません。
 でも、本当はいろいろと言いたいことは山積みのようです。温厚に見える先生ほど溜まっているストレスは多いようです。
 子どもたちとの関係がよければいいのですが、子どもたちともうまくいかなかったら、悲劇。逃げ場がなくなり、へたをするとノイローゼになってしまうでしょう。
 中学校から小学校に異動して、保護者があまりにもうるさいことに閉口する教師がいるように、教師の最大の敵はストレスと言って過言ではない。
 教師と管理職との関係も、私立と公立では違ってくる。私立において、管理職は絶対。へたをすればクビを切られてしまうのですから、滅多なことはできません。
 一方で、学校に利益をもたらす能力があれば、学校側も少々のことには目をつぶるという能力重視の一面もあります。
 それに対して、公立の教師はあくまで公務員なので、管理職から嫌われてもクビの心配はありません。
 ですが、出世は別。出世するためには、校長の覚えがよくなければダメ。小学校では1校の教員数は少なく、比較的若くして管理職になるのも可能なので、出世競争も露骨に行われます。
 また、女性の教師が管理職になりやすいという面もあるので、女性の教師も率先して仕事を引き受けます。
 中学校でも、出世する、しないはシビアな問題。管理職になれば、かなり仕事も軽減され、威張れるということもあって、少しでも早く管理職になりたいと思うものだからです。
 ただし、女性の管理職は少なくなるため、女性の教師で出世競争に参加する人は少なくなります。
 最後に高校ですが、学校数が少ないため、管理職になれる人数に限りがあります。管理職になれなくても当たり前、みたいな開き直りがあります。
 教師の宴会はベテランになると、酒が入らないうちに、偉い先生のところには、一気に注ぎに行ってしまうのも常套手段。
 教師というのは、本質的に細かくいろいろなことを覚えているものなので、自分のところに誰が来たのかを、よく覚えているもの。
 そういうことを見越して、先手を打って行動にでるのです。
(
上田 浩:公立高校教師10年を経て、教育ライター)

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教師を取り巻く過酷な現状とは、保護者対応など、どうすれば解決できるか

 「教師を支える会」の代表である私は、いろいろな学校現場の先生方の悩みをカウンセラーとして十数年間、お聞きしてきました。その中で感じるのは、現代はまさに「教師受難の時代である」ということです。
 学校の教師でうつ病にかかる者の割合は、一般企業の2.5倍にものぼると言われています。教師を追い込み、メンタルヘメスを悪化させてきた背景には、つぎの要因が相互に絡み合っています。
1 多忙さ
 いろいろな学校を見ていても、教師が放課後に子どもとゆっくり話し込んだり、勉強を指導して語り合ったりという場面はほとんど見られません。
 多くの先生方は「もっと子どもとふれあう時間が欲しい。けれども忙しくて時間が確保できない」と言います。それほど多くの書類に追われているのです。
2 学級経営、生徒指導の困難
 小学校の学級崩壊が話題になったのは1990年代半ばです。その頃から子どもたちの間に「わがままを貫き通せば先生は言いなりになるんだ」という風潮が高まってきました。
 その原因のひとつに、教師の指示を聞けない子どもが増えてきたことが挙げられます。その背景には、子どもたちの「どうせ私なんか」と自分を卑下する自己肯定感の低下、心の脆弱さがあります。
3 保護者対応の難しさ
 教師たちの大きな悩みのひとつとなっているのが、保護者対応の問題です。「教師を辞めたい」と訴える先生方の悩みの約7割は、保護者との関係の悪化がなんらかの仕方で影響しています。
 特に20歳代の若手教師や、50歳代のベテラン教師に対する視線には厳しいものがあります。集中攻撃を受けた教師は、たまったものではありません。精神的にボロボロになっていきます。
 
「それは、あまりにも、ひどい。相手が教師だったら、何をやってもいいというのか。教師も、人間なんだぞ」
 教師の悩みを聴いてきたカウンセラーとして、これまで、そんな怒りを感じずにいられなかったことが何度もありました。
 今や「保護者と良好な関係を作ることができる」「難しい保護者にうまく対応できる」ことが、教師人生を続けていくうえで、不可欠な能力となっているのです。
 学校に批判的な親の対応においては「関係づくり」が何より重要です。まじめな教師ほど「正論」で説得しがちです。その結果「わかってくれない」と敵対心を募らせます。
 まずは、じっくりと話を聴き「この先生は信頼できそうだ」という気持ちを抱いてもらえるまで、ねばり強く対応することが重要です。
 クレーマーの大半が「傷ついている親」で、内心は「被害者感情」でいっぱいなのです。したがって「自分は大切にされているかどうか」にひどく敏感です。
 こうした心理を敏感に感じ取って「大切にされている」という感情を抱いてもらうように対応することで、攻撃が緩和されていくことが多々あります。
 関係づくりができたところで「いっしょに考えていきましょう」と、共に問題解決を考える姿勢を打ち出していくようにします。
 さらに信頼関係が作れたならば「ひとつだけお願いがあるんですけど」と切り出していきます。このような慎重な姿勢が大切です。
 配慮すべきポイントは
(1)
チームで対応すること
 教師と保護者の間で「言った、言わない」と応酬することがあります。チームで対応することで回避できます。
(2)
「できないことは、できない」と明確に伝える
 こじれるケースでしばしばあるのが、保護者の怒りを買うのを恐れて、実現可能性の低い要求に対して、あいまいな回答をすることです。保護者の要求がエスカレートしがちです。
(3)
謝罪すべきことは明確に謝罪する
 謝罪すべきことは、最初に明確に謝罪するほうが、その後の信頼関係の回復につながりやすい。
(4)
話す時間枠を設定する
 保護者からの長時間に及ぶクレームで、メンタルヘルスを崩す教師も少なくありません。最初に「今日は、○○時までしか時間をお取りできないんです」と時間枠を明示することで、面談を進めやすくなります。
(5)
教師の個人情報を守る
 教師の家に保護者が何回も長時間訪れたり、電話したりして苦情を寄せられ精神疾患になったり、家庭崩壊に追い込まれてしまうことも少なくありません。
 教師の人権とメンタルヘルスを守るためにも、教師の個人情報を守る学校態勢づくりが必要です。
4 同僚や管理職との人間関係の難しさ
 今は教師受難の時代です。現場教師の支え合い、チームワークが必要になります。しかし、教師同士のチームワークは弱体化し、教師の支え合いの欠如がメンタルヘルスの悪化に大きく影響しています。
 原因のひとつは、教師の人事考課の問題です。荒れた学校で全教職員が一丸となって成果を上げても悪い評価の教師を出さなければなりません。給与に反映させている自治体においてはひびが入りつつあるのが実情です。
 同僚や管理職との人間関係ができていない教師が精神的に追い込まれていきます。精神疾患による休職教師の約半数が、その学校への勤務をはじめて2年以内に休職している、という事実にも示されています。
 教師にとって、同僚や管理職による支えほど、教師人生の危機を乗り越えるうえで大きな力になります。
 「弱音を吐ける職員室」「支え合える職員室」が、個々の教師を支えます。学級崩壊のような危機的状況にあっても、その問題をみんなで共有できる学校では、共に危機を乗り越えていくことを通して、一人ひとりの教師が成長していけるのです。
 教師には「学級経営の失敗をさらすのは恥である」といった意識が根強い人がいます。しかし、担任が問題を抱え込むと、保護者との関係の悪化などの問題が生じる可能性が高くなります。
 このようなことを防ぐためには、早期対応であり、教師には「上手に助けを求める力」が求められます。それが教師に求められる資質であると考えられます。
 メンタルヘメス不調の教師の多くは「学校で孤立しています」「誰も私の苦しみをわかってくれる人はいません」と言います。
 一人でもいいので「何でも言える人」「わかり合える仲間」を見つけていきましょう。このような仲間の存在こそが、教師人生をまっとうしていくうえで、最大の支えとなるのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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